昨日のことだ。
私はそのとき密閉式のヘッドホンをかけ
松浦亜矢の歴史的名盤『ファーストKISS』を大音量で聴きながら
急ぎの原稿をペン入れしていたのだが
ふいに後ろから人の声が聞こえ、死ぬほど吃驚した。
振り返ると、K子がいた。
K子は同じ言葉をもう一度繰り返した。
「来ちゃったよ!」
「・・・え?何で?」と私。
そう。
その日私は、K子と映画に行く約束をしていたのだが
仕事がどうしても終わらず
電話でK子に謝って、ドタキャンしたのだった。
「どうして・・・だってさっき電話で・・・」
「仕事がそんな調子じゃ、どうせろくなもの食べてないんでしょ?
料理してあげようと思って、材料買ってきたの」
「・・・」
「ほらほら、仕事続けて。私は勝手に料理するから」
K子はまるで自分の台所のように
慣れた手つきで野菜を刻み始めた。
私は言われた通りまた机に向かい、仕事の続きをやろうとしたが
何だか目の奥がじんとして、しばらくの間、うまく物が見えなかった。
そう、K子はこういう女なのだ。
デートをドタキャンされ、普通なら腹を立てるところなのに・・・
いや、実際一度は腹を立てたのだと思う。
私がかけた電話は、終わりの挨拶もなしに向こうから切られたのだから。
だが、自分の怒りが収まった後は
相手の気持ちをきちんと考えるのがK子という女だ。
当たり前のことのように聞こえるが
こういうことがちゃんとできる人間は、いそうでなかなかいない。
茄子と手羽先のカレーは1時間ほどで仕上がった。
K子はソファーに座って本を読んだり、私とたわいない話をしたりしていたが
そのうち日が暮れてきた。
「じゃ、私帰るね・・・」
「え、帰るの。
泊まっていけばいいのに」
「仕事の邪魔しちゃ、せっかく来た意味がなくなっちゃうから。
カレー、あっためて食べてね」
「うん・・・ありがとう。駅まで送ろうか?」
「もう、いいってば!何度も来てるんだから迷わないわよ」
そう言って、K子は一人で部屋を出ていった。
その後、K子の作った茄子と手羽先のカレーをあたためて食べた。
何だか久しぶりに、食べ物の味が体にしみた。
心でご飯を食べるって、こういうことを言うんだな、と思った。
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・・・さて、今まで書いてきた文章ですが
この中に一つだけ嘘があります。
それはどこかと言いますと・・・
Kは男。
気の合う同性の友だちと二人でいるとき
たまに、こいつが異性だったらどうなるのかな、って思うことありませんか?
シミュレーションしてみました。
K君、きみは本当にいい奴だ。
カレーまじでうまかった。
今度生まれ変わるときは、どっちかが女になろうね。
や・く・そ・く
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