ヨンシー&ニコのインタビュー:最終回 ゲイ・トークはアイスランド火山噴火並み!! |
アイスランドの火山が世界をお騒がせし、すごく肩身が狭く感じています。みなさま、本当に御迷惑をおかけしています。アイスランドは豊かでワイルドな自然に恵まれた国なのですが、ここまでワイルドになられると・・・・。 最新情報は出来る限り逐一ツイッターに出しています。登録しなくても普通に読めますので、時々チェックしてみてください。 小倉悠加ツイッター http://twitter.com/YukaOgura たぶん、明日くらいからヨーロッパ便はボチボチ飛ぶかと思いますが、今度は北米に火山灰が到達していますので(特に東海岸)、航空便利用者は目的地に係わらず離発着情報をチェックすることをお勧め致します。 ヨーロッパの民間航空がテスト飛行をしたところ支障がなかったということですが、フィンランド空軍が飛んだところ、エンジンにダメージが見られたそうです。写真はここ。なので、やはり上空がクリアにならない限り、飛ばない方が無難っぽい・・・・。 それから、明日夜頃から風向きが変わるようで、レイキャヴィクの近くまで火山灰が飛ぶかもしれないとのことです(首都圏にいらっしゃる現地のみなさま)。現在はヘイマエイ島に降っているということです。 *** という浮き世の話は置いておいて、やっとヨンシー(シガーロスのヴォーカリスト)のソロ・アルバム『GO』リリースに伴うインタビューの最終回となりました。こんな文章出していいのかしらと思うほど、際どい話題も伴うゲイ・トーク。楽しめる方はお楽しみください。 Grapevine http://www.grapevine.is/home Nico And Jónsi GO ALL IN! (記事の英語原文) http://grapevine.is/Features/ReadArticle/Nico-And-Jonsi-GO-ALL-IN Words by Haukur S. Magnússon Photos by Lilja Birgisdóttir and Ingibjörg Birgisdóttir. Translated into Japanese by Yuka Ogura この記事はアイスランドの英語情報誌Grapevineに掲載されたもので、 ICELANDiaは許可を得て翻訳・掲載しています。英語記事の著作権はGrapevineに、日本語訳は小倉悠加にあります。 ニコとヨンシー『GO』の全てを語る ーーそこにグレープヴァインも同席! Nico And Jónsi GO ALL IN! ...and Grapevine got to sit in! 前回分(その3)はこちら ゲイ・オタクであること J:僕はニコにこの質問をぜひしたい。 N:どんな質問? J:ゲイであることが、音作りとか、作曲とか、そういうのにどんな風に影響してると思う? N:端的に言えば、ゼンゼン。 J:マジ? N:・・・どんな時でも。でも、どっちもなんだと思う。全く何も影響していないと考えたいけど、僕が音楽を作るのは結局、コーラスで歌っていた11歳の僕、ティーンにもならない子供のゲイだった僕のことを考えることからきている。 J:牧師からの誘いは? N:いや、そういうのはなかった。でも、当時音楽を見いだして、すごくエキサイトしたことは覚えてる。僕は自分の音楽を、いつもその子供に向ける。子供にしては少しばかり利口で、少しばかりいい気になってたかも。未だにその時の子供と同じで、僕は自分の音楽にあの時に感じたような、そんな興奮を覚えたい。 J:若い時、オタクだった? N:ひどくね。 J:マジ?どんな風に?家にこもって、一日中曲を書いてたりして? N:いや、音楽に関しては遅咲きだった。でも僕の両親が変わっていて、本をよく読んでた。人と話すよりも読書の方が好きだった。たぶん、少なくとも僕の場合はゲイであることが、孤独っていう罪を、社会生活にもたらしたんだろうと思う。 J:確かに、その通り。同じようなことが僕にも実際に起こった。レイキャヴィク校外の小さな街のモスフェッルスビャイルで育ったから、21歳くらいまでゲイもレズビアンも会ったことがなかった。21歳っていうのは、僕がカミングアウトした時だ。カミングアウトするまでは、自分に満足感を与えてハッピーにしておかなくちゃという思いがある。その唯一の方法が何かをクリエイトすることだった。自分自身のために何かを作る必用がある。絵を描いたり、音楽を作ったり、と。本当は同じような少年に出逢い、キスしたりハグしたりしたいけど、それが出来ない。だって自分の他に誰もいないから。小さな街の中に閉じこめられているから。 N:それに、例え誰かそういった人を知っていたとしても、どうも落ち着かない。 J:そう、友だちを好きになるという大きなミステイクをし続ける。ゲイにありがちなこと。 N:友人に恋しちゃいけない。ゲイであるということは、それ自体が孤独だ。それも強烈な孤独。物事の本質だから仕方ないけど、すごく孤独だ。 J:それはそうと、ゲイであることはミュージシャンの僕に多くの影響を与えた。音楽を作る時、多くの場合それが焦点になるし・・・(脱線して、彼の目はコーナーにあるテレビのスクリーンへと釘付けになる) ーーなるほど、ちょうど射精シーンか。 全てを再考する N:僕らはゲイであることの体験を語り合い、ストレート(ノン気=非同性愛者)の男性が射精シーンを指摘する!なんと!ゲイのミュージシャンであるからには、すごーくいい作品を作る義務があるとずっと僕は感じてきた。それが僕にとっての品質管理みたいなもので、ゲイだからいい音楽を作る義務があるというのは、僕には上手く機能してきた。 J:確かにそれは、長期的にはすごくいいことだ。でも、それを背負ってるのは大変だよね。 N:僕は自分がやることがすべて完璧じゃないといけないと思ってた。全く、僕の両親の友人はみなゲイだったし、僕の周囲もみんなゲイで、そんな感じで育った。 J:おかしなもんだよね。君は僕とは全く違った背景で育った。君は最初からゲイで、家族の中の変わり者ってことでもなかった。僕は正反対で、田舎育ちだし、両親はストレートだし、家族もストレートで友だちもストレート・・・。 N:でもそんな君にいいことを教えてあげよう。ゲイに囲まれて育っても、それでもゲイっていうのは孤独で奇妙なものだ。でも、それもいいかと思う。というのも、まぁどうかは分からないけど、百万人のゲイに囲まれているのも奇妙なものだし、彼らのようにはなりたくないと思ってた。世代の違いもあるし・・・・。 J:結局はそれでよかったけどね。僕は自分がゲイだと分かっていたし、少年に対して特別な思いがあったし、友だちに恋したりもしたし。僕と広い社会の間には大きな隔たりがあることも知っていた。ゲイだから全てのことを再考する必用があったし、この社会とか、世界のこととか。ずっと普通に見てきたストレートの映画も、教えられたルールも、自分自身の人生についても。全部だ。全部を考え直さなくちゃならなかった。それって、僕らにはヘルシーなことだと思う。 N:その通りだね。童話や道徳なんかを再評価することになるし、実際ストレートの人々から習ったことは信頼できないし、僕はまだまだ解明しているところなんだ。少なくとも僕らの世代の両親はストレートだよね。そんな人達の話を、マジで聞ける? 全てが暗くなっていく J:僕の場合、ゲイであることとミュージシャンであることが助けになっていると感じる。もしもゲイじゃなかったら、これだけ音楽を作ってなかったと思う。ゲイだからこそ、満足したい、ハッピーでいたいという衝動が生まれた。 16歳になるまでの僕は、すごく純粋で呑気だった。何も知らなかったから。友人もいたし。でも友人とは表面的な話しかしたことがなかった。僕が初めて恋をして、親友になった少年と会うまでは。彼が僕に、心と心で親密に話すことを、感じているままに言葉にすることを教えてくれた。それまでの僕の会話は、あまり深いものじゃなかった。 N:あるレベルを取り除いておかなくちゃならない。誰にも知られないように。 J:もちろんそれが僕の人生の見方を変えた。その時点から、全てが暗くなりシリアスになっていった。現実感が増した。もっと考えるようになった。その前の僕は全く呑気だった。そんな16歳までのことを僕はずっと覚えていることだろう。気楽で楽しかった。完全に自由だった。 いつも快い瞬間ばかりだったこと N:時々、その頃の気楽さを再現したいと思ったりしない? J:ある意味そうかも。美しい時間だったから。楽しくて、気ままで、くだらない話も悩みもなかった。 N:心を明かさない16もの階層が存在しないこと。僕はよくそういうことをしようとしている。最初の瞬間の直前の、その最初の瞬間に戻って、そのために楽譜を書く。それがみんなが気に入ってくれる僕の音楽のパートでもあり、嫌われるところでもある。風景の中に存在している目障りなもの。その前はずっと快い瞬間ばかりだったのに。 J:誰の中でもすごく強く存在しているよね。みんな自分の直感が好きでそれに従うけど、社会の中に取り込まれすぎて、情報やたわごとの波に飲まれてしまう。飲み込まれて、本当の自分を見失う。 N:そう考えると、君は今、みんなが望むような好き勝手な人生を送っているように見えるけど、でも随分と落ち着いた生活でもあるよね。いいよね。君って、正気じゃないみたいな食事法をやってるし(ヨンシーはローフード{生食}・ダイエットを実行している) J:わかってる。でもあれは本当に健康的だし楽しい。君がやっていることは全て、それが生きる道なら、君が何も耳を傾けないならば・・・。 N:僕はすべてに耳を傾けるよ。何も聞かないのは君の方だろう。 J:でも、自分が好きなものだけしか好きじゃないだろう。僕も同じだ。人はもっと、自分の身体に何を取り込んでいるかに注意を払うべきだ。音楽にしても食べ物にしても。それが自分の燃料になる。それが自分を動かし続けるんだから。 N:僕は値段の高い食べ物しか買わない。とんでもない金額を出せば、それがいいものである可能性は低くない。 高価な洋服を買うことについて J:僕はすべてをゼロから作る。ニコの母親みたいに。僕が食べる全てのものがそう。店へ行って、ケチャップを買うわけじゃなくて、ケチャップは最初から作る。マスタードもそうだ。マスタード・シードの粉から作る。やったことあるよ。ハンバーガーだって何だって。ローフード主義者になると、食事を作ることに多くのエネルギーを費やす。でもそれは価値あることだし、みんなそうすべきだと思う。 N:僕が高い洋服を買う理由のひとつは、奴隷の労働で作られたものではない可能性が高いから。タイの地下室で18人の子供が作ったものじゃなく、日本のどこかでデザイナーが作ったものだろう。 J:ニコは黒い服しか着ない。僕は黒は絶対に着ない。意識してそうしてる。黒は色でさえなく、色の欠如だ。僕はそこから離れてているようにしてる。 N:僕はオレンジばかり着てた時期があった。オレンジ時代だ。今は実は黒から決別しようとしている。きれいなブルーがいいと思っているし、誰かが僕にすごくきれいな深い赤を作ってくれれば、それもいいと思ってる。でも、誰も作ってくれないんだよね。難しいことだ。まったくもって災難。それも高価な災難。 J:アフトゥルのバッラと話したことは?彼女ならきっと作ってくれるよ。彼女が僕らのツアー・コスチュームを全部作っているし、すごくいい仕事をしてくれる。僕は洋服を買うのも、服に金を使うのも好きじゃない。そういうところはすごくアイスランド人っぽい。僕は洋服で金を無駄にしない。バッラが僕のステージ衣装を縫っている時、日常でも着られるものにさせようとしてるなんて、おかしいだろう。少しでも倹約しようと思って(笑)。 なぜゲイの方がいい音楽を作るのか ーー最初のトピックに戻って、ゲイの方がストレートよりもいい音楽を作ってると思う? N:ずっとずっと素晴らしい音楽を作ってる。なぜなのか?そりゃそうだろう。ゲイは人生の権利がなく、その代わり、世界を自分のイメージに作り上げる必用がある。 J:ゲイだから何かを作らなくちゃと思う。メチャクチャっていうか、社会の中で気分よく過ごしたいなら、何かいいものを作らなくちゃならない。そうすれば、気分がいい。 N:僕の体験で言えば、ストレートの作曲家は、それほど深く考えなくても済んでしまう。「こうかな、違うかな・・・」じゃなくて、これでいい!って。片や・・・もちろん例外は多くあるけど、ゲイの場合は自分の庭を作るみたいな感じになる。自分のボキャブラリーを持ち、石を作り、木や草花を作り出す。 ーー現代の作曲界には大きなゲイ・シーンが? N:いや、僕が好きな作曲家は全員ストレートだ。フィリップ・グラス、スティーブ・ライヒ、ジョン・アダムスは作曲家だけどゲイではない。ベンジャミン・ブリテンは音楽によって僕がどんな気持ちになるかの透かし絵で・・・。彼はホモセクシュアルで、僕の中でものすごく共鳴する唯一無二の音楽を作った。っていうか、自分でもよくわからないし、奇妙なんだけど、最近の僕はゲイである重要性について、より厳しくなってきている。少なくともアメリカに関しては、もうクレイジーだ。ホモだと軍隊にも入れない。ゲイは国家のために死ぬ資格さえない。 J:ゲイであることでアイスランドで一番イラつくのは、献血できないことだ。まったくアホらしい。 N:アメリカでも同じだ。911の後に献血しようとしたら、「過去12ヶ月間に、男性とアナル・セックスしたか?」と尋ねられて、アゴが落ちそうになった。「マヌケめ!君もこの12ヶ月の間に夫とセックスしただろうが!」 J:まったくクソな法律だよな。アナル・セックスしたかはゲイにしか尋ねない。ストレートであれば、寝た女全員とアナルにはめても、問題なしだ。 N:一度でも男の穴にはめたことがあると、誰の命も救えない。 コートニー・ラヴとアイスセイヴの友人であること ーー一般読者のために、曲作りとアレンジの違いを説明してくれる?例えば、ニコ・ミュリーのファンがアレンジを聞くためにヨンシーのアルバムを買ってもいい? J:曲を書くのは楽しかったし、そこにニコが別次元もたらしてくれたのは、驚くような体験だった。 N:きっと誰かはアルバムに僕の足跡を見つけるかもしれない。でも、あれは僕のアルバムじゃない。前にも言ったけど、アレンジャーとしての僕の仕事は、ヨンシーを盛り立てることだ。シンガーを引き立て、いい感じのサウンドにすることだ(ヨンシーはにやにやしながら、僕らのカウンターにあった「ご自由にどうぞ」の箱から、ゴム手袋を取り出してパチリと音を立てた)。アレンジャーによっては、曲作りの功績も得ようとすることがあるけど、僕は絶対にそれはない。僕は君がよく見えるようにとしただけだ。僕のクソじゃなくて、君のクソだから。僕はそこに衣装をかぶせるだけ。 ーーこの質問をするように言われてるんだけど、ニコ、コートニー・ラブとの関係は? N:彼女は僕の首を切った。彼女のアレンジをたくさんしたけど、大失敗だった。彼女は僕を切ったんだと思う。ツイッター経由で?いや、ツイッター経由で雇われて、レコーディングした後は連絡を取ってない。 ーーアイスセイブについては? J:アイスセイブについては何が起こっているのか、全くわからない。 N:僕は知ってる!毎日BBCワールド・サービスを聞くし、みんなにそれについてをメールしてる。それでも、よく分からない。他国の怪しい何かに投資すべきじゃかったと思う。あれって、ナイジェリアのネット人に金を渡すようなものだったと思う。利率を見たかい?でっちあげもいいところだ!まるでビリヤード・パーティみたいに、みんながワイワイと騒ぎ立てて、金も何もかもが簡単すぎた。上手すぎる話は結局ウマすぎるんだ。 夜はゆっくりと、更に混沌としていく。知り合いにハグして、もう一本シャンパンを取りに行く。フィスティング・ルームは突然占領された。ヨンシーのバンドのメンバーが僕らに加わった。この夜、最後に録音されていたのは、ブレア・ウィッチばりの、不気味な軍隊の命令のようだったと後から気づいた。どうやらカップルが同時に叫んだような感じだった。でも、本当はどうだったのか知る由もない。 「お前ら!ゴム手袋は使うな!」(完)(小倉悠加 / Yuka Ogura) |
by icelandia
| 2010-04-19 23:07
| Pops
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