
ウェス・アンダーソンにミシェル・ゴンドリーにスパイク・ジョーンズ…
私はいまだにここらへんのアメリカの若手監督の見分けがついておりません。
その3人のうちの誰かが監督した『僕らのミライへ逆回転』は
失われゆくビデオ文化へのオマージュとも言える内容になっております。
ブルックリンの街角に取り残された
小汚いレンタルビデオ屋“BE KIND REWIND”。
(返却の際は巻き戻しを、の意)
主人(ダニー・グローヴァー)の留守を任されて張り切る
まじめな従業員のマイク(モス・デフ)でしたが
迷惑常連客のジェリー(ジャック・ブラック)が
ある事情で、体中から強烈な磁力を放つマグネット人間に変身。
(なんだそれって感じですが仕方がありません)
奴が店に入った途端、すべてのビデオのデータが消えてしまったのでした。
そこへ近所のおばさん(ミア・ファーロー)がやってきて
「『ゴーストバスターズ』なぁい?」と。
困り果てた2人にある妙案が。
「1時間後にまた来てください」と言ってミアおばさんを帰した2人は
ビデオカメラを担ぎ出して図書館へ行き
作業着にランドセルという姿で撮影を始めました。
そう。彼らは自前で『ゴーストバスターズ』を作るという暴挙に出たのです。
苦し紛れに生まれた、この「超手作りZ級リメイク映画」が
意外なことに町中で評判になり
今までちっとも流行らなかった店に客が押しかけるようになります。
さあ、珍商売のはじまりはじまり~!見どころは、いかにして手作りで映画を再現するか?というところ。
カメラを回して『2001年宇宙の旅』のスチュワーデスのシーンをやってみたり
女の子に頭からトマトジュースぶっかけて『キャリー』をやってみたり
ポリバケツと泥水で『ロボコップ』の“有毒廃液で全身どろどろ男”をやったりと
(あの映画の白眉は絶対にこのシーンだ!超納得!)
あの手この手と工夫して、インチキ映画を作っていく。
まぁ映画好きとしては嫌が応にも
にんまりとせざるを得ない展開。だいたいビデオ屋を舞台にしているところからしてすでに
その筋の人間に対する挑戦状のような側面がある訳で
かくいう私も、レジの後に貼ってある
『タイムトラベラー 昨日から来た恋人』のポスターを見て
兄ちゃん、なかなかやるじゃないの…と思わずヤクザ顔でにやけてしまったのでした。
映画としての出来という点で言いますと
「手作りリメイク」を通して
「手作りって素晴らしい」ってテーマを
「手作りな映像」で表現(『恋愛睡眠のすすめ』みたいな感じね)
する映画な訳ですが、個人的には少々
過剰な“手作り感”に食傷って感じで、まぁ評価としましては中の上というところ。
しかしこの映画、上に書きました過去の映画ネタ以外にも
なかなか興味深い点がございます。
冒頭に「失われゆくビデオ文化」と書きましたが
実際、現在VHSで映画を見てる人ってのはどのくらいいるんでしょうか。
主人公たちの時代遅れのビデオ屋との対比として劇中に登場するのが
DVDしか置いていない大規模チェーンのレンタル屋。
(イメージは限りなくブロックバスタービデオに近い)
DVDはVHSに比べ、画質はいい、音響はいい
映像特典がつく、字幕が選べる、保存性が高いと良いことづくめ。
レコードがCDに取って代わられたように
より便利なメディアに移り変わっていくこと自体は必然なのだと思います。
しかしレコードの場合は「アナログの良さ」という、CDにない美点があり
マニアやDJと言った、一定のユーザーが確実に残っているのに比べ
VHSは下手をすると完全に淘汰されてしまいかねない。
“絶滅危惧種ビデオ”なんて言葉もありますが
うちらより少し上の世代が名画座を懐かしむように
ビデオというメディアへの郷愁というものがあってもいいのではないか、という視点を
この映画は提供しているのであります。
…と、いかにも第三者的に書いてまいりましたが
私の場合、これはまったくもって他人事ではないのであります。
うちの押入れに入っている(正確には溢れている)数にして1000本を超えるVHSビデオ。これからの彼らの運命は一体…
やっぱ、生ゴミ?
(2008年秋公開)
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