ライター、渡部のほうです。
アートディレクターの井上庸子氏のこれまでの作品を見せる
ウェブサイトが、今年5月にオープンした。
www.inoueyoko.com
全体の動きはさくさくっとしていて、それでいて堅くなく、
色合いは淡いけれど、柔らかすぎない。
正に井上氏の空気感を感じるサイトとなっている。
実は、オープン以前からチラ見せさせてもらっていて、
井上氏が試行錯誤していたのを記憶している。
表紙案。井上氏がカルトンを撮影。どの紐の結び方、並び方がいいか、などを検証。
中ページ。作品の並びを考えるため、作品写真を小さくプリントアウト、実際にボードに並べながら、順番を決定。
サイト中、ほぼすべての写真は井上氏自身で撮影。トーンが統一されている。
「コンピューターのモニターに出るものなんですが、
文字の詰めや、誘導する矢印の形や位置なども、
モニターだけだとうまく感覚がつかめない。
実際にプリントアウトして、直していきました」
同じ平面デザインとはいえど、グラフィックとウェブではかなり勝手が違うようだ。
「テーブルの上に作品を並べて見ていただく、
という気持ちだったので、画面が大胆に動くようなものは考えていませんでしたが、
それでも画面が変わる時の、ぱっと変わるか、フェードアウト/インするのか、
最初はイメージしにくかったです」
ここに大きな助け船となったのが、
ウェブサイトを制作した「動画まわり」
www.mawari.jp
他に、長尾智子氏、イイノナホ氏、スソアキコ氏らのサイトを手がけている。
「動画まわりの宇田さん、福田さんは答えが明快。
私のこうしたい、という考えに対して、できます、こういう風にできます、
というのを、すぐサンプルページを作って見せてくれる。
表紙のどの文字が先に出て来るといいか、カルトンが先がいいか、
作品からトップページに戻る時に、もう一度カルトンの写真がくると重い、など、
分かりやすく、決めやすくしてくれました」
とはいえ、フェードアウト/インのスピードは、
なかなか決めづらかったそう。
「雰囲気たっぷりに長々とさせるのはいやでしたし、
ザクザクっと画面が変わるのも、ちょっと唐突。
宇田さんが「ファーっと」という言葉で表現してくれて、
その「ファー」が「ファーーー」でもなく「ファ」でもなく
「ファー、の伸びる線が一本くらいで」というお願いの仕方で
現在のスピードになりました」
むろんスピードは秒数などで示すことが出来るが
数値だけでは表現しにくい感覚的なところを理解しあわなければ、
満足のいくものはできない。
井上氏と動画まわりのコンビネーションが合ったことが、
「井上庸子らしいサイト」を作り上げた要因だろう。
しばらくお休み期間があったこともあって
構想から完成まで1年半。
たくさん紙にプリントアウトして頑張った井上庸子氏、ご苦労様でした。