山村幸広の一日、一グラム

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「新文化」向け寄稿 6月24日
 出版業界向けの新聞で「新文化」という新聞がある。
そこに「出版とインターネット」というタイトルで結構長い寄稿をさせて頂き、先日掲載された。その文章(加工前ですので少し内容が違います。)をUPさせて頂く。

 インターネットの急成長にかかす事のできなかった機能が2つある。
 それは、「検索機能」と「コミュニティ」である。この2つがなければインターネットの進化はなかったといっても過言ではない。
 検索機能がなければ個人がホームページを立ち上げる事などなかったであろうし、世界中に無数のホームページが存在する事はなかったであろう。インターネットで検索してネットサーフィンをすれば欲しい情報のほとんどは網羅されているであろう。
 「コミュニティ」がなければインターネットのコンテンツは現状では成り立たない。
 インターネットの主要コンテンツを考えてみる。アクセスページの多いサイトを考えてみる。殆んど全てがコミュニティ系コンテンツである。日本最大のアクセスを誇るヤフーも「掲示板」「オークション」というコミュニティ系コンテンツが主要コンテンツであり、これらの比重がかなり高い。その他のアクセスがあるサイトは個人ホームページ管理サイトか掲示板サイトである。ポータルサイトもコミュニティの弱いサイトはアクセスが少ない。

 このコミュニティコンテンツを考えてみよう。
 まず最初に、これをコンテンツと呼べるであろうか? これをメディアと言えるであろうか? なぜならこれらは個人が、ユーザーが作ったコンテンツの集合体なのである。主催者は場所を提供しているだけで、なんのコンテンツも作っていない。要するに他人が作ったコンテンツなのである。そのコンテンツの運営者をメディアと呼んでもよいのだろうか? しかしこのコミュニティコンテンツはユーザーの心を捉えている。それを支えたのはテクノロジーではない部分が大きい。

 例えば、現在は家族と言う単位が失われつつある。家に帰っても誰もいない。家族そろって食事をしたり会話をしたりしない。また、一人っ子が多く、兄弟もいない。
 「人」は「人」と話がしたいのだ。人とコミニケーションをとりたいのである。人間だけが与えられたこの言語を使いたいのである。しかし家には誰もいない。こんな環境が人をコミュニティへ向かわせている。インターネットにアクセスすれば人と会話ができる。自分の存在が確認できるのである。

 また、日本人は個人主張をするようになった。これを後押ししたのもインターネットである。自分の意見をはっきり述べる。個人として主張する。この半世紀で日本人が美徳としてきた「寡黙」という文化は薄れている。個人としての自分を美徳としているのである。そしてそれは「匿名」という隠れ蓑の中で更に増殖する。インターネットの中での自分。インターネット世界だけでの友達。リアルな世界からの逃亡は、バーチャルな世界を更に楽しくしていき、そちらの世界を重んじる。人前で話をするのがヘタな人もネット上の自分では、雄弁になる。
 昨年、今年とインターネットユーザーに浸透していった「ブログ」もその一つであろう。誰が自分の日記を家の前にぶら下げるであろうか? 少し前までは、日記を家の前にぶらさげて「誰でも読んでください。」という事は考えられなかった。家族でも日記は見せないものである。しかし皆、堂々と公開する。「匿名」「自己主張」「コニュニティ」このインターネットの特長を全てセットにしたこの「ブログ」はユーザーの心を掴んで離さない。そして皆、書きたがっている。書いたものを読んで欲しいのだ。作家志望はどんどん増えている。ケータイのおかげで、皆カメラを常に持っている。写真を撮ってブログに上げる。日本全体が記者に埋め尽くされている。そして自分のブログにトラックバックがあればコミュニティができあがっていく。趣味や地域の友達が増殖し始める。もう日記は机に隠すものではない。みんなに見せるものなのである。

 このようにテクノロジーも重要であったがやはり人間の求める本質をついたものだけが受け入れられるのである。これは出版業界でもあったはずだ。例えば、リクルートの「じゃらん」という雑誌はまさにコミュニティ雑誌であった。色々な雑誌の後ろのほうに、まるで付録コンテンツといわんばかりの1、2ページのコーナーを1冊の雑誌にしてヒットを飛ばした。そこにテクノロジーはない。人が求めていたのは「コミュニティ」だったんだ。

 出版、雑誌は必要なのか?それは不必要なのか?
 私の答えはシンプル。もちろん必要である。
 出版は文化を創っていった。雑誌は流行を生み出していった。「流行」は雑誌で作られていったのである。文化にもっとも影響を与えたメディアは新聞でもTVでもない。間違いなく雑誌なのである。

 休暇の際にプールサイドで本を読む。本がなければ私のハワイの楽しみは半減する。プールサイドはインターネットをしている奴がいるか? そんな人はいない。私は絶対にしない。旅行の前に本屋へ駆け込み、好きな本を買占め、リゾートで読む。これは私の本の喜びなのである。飛行機の中、隣でパソコンをカタカタやられるとやめてくれ!と叫びたくなる。旅行に本は持っていくがパソコンは持っていかないのである。もし絵本がなかったら…考えると恐ろしい。もし絵本がなかったら子供の教育は成り立たない。一方的に流れる映像を見るしかない子供は、想像力を持たず、感性を養う事はできない。絵を見ながら子供は世界への想像を膨らまし、脳を刺激するのである。一方的に流れる映像にはその力を形成する事はできないのである。
 ひとつ断言できるのは私が生きている間に出版業界がなくなることはない。インターネットが出版にとってかわる事はないのである。

 しかしそれには色々をやる事がある。
 まず、ネットの優れている点をあっさり認めて、その強さと戦うのをやめる。例えば速報性であるとかインタラクティブ性といったネットの得意な分野で戦うのをやめる。それはネットだけでなない、TVも新聞もラジオも、それぞれの強さがある。その強さと真っ向から勝負するのは避けた方が良い。そして出版、いわゆる「本」の強さを再認識してはいかがであろうか? 本は簡単に持ち運べて、手に取れる。雑誌は表紙で中身が大体わかるし、パラパラっとめくれば、1分でコンテンツの全体も見わたす事ができる。そして本はとっておける。コレクションできるものである。ネットのコンテンツは「ブックマーク」で保存するが、どうも無機質である。雑誌や出版はとっておきたい、保存しておきたいコンテンツを生んできたし、生み出す力があるはずである。
 「本」「雑誌」が持っている強さと弱さを整理する。そして他メディアの強さと弱さを整理する。そうするとやるべき事がみえてくるのではないだろうか? コンテンツに大切な要素は「独自性」「高品質」「独占性」「時代性」。この要素がミックスすればいいものは生み出せる。生み出されてきたのである。

 その中で出版業界の方々がよく誤解される事がある。例えば、ヒットしているマンガ。これをインターネットで流せば売れるのではないか? この本をネットで配信すればもっと儲かるのではないか? こういう話が多い。しかし、これは勘違いである。なぜ本で読めるマンガをわざわざインターネットで見なければいけないのか? 本を買えばいいのである。本当に読みたければなんででも買いにいく。
 私はインターネットで映画をみる事にも否定的である。映画はDVDで買ってみれるし、レンタルショップですぐ手に入る。わざわざ寒い書斎のパソコンの前で見るものじゃない。
 しかし、例えば、新しい「スターウオーズ」は劇場でもDVD販売もしません。それは「インターネットのエキサイトでしか見れません。」としよう。それはみんなエキサイトにアクセスして映画をダウンロードするであろう。パソコンを持っていないファンは友達の家に行くか、パソコンを買ってでも見るであろう。どうしても欲しい好きなゲームソフトがあれば、ゲーム機も買ってしまうのが消費者の心理なのである。本当にネットコンテンツに参戦するのであれば、たとえばハリーポッターの新刊はサイトでしか読めませんとすればいかがか? 多数のユーザーが集まり、ユーザー登録して購入するであろう。その購入者は御社の顧客データベースである。次の作品もレコメンデーションする事ができる。
 エキサイトで韓国の男優、クォン・サンウの写真集を独占で販売している。9,800円の高価商品にかかわらず、エキサイトのページだけで3カ月の短期間で3万部販売する事ができた。かなり年齢の高い方もいらっしゃったし、ネットを普段使っていない方もいた。しかしさきほどの「独自性」「高品質」「独占性」「時代性」があったコンテンツであるから販売ができたのである。本屋に置いたからといって、10万部の売上になったとは思えない。9800円の写真集はコアなファンの心しか捉えない。ファンは本当に欲しい物があれば、それを探し当てるのである。

 「インターネットにコンテンツを流用する。」まずこの考え方を捨ててみよう。インターネットには、インターネットの特性をいかしたコンテンツをインターネット向けに開発しなければいけない。でなければインターネットの中で光り輝くコンテンツとして無数の中から選ばれるはずがない。本屋の棚の、数万倍大きな棚、それがネット上の棚なのである。その宇宙の星の中から自分の星をみつけてもらうのは至難の業なのである。どこからみても光り輝いていなければいけない。それは流用コンテンツでは決してないのである。

 昔、ある月刊雑誌の編集長に、採用するネタが50あるとすれば、落ちネタが100ぐらい毎月あります。エキサイトにそれを提供しましょうか? と言われた事があった。私たちはお断りをした。私たちのコンテンツ作りの歴史・戦いはそこから始まった

 コンテンツは技術でなない。技術は差別化にならないし、文化を生む事はない。流れはコンテンツで作られる。皆さんは私たちインターネットプレイヤーよりもはるかに長い歴史をコンテンツで飾ってきた。私たちの歴史はほんの10年ほどなのです。
 私たちもいいものをつくる意気込みがある。皆様とのコンテンツの「対決」が楽しみである。私はメディア作りに携れた自分の人生に感謝している。メディアは感動を作れる。楽しい仕事である。

山村幸広

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  • by yamamura2004 | 2005-06-24 23:48 | Trackback(11)
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