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カテゴリ:文字のしくみ
A と V

古代ローマの碑文、じつに美しいですね。このローマ字の A と V 、左右の斜め線のうちの A は左側が細い、 V は右側が細い。この太い細いのバランスってどこから来ているんでしょう。

私の本『欧文書体』にも書きましたが、碑文を彫り始める前には下書きをしなくちゃいけません。それを古代ローマの人は平筆か刷毛のようなものでして、それから彫ったと考えられています。それが今の書体のバランスの元になった。そういうことを今から約20年前、イギリスで勉強していて石彫りの人のうちに泊まり込んだときにはじめて教わった。きっと目がまん丸になってたと思う。

平筆を持ってシミュレーションをすると、どっちが細くなるのか一発でわかります。平筆の先端が水平じゃなくて、ちょっと左が下がると書きやすい。

それで書いてみるとこんなふうになる。下に敷いた青い A の字は、ローマの西暦114年ころの碑文を元にした書体 Trajan(トレイジャン)です。デジタル書体時代の今でもよく使われてます。

薄い墨で書いてみました。ね、だから左が細くなる。同じ筆の持ち方で V を書くところを想像してください。逆に V は右が細くなりますね。それがローマ碑文の写真にある AとV の関係です。


サンセリフ体ってありますね。みんな同じ太さの線に見えるやつ。それも、ほんとに微妙に太さの差をつけている場合がほとんどです。これはオモテ。普通に見えるはず。
これはたいがいの書体でそうなっている。いや、そうしなくちゃ気持ち悪い。歩くときに右手と右足とをいっしょに出したみたいで。だから、裏返しのやつを見ると落ち着かないんです。裏返してみました。
by type_director | 2009-06-11 09:37 | 文字のしくみ | Comments(4)
目の錯覚の話
目の錯覚をさりげなく補正するためのトリック、書体デザインの大事な部分です。

たまたま子供といっしょに目の錯覚の話をしていて、アルファベットのXの字は実は2本の斜め線がつながっていない、という話になって、雑誌『デザインの現場』6月号のためにつくってあった図版のうち下の図を12歳の長男に見せたら目が輝いていました。

図左2点は、太い斜め線を2本重ねたもの。右2点は書体として発売されている文字 X の典型的な例。
このように線が交差する場合、線がつながって見えるように、線を意図的にずらします。ままた黒みが集中しないように、太さも中心に近づくほど細くなるようにします。青のガイドラインを引くことで、どのくらいずらしているかがハッキリ分かります。

...というようなことを含めて私が欧文の文字デザインの初歩的なポイントを4ページ書いた『デザインの現場』6月号は、特集「文字のつくりかた」です。

和文の文字デザインにはもっと多くのページを割いていて、良質な日本語書体で定評のある 字游工房 の鳥海さんが和文書体のデザインの秘訣を書いています。けっこう細かく書かれていて、これで文字デザインの基本的な見方がわかるようなユニークな特集です。

実は4月に休暇で日本に行ったとき、この特集の件で鳥海さんとちょっと打ち合わせもしていたんですが、アルファベットと日本の文字と、秘訣と呼べるような部分がけっこう共通しています。前から気づいてはいたんだけど、あらためて記事にして並べるとそれがよく分かって面白かった。
by type_director | 2009-05-27 18:59 | 文字のしくみ | Comments(13)