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2006年 12月 19日
林雄司インタビュー(2)、『やぎの目ゴールデンベスト』の乾いたプラスチック感
コラム集『やぎの目ゴールデンベスト』についての著者インタビュー第二弾(第一回はこちら)。今回は装丁に秘められた深いメッセージについて迫ります。
【お話を伺ったのは】 林雄司:はやしゆうじ 1971年生まれ。会社員のかたわら1996年から個人サイト「webやぎの目」を運営。圧倒的な読者数を誇り、サイト内から書籍化された本は『死ぬかと思った』シリーズ、など多数。現在勤務しているニフティ株式会社では今年のWeb of the Yearでエンターテインメント賞の3位に入賞した人気サイト「デイリーポータルZ」のウェブマスターを務めている。 【取り上げた本】 『やぎの目ゴールデンベスト』林雄司/アスキー 1,300円 (税込) 掲載期間8年間、約5000本という膨大な「やぎポエム」の中から、特に面白いものを抜き出したコラム集。200字程度の短くひきしまった文章は、エッセイでもコラムでもない独特のジャンルを拓いている。 読者が多いのに「閉じている」サイト ――特にこの本に収録されているコラムには双方向性を求めてる感じはあんまりないですね。自己完結していて、閉じている感じ。 林:僕のブログやホームページにはコメント欄がないんですが、あってもコメントしようがないですよね(笑)。――やぎポエムって、個人的には大ファンなんですが、本にするのは難しいんじゃないかと思っていました。でもいざ本にまとめられてみると、林さんの閉じた感じも含めて、サイトの世界観がすごく再現されているなぁと。 杉原:献本した同業者にも同じようなことを言われました。「やぎポエムは本にするのは難しいと思っていたけど」、と。 ――あれだけ人気サイトで、みんな注目はしているんだけれど、まとめ方がわからな感じでしたよね。どれを選ぶかは二人で議論したんでしょうか? 林:僕は何らかの反響が来たのをつい選んじゃうんですよね。「これ面白い」ってメール来たなとかを覚えてて、それについ印付けちゃったり。杉原さんとはあんまり意見合わなかったですよね。 杉原:林さんはそう言うけどそんなことないですよ。 林:でも僕、自分で押したのはあんまりないですよね。 杉原:そうですね。私が「これはちょっと」ってしつこく言うと、「じゃあ、いいです」っていう感じだったかもしれない。 林:人に面白いって言われたのをつい選んじゃいがちなんで、面白いと言われると、ああ、じゃあ、それでって。 カバーに込められた深く難解な思い ――この本、途中で気づいたんですが、一行コラムみたいなのがページ左側にあるんですよね(笑)。 ![]() [編注]左ページのノンブルの下は絶対に見逃せない 林:そうそう、--- の前にいつも書いていたどうでもいい一行から面白いものだけを選んでもらったんです。 杉原:とりあえず本としては、1行目に本文と関係がない情報があるのはおかしいので、最初に全部取ったんです。でもたまに猛烈に面白いのがあって、捨てるのがもったいないと、リサイクル精神で(笑)。 ――うかつなんですが、30ページぐらい気づきませんでした。 杉原:結構そういう人多いみたいです。読み終わったと思ったらここにあるのに気が付いて、またもう一度はじめからめくりなおすという。まぁ、わりとそう読んでほしい感じもありますけど。 ――しかし、駄じゃれが多いですよね(笑)。 林:ぼく、好きなんですよ、駄洒落。 ――あと、カバーが実はよく見ると一部だけUV加工してあって……って、あまりにも細かいところに絡みすぎでしょうか(笑)。 ![]() [編注]一部ぴかぴかしているのがおわかりだろうか? 杉原:あ、これは林さんが……。 林:理屈っぽいことを言い出して。 杉原:ちょっとした仕掛けを読者のためにやりたいっていうところから始まったんですよね。 林:本屋では変わった本には見えなかったのに、家に持って帰ってよく見たら変だって思う、ちょっとしたプレゼントがあるといいかなと。でもそれを強く出すとサブカル本になっちゃうから、「うふふ」っていうあたりを目指して(笑)。 杉原:なんか中身がプラスチックな感じだよね、という話で……。 ――プラスチックな感じ……というと? 林:自分のことはあんまり書いてないし、文章も乾いてるから、質感的にはプラスチックみたいな感じだけど、その下にはざらっとした気持ち悪い部分も見えているという……。 ――そんな林さんの二面性がこの装丁に! 高度なメッセージですね……。 杉原:ちょっと難しかったですよね(笑)。 林:誰も分からないって(笑)。 「Webやぎの目」、今後の活動方針 ――月並みですけど、Webやぎの目の今後のご予定は? 林:なんか最近、いかにもやぎポエムっぽいことを書くのが恥ずかしい気がしていて……あの斜に構えて、いろんなことを他人ごとみたいに書くのもちょっと嫌だなと。 ――村上春樹さんもそうですけど、文体にしっかりしたスタイルがあると伝播力も強いですよね。ネットでは特に林さんの文章の影響は大きいんじゃないかと思います。 杉原:多分、まねをするつもりがなくてもうつっちゃうんです。私も編集作業中、ずーっと林さんの文章を読んでいたら、うつっちゃって(笑)。 林:僕までうつりましたよ。 杉原:一時期、サイトの文体が昔に戻った時期がありましたね(笑) 林:デイリーポータルも含めて、何か一つの型にはまりつつあるのはちょっとした行き止まり感ですね。 ――じゃ、変えていきたい、みたいな感じでしょうか。今後は。 林:でも、無理することもないし……。「やぎの目」の更新についてはすごく悩んだこともあったんですが、最近どうでもいい感じ(笑)。一時期はミクシィの日記をいっぱい書いたりしたけど、一部の人しか読まないところに書くくらいなら、やっぱり『やぎの目』に書こうと思いなおして。まぁ、ミクシィに書くくらいの気持ちで書けばいいやって。 ――ある意味、肩の力を抜いていくというか。 林:そうですね。まあ、投げやりに(笑)。 [2006年11月 恵比寿にて]
by books_special
| 2006-12-19 17:23
| インタビュー
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