execitemusic
本レーベルは、Excite Music Store及びモバイルコロムビア上で先行独占展開され、配信される楽曲は、国内で入手が困難な高いクオリティのアイスランド楽曲を幅広いジャンルで集めていきます。
レーベルリリースの第1弾は、ヨーロッパでは名高いアイスランドJAZZを展開、第2弾は、アイスランドPOPS、第3弾は、アイスランドクラブミュージックを展開していく予定です。
小倉悠加
(おぐらゆうか Yuka Ogura)
70年代半ば洋楽に目覚め、単身アメリカへ留学。大学時代から来日アーティストの通訳に従事し、レコード会社勤務を経てフリーに。以来、音楽業界で幅広く活動。カーペンターズの解説の殆どを書いているためカーペンターズ研究家と呼ばれることも。2004年自らアイスランドの音楽を扱うアリヨス・エンタテイメントを設立。ミュージック・ペンクラブ会員。
小倉悠加

2005年 10月 15日 ( 1 )
アイスランド音楽特集:話題満載の最終回
 『Figaro Japon』に掲載されたアイスランド音楽特集を祝ってのICELANDiaアイスランド音楽特集は今回が最終回です。え?もっと続けてほしい? リクエストを有り難う御座います。またこのような機会があれば是非やりましょう。
 
 今回カバーする3組のアーティストはウォーム・イズ・グリーン、ヒャルマル、そしてヨハン・ヨハンソンです。
 
c0003620_19423345.jpg その前に、バングギャングはお聞きになられましたか?オーディオ、ビデオの試聴はアーティストのサイトでできます。最新アルバム『サムシング・ロング』はICELANDia通販、アマゾンやHMV等の通販、または全国の大型店で御購入いただけます。

c0003620_1943587.jpg それにしても「緑の虫」というグループ名は面白い。Worm is greenなので、「虫は緑色」でしょうか。彼らの二枚目のアルバム『オートマジック』も、他のアーティスト同様、アイスランド的な透明な浮遊感があります。この種のサウンドではAmpopというグループと双璧を成し、どちらもThule(チューレ)というレーベルから同時期にリリースされています。ただアムポップはアマゾンでも取り扱いがないようで、残念。アムポップのグループは、アンビエント・ポップの略です。ウォーム・イズ・グリーンもアムポップも、どちらもエレクトロニカであり、オーガニックであり、そして時々囁くようなヴォーカルが入ったり・・・。
 アイスランドや北欧でエレクトロニカが盛んな理由は、かなり単純なことで、冬が暗くて長いため、その間に室内でやれることといえば、読書や音楽になってきます。そしてアイスランドは少し別の事情でも、エレクトロニカが流行りました。それはチューレというレーベルがあったからです。このレーベルはアイスランド初の本格的DJとなったソールが設立した会社で、数多くのアーティストとのコラボやプロデュース経験を元にチューレ・レーベルが作られました。元々チューレはスタジオで、そこにミュージシャンが集まり、「いっそのことレーベルを作っては?」という話だったようです。
 チューレの設立はアイスランドにとって非常にエポック・メイキングな出来事でした。それまでは、アイスランド国内向けアーティストしか出さなかった大手のスキファン(ごく最近、セナと改名)と、ビョークのおかげで細々と国際派のアーティストを育ててきたスメクレイッサしか存在せず、どちらにも属さないアーティストは行き場がありませんでした。そこにチューレが登場し、風穴があき、急激にエレクトロニカが盛んになっていきます。その周辺で登場して有名になったのが、何を隠そうシガーロスやムームです。チューレのスタジオは、ビョークも使っているし、カラシの最後のアルバムの録音もチューレでした。
 このチューレが一番華々しくなったのが2000年過ぎ頃で、その時代に出てきたのが、このウォーム・イズ・グリーンであり、アムポップであり、その他にはトラバント(シガーロス10歳のバースデイで演奏したグループ)、カナダ、エクソス、フューネラルズ、下記に出てくるヨハンのアパラット・オルガン・カルテットもチ同時期でした。ムームのデビューもですね。チューレからは数々のコンピレーションも放たれ、エレクトロニカを集結させたものなど内容はよかったのですが、販売網が限られていたこともあり、結局は経営に行き詰まってしまいました。現在はスタジオだけのオペレーションです。
 チューレの活動に刺激を受けて、アイスランド最大の出版社エッダが音楽部門を作り、ロック系の新進アーティストやジャズを取り扱い始めたこともありました。書籍の出版と音楽出版では分野も違い、やはり販売経路がなく、将来が期待できるアーティストがいたにも関わらず、このオペレーションも2年弱で閉鎖。
 チューレもエッダも結局は国際的にその名を馳せるまでに至らず、本当に残念なことをしました。現在のアイスランド音楽の頼みの綱は、相変わらずスメクレイッサと(これも最近どこかに吸収されたような?)、個性的な音楽ショップとして知られていた12トナーが2年前に立ち上げた独自レーベルだけでしょうか。閉鎖されたエッダの音楽部門担当は現在12トナーで働いています。また、チューレもエッダもその後原盤権の難問を抱え、まだ全ては解決していないようです。
 そんな中で生き残ったのがウォーム・イズ・グリーンであり、イギリスへ移ったアムポップ。そしてトラバントは独自に生き残り、アパラットも健在です。

 このような裏話をするのは、アイスランドの音楽は英米のレーベルとは全く違う機構の中から生まれてきたものなのだ、というのを少し知っていただきたいからです。文化交流や文化支援というと、発展途上国やフランスやイタリアといった歴史的伝統のある国々ばかりに目が行きますが、そんな中で意外にも一番苦しい思いをしているのは、先進国でありながら、人口が少なく、伝統も浅く、孤島という地理的条件から交流がとりにくいアイスランドなのです。アイスランド政府はそういった事情を踏まえて芸術活動に関して、条件の良いサポートをしていますが、狭い国の中なのでどうしても限りがあります。海外との接触ということでは、ヨーロッパや北米であれば自分たちの力でプロモーションへ出ていくことも出来ますが、文化も言語も全く異なる日本は、とても興味があるけれど自分達ではどうしようもない場所です。
 アイスランドは良くも悪くも人口30万人の孤島。同じ孤島でも人口1億2千万人とは規模が違い過ぎます。アイスランドのアーティスト達と話していると、世界からの疎外感を抱いている人物がいかに多いことか・・・・。話は随分と逸れましたが、自社アーティストでなくとも必用あればいかなるアーティストのサポートも喜んでしているICELANDiaは、彼らにとって日本との大切なパイプであり、文化ボランティアなのです。
 
c0003620_19453158.jpg ヒャルマルはICELANDiaアーティストです。首都レイキャヴィークから40-50分も車を走らせると、国際空港のあるケプラヴィク(ケフラヴィク)に到着します。ここは基本的にはアメリカ軍の街であり、国際空港も元を正せば米軍基地をいわば平和利用していたのです。アメリカ軍が駐在するようになってから、米軍放送と共にアイスランドのロック史は始まり(事情は日本と同じ)、ケプラヴィクは若者の音楽、ロックの街になっていきました。ヒャルマルもこの街で結成されました。
 ケプラヴィクからはアイスランドのビートルズと言われた名門グループが生まれ、現在でも時々ポッと、素晴らしいグループが出てきます。最近の代表格がこのヒャルマルで、世界最北のトロピカル・バンド。牧歌的なレゲエのリズムにアイスランドの伝統や、奇想天外なストーリーを織り交ぜ、2005年初頭に行われたアイスランド音楽祭で見事に新人賞を受賞。この夏、最もアイスランド国内でヒットしたのが、このヒャルマルでした。
 ヒャルマルの日本での音源の権利はICELANDiaにあり、本格的なリリースは来年を予定しています。テストケースというか、音楽ファンのみなさんがどのような感想を持たれるのかを知りたくて、限定数のみネット販売しているので、早く聴きたい!という方はどうぞご利用ください。
 ヒャルマルの代表はレーベル・オーナーでもあり、アイスランド・ロックの歴史的名盤を中心に、ボチボチと復刻している人です。アイスランド・ロックですが、かつてはこれがまぁ笑ってしまうほどイギリスのマージー・ビートだったり、アメリカのウエスト・コースト・ロックだったりします。そこにアイスランディックな響きが少々入り、音楽マニアにはかなりたまらないものがあると私は見ています。なのでICELANDiaでもぜひアイスランド・ロック名盤復刻シリーズをやりたいと考えていますが、数年先の話でしょうか。
 
 最後はヨハン・ヨハンソンです。ヨハンは私が初めてアイスランドへ行った時に会った人物のひとりで、以来、アイスランドへ行く度に会います。私の中では「アイスランドの坂本龍一」というのがキャッチで、彼の音楽をぜひ広めたいのですが、ライセンス契約は難しいとのこと。出来る範囲で個人的に応援するからね、という範囲にとどまっています。
 ヨハンは現在でこそ、新進気鋭のアンビエント・エレクトロニカや環境音楽的なものを手がけていますが、この人の音楽バックグラウンドは非常に長く、初期の頃はパンク・バンドにも在籍しました。その代表格がハムというグループ。アイスランドの歴史的パンク・バンドとして有名で、典型的なセックス・ドラッグ・ロックンロールの世界でした。ヨハンが在籍していたのは、ほんの一時期でしたが、いやはやすごいバンドに居たものです。
 ヨハンは劇場劇の音楽や展示会のインスタレーション等を手がける傍ら、ウンウン(unun)やルークといったポップス・グループに参加し、そういった活動のどの程度がアルバムとして残っているのか、私も全貌を知りませんが、例えば元シュガーキューブスのメンバーであり、バングギャングのドラム奏者として来日した人物とDIPを組んだ時は、『Hi Camp Meets Lo Fi』というアルバムを残しています。エミリアナ・トリーニ(この特集のパート1で登場したシンガー)が一曲ヴォーカルで参加していました。
 
 私がヨハンに心酔したきっかけは、『エングラボーン』でした。アルバムも素晴らしい出来ですが、そのライブには全く脱帽でした。セッティングも良すぎたかもしれません。あれは2003年10月。Airwavesのイベントのひとつとして、レイキャヴィークの丘の上にある街のシンボル的存在のハトグリムス教会(ハトグリムスキルキャ)で『エングラボーン』のライブが行われました。
 メンバーは弦楽四重奏団、キーボードとマックを駆使するヨハン、パーカッショニストのマシアス・ヘムストック(最高!)。教会という荘厳なセッティングの中で、深い雪の中にしんしんと雪が積もり続けるごとく、静かに、音の粒をポロンポロンと落としていくような、そんな感じのライブは、静寂の中に音があることをありありと感じさせるものでした。残酷なまで美しいその音は、衝撃的でもあり、また演奏の半ばから教会の中に夕日が差し込み、会場内がピンクに染まり、それは美しかったこと。このようなライヴを体験してしまうと、下界へ戻れない心境になります。『エングラボーン』のアルバムを聴くと、今でもあの雰囲気が実感としてありありと蘇ります。
 演奏の数時間後、市内の有名レストランで、ライヴの主催者、ヨハン、私の3人で食事をしたことも、今では夢のような思い出になっています。
c0003620_19444717.jpg 次に発表された『ヴィルズレグ・フォルセタル』の音楽にも、『エングラボーン』と共通する凛としたサウンドがあります。このアルバムも教会でライブを行い、その時は音楽に合わせて色とりどりの風船が落ちてくるようにしたそうです。きっとこれまたひどく印象的で素晴らしいものだったことでしょう。
 この後、映画のサウンドトラック『ディス』を出しています。こちらでは明るく、ポップで、ムーム的な楽しげなエレクトロニカも聴けます。
 彼の活動は本当に多岐にわたり、こういった合間にもコンスタントに劇場劇の音楽を作り、フランス、ドイツを中心にシンクタンクのキッチン・モーターズの一員としても展示会等を飛び回り、結局アイスランドで過ごせる時間はさほど多くなく、ヨーロッパ本土/アイスランド間の移動の便利も考えて、一年半ほど前から拠点をヨーロッパに置くようにしたようです。広く世界的に活躍するのはいいことですが、アイスランド国内では音楽演奏だけを職業にして生計を立てることが困難なため、必用に迫られて、海外に移住するアーティストも少なくありません。頭脳流出とまでは言いませんが、もう少しアーティストを暖め育て、自国の中で活躍する場があれば、家族と離ればなれになったりということも少なくなるかと思います。
 
 アパラット・オルガン・カルテットは、ヨハンのソロ・プロジェクトの音楽とは切り離して考えてください。音楽的には全く別物です。
 グループ名は、アパラット=機械、オルガン・カルテット=4人のオルガン奏者。ここにドラムスが加わり5人組です。キーボード奏者一人につき2台を操るため、キーボードは計8台になります。機械仕掛けのオルガン奏者というコンセプトなので、ステージでは絶対に笑顔を見せず無表情。デビュー・アルバムのタイトルにもなった『Stereo Rock & Roll』では、ヘンテコな振り付けまであり、ちょっと風変わりなライブを展開します。
 アパラットはクラフトワークと比較されることが多く、確かにそんな雰囲気は濃厚です。使用しているのは最新シンセではなく、廃品キーボードが中心。冗談ではなく、アイスランドの清掃局に協力者がいて、よさそうなキーボードが捨ててあるとヨハンのところに連絡が入ります。それを自宅のスタジオに運び入れ、調整を加えるのです。なにせゴミなので、出ない音も調整不可能な音もあります。でも、その出ない音は「個性」として重んじるので、そのまま使用している古いシンセが何台かあります。
 アパラットのメンバーはヨハンを中心に、それぞれみな異なる職業についています。ツアーをするといってもメンバーのスケジュール調整が大変で、レコーディングも同じこと。彼らのファースト・アルバムを気に入った超大物ロック・プロデューサーから、自分の指揮下でこのアルバムを作り直し、大々的に売り出したいという提案がありましたが、結局これも、メンバーが何ヶ月もアイスランドを離れてレコーディングに専念することは出来ないため、流れてしまったようです。セカンド・アルバムは制作中ですが、いつ出てくるやら・・・。
 アパラットのアルバムは、前述のチューレの事情により、なかなか入手困難です。一度私のサイトでも販売しましたが、すぐに売り切れてしまいました。絶盤にはなっていはずなので、入ってきたらお知らせしますね。

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 今回のフィガロの特集で、アイスランドの音楽が持つ共通した雰囲気を誌面から感じ、私の長いブログで、その裏側やミュージシャンのつながりが少しは見えたでしょうか?お楽しみいただけたことを願っています。
 
 最後になりますが、素敵なアーティストをピックアップし、厳しい字数制限の中、彼らの魅力を凝縮して紹介してくださった伊藤なつみさんと、その紹介を美しい誌面に仕上げてくださった編集の新山桂子さんに、この場を借りて心から感謝いたします。
 『Figaro Japon』のこの特集、10月19日までは店頭にありますので、まだ見ていない方、ぜひお手にとってご覧くださいね!(小倉悠加)c0003620_22263649.jpgc0003620_13213440.gif
 
by icelandia | 2005-10-15 19:48 | Pops | Comments(5)
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