編集宮後です。
ようやく少し涼しくなってきたので活動再開です。
仕事柄、取材や打ち合わせではなく、
気になるデザイナーさんの事務所を訪れ、
今までに手がけられた仕事を見せていただくことがあるので、
このブログでも積極的にご紹介していこうと思います。
今回は先日伺ってきた氏デザイン 前田豊さんのご紹介。
知り合いの美術館学芸員から「いいデザイナーさんがいるよ」と
話には聞いていたものの、お会いする機会がなかったんですが、
なぜか今会うべきだと思い、突発的にお会いしてきました。
氏デザイン代表の前田さんは1972年生まれの
グラフィックデザイナー。プロフィールには
廣村デザイン事務所などをへて2005年独立とあります。
お会いしたときには、最近手がけられたお仕事をざっと
見せていただいたんですが、なかでも美術展の広告(ポスターやチラシなどの
グラフィック)やサイン計画のお仕事が印象的でした。
こちらは渋谷のNHKスタジオパークの館内。
サイン計画とロゴデザインを担当されています。
こちらは今年3月10日から6月11日まで日本科学未来館で開催された
「世界の終わりのものがたり」展のポスターと会場のデザイン。
世界の環境問題や経済問題などいろいろなジャンルの問いかけ73問と
その答えをビジュアル化して見せる展示です。
たとえば「リスクがない環境で安心して生きたいですか?」という
問いに対して、象の平均寿命56.0年、野生の象35.9年、
動物園の象16.9年という数字がつきつけられ、
動物園という安全な環境で生きる象が野生の象より短命であることがわかるという次第。
つまらなくなりがちなデータをビジュアルとうまく組み合わせることによって、
はっとさせられる展示として見せているあたりがうまい。
展覧会のポスターのほか、展示のグラフィックデザインも前田さんが担当。
深刻なテーマを、泰間 敬視さんのポップなイラストでうまく緩和させています。
こちらは2011年3〜7月に森美術館で開催された「フレンチ・ウィンドウ展」。
フランスで最も権威ある現代美術コレクターの団体「ADIAF」が主催する
「マルセル・デュシャン賞」の10周年を記念して開催される
現代フランスアートの展覧会のポスター。
続けて、静岡市美術館の「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想展」、
「ハンス・コパー展」のポスター。
いずれも前田さんは「特別なことはしていないんです」と
おっしゃるのですが、丁寧につくられたロゴタイプやレイアウトから、
きちんとデザインされたものであることがわかります。
ちまたにはデザイナーの個性が目立つデザインは多々あれど、
一見すごく普通に見えてちゃんとつくってあるデザインというのは
ありそうでなかなかないのです。
前田さんのお仕事のお話をうかがうつもりでしたが、
今のデザイン界の現状やデザインメディアのあり方にまで話がおよび、
久しぶりにいいデザイン議論ができました。
引き続き、このコーナーで気になるデザイナーさんを
ご紹介していきたいと思います。
氏デザイン
http://ujidesign.com/
現在、デザイナー募集中だそうです(9/30応募締め切り)