東京のアート、展覧会、映画、ライヴ、イベントなどの情報を発信 立川直樹責任編集 TOKYO ART PATROL ~東京アートパトロール~

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立川直樹Profile
1949年生まれ。TAP編集長。
60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、美術、舞台など幅広いジャンルで活躍するプロデューサーであり、ディレクターである。
アートの分野においては数多くの展覧会の企画・プロデュース、オーディションやアワードを通じた新人の発掘活動などを行ってきた。
「Audi MUSIC meets ART」や東京都現代美術館「MOT THE MUSIC」など音楽と美術といった複数のフィールドにまたがるメディアミックス型イベントプロデュースの第一人者でもある。
また森永博志氏との共著である「シャングリラの予言」(正・続)では、アート、エンターテイメントに関する膨大な知識に裏打ちされた独特のライフスタイル観を世に問い、都市生活者たちに大きな影響を与えた。

桐朋学園芸術短期大学教授。

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写真の持つマグマのようなエネルギー ~今井智己「光と重力」

写真には何か得体の知れないエネルギーがあります。それは絵画や彫刻の持つ直接的なエネルギーとはちょっと違って、写真の表面の裏にマグマのようにうずまいているものです。にぎやかな写真や静かな写真、無感情な写真や感情に満ちた写真、などなど…写真にも色々ありますが、僕が個人的に一番感銘を受けるのは、時が止まっているように静かでいながら(写真だから止まっているんだけど)、ピンと張った空気の後ろになんだか分からない、けど強い感情が溢れている写真です。

リトルモア地下で2月28日まで個展が行われている今井智己はまさにそんな写真家。
8年前に出したデビュー作『真昼』は夜の風景を中心に撮影した写真集でしたが、その凍ったような画面から漂うエネルギーは強烈で、落ち着くようでいながら押さえつけられるような迫力がありました。実は今回リトルモアの展示を観るまでこの写真集のことは記憶から抜けていたのですが、「真昼」の表紙のガードレールの写真を見た瞬間に頭に当時の衝撃がフラッシュバックしてきました。数年ぶりに見て、ハッとさせられるような写真はそんなに多くありません。アートに強い本屋で、興奮した気持ちでページをめくっていた当時と比べて自分は大分変化してきたと思っていたのですが、この写真集を今改めて見たときに起こる感情は前のものとそんなに変化していないように感じました。
これはきっと写真の持つ深いところに訴えかける力のためだと思います。

本展のタイトルともなっている久しぶりの彼個人の写真集「光と重力」は、「真昼」よりも日常から離れているような印象はありますが、その静謐さと背後でうごめく力強さにはますます磨きがかかっているようでした。彼が撮ると森の中も部屋の中もなんだか得体の知れないものに見えてきます。
写真が気に入った方はもちろんですが、これは写真集だけでなくプリントで是非見てほしい写真です。今回はなんと今井智己が、写真家の金村修とデザイナーの服部一成との2回のトークショーも行います。こっちにも行って話を聞いてみたいですね。
どんなことを考えて写真を撮っているのか、それとも何も考えずに撮っているのか。。
(K.Kouda@TAP編集部)

リトルモア地下「光と重力」
2010年2月6日(土)- 2010年2月28日(日)
http://www.littlemore.co.jp/chika.html
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# by tap2007 | 2010-02-09 23:04 | 今、見たいアート | Trackback | Comments(0)

聞き逃すな!「和ジャズ・ベスト100」と「ボディー・オブ・ワーク」「IRM」

先週の月曜に続いてきょうもCDの情報。というのは1月20日の東京新聞夕刊で目にしてあわてて手に入れた「和ジャズ・ベスト100」が素晴しく魅力的、それに“完全限定生産作品”なので、これは紹介しなければと思ったのである。“日本のジャズ史を彩ったスターたちを網羅した待望のコンピレーション・アルバム”に収録されているのはタイトルにボーナストラックがおまけされた101曲。“日本で初めてジャズ・ソングが吹き込まれた1928年から今日までのあの名曲、名演がコロムビア100年の歴史に刻まれた豊富な音源から復刻!!”されたものだが、美空ひばりと松本英彦の「アゲイン」(1955年)や「上海」(1953年)、越路吹雪の「ビギン・ザ・ビギン」(1952年)などから構成されている「Early Jazz Songs」から「Dixieland,Swing,Be Bop&Big Bands」「Modern Jazz」「Contemporary Jazz」「Vocal Standards」と分類された5枚のCDからは、確実に“その時代”の匂いが浮かび上がってくる。
とりわけ魅力的なのは戦前戦後のジャズ。スウィングやディキシーに流ちょうな日本語がのった“和ジャズ”はどこかエキゾティックでもあり、様々な情景を喚起させてくれる。また若き日の渡辺貞夫や日野皓正の熱っぽいプレイが聴けるのもうれしいし、昨年夏に惜しまれつつ解散した原信夫とシャープス・アンド・フラッツをバックに美空ひばりが歌う「スターダスト」や「恋人よ我に帰れ」や、元々はジャズ歌手で、1965年にはニューポート・ジャズ・フェスティバルに出演して好評を博した弘田三枝子の「ザ・ニアネス・オブ・ユー」や「バット・ノット・フォー・ミー」などの“うまさ”には思わず舌を巻かされる。ちなみに101曲目のボーナストラックは、美空ひばりが1955年に小野満とフォア・ブラザースの演奏で吹き込んだものに、矢野沙織が2007年にアルト・サックスのソロを挿入した合成ヴァージョンだが、改めて美空ひばりの“天才”ぶりを僕はこのCDで実感した。値段は5250円。これで完璧なタイムスリップが体験できるのだから、絶対にお得な買物だ。
あとはPOPS創世期を代表するシンガーソングライターにして、アメリカのエンタテインメント界を代表するスーパースター、ポール・アンカの1998年の名盤「ボディー・オブ・ワーク」(ソニーミュージック・ジャパン)がポール・アンカがマイケル・ジャクソンの「THIS IS IT」の共作者としてクローズアップされたことがきっかけで復刻されたので、これも買い。“いい歌”と“名演”の永遠性を改めて思ったが、それでいくとロッド・スチュワートが少年時代に憧れていたオーティス・レディングやサム・クック、テンプテーションズなどのソウル・クラシックをレコーディングした「ソウルブック」(ソニーミュージック・ジャパン)も歳をとらないCDだ。
そしてこうした復刻や やや企画のものではない、純粋な“新譜”ではシャルロット・ゲンズブールとベックがコラボした「IRM」(ワーナーミュージック・ジャパン)が中々の出来映え。母親のジェーン・バーキンがかってもっていた洒落な妖気を漂わせながらベックが構築したサウンドに合わせて歌うシャルロットは、やはり両親の“いい血”を受けついでいる。
(N.Tachikawa)

「和ジャズ・ベスト100」
コロムビアミュージックエンタテインメント
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# by tap2007 | 2010-02-08 20:49 | アートが匂うエンタテインメント | Trackback | Comments(0)

登場人物のアンサンブルが掛け値なしに素晴しい ~50歳の恋愛白書

いい映画だなあ、うまい作り方をしているなあ・・・観終えた時、思わずそんな言葉が口をついて出た。戯曲家アーサー・ミラーの娘で、作家・脚本家・映画監督のレベッカ・ミラーの最新映画「50歳の恋愛白書」。“人生半分過ぎたら、やりたいことだけやろう”というコピーをつけた映画会社は、主人公の50歳のなったピッパ・リーと、彼女を取り巻く人生物語が描かれているので、ちょっとイマ風の邦題と用意したのだろうが、“The Private Lives of Pippa Lee”という原題は、そのまま片仮名で邦題にするのはそっけないにせよ、映画の本質を見事に言い当てている。
何故こんなことをクドクド書いたかというと、絶対に観てほしい映画だからだ。今から10年近く前の同窓会で、20年ぶりの旧友と再会したレベッカ・ミラーが“若い頃は無責任な行動ばかりとっていた子、立派な母親、妻になっているのを見て、いったい何が起こったんだろうと思ったの。ひとりの人間のアイデンティティがこれほど変わった時、果たして内面も本当に変わるのかしら、と。」”を思って構想を持ち、書いた小説がイギリスでベストセラーになり、次にはレベッカ自身が書いた脚本が多くの業界人の心をひきつけて実現した映画化。まずは、ブラッド・ピット率いるプランBが、製作上のパートナーとして名乗りを挙げ、立て続きに、出陣にも、オスカー俳優アラン・アーキーン、キアヌ・リーヴス、ジュリアン・ムーア、ウィノナ・ライダー、マリア・ベロ、モニカ・ベルッチと、今をときめく実力派スターがそろい、さらにロビン・ライト・ペン演じるピッパ・リー若き日をテレビドラマ「ゴシップガール」絶大な人気を誇るブレイク・ライヴリーが抜擢されているが、ストーリー展開も演技も含めて、彼等のアンサンブルが掛け値なしに素晴しい。
ようやく手にした結婚という幸せのために、理想的で完璧な妻をずっと演じ、誰もが“理想の女性”と羨む50歳のピッパ・リーが“本当の自分”を見つめ直す運命の始まりと、ピッパが歩んできた人生と、周りの人たちの表と裏の顔。そうしたものが綾を成しながら進んでいく映画は、台詞も挿入曲の使い方も何もかもが気がきいていて、本当に楽しめるものになっている。ピッパの心を解放する20歳も年下の不思議な男性を演じるキアヌ・リーヴスの「こんなによく書けた脚本はめったに見るものじゃないよ。コメディとドラマが最高のバランスでミックスされているし、すべての登場人物が“おいしい役”なんだから」というコメントにも100パーセント賛同できる。ベルリン国際映画祭に始まり、トロント国際映画祭、ドービル映画等、シドニー映画祭、エジンバラ国際映画祭など世界各国の映画祭で上映され、アメリカでも公開前から多くの批評家が“見逃してはいけない映画”のひとつに挙げていたのも納得できるが、こういう映画って何故日本では作れないのだろうという寂しさがフッと頭をよぎった。残念ながら試写を見ていないが、同じ明日にロードショー公開されるダスティン・ホフマンとエマ・トンプソン共演の「新しい人生のはじめかた」もよく出来た“大人の恋愛映画”という感じがする。
(N.Tachikawa)

<『50歳の恋愛白書』オフィシャルサイト>
http://50love.gaga.ne.jp/
全国、大ヒット上映中!
# by tap2007 | 2010-02-05 22:52 | アートが匂うエンタテインメント | Trackback | Comments(0)

心から離れない“くっきりとした”映像 ~ヤン フードン―将軍的微笑 展

北京オリンピック前後からこの方、中国の話題がやみません。GDPで日本を抜いて世界第2位になるというニュースや、インターネットを検閲する中国政府のニュース、チベット問題、環境問題などなど。。
このような政治経済のニュースだけでなく、アート界に置いても中国の存在感はますます強くなってきており、現代アートの世界で中国は決して避けて通ることのできない存在になりつつあります。

そんな中国アーティストの中でも頭ひとつ飛び出しているのが、3月28日まで原美術館で個展「将軍的微笑」を開催しているヤン・フードン。今回の展示は2002年のドクメンタ11をはじめ、第50回ヴェネツィア ビエンナーレ(03年)、第52回ヴェネツィアビエンナーレ(07年)など国際的に活躍している彼の、日本における初個展となります。
今回、出展されるのは「将軍の微笑」「バックヤード ほら、陽が昇るよ!」「竹林の七賢人 Part 3」「半馬索」「青麒麟 Part 1」の5点。35ミリフィルムにこだわりを持つヤンフードンの映像は、幾何学を思わせるようなはっきりとした構図とどこか湿っているような質感で特有の魅力を放っています。今回の作品はどれも10分前後ですが、「竹林の七賢人」は53分とやや長め。3世紀頃の中国の「竹林の七賢」をモチーフにして現代を舞台に撮影されたこの作品は、7人を若者に置き換え、農作業や牛の屠殺などを行う彼らが淡々と写されています。その作業に見合わない服装や表情のギャップについ釘付けになってしまいました。
しかし、一番のみどころは展覧会タイトルにもなっている「将軍的微笑」。一室丸ごとを使ったインスタレーションで、会食の場に闖入してしまったような感じを受けます。これはもう老人となった盲目の将軍の誕生会の様子を模したもの。各々のモニターに映し出された若者のはつらつさと老人の昔と今を比べる口調をは感慨ぶかく、またとてもエキサイティングに仕上がっています。
ヤン・フードンの作品はどれも静謐で、説明的な要素がほとんどありません。だからはっとするメッセージが刺さってくる!という作品ではないのですが、じっと作品に見入ってしまい、余韻が深く頭に残るタイプの作品です。
しかし、どこか繊細な日本のアート作品とは毛色が違うというか、日本では出てこない大陸的な雰囲気を持っています。国立新美術館で2月14日まで行われている文化庁メディア芸術祭と是非はしごして比べてみてください!きっと新しい発見があると思います。

P.S. ヤン・フードンがプラダのメンズウェアの2010年春夏キャンペーンのために制作した「First Spring」というモノクロ作品をプラダのサイトで見ることができます。こちらも必見な仕上がり!
(K.Kouda@TAP編集部)

原美術館「ヤン フードン―将軍的微笑」
2009年12月19日(土)- 2010年3月28日(日)
http://www.haramuseum.or.jp/
http://www.art-it.asia/u/HaraMuseum
ヤン フードン「 将軍の微笑」マルチチャンネルヴィデオインスタレーション、
2009年 原美術館における展示風景 撮影:木奥惠三
「半馬索」35ミリ
カラーフィルム/DVD 7分、2005年
Courtesy of the artist and ShanghART Gallery
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# by tap2007 | 2010-02-04 22:10 | 今、見たいアート | Trackback | Comments(0)

ワタシタチは何者か、ワタシタチはどう生きるべきか?…公募で選ばれた33人から創り上げた群集劇「大市民」

<2010年は、ティーファクトリーの前身「第三エロチカ」の旗揚げから30年、川村毅20歳の劇作家デビューから30年となります。節目となるこの年の第一弾、初心にかえって「一緒にこの作品創るひと集まろう―」というチームで、新作「大市民」を創ろうと思いました。>

川村毅新作、群集音楽劇「大市民」のプレスリリースのこんな書き出しを見て、ああ30年かと思った。時の流れは早い。下北沢などで「第三エロチカ」の芝居を楽しく見たことを走馬燈のように思い出しながら、そこにいろいろな思い出や街の景色が重なり合ってきたが、川村毅を主宰に、当時明治大学演劇研究部の学生を中心に旗揚げした第三エロチカは、本当におもしろい舞台を作り続けてきた。
そして、劇団制にとらわれない舞台創りを目指して、プロデュースカンパニー・ティーファクトリーが設立されたのが2002年。第三エロチカはその中の劇団として位置づけられてきたというが、「大市民」からスタートする一連の30周年事業をもって、第三エロチカが正式に解散するというのも実に感慨深い。
というわけで「大市民」。プレスリリースの続きを読むと実にというか、やはりというか、かなりおもしろい試みなので、そのまま紹介しておこう。

<公募によるワークショップオーディションには老若男女60余名の参加をいただきました。これは役柄があってそれに相応しい俳優を選ぶというものではなく、参加者一人一人が持ち寄ったイメージに喚起されて、現在の「大市民」像を川村毅が描こうというものです。

その中から川村が劇作のイメージを抱いた33人の出演者に向けて、一人一人に宛書きをします。出演者は、生まれたての大学生から、小劇場で活躍の面々、かつて東京キッドブラザースでアメリカツアーに参加して以来約30年ぶりの舞台出演の方まで、キャリアもキャラクターもさまざま。映像俳優、歌手、ダンサー、モデル、身体パフォーマーもいます。

資本主義のほころびが明らかになりつつある現在、ワタシタチは何者か、ワタシタチはどう生きるべきか?…出演者全員のエネルギーで、ドタバタ・カワムラワールド・エンタテインメントを創り上げます。>


音楽は、2009年の「路上3」でも、クルト・ヴァイルばりの、芝居にぴったりの歌を作曲した久米大作。プログレッシブな音楽作りでは定評のある久米大作はこのところ演劇界でもいい仕事をしているが、彼の音楽がこの群集劇を盛り上げることは間違いない。
“庶民とも小市民とも違い、民衆でも大衆でもない、それがいまのワタシタチ。するとワタシタチって何者?”でキャッチコピーも何だかワクワクさせてくれる。
そして秋からは第三エロチカの“解散記念展”や記録誌の出版も予定されているので、今回の「大市民」をきっかけに、第三エロチカを追いかけてみるといいと思う。そこからは“正しい人間力”というものが浮かび上がってくるはずだ。
(N.Tachikawa)

ティーファクトリー「大市民」
日程:2010年3月16日(火)- 22日(月)
会場:吉祥寺シアター
http://www.tfactory.jp/
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# by tap2007 | 2010-02-03 23:15 | アートが匂うエンタテインメント | Trackback | Comments(0)
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東京のイベント、コンサート、映画、展覧会の情報、エリア紹介、季節の特集などをお送りいたします。どうぞお楽しみに。


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