初めて今回トルコに出張で、トルコ料理といえばドイツ中どこでもあるドネール・ケバブしか知りません。知らない土地で何食べていいかわからないから、自宅からフランクフルト空港まで向かうあいだ、いつも使っているトルコ人のタクシーの運転手オズデミルさんに、トルコの話を集中的にききました。彼は毎年6月にイスタンブールの実家に、途中で仮眠を入れながら33時間走って車で帰るそうです。
イスタンブールでおすすめの食べ物を尋ねたら、迷わず「アダナ・ケバブがおすすめ!」と言われました。
「アダナ」は何のことかときいたら、トルコの町の名前で、運転手さんは実際にアダナの町で育ったそうです。「次回タクシー乗るときにアダナ・ケバブの感想をきかせてくださいよ」と言われたので、イスタンブールで絶対に食べなくちゃと思っていました。
いいこと聞いた。私からは、日本では「あだ名」というとニックネームのこと、と教えてあげたけど、あんまり役に立たない情報ですね。
コンファレンスの自分の出番が終わった翌日、お昼に食べるつもりでホテル付近を歩き、ケバブを出してくれそうなレストランの看板を見ると、2件に一軒くらいの割合で Adana Kebap が出てます。
ちょっとゆっくりできそうなレストランに入って食べてきました。
棒状にしたハンバーグみたいなのは香辛料がきいていてちょっとだけ辛い、けど辛すぎない。ご飯がついていて、ご飯の部分はちょっとモチモチ感があって、それも気に入った。
ここまでだと、ただの食べ歩きの話なんですが、ここからは以前使ってた印刷機の話。
ケバブのことはオズデミルさんにきくまで知らなかったので、実は、「アダナ」という名前で最初に思い出したのが、
この印刷機 です。
アダナ印刷機の名前は、このトルコの町のアダナからきていると言われているけど真偽は不明だそうです。
印刷機のほうのアダナは、トルコの国旗の色より深い赤色です。大人っぽい深みです。世界中にマニアがいるらしい。
実は私もアダナ Eight-Five を使っていたことがあります。日本にいたとき、小石川にある凸版印刷博物館で、このアダナを使っての印刷体験をお手伝いするインストラクターをしていたし、当時住んでいた新宿のマンションにも、人から譲り受けたアダナを置いて使っていました。2001年の年賀状はそれで刷りました。
上のサイトでは、最初のアダナが出荷されたのが1922年11月だそうで、去年が90周年だった。記事の下の方には、販売代理店はイタリア、トルコ、ギリシャ、インドなどにもあって世界100カ国近くで売られていたそうです。「最後のアダナ Eight-Five は1999年に日本で売られた」と書いてあるから、それが印刷博物館で使っているものなのかな?
私が自宅で使ってたアダナ Eight-Five は、ドイツに引っ越すことになったときに、やっぱりちゃんと使い方を知っている知人に引き取ってもらいました。いまも使ってくれています。
そういう、マニアからマニアに渡って長く使われ続けるみたいなのって、グッとくる。なんかクラシックカーとかに通じるものがあるんじゃないか?
そんなわけで、今回、トルコ人のオズデミルさんとのたわいもない雑談のおかげで、食べ物と印刷機の「アダナ」が自分の中でつながった。こんなつながりは想像してなかった。
いま見たら動画もあるんだね。
しおりを印刷しているところ(13秒)
小石川の印刷博物館にあるアダナ、日本語の説明付き(9分51秒)