ポスト・タランティーノ時代とゆー無駄にかっこいい時代に突入して久しいクライムアクション映画界。
まぁ本当に、まさしく雨後のタケノコのごとく
タランティーノ風味の映画がたくさんたくさん作られました。
テンポを早めてとにかく詰め込んだ奴とか(ガイ・リッチー)
お手軽にスタイルだけ真似した奴とか(石井克人)
残虐方面だけを肥大化させた奴とか(イーライ・ロス)。
もう2年前くらいになりますか
やはりタランティーノ色を強く感じさせる
『スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい』って映画がありました。
これを見た私の感想は…
面白いはずなのに面白くない。…かなりよくできてたと思うんですよ。
ある意味では、本家を超えるくらいに。
「良いタラちゃん」「おいしいタラちゃん」ばかりを詰め込んで
ご贈答用にいかがですか?って感じに。
でもこの映画が
あの頃のタラちゃん的価値をいまだに追っかけてるのが見えてしまった時点で
なんだか萎えている自分がおりました。
『デス・プルーフ』を見れば明らかなように
タラちゃん本人すら、もう以前とは違うところに立っているのに。
要するに私は何が言いたいのか。
簡潔に表現いたしますと、次のようになります。
おやつもいいけどカレーもね!もとい
真似すんのはいいけど
魂のない映画だけは作ってくれるな。まぁそれはともかく
タラちゃんの子供たちは相変わらず元気です。
そんな玉石混交のオモチャ箱の中から
今年は『シューテム・アップ』という世紀の大発見がありましたが
もう1本、凄い映画がやってきます。
『ワイルド・バレット』。なんせタラちゃん自身が
この新人監督を全力で褒めちぎっている。
ウェイン・クラマーは、脅威の監督だ。
この映画1本で、ウォルター・ヒルやロバート・アルドリッチのような
巨匠たちが住む神殿にいきなり飛び込んできた。タラちゃんはわりと簡単に絶賛しがちな人ではあるんですが
それにしてもこの褒め方は尋常じゃない。
で、実際に映画を見てみたらですね…
面白いんです
コレが
めちゃくちゃ!(倒置法使いすぎるくらい興奮したとゆーことで、ひとつ)ニュージャージーの夜の街を舞台に
一丁のリボルバーとロシア人少年を巡って
イタリアンマフィア、ロシアンマフィア、汚職警官、ポン引き
売春婦、ホームレス、サイコキラー夫婦が
入り乱れてのバトルロイヤル。この映画の魅力を少しでも伝えるべく
事件の発端となる、ロシア人少年の家族が登場するシーンを
試しに文章に置き換えてみましょう。
夕飯時、少年が帰宅すると
電気を消した居間のソファーに上半身裸の父親が座っており
ジョン・ウェインの『11人のカウボーイ』のビデオを食い入るように見ている。
スキンヘッドでガリガリに痩せた父親の背中には
巨大なジョン・ウェインの刺青が彫ってある。
部屋全体に異様な緊張感が漲っており
この父親の精神状態が普通でないことが一瞬にして知れる。
「おい、お前もここに来てデューク(ジョン・ウェインの愛称)の映画を見ろよ」
と息子に命令する父親。
「ここだ。このシーンでデュークが殺されるんだ。
俺は子供の頃、この映画の8ミリフィルムを持っていた。
俺はそれをフィルムが擦り切れるまで見たよ。
アメリカへ来て、テレビでやっていた『11人のカウボーイ』を見て俺は驚いた。
デュークが殺されるシーンがあるんだからな。
俺の『11人のカウボーイ』は10分で終わってしまう編集版だったが
あの不死身のデュークが、俺は本当に好きだった…」
子供は硬い表情を崩さないまま、言い返す。
「僕は見たくない。
その映画はもう何十回も見せられたし、ジョン・ウェインなんか大嫌いだ」
その言葉に烈火の如く怒り、息子に殴りかかろうとする父親。
そこへ、美人だがいかにも弱々しい母親が、食事の乗った皿を手にして現れる。
「夕飯にしましょう。あなたの好きなTVディナーよ…」
「俺は今、デュークの話をしてるんだ!この馬鹿女が!」
吸っていた煙草を食べ物に擦り付けて消す父親。
その隙に二階へ駆け上る息子。
「あの子は育ち盛りなのよ。食事をさせなければ」
と言って階段を上ろうとする母親の顔を、手加減なしで思いっきり殴る父親。
「この家に、デュークを馬鹿にする奴に食わせる飯はねぇ!」
鼻血を流して倒れた母親を罵倒する父親。
その時、背後に気配を感じて振り返ると
能面のような顔をした息子が立っている。
リボルバーの銃口をまっすぐ父親に向けて。
「父さん、デュークはホモなんだってさ」そして夜の街に、一発の銃声が鳴り響く…。
どうでしょう。
拙い文章と頼りない記憶で、3%くらいしか再現できませんでしたが
(8ミリフィルムは5分だったっけ・・・?)
少しは面白さが伝わりましたでしょうか。
脚本はいいし、演出はいいし、俳優もいいし、テンポも最高。
そこにこの映画の魅力をもうひとつ付け加えるなら
“夜の街”の不気味な存在感。実はこの映画、チェコで撮影されております。
このこと自体は最近のハリウッド映画ではそう珍しいことではないんですが
プラハに作られた「妄想のニュージャージー」セットの“狭さ”と“息苦しさ”が
現実と非現実、どちらとも言い切れない独特の雰囲気を映画に与えている。
私はこれを見ていて、石井輝男の『黒線地帯』を思い出しました。
まーとにかく、見ないと確実に損する1本。
公開規模はあんまり大きくなさそうですが
何を措いても劇場へ行かれることをオススメいたします。
最後に…この邦題、何とかならなかったんスかねぇ。
『ワイルド・バレット』・・・
いかにもTSUTAYAの“未公開作品棚”に並んでそう!中身は最高なんですから、気合入れて宣伝しましょうよぉアートポートさん。
(10月11日公開)
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