ライター、渡部です。
これは数百年後、数千年後に語られる物語。
むかしむかし、アラブにとてもお金持ちの王様がいました。王様は海に囲まれた砂漠の土地を指さし「ここを世界で一番すばらしい島にしよう」と、その土地を「幸福の島」と名付けました。
けらいたちは「世界で一番すばらしい」って何だろう、と考えました。その国にはすでに世界中からすばらしいものがたくさん集まってたのです。世界中からかしこい人たちやものづくりが上手な人たちが集まって、これまた世界中から集めたとても高価な石や金で作った
モスクがあって、そこには世界で一番大きなじゅうたんや、世界で一番大きなシャンデリアがありました。
けらいたちは口々に言いました。「きっと王様が言うのは、このモスクよりもすばらしいものに違いない」
あるけらいが言いました。「文化というものがすばらしい」。他のけらいがききました。「文化というのは何だい?」。また他のけらいがいいました「美術館や博物館だ」。たちまち世界でとびきりの美術館や博物館が集まりました。
またまた他のけらいが聞きました。「たてものはだれが作るんだい?」またまたまた他のけらいがいいました。「すばらしいたてものを作る人たちは建築家という人たちだ」。たちまち世界でとてもかしこい建築家が集められました……。
別にオチがあるわけではない。
アラブ首長国連邦の一国、アブダビを表現するとこういうことになるのである。
お隣ドバイに比べると、今のアブダビはまだ砂漠の中の小さな街といった観だ。だが、サディヤット島と呼ばれるエリア
www.saadiyat.ae の開発が進めば、ドバイを超える注目都市になるだろうと言われている。
ブリティッシュミュージアムと提携しノーマン・フォスターが設計する「ザイド・ナショナルミュージアム」、フランク・ゲイリー設計「グッゲンハイム・アブダビ」、ジャン・ヌーベル設計「ルーブル・アブダビ」、ザハ・ハディド設計「パフォーミング・アーツ・センター」、安藤忠雄設計「海洋博物館」と、ビッグネームな建築物の建設が予定されている。


地図:
http://www.saadiyat.ae/en/Content/where_is_saadiyat.aspx より
島と言っても、アブダビ市街自体が複数の入り江からなっている沿岸地なので、海水で分割された陸続きの土地のようなもの。アラビア語で幸福を意味するサディヤット島、地上の人口楽園へは、街の中心地から車で15分ほどの距離だ。
(後編に続く)