若者に人気の「MTVムービー・アワード」で92年に「
ニュー・ジャック・シティ」で 悪役賞、93年に「
ハード・プレイ」でコンビ賞及びキス・シーン賞、94年に「デモリションマン」で悪役賞、99年に「
ブレイド」で格闘シーン賞を受賞しているように、90年代から、ウェズリー・スナイプスはアクションスターとしての地位を固めた。
斬新なホラー・アクションとしてヒットした「
ブレイド」(98)は三部作になり、アカデミー賞受賞映画「逃亡者」(93)の番外編ともいえる続編「
追跡者」(98)でもトミー・リー・ジョーンズの相手役を堂々と演じる。
製作にも乗り出し、今や、そのボンクラぶりがカルト映画になっているマーク・ウォールバーグ主演の「
ビッグ・ヒット」(98)をジョン・ウーと共に製作、主演作の「
アート オブ ウォー」(00)では製作総指揮も行う。ただ、「アート オブ ウォー」は話しに凝り過ぎたのか、監督に演出力が足りなかったのか、話しの全体像が分かりにくいのが惜しい。ただ、今回公開される3本と同じく、話し云々でなく、スナイプス映画の素晴らしいところは、どんな壮大な陰謀劇で話しは分かりにくかろうが、スナイプスが一撃で人を殺し(しかもほとんど傷を負わない!)、悪は最後には倒れることである。これこそが男が求める映画であり、全世界の男がスナイプス映画を観続ける、大きな理由なのである。近年は「アート・オブ・アクション/マーシャル・アーツ・フィルムの変還」(02・V)にも出演している。このドキュメンタリーは、ジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポー、 スティーヴン・セガール、ブルース・リー(もちろん、アーカイブ映像)、ツイ・ハーク、ジョン・ウー、ブルース・ウィリス 、シルヴェスター・スタローン、そしてトム・クルーズと並んでスナイプスが出てきて、マーシャル・アーツのことを語るのだから、プライベートでマーシャル・アーツの修練を怠らないスナイプスも感無量だったろう。機会があれば、是非見てほしい作品だ!
【ドラマ俳優としての可能性もあった!】
スナイプスの出演作品歴で見逃してほしくないのが「
ジャングル・フィーバー」 (91)と「
ワン・ナイト・スタンド」(97)である。脇役だった「
モ’・ベター・ブルース」 (90)に続く、1年後のスパイク・リー監督の「
ジャングル・フィーバー」では堂々の主演で、アフロアメリカンと白人の人種を超えた恋愛を描いている。スパイク・リー監督はディンゼル・ワシントンと組むことが多いが、スナイプスの演技力も評価していて、スナイプスもディンゼル・ワシントンのようになる可能性があったということである。なお、今作でのジャンキー役で絶賛され、カンヌ国際映画祭の助演男優賞を受賞したサミュエル・L・ジャクソンはスターの道を歩み出す。「ワン・ナイト・スタンド」は「
リービング・ラスべガス」(95)でニコラス・ケイジにアカデミー賞主演男優賞をもたらしたマイク・フィギスが次に撮った恋愛ドラマである。ここでのスナイプスはHIVに感染した親友を見舞いに行った病院で、ワン・ナイト・スタンド(一夜限り)の愛を交わした女性(ナスターシャ・キンスキー)と再会する。「ジャングル・フィーバー」に引き続きの人種を超えた恋愛を扱った作品で、マイク・フィギスが期待した演技をスナイプスは十分に披露する。このようにスナイプスには演技派俳優になる道もあったのである。ただ、スナイプスはアクションスターの道を選んでくれた。
だから、今回、日本でも「ザ・マークスマン」、「デトネイター」、「7セカンズ」の3本が公開されるのだから、ありがたいばかりだ!
スナイプスにあったら、「男たちが喜ぶ映画に出る道を選んでくれてありがとう!」とねぎらいの言葉をかけようと思っているほどだ!
(わたなべりんたろう)