ウェズリー・スナイプスの出世作といえば、シリーズ化されて第3作まで作られた「ブレイド」(98)である。最近は「Blade:The Series」のタイトルでテレビシリーズにもなり、ラッパーのスティッキフィンガズが主演で、雑誌の表紙にもなっている(実は、このテレビシリーズの主演へのオファーをスナイプスが断ったことは、ファンとしては残念だったかもしれない)。それまでもアクション映画に出ていたが、このマーヴ・ウォルフマンとジーン・コーランのアメコミを原作とした、不死身の肉体と人間の魂を持つダークヒーローの活躍を描いたアクションは、そのスタイリッシュな映像の魅力もあって大人気になった。主人公のサングラスに黒コートや映像が、大ヒット作の「
マトリックス」にも影響を与えたといわれる「ブレイド」を監督したのは、「デスマシーン」(94)で注目されたスティーブ・ノリントンだ。
人間とヴァンパイアの混血として生まれたブレイドは、人間を脅かすヴァンパイアを抹殺するヴァンパイアハンター。自身の呪うべき運命に復讐するかのように、人類征服をもくろむヴァンパイアと彼らを撲滅しようとするブレイドの本格的な戦いが始まる―――
このストーリーはロシア版「マトリックス」(99)シリーズまたは「
ロード・オブ・ザ・リング」と言われた「
ナイト・ウォッチ」(05)シリーズの世界観とも似ている。
そのような先駆的魅力に溢れた作品だが、当時語られたことは「バットマン」シリーズとホラー映画をミックスさせ、香港映画のカンフーを取り入れたということだった。同じくアメコミ原作で、今やカルト映画のブランドン・リーの「ザ・クロウ」(96)のように、ケレン味たっぷりにCGを多用したのも多くの人を魅きつけた。そのため、他のヴァンパイア物、例えば、当時人気があったテレビシリースの「バフィー / ザ・ヴァンパイア・キラー」などとは迫力が違う。ちなみに「ブレイド」の始めのタイトルは「Blade, the Vampire Slayer」であったことからも「
バフィー/ ザ・バンパイア・キラー」を意識していたことが分かる。
主人公のブレイドの特徴といえば、昼夜問わずかけている真っ黒なサングラスに革のスーツ。さらに銀製の日本刀と銀の弾丸のつまった銃で身を固めて、ヴァンパイアをなぎ倒していくのだが、まれにサングラスをはずす際、目元がキュートなのはスナイプスならではのご愛嬌だ(笑)。
その他、日本でも人気のあったポルノ女優のトレイシー・ローズが出演しているのも一部で話題に。2作目では後に「
ヘルボーイ」(04)を撮る鬼才ギレルモ・デル・トロ、3作目は「ブレイド」シリーズの脚本家デヴィッド・S・ゴイヤーが監督し、作品ごとに違うテイストになっていることも魅力なのだろう。
(わたなべりんたろう)