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祝 明和電機30周年ライブコンサート
 2月24日(土)明和電機 https://www.maywadenki.com の30周年記念ライブコンサートが行われるというので、伺ってきました。

 演奏(製品実演)には経理のヲノさんことヲノサトルさん、スズキユウリさん、そして最後には歴代工員(スタッフ)さんも参加しての豪華な会。明和電機は基本的に土佐信道社長を中心とするアートユニットであって、音(楽)を伴う作品/製品を作って世にリリースしているわけですが、製品のデモンストレーションをするライブパフォーマンスはそれに加えてショウとしてのエンターテイメント性がある。
 ライブパフォーマンスでは電気製品+コンピュータの工学的な側面がありつつ、(私が見る限り毎回)(そして今回も)電気が落ちる、コンピュータがフリーズするなどのハプニングがあり、機器類が思うように動かないという事態を土佐社長がトークや即興芸(?)でひとつのショウとしてまとめあげてしまう。今回は動かなくなった楽器を工員の手で叩くというハプニングすらあり、人間がやることを機械がやる本来の明和電機の楽器の面白さから、それを人間が擬似的に行うという逆転の面白さもあった。
 こんなアクロバティック事ができるアーティストを明和電機の他に私は知らない。

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 それにしても30年とは……、息の長い活動だ。

 明和電機の形態デザイン的な側面を見ていけば、高度成長期の電気工具の無骨さと職人芸的な仕上げの美しさから、突如レース編みのような繊細さ、女性や胎児をテーマにした肉体的なフォルム、はたまた単純幾何学線からなるキャラクターなど様々にスタイルを変えている。
 初期からしてシャープな器具に中村至男さんの緻密なグラフィックデザインで統一されているのかと思いきや、しりあがり寿の描いたカッパの絵も欠かさずあった。ヤンキー時代もあれば、オタマトーンが他のキャラクターとコラボしたりと実に多様な要素を持っている。

 それでも見ればすぐに「明和電機」と分かるのは、ロゴとコーポレートカラーの力が強い。加えて土佐社長のユニフォーム姿、だろうか。あるいはどんなことがあっても許容する周囲の温かさなのだろうか。
 最近は三協アルミとコラボレーションをし、アルミサッシの端材で楽器を作成、企業CMにも出ていると聞き、見てみると三協アルミの広告というより明和電機の広告のよう。
 台湾版では台湾華語(中国語普通語)で歌っているのでさらにびっくりしました。

 明和電機さん、これからも末永く活動をお続けください。

(執筆 渡部千春)


# by dezagen | 2024-02-28 18:09 | イベント
Audo オープンに行ってきました
 六本木アクシスビルの3階に新しい北欧の家具、インテリアブランドのショールームがオープンしますよー、というので行ってきました。
Audo Copenhagen(オドー・コペンハーゲン)

 
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 Audoは2023年に出来た新しいブランドだが、その元々は1979年創立のMenuと2008年創業のby Lassenが合併したもの。
 地元デンマーク、コペンハーゲンにはショールーム、セレクトショップ、レストラン、ホテルが集まった「Audo House」もあるとのこと。家具、インテリアのブランドの総合的な施設は面白そう。北欧の本を書いておきながら、色々情報キャッチしきれてないので、コペンハーゲンに行ったら見に行きたい場所。

 面白いと思ったのは、マーケティング担当のMiaさんとインテリアデザインについて喋っていた時にふと彼女が言った言葉。
「デンマーク人はいつもデザインしてます。生活の中で、毎日毎日、一生デザインしてるんですよね」

 Miaさんの言う「デザイン」は、例えば家具のデザインをするように「物」にすることではなく、空間の中に家具やインテリアアクセサリーがあったらどうアレンジするか、家をどうDIYするか、そしてどう暮らすか。
 こういう考え方はいいなあ。
 
(執筆:渡部千春)


# by dezagen | 2024-02-20 15:16 | インテリア
藤森泰司 ELMAR その2
 その1からの続き。

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 全体を見てみるとやさしい印象でぱっと見ダイニングを思わせる。簡単に言えばオフィステーブル/オフィスチェアっぽくない。
 私の考えるオフィスチェアというと、ハーマンミラーのアーロンチェアに代表されるような人間工学に基づいた形の樹脂素材で、キャスターが付いているもの。
 プライウッド、特にナチュラルカラーの椅子になると、イームズプライウッドダイニングチェア、アルネ・ヤコブセンのセブンチェアのシリーズ、坂倉準三デザインの天童木工の椅子など、家庭やカフェといったイメージがある。

「ダイニングチェアやラウンジチェアには見た目の軽さがある。オフィスチェアは座りやすく、長時間座っていても疲れないメリットがある。ELMARはそういったチェアの中間にあるものですね」と、今回藤森泰司アトリエと共同で設計を手掛けた内田洋行のデザイナー山田聖士さんは言う。
 中間が求められるようになっている背景には、働き方、オフィスの在り方の変化がある。

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「コワーキングスペースもかなり昔から作られていましたが、ただオフィス空間を分割してシェアというより、カフェやバーを併設したり、コンシェルジュがいて事務的な面のサポートサービスがある場所が主流になっています。図書館などの公共の場所で仕事をする、勉強するという人も多い。こうした場所にはオフィスとは異なる要素、居心地の良さが求められるようになっています。
大手企業のワーキングスペースも、一般的にダイニングチェア、ラウンジチェアとして売られている椅子を取り入れたり、簡易的なカフェを併設したり変化してきたわけです」

 ダイニングのシーンを思わせる木素材の椅子とテーブルの写真を見て、藤森さんが内田洋行と新しいオフィスチェアを作りたいと言っていた事を思い出した。それもすごく前、2006年頃の話である。
 当時内田洋行のデザイナーでありスギのプロジェクトなども進めていた若杉浩一さん(現武蔵野美術大学教授)と共に、色んな試行錯誤をしていた。

 ELMARの前にもいくつかオフィス家具を藤森泰司アトリエと内田洋行で製作している。

2009年 RUTA 
2009年/2016年 LEMNA 
など。

 RUTAもLEMNAも完成度が高く、藤森さんも愛情を注いで作っていた。他のブランドから出している製品や、セルフプロダクションで作ったWORK FROM HOMEのシリーズも、いつも藤森さんは全身全霊でそれぞれの目的に合わせて妥協しないデザインを作って来た。
 一方で「まだ新しい形があると思う」ともよく言っていた。
 
 ELMARは、挑戦を止めなかった藤森さんが到達した完成形、木素材を好んで使った藤森家具の真骨頂とも言える。

 カタログとウェブサイトに寄せられた藤森さんの言葉を引用すると
「ELMARは、その家具としての表情によって多様な空間に入っていくことが可能です。 オフィスとダイニングの間をフレキシブルに行き来できること。 それは、働くという行為を、より自由にすることに繋がっていくと信じています」

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 野暮にも私感を加えれば、働くという行為を自由にすることで、生活も変わっていくだろう。
 椅子は生活の色んな場に登場する。職場でがっちり集中して働いている時、会議、授業、家で仕事や勉強する時、ご飯を食べる時、喫茶の時、何かを待っている時。
 大人の椅子が大きく見える子供の時、一人で自分の時間を堪能する時、親になって小さい子供を抱えながら一緒に座る時、身体が弱くなって椅子に捕まりながら立ったり座ったりする時、ベッドの脇で本を読んであげたり、その合間にPCで仕事したりする時。
 勉強して仕事して作業して休んで、こうした状況はぶつ切れではなく一続きだったりする。その都度全部の家具が変わるわけではない。ELMARがすべてを受け入れるわけではないにせよ、続いて行く生活の中に共にある椅子に、こんな選択肢もあるよ、と見せてくれている。

 ELMARのシリーズは春の発売を予定している。

 藤森さんにはこのブログにも度々登場してもらった。以下、ポストのリンクを。
(↑執筆は宮後優子さん)

 藤森泰司さん、ありがとう。


執筆:渡部千春

# by dezagen | 2024-02-03 00:13 | プロダクト・パッケージ
藤森泰司 ELMAR その1
 昨年12月8日、家具、インテリアデザイナーの藤森泰司さんが亡くなった。
 まだ56歳になったばかりだった。大きい才能があまりにも早く逝ってしまった。

 亡くなる直前の2023年11月に発表されたのが「ELMAR」。https://office.uchida.co.jp/elmar_lp/ 藤森泰司アトリエ(デザイン)、内田洋行(企画開発・販売)、カリモク家具(製造)の3社が共同で作り上げた、オフィス用チェアとテーブル/デスクのシリーズだ。
 今回、内田洋行で実際に座らせてもらい、話を伺った。

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 ELMARの椅子は座面パッド付き、アーム付き、色もナチュラルとブラックを揃えバリエーションがあるが、特に目を引くのが一番シンプルなタイプのメッシュシートが組み込まれたもの、その座面だろう。

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 木素材の椅子の座面にメッシュを用いる事は特に新しい事ではないらしい。とはいえ、ナチュラル木のカラーとメッシュの黒のコントラストは異素材の組み合わせが強調される。

 実際に座ってみるとメッシュタイプのオフィスチェアと変わらない感触で、座面の木の部分とメッシュの部分の境目をほとんど感じない。パッドタイプはさらに柔らかく、長時間でも疲れなさそうだ。

 ぱっと見固そうな印象があるにも関わらず、座った時に椅子全体がすっと身体を受け止めるのには驚く。

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 背もたれの部分と座面から伸びる部分を繋ぐのは1個の樹脂製ジョイントパーツ。横から見るとUの字型になったパーツで、樹脂自体が柔らかいのではなく、Uの字のバネの仕組みが背面の傾きを柔らかにする。加えてプライウッドそのもののしなやかさ。この構造だけで身体の重さや動きに合わせてくれるのだ。

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 アームの部分はなにげないところだが、天然木のさらっとした感触が手になじむ。太めのスチールパイプでがっちりアームを支えてくれているのは頼もしい。
 オフィスチェアとはあまり関係ないが、私自身老化しているので、座る時、立ち上がる時にしっかりしたアームがあると楽だ。形状は藤森さんデザインのKino Stoolのアームも思わせる。しっかり掴める感じは藤森さんのユーザーへの思いやりではなかろうか。

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 テーブルのデザインは、天板より脚が少しはみ出た形になっていて、テーブルを組み合わせると隙間ができる仕組み。その隙間にコンセントユニットやパーテションを差し込む事ができる。

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 天然木素材の点はカリモク家具の技術の高さが光るところだ。天板はよく見ると三層になっているが、これは主に国産のナラ材を活用する工夫から来ている。
 ナラ材は真っ直ぐ育ちにくいため、木材として加工する際に端材が多く出る。色ムラや節目などは利用価値が低いものとなる。ELMARのテーブルではこうした部分を細かくカットし集成材としたものを使用。中にはやや色目の悪いものや節目のあるものを用い、無駄をできるだけなくした。

その2に続く

# by dezagen | 2024-02-03 00:10 | プロダクト・パッケージ
Nedre Foss その2
彫刻的、と言っても趣向は様々だ。
Anderssen & Vollがデザインした鉄製のキャンドルホルダーIldhane、木製のトレーMåneやPlatåなどは量産品のかちっとした表情の中に、複雑な曲線が見える。
イタリア人デザイナー、Paolo Lucidi と Luca Pevereの陶製トレイKorgはつるりとした平面と平面の組み合わせで60年代から70年代のプラスチック量産品も思わせる。
かと思えば、小さなとんがり帽子のようなStudio Tolvanenのデザインしたキャンドル消しSammu、水の流れを瞬間で止めたような倉本仁のジャグVannfallなど、手工芸的な趣きが見える物も。

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Nedre FossはデザインチームAnderssen & Vollの主催するブランドだが、自分達がデザインしたもの以外、Anderssen & Vollはプロデューサーに徹し、造形は依頼するデザイナーに任せている。

Vannfallの製作に関して、倉本仁はデザインに3カ月、製造に9カ月くらいで、ものすごく早かった、と振り返る。驚いたことには、この依頼が来るまで倉本とAnderssen & Vollは面識がなかったそうだ。それでもプロジェクトがうまくいったのは、彼らのディレクションが明確だったからだと言う。

「ブリーフィングで強調されたのは、単一素材であることと、彫刻的な美しさ、パワー、と、これだけだったんです。
図面を書いたりモデルを作っていて、もう図面を書くのをやめて手作業で作ったモデルの、この風合いや揺れを形にすることが、彼らの言う「彫刻的」の応えなのではないかと思いました」

素材の指定もなかった。倉本はそのアイデアから「ゴールはガラスしかないと思った」という。インジェクションガラスに決まると、すぐに製造場所を見付け、サンプル制作、調整、と進んでいった。

この作品は代表作の1つになってきていると言う。昨年9月から11月、松屋銀座のデザインギャラリー1953で行われた個展「倉本仁 素材と心中」にもVannfallを展示している。

キャンドル消しSammuをデザインしたStudio Tolvanenにもフィンランド・ヘルシンキで話をきいた。

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(日本には馴染みがあまりないキャンドル消し。キャンドルの上に被せて火を消す。Sammuはフィンランド語で「shut down 停止、休業」の意)

Studio TolvanenとAnderssen & Voll、別々に話を聞いたのだが、Sammuに対してどちらも
「小さいプロダクトだけれど、とても大切な物」
と言っていた。そっと手で包み眺めている様は小さな宝物といった風だ。

Nedre Fossの生産拠点はほとんどがノルウェー国外。
「ノルウェーで作るのは難しい。1970年代に産業が寂れてしまい、ガラスでも鉄の鋳造でも作れる場所がない。高い技術もあったのに残念だ。国内で作れたのは Tolvanenに作ってもらった真鍮製のSammuだけ」とAnderssen & Vollはいう。
この点でもSammuはNedre Fossの中でも特に重要なプロダクトなのだ。

Sammuに限らずStudio Tolvanenが、デザインや制作において大事にしていることを聞くと
「フィジカルであること。アーティスティックになりすぎないこと、でも何かしら新しい物、遊び心はいつも持っていたい。あとはフィーリングですね」
と、答えが帰って来た。

その場では「そうですね!」と思いっきりうなずいて帰って来たのだが、帰路「はてフィーリングとは文字にする時、どう書けばいいのやら」と、ああでもないこうでもないと考えてしまった。そして4カ月。。。

前のポストで、Nedre Fossから大きくショックを受けた、と書いたが、そのショックの理由はいくつかある。
物が溢れる世の中で、デザイナーはどんな物を作っていけばいいのか、そのひとつの答になっていること。単一素材で作ることでリサイクルしやすい環境配慮型であること。長持ちする物であること。彫刻的な強さ=造型的な美しさに改めて向かい会うこと。

この流れで「フィーリング」という言葉を当てはめてみると、なんとなくだが消費者やユーザーとNedre Fossの関係性が見えてくるような気がする。
出会った時に、ふっと心を掴む、それも人それぞれではあるがやはり「フィーリング」で表されることなのではないだろうか。

オンライン消費が増え、実物を見て決める機会も減った。デザイナーやメーカーの創意工夫点もウェブサイトのスペックで見ている。それはそれで便利なのだけれど、物を見た時の嬉しさや直感的に欲しいと思うような感覚がなく、購入した物と自分の関係性は至ってドライである。
Nedre Fossは気持ちに響くプロダクトブランドだ。現在、Nedre Fossをまとめて見れる日本のショップがないのは残念。どこかでまとめて見れると良いのに、と思う。

これからのものづくり、これからの消費、これからの人々の生活を考えるきっかけを作るためにも、Nedre Fossをより多くの人に、直に見て、知ってもらいたい。

# by dezagen | 2024-01-30 11:36 | プロダクト・パッケージ
  
『これ、誰がデザインしたの? 続(2)』
渡部千春著、デザインの現場編集部編
美術出版社刊
04年以降の連載記事をまとめた2冊目の書籍。連載で紹介したアイテムのほか、名作ロゴやパッケージ、デザインケータイなどを紹介。
 
これ、誰が書いているの?
 
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