ストマック・クロー

 昨日、炎天下の新橋一帯をぶらぶら歩いてきた。

 新橋といえばオフィス街。よくテレビで「酔っ払いサラリーマンにインタビューしてきました」って企画があるでしょう? 赤ら顔のお父っつあんたちが頭にネクタイハチマキして、寿司の折り詰めを片手に千鳥足で歩いている、あのシーン。あれはだいたい新橋でロケしてるんですよ。
 だからオフィス街というより、アフターファイブ赤ちょうちん街。

 平日夜の盛りあがりぶりといったら、もう怖いくらい。焼き鳥とビール、愚痴と笑いが乱れ飛び、みんな明日への英気を康なっている。この夜の盛り場が、経済を動かす核心部なのかもしれない。

 そんな新橋だから、日曜はどの店も定休日。都心の超要衝駅かつ大規模な繁華街でありながら、見渡すかぎりシャッターが閉められているさまは、まるでゴーストタウン。

 日曜日に限ってこんなにひっそり静まり返るのは、山手線では新橋だけだろう。山手線のなかにある異次元空間だ。

 そんなノーバディ新橋をさまよっていると、一軒の和菓子屋が。ここには、さらに異次元の深部へ連れ去られるよなブキミな貼り紙が。

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 『切腹最中』……。波田陽区がよく買ってたとか? もなかの皮を割ると、なかから真っ赤な餡が溢れ出すのだろうか?

 例に漏れず、ここも定休日だったため、現物を買うことができなかった。残念! 

 あとでわかったことだが、この店は忠臣蔵で知られる浅野内匠頭が切腹した場所にあり、それにちなんでこの名が付けられたという。いや、別になにをちなんでもいいんだけど、よりによって、それにちなまなくても……。

 しかし、なんとなく気持ちわかる。切腹といえば、介錯がつきもの。介錯人は、切腹と同時に刀で頭を斬り落とす。その際、必ず首の皮一枚を残すのだそう。そうすると、首がおかしなところに飛んでいかず、目の前の穴にうまい具合にストンと落ちるのだとか。

 「自腹を切る」「首の皮一枚つながる」。サラリーマンの街で、これほどリアルに迫る和菓子はない。この街で働く人々は、これを食べて頭に栄養をゆき渡らせ、出世への武勇伝を生み出さんとしているのだ。♪武勇伝でんででんでん。それ波田陽区じゃないだろ吉村智樹

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by yoshimuratomoki | 2005-07-11 15:16