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絵本『うさぎがきいたおと』ができるまで
編集宮後です。
あまりに久しぶりの投稿で、ログインの仕方を忘れそうになりました...。

今までなにをしていたのかというと、Book&Designという新しい個人出版社とギャラリー開設の準備をしていました。ギャラリーのほうはほぼできあがっていましたが、出版社のほうはゼロからでした。出版社のつくりかたについては、また別のところで書きたいと思うので、ここでは9月に出る新刊書籍ができるまでをまとめます。

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こちらが新刊『うさぎがきいたおと』です。手製本で有名な美篶堂代表の上島明子さんの文章に、石井ゆかりさんの書籍の挿絵などを手がけている木版画家の沙羅さんが絵を描いた、大人のための絵本。

2010年に美篶堂が自社制作した本をリプリントし、一般流通する書籍として再販したもの。8年ぶりに再販されると聞いて、書店流通用の本をBook&Designで担当したいと提案し、一緒に印刷していただくことになりました。

今回は、数々の印刷賞を受賞している山田写真製版所のプリンティングディレクター、熊倉桂三さんに印刷監修をお願いすることに。

熊倉さんには過去に取材で何度もお世話になっていたのですが、印刷をお願いするのは今回がはじめて。沙羅さんの原画の繊細な色を引き立たせるため、通常のプロセス4Cではなく、カレイドインキを使用。カレイド用に製版データを調整して印刷していただきました。原画の鮮やかさや立体感が見事に表現された驚きの仕上がりでした。

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印刷立ち会いの様子。
木版画家の沙羅さんと山田写真製版所の熊倉さんが
刷りだしを見ながら、色の出方をチェック。

(山田写真製版所での熊倉さんとの打ち合わせや印刷立ち会いの様子は、本づくり協会の会報誌『 BOOK ARTS & CRAFTS vol.3』の記事を参照ください)

打ち合わせから印刷立ち会いまで同伴できなかったのが残念ですが、あとでお話をうかがうにつれ、その丁寧なプロセスに驚きました。原画を見ながら、作家とプリンティングディレクターが相談し、モニタで色を調整しながらデータをつくるそうです。その場で方向性を決められるので、何度も色校を出す必要がなく、結果的にはこの方法のほうが早く無駄なく良い印刷ができるのだとか。

印刷ができあがったあと、刷り本を美篶堂の長野工場へ移動し、手製本の作業が始まります。美篶堂とBook&Designでそれぞれ刷り本を分け、外まわりのみを異なる仕様でつくるのです。

今回の絵本は見開きページを半分(中表)に折り、折った部分に糊をつけて天糊製本したもの。天糊製本は180度フラットに開くことができるので、見開きにまたがっている絵柄がノドに食い込まずに製本できる方法です。

美篶堂の長野工場の様子。一冊ずつ手で製本していただいています。

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貼り合わせのページに糊をいれているところ。

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表紙に板紙を貼り、糊が乾くのを待っているところ。

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カバーも一冊ずつ手で巻いていきます。

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できあがりました。


Book&Design版では表紙に板紙を重ね、ドイツ装にしました。その上からカバーをかけて完成です。書店で流通できるようカバーにバーコードが入っています。美篶堂版では、布貼上製本・ケース入りという特別仕様になっています。こちらは美篶堂の製品を販売している店舗とオンラインショップでの販売です。
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上が美篶堂特装版。布貼上製本にタイトル箔押、ケースがついています。
下がBook&Design版。どちらも中は同じです。


中ページは同じで、外まわりの仕様だけ変更しています。それぞれで少部数ずつ中ページを印刷するよりも、まとめて印刷することで1冊あたりの原価を下げるよう工夫しました。

こうして、かなり手をかけてつくったので、その良さが伝わるような流通方法をとりたいと思い、トランスビューの注文出荷制で注文をいただいた書店のみに配本することにしました。おかげさまで、順調に注文をいただけています。実際、書店店頭に並び始めるのは、9月中旬頃の予定です。

今回、自分で出版社をつくるというチャレンジをしてみましたが、このプロセスを共有できれば、ほかの編集者やデザイナーの方々も自分で本を出版できるのではないかと思いました(すでに自分の出版社をつくって自著を刊行している著者の方々もいらっしゃいます)。また、この方法は、自分たちで本をつくりたい企業、ブランド、自治体、学校などにも応用できそうです。

いまは(印刷するだけなら)個人でも簡単に本をつくれる時代になりましたが、一定部数以上を書店に流通させるとなると、まだまだハードルは高いです。流通のための道筋がつけられれば、あとからその道を通る人がいるかもしれない。そう思いながら、いろいろ試行錯誤中をしています。書店で見かけたら、ぜひ手にとってご覧ください。


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9月8日から30日までの土日祝、Book&Design Galleryで原画展を開催しています。こちらもぜひ!。


絵本『うさぎがきいたおと』

文:かみじまあきこ 絵:沙羅
装丁:川上恵莉子、守屋史世
印刷:山田写真製版所
製本:美篶堂
刊行:Book&Design
(9月10日発送予定)

用紙:本文、カバー アラベール ホワイト 四六判130kg
   見返し NTラシャ はなだ 四六判100kg
   表紙 板紙(2mm厚)
印刷:カレイド印刷、カバーはマットニスがけ
製本:ドイツ装、手製本

四六判変型(128 X 190 mm)、48ページ
本体2,500円+税
ISBN 978-4-909718-00-6
http://book-design.jp


# by dezagen | 2018-09-13 09:30 | | Comments(0)
上海のスーパーマーケットなどで見たもの
ライター渡部のほうです。

上海のスーパーマーケットなどで見たもの

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高級品ときたら必ず赤と金だ、という感覚は「中国来たな」と思わせる。
下手にモダナイズされずずっとこのままでいて欲しい。
(外国人の勝手な発言)
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青島ビールの戌年お祝いバージョン、だと思うのですが、これはいい。

オールアルミ缶。買ってくれば良かったけど、値段(約250円、他の青島の3倍くらいだったような)にひるんで買ってこなかった。

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小袋の漬け物。このシリーズは中国の切り絵をモチーフにしてきれいな仕上がり。

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こちらも切り絵シリーズ。米。

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昔からあるっぽいビスケット。体操着のような爽やかさ。

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スマホ型消しゴム。日本でも売ってますが、スマホでなんでも(支払いもQRコードで、みたいな)やれる、
スマホ中心文化の中では、子供が「早くスマホ欲しいなあ」と思う気持ちは強そう。

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修正テープの形が割と自由。魚型だったり、ブロック(ロボット?)型だったり。

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キャップ付き、ペットボトルエナジー飲料。鳥の形とペットボトルの形が合っていて、表面はかなり三角形。
写真だとあんまりよく見えないですな。

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ペットボトルの形は日本よりバリエーション多い。
くびれをどこに持って来るかは、地域差がある。
上海のファンタは下目。

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いつも買ってこようと思うのに、できない、
中国のポッキー、プリッツ全制覇。
来るたび種類変わってるし。

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1年前に成都で見た品揃えとかなり変わっていると思ったのがオーラルケア系商品。
成都と上海の差なのかは分からず。

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キラキラギラギラ変形大好き、みたいのだったのが、段々シンプルな方向に。

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柄の部分がストレート化。その分、柄の色とブラシの色の組み合わせを楽しんでいるよう。
でも歯ブラシケースはなんか可愛いことになってるんだな。今中間地点、って感じか。

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ハミガキ。ソウルで見るデザインっぽい。

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元EXOのクリスこと吳亦凡(ウー・イーファン)は去年も見たけど、このオーラルケアブランドのイメージキャラクターに定着。
トリミングされすぎて女性のようだ。
オーラルケア商品だけど、ほとんどポートレートのみパッケージ。歯くらい見せればいいのに。

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中華系は○をシンボルマーク、ラベルマークに使う事が多い。
○の中に堂々と文字が入る、あるいは、○の弧に合わせて文字を配置する。
こういうのはすごい上手い。
一方、右肩上がりシャープな斜め系というのも、(昔から続いている商品だと)割と目にする。
斜めのロゴは別にどこの地域でも珍しくないんだが、中国のはかなり鋭い。色の差もきつめ。
この文字の入れ方はひょっとすると、ソビエトの社会主義、その前提としてあったロシアアヴァンギャルドからの影響だろうか。

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ケータリング用品卸の店は出物が多かった。掘ると出て来るデッドストックの味わい。
一番上のストローはくっついているフルーツのカードみたいなのを開くと、蛇腹みたいに360度開く。
北條舞が発見し、オープニングで使った。
かろうじてあった写真がこれ。
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もっと買ってくれば良かったな(でも店には一セットしかなかった)(掘れば出てきたかも)。
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粥とよく一緒に食べる油条専用の袋もある。

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茶葉屋。このホーロー使いがいい。茶葉の差が分かりやすい。

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食堂のネオンサイン。どうも捨てるっぽかったけど、そんな時はベルリンのサインミュージアムに寄付して欲しい。
できれば私が持って帰りたかった。


今回は以上です。






# by dezagen | 2018-09-03 18:33 | プロダクト・パッケージ
上海 高田唯個展 「高田唯潜水平面設計展」レポートその2
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 ライター渡部のほうです。
 上海の「高田唯潜水平面設計展」。レポートその2は、時系列&もう少し写真中心で。でもどれがもらった写真で、どれが自分の写真だったかが分からなくなってしまい、撮影者は混在してます。前回のブログと内容のダブりもありますが、ご容赦下さい。以下、敬称略、だ・である調、です。

■展示。準備から開場まで

 「高田唯潜水平面設計展」のオープニングは8月25日。
 高田唯と北條舞のオールライトチームと、渡部千春は別便で8月23日に上海入り。コーディネーター役の盛哲は中国の実家から新幹線2時間半で23日に上海入り。もう1人の日本在住コーディネーター戴勇強は24日に上海入り。台中展示のギャラリー綠光+marüte(8月27日まで高田唯個展を開催)の運営者木村一心も台湾から駆けつけてくれ、22日に上海入り。
 海外での展示は、展示者が1人でぽーんと行って後はお任せ、というわけにもいかず、皆ほとんど手弁当なのだが「何か少しでも手伝う事ができれば」と集まった助っ人達。高田唯は本人がお願いする事がなくとも、助ける人を集めてしまう持って生まれた才能を持っている、ような気がする。

 企画者の Neue Design Exhibition Project は上海在住のグループ。メインのメンバーは、
秦哲祺 (チン・ジャチ、プロジェクトリーダー、 キュレーター/Liang Project Gallery 共同運営者、視覚デザイナー )、
龚奇骏 (ゴン・ジジュン、キュレーター/デザイン事務所 K&C Office共同運営者、「上海活字」プロジェクト共同運営者)、
叶博驰 (イエ・ボウチ、プロダクト担当)。
 彼らと高田唯は展覧会の前、6月7月と短い間に3、4回の打ち合わせを行い、Vice 中国の映像記事の撮影も行っている。

 というような体勢で準備が始まったのだが、台風のためオールライトチームのフライトが遅れ、本格的な設営が始まったのは23日の夜から。昼間のギャラリーはこんな。

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 ゼロ状態。

 オールライトチームが到着し、早速什器レイアウトや壁に貼る紙モノにテープを貼る作業など。小さい作品が多いだけに、時間が掛かる。ひたすら地道な作業の積み重ね。
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 上海に行くまで高田唯も見れなかった、オープニングインビテーションの現物。
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 見て「良い!」と Go サイン。

 24日は早朝から深夜まで。設営と打ち合わせ。(私は自主研究のスーパーマーケットパッケージ観察で、展示準備には夕方出勤)オールライトチームと盛哲は、ぼろきれ雑巾並にぐったり。でも展示のディテール、打ち合わせの大事な所はちゃんと目がカッと開いてて、本当によく頑張ってた、オールライトチーム。
 
 巨大ポスター。これはガタイのいい兄さん達の仕事。
 後ほど聞いた所によると、到着後、急遽ポスターの1枚を変更したそう。出力は現地で行ったので、現物を見るのは到着してから。モランディ展のポスターを予定していたが、24日に確認した時、思ったような色が出ておらず、別のもので出力し直し。25日のオープニングにギリギリ間に合った、とのこと。
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 壁に貼るもの、レイアウトをおおよそ決めて、貼る。
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 台中の木村一心が一生懸命貼っている。壁や床のがたつきなども計算に入れなくてはいけないため、最初にざっくり水平器でアタリを着け、その後は目で水平感を整えていく。
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 こういう微調整は、さすが建築士、ギャラリー運営とで慣れている木村一心の技量発揮。

 意外なところで困ったスポーツ新聞のトリミング。
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 アクリルケースの蓋を置く時、保護シートを剥がす時に静電気が発生して、小さい紙が動いたりアクリルにくっついたり。保護シートを慎重に剥がし、さらにその後、少しずつアクリルケースを上げて、ズレたものを直す。

 さて、25日、できあがり風景。
 ギャラリー外観。
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 ギャラリーはコの字型。時系列に作品がずらりと並ぶ。
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 入ってすぐの右側スペースには巨大ポスターが6枚。素材はターポリンだったような。
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 中間のスペース。書籍は手に取って読んでもらえるよう、吊した状態。
「潜水というキーワードから、会場を海に見立て、本をカモメのように飛ばした」と、高田唯の説明。
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 奥の窪みスペースにトリミングを集中。新聞のトリミングも落ち着いていた。
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 壁平面の最後の作品は今回のメインビジュアル。バイクの泥よけ(フェンダーフラップというらしい)をモチーフにしたフライヤーなど。
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 さらに奥の部屋は暗室になっており、Allright Music東郷清丸のヴィデオと、今回の展示のために Vice 中国が作った映像が流れる。
映像はこちらで見ることが出来る。 http://thecreatorsproject.vice.cn/read/Yui-Takada-at-Tokyo-and-Shanghai 

 オープニングは4時から、のはずだったが、その前から人がどんどん入り始め、ギュウギュウに。造形大の中国人留学生卒業生も来てくれた。
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 オープニングの挨拶時。
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学術アドバイザー张磊(同済大学設計創意学院 副教授 http://tjdi.tongji.edu.cn/TeacherDetail.do?id=4656&lang=の素晴らしい紹介文&開場宣言。
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 一般公開の26日。高田唯はサイン攻め。
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 夜は別会場、衡山和集 THE MIX-PLACEという書店兼カフェでトークイベント。登壇者は高田唯に加え、渡部千春、张磊、Nod Young(グラフィックデザイナー https://www.nodyoung.com)。私が入って何をやってたわけでもないんだけども…。
 こちらも定員50人で立ち見の状況。満員(すぎ)御礼。

 トークイベントの会場写真はうまく撮れず。下は张磊、Nod Young。
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 27日。ギャラリーで取材を受ける高田唯。通訳は戴勇強(ペン2本使い。達人だ)。
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 オールライトチームは27日の午後までギャラリー在廊、その後帰国。木村一心は27日の台中展示最終日のため、26日の昼に一足早く台湾へ。私はトークイベントの後、深夜便で日本に帰国。盛哲と戴勇強は中国の実家へ。
 近隣の東アジア各地から人がそれぞれバラバラと集まって、プロジェクトの中の自分の出来る事をやって、また各自帰っていく、というスタイルはなかなか良いと思う。

■展覧会カタログ

 今回の上海展示では、展覧会カタログが作られた。G8の「遊泳グラフィック」でもカタログが作られなかったが、さすがスピードのある上海だと感心。

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(写真、Neue Design Exhibition Project提供)
デザイン:ALL RIGHT GRAPHICS+盛哲、印刷:上海艾登印刷
A4変形 64ページ

 展示作品の一部が赤い表紙の中に綴じられ、外側の黄色いページは寄稿文。Neue Design Exhibition Project(秦哲祺、龚奇骏)、 張磊、沈浩鹏(デザイナー、アーティスト)、谭沛然(グラフィックデザイナー、インタラクティブデザイナー、字体愛好者)、NodYoung、邵年(グラフィックデザイナー)がそれぞれ、デザイナーからの視点、学術的な分析などを書いている。(以下、抜粋文は意訳。翻訳協力:戴勇強)

 例えば Nod Young は
「高田唯の作品からはある種少年のような単純さや衝動が感じられる。だから僕は彼のことを「小唯(唯ちゃん)」と呼ぶ。主催者が送ってくれた資料の中に高田唯のスナップ写真があった。(北京ダックで有名な)全聚德レストランでココナツジュースを飲んでいて、財布はテーブルに置きっぱなし。なんだか長年の友達のような気にさせる。だから僕は彼のことを「小唯」と呼ぶ」

「彼に対して「アンチデザイン」「デザイン界のダメな子」などのコメントも聞こえてくるが、これは正しい判断とは言えないだろう。彼はデザインの境界線を突破し、さらにパワフルなものにさせている。ただし彼自身のきっちりとしたデザイン能力がなければ、ここまで作る事は無理だろう。/印刷工芸(例:活版印刷)にしても、80年生まれの若者らしい今の時代の考え方で探求し、この知識経験をベースにデザインを作る。彼の作品に若い人々はすっと入っていける。それゆえ他から飛び抜けたものとなっているのだ」沈浩鹏

「今日のグラフィックデザインにおいて高田のアグリーは重要である。新世代の人々は新しい視覚言語を求めている。高田の作品はグラフィックデザインがルール化し束縛してしまった美醜の境界、その幅を広げている」邵年

「「逸脱者」これが高田唯の作品を見た最初の印象である。/高田の作品は見る、討論する価値がある。重要な事は「今見る」「今話す」事だ。多くの人は高田唯の作品を前に言葉を失い、文字にも書き表せない。過去の評価基準から判断するのは意味がないからだ」Design Exhibition Project チーム

 分かりやすいところを抜粋したが、寄稿文はそれぞれかなり長くおおよそ日本語で1600字から長いものでは6000字ほどの訳文になっていた。
 彼の作風が一部で「ニューアグリー/新醜/New Ugly」と呼ばれているため、アグリーなのか、それとも新しい言語か、という問題を解くのに、現代思想や、特にポストモダンを例に取った歴史的解釈など、様々な観点から論じられている。
 
 高田唯自身「ニューアグリーって何!?」と言っているくらいだし、私自身も高田唯の作品が醜いとは思わない。誰が最初に高田唯を「ニューアグリー」と呼び始めたのか調べてみたが、はっきりせず、どうもネット上のコメントから出てきたようだ。ちなみに、他にニューアグリーに分類されるのは、服部一成、澁谷克彦、北川一成などが挙がっていたのを目にした。
 観点としては同意しないものの、こうした見方が出て来るのは興味深い。こうした新しい視点に出会えるのも、日本という小さな国から離れた、距離感のお陰かもしれない。

 最後に、今回のスタッフ写真を。
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左から盛哲、北條舞、秦哲祺、高田唯、雅巢画廊/Yard Gallery運営者(すいません、名前分からず)、龚奇骏、叶博驰

■展覧会概要
「高田唯潜水平面設計展」
場所:雅巢画廊(Yard Gallery) 上海 普陀 莫干山路 M50芸術区 4-B
期間:2018年8月25日〜9月9日 11:00〜18:00 (月曜休み)
企画運営:Neue Design Exhibition Project
学術アドバイザー:張磊
協力 雅巢画廊、上海艾登印刷、竹尾(上海)、VICE 中国、国際交流基金 北京日本文化センター


# by dezagen | 2018-09-02 10:15 | 展覧会
上海 高田唯個展 「高田唯潜水平面設計展」レポートその1
 ライター渡部のほうです。
 また、高田唯ネタです。
 夏休みが始まると同時に台湾台中の展示運営、下旬に上海での展示の追っかけ、と今年の夏休みの自由研究は「高田唯」なんだな、と思っているこの夏の終わり。

上海「高田唯潜水平面設計展」展示外観。
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 上海での展示は私の企画ではなく、外部の者として見に行って来たため、まだ全体把握できてないところが多いので、まずは自分のメモから概要を。
 後でもう少し資料を読み込み、写真を足した続編を書く予定。

 今回上海の高田唯個展、「高田唯潜水平面設計展」。昨年 G8での髙田唯展「遊泳グラフィック」に対応し、遊泳からさらに深く潜った、潜水へと名付けられたタイトルだ。
 オープニングイベントの8月25日(土)から始まり、一般への開場は26日(日)から。9月9日(日)まで開催。

 場所は旧紡績工場を改装し多くのギャラリーやアート関係のショップなどが集まるエリア、M50創意園の中の雅巢画廊(英名 Yard Gallery)。最寄りの地下鉄駅からは10分ほど歩く、割に便の悪いところなのだが、観光スポットになっているらしく平日も人が絶えず、土日は老若男女様々な人が訪れていた。

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(広大すぎて、全体が分かるような写真は撮れず…)

内観一部
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 この写真はオープニングイベントが始まる前に撮ったもの。残りは後でいいや、と思っていたら、一気に激混み。オープニングイベントも、次の日の一般開場日も人が尽きず。写真が撮れない…。
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 作品は過去10年の仕事を入口から時系列に並べ、奥が一番最新の作品、となっている。
 展示に合わせて作られた新作、今回の展示ポスターとチラシは現地のバイクの泥よけを参考に作られたもの。
 
 現地ではバイク屋が泥よけを無償で上げるらしく、それが広告になっている。
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 恐らくバイク屋が自力で、word(?)などを使いながら作ったと思われる、ベタ感。高田唯はこの素人デザインの威力に多いに魅せられた。

それを元にメインビジュアルを作成。先の会場外観などに使われている。こちらはバイクに着けたもの。
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 オープニングのインビテーション。濃い赤地に金と黒の箔押し。箔押しの押し感も相まってものすごい力強いインビテーションに。
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 展示について、中国語が分かる方は企画者のサイトのこちらをご参照。

 前回のブログで https://blog.excite.co.jp/dezagen/28569141 今後の海外での活動に対して、高田唯は
「依頼してくれた相手の国だったり、気持ちだったり場所だったり環境だったり、そういうところから何かを見つけたい」
と言っている。
 
 現地のものからインスピレーションを受けて作られたポスターやインビテーションのデザインは、それが目に見える形で表れたものだが、この形に至るまでの過程、主催者の人柄や環境を見てみると、なるほどと感じるところが大きい。

 この展示を企画したのは、秦哲祺さん、龚奇骏さんを中心とする Neue Design Exhibition Project 。秦さん、龚さん共まだ20代半ばという若さだ。秦さんはすでに Liang Project Co Space というギャラリーを運営しているが、国内のファインアートが中心だ。
 彼ら自身も新しい試みとあって、印刷会社や上海の竹尾、VICE 中国 http://www.vice.cn、北京日本文化センターなどの協力を仰いだ。
 発案をしたのが5月頃だったというから、それから3ヶ月弱。その間に高田唯を説得し、各企業や機関の協力を取り付け、展覧会を開いた、というものすごいスピードである。

 ざっくりだが、台湾台中と比較すると、上海は全体的にスピードが速く、いきなり感があっても受容する素養がある。力強いものが街中に溢れ、日本や台湾と比べるとかなりマッチョな印象を受ける。さらに企画者が若い人達とあって、これは本人達から直接聞いたわけではないが、かなりエッジの利いたものを求めている印象を受けた。
 こうした環境の中では、バイクの泥よけというモチーフは、スピード感がありやや乱暴な運転具合も上海という街を象徴する1つであり、とはいえ彼らの生活の中に密接しすぎて見過ごされているものをうまく発見したように思う。
 
 今回、グラフィックデザイナー/アートディレクターの高田唯を選んだのは、
「その作風だけではなく、デザイン、アート、音楽、教育者、と様々なフィールドを自由に行き来するその生き方そのものがアーティストだと思った」
と、秦さんは言う。
「上海では、大御所デザイナーが美術館でやることはあっても、中堅や新しいデザイナーの展覧会を行う場所は少ない。だからこそ自分たちでやるべきだと思ったし、やっぱり上海の人も生で高田唯さんの作品を見たり、アーティストとしての高田唯さんに会いたい。オープニングにアート界やデザイン界、他様々な業種の人々が来て、トーク/レクチャーが満席だったのも、やはり本人を見たい、という表れ」

 秦さんとの話や、トーク/レクチャーイベントでの話で、現地の人から時々出てきた言葉「中国はデザインが遅れている」という認識が気になった。
 確かに第二次大戦後、東西が分断してから本格的な市場開放まで、つまり40年代後半から1992年までは、西洋を軸とする文化圏では、後期モダニズム、およびポストモダニズム、デジタルへの移行期、と大きなデザインの流れがあり、現代のデザインはそれをベースにしている。
 だが、その間社会主義的リアリズムであったり、独自のデザイン文化があり、またさらに遡れば、1920年代〜40年代初頭までの世界的に「デザイン」という言葉と文化が認知されてきた時代には、東京よりも上海のほうが先を行っていた。
 また、現代中国のスマートホンのアプリ普及もデザインされたものと考えれば、むしろ日本よりも先を行っているとも言える。

 中国はデザインが遅れているのではなく、独自のデザイン文化を持っている、という解釈のほうが正しいように感じる。もっと自信を持っても良いのではないだろうか。
 ただし、法律的には海外の情報は多く遮断されていて、日本から中国の情報を得ることも、中国から日本を含め外国の情報を得ることも、ハードルはある。例えば日本と台湾、香港などと比較すれば、交流の量が圧倒的に少ない。

 それぞれが、少ない情報を頼りに憶測を展開してしまっている状況を改善できれば、もっと面白い事ができそうな気がする。今回の展示が打開策の1つとなってくれる事を期待したい。

# by dezagen | 2018-08-29 20:30 | 展覧会
台湾 台中 高田唯展「形形色色」 その4
 ライター渡部のほうです。

 台中高田唯の展示企画中、6月頃だったか正確に覚えていないが、高田唯から衝撃的なニュースが。
「実は…、上海のギャラリーからも声が掛かってて」
 時期的に大学が休みになる8月にやる事になり、高田唯としては初旬に台中、下旬に上海、と8月に二つの海外展示を行うことになった。
 上海の展示は私の関わるところではないのだが、中国語圏での高田唯、及び日本のグラフィックデザインの受容を知りたいと思っていた私には大変なチャンスである。まあ、その分高田唯にとってはかなり忙しい夏となったわけだが、いつも動き回っている回遊魚のような人なので、忙しさは変わらないのかもしれない(ちなみに高田氏、9月は銀座の老舗画材店月光荘 http://gekkoso.com が持つギャラリー3箇所同時の個展が控えている)。

 上海での個展の特設サイトが出来ていたので、参考までに URL を。
 かなり規模の大きい展覧会になるようだ。
 
 さておき。
(以下、ギャラリー周辺のものなどの写真は後藤洋平さんの撮ってくれたものから)

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 2つ目の海外個展も控え、国外での仕事(展示も含め)がますます広がりそうな高田唯に、1つめの海外個展、つまり初めての海外個展となった台中での展示と今後の展望について聞いてみた。

— 初日とアーロン・ニエさんとのトークイベントも終えて、ひとまず初めて海外で展示を行った感想を。

高田「台湾の人は、割と作品のコンセプトを聞きたがりますね。なんでこういう形が生まれて、こういう色を使っているの、とか。
何かキャプションとか解説を付けたほうが良かったのかとも思います。でも、トークでも言いましたけど、コンセプトを説明してしまうと、そのまま解釈されてしまうのがつまらない。見てくれる人、それぞれの想像力をかき立てたいと思っているので、あえてほったらかしにするというのもアリかな、とも思うんですけれど、そこはいつも悩みどころなんです。ちゃんと伝わったかな、と不安になることもある。
トークでは伝わったと思うのですけど、聞いていない人には分からないので、作品の解説ではなくても、働き方とか、何を意識して生きているかとか、周辺の解説はしても良かったかもしれない」

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— すごく多くの人から話しかけられたり、質問されたりしてましたよね。どんな事を聞かれていたんですか?

高田「コンセプトの事とか、使ってる紙とか印刷技術とか。あと台湾の印刷技術が良くない、コントロールが効かないって言っている人もいましたね。」

— どう答えたんですか?

高田「僕自身、日本で印刷屋さんにはこういう風にして欲しい、ということを伝えてる。ただ不満を言うだけではなくて、チームとして一緒に作る、一緒に向上していくようにしたらいいんじゃない、というアドバイスをしたつもりだけど、伝わったかどうか分からない(笑)」

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— 次は上海と続いて、国外、言語や慣習が異なるところ、に続いて行くんですけど、やりたいこととか、見つけたいこと、何かありますか?

高田「とりわけ具体的にあるわけではないんですけど、依頼してくれた相手の国だったり、気持ちだったり場所だったり環境だったり、そういうところから何かを見つけたい。全部僕の仕事ってそうなんですけど、相手ありき。僕がいるようでいない。結構カメレオンみたいなタイプ。その時、その人、その場所の求めている事に答えたいというのが根っこにはあって、そこから自分がやりたかった事も引っ張り出して乗っける、みたいな感じですかね。
だから、もしヨーロッパだったらその場に行って、見て、感じて、ギャラリーの人や美術館の人と話して、そこから求めている事や、逆にその国にあまりない事、自分の一生で経験したいい事、面白い事、自分の価値観をまぜながら表現したいです」

(綠光+marüte facebookページで当日の動画が見れます)

— 会期は終わってないけど、台中の個展は展示にもトークイベントにもすごく沢山の人が来てくれて、ひとまずスタートとしては成功だったと思います。これからもっと他の国や地域に行くと、これまで蓄積してきた経験だったり、常識だったりが通用しない事もあるだろうし、思いがけない障害もあると思います。これは国外に限ったことではなくて、国内でもあると思うんですが。そんな時はどうします?

高田「何か困った事が起きたときこそ、オールライトの中で、自分たちは何が得意で何が苦手か、(態度として)何が美しくて、美しくないかを判断するために、僕たちが大事にしているのはそもそも何だっけ?というのをみんなと共有して対応するようにしています。そうすることでスキルアップしている。そこは一番大切にしていることかも。かなりポジティブにやってます。
ネガティブにはいくらでも考えられる。でもポジティブに考える事もいくらでもできる。だったら無限にポジティブに考えて行くほうが人生楽しい。そういう風に斜めから、あるいは裏側からとらえようとする考え方にさせてくれたのが「デザイン」でした。いい学問だと思います。「柔軟学」と言っても良いかもしれません。先輩達の文章や言葉、態度を参考にしながら今に至ったので、感謝しています。今の自分には大学という側面もあるので、僕も若い世代にバトンタッチできたらいいなと思っています」

— 大学でそういう高田先生の考え方って伝わってきている?

高田「僕は言葉で伝えるのは苦手なので(もちろん言葉にはしますが)、背中を見せるのが一番伝わるかなと。仕事を楽しんでやっている姿や、個展をやっている事を見せるのが一番早いと思う。展示やイベントに学生も手伝ってもらったり、巻き込んだりとかもしながらやっています。
学生も含めて周りを信用しているし、安心して楽しんでいる。いい味方を付けていくのがオールライトの得意なところなんだと思う。計画性があってやってるわけではないけど、やりたい事を周りに言う事で、意外にそれが計画的に進んでいるのかも」

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— 今後、仕事をしてみたい所、具体的な場所や分野などはありますか?

高田「誰もが知っているようなビッグクライアントの仕事もしてみたいです。仕事の振り幅を作りたい、考え方を広げたいから。
アーロンさんのような仕事の仕方が理想のスタイルなのかもしれない。台湾の蔡総統の選挙キャンペーンを手がけたり、セブンイレブンの商品を手がけたりしながらも、CDのジャケットも小さい出版社のブックデザインもパッケージデザインも丁寧にやっている。
意外にこういう人って日本では実はあんまりいない。何らかの専門になっていく傾向がある。周りもデザイナーもこれが得意だから、他はもう踏みこまないようにしていこうというような、カテゴライズする国民性があるんで、そこもぐちゃぐちゃにしたい。
まだオールライトの仕事はこじんまりしているんで、そういう意味でもメジャーなところでも普段やっている丁寧さを見せたいし、ビッグクライアントに持って行ったらどうなるのか自分でも見てみたい。世界にビッグクライアントはいっぱいいる。これも海外に出していきたいと思っている理由なのかもしれないです」

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 イベントなどで話を聞いたりした事はあったけれど、ライターとしてデザイナー/アートディレクターの高田唯をきちんと取材する機会がなかったため、今回話を聞いたことは新鮮だった。
 大学では同じ教科を教えていたり、学内で作っている冊子を共同で担当(渡部が文章担当、高田唯がデザイン)したり、と、打ち合わせはもちろんするものの、基本的には分担をしっかりと分けていて、お互いの仕事にあまり口を出さない。むしろ、完全にお任せ状態である。
 なぜかと言えば、高田唯が出してくるデザインに驚きたいから。
 高田唯(オールライト、というべきか)の仕事はほとんどルーチンワークではなく、これまでにないもの、をどかんと出してくる。時に斬新すぎて私のような中高年では理解の範疇を超えることはある(笑)。どこからアイデアソースがやってきたのか分からない得体の知れなさ、それでいて、どうしても目が行ってしまう魅力がある。
 本人は計画性がない、と言っているが、あえてしっかりとした枠を設けない事で、その時に出て来る瞬発力という力が表現として出て来るのではないだろうか。状況を、歴史を、常識を理解した上で、出してくる突破力は他に類を見ない。
 瞬発力、突破力が効果的に出てくるのも、これまでの蓄積はもちろん、オールライトの社員を始め周りの理解や協力がある事も大きいとも感じた。周囲環境に合わせ力を溜めて出す方法は高田唯の言う「柔軟学」という言葉に集約されるのかもしれない。
 
 今のオールライトの活動を見ると、ビッグクライアントの仕事が来るのも時間の問題のような気がする(とはいえ、どんなクライアントだろう)。さて、次の上海ではどんな展開が待っているのだろう。

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トーク終了後、左から通訳の楊曇硯、渡部千春、アーロン・ニエ、(ポスターを挟んで)高田唯、オールライト代表取締役北條舞、綠光+marüte 運営者木村一心)

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8月5日に手伝ってくれたスタッフの皆さん。東京造形大学のオープンキャンパスのTシャツを着てもらいました。




# by dezagen | 2018-08-16 13:48 | 展覧会