ペーパーバックの数が増えていく TEXT+PHOTO by 片岡義男

40 良く出来た表紙というものは

b0071709_10481142.jpg リチャード・ニーリーという著者のこの作品は、サイコーティックな殺人者をめぐるサスペンス小説であるようだ。僕はまだ読んでいない。ほかにどんな作品があるのかも知らない。一九六九年にシグネット・ブックスのオリジナルで刊行されたものだ。
 ペーパーバックの表紙に裸の女性が写真で登場する例は、たいへんに少ない。ここにあるこの表紙は、ほとんど例外的な存在だと言ってもいい。その例外的な存在が、巧みにデザインされたものであることを、買った人としての僕は喜んでいる。
 縦に長い長方形のスペースに、必要なものすべてが効果的に収まっている。タイトルと著者名、それを分かつ白い線。タイトルの上の小さな文字によるコピー。ぜんたいがきっちりとまとまって緊張感を維持している。画面の右側にあるテーブル。その上のカクテルやバッグ。そして電気スタンド。背後の壁がそれを見る人の視線を垂直に受けるだけとなるのを避けるため、画面の左側に、手前に向けてのびる壁の一部分を取り込んでいる。壁がこうしてごく単純に二面になるだけで、視覚でとらえるこの光景に奥行きが生まれる。
 フロアにある白いものは、毛足の長いカーペットだろう。その上に女性の裸体が横たわっている。女性の体の特徴をうまくとらえ、それをじつに巧みにモデルのポーズで表現している。脚の重なりぐあいや両腕の位置も、完璧だと言っていい。髪も素晴らしい。そしてこの裸の女性は死体なのだ。
 少なくとも画面のなかに見るかぎりでは、彼女は全裸であり、それがペーパーバックの表紙としては珍しい。しかも表紙ぜんたいのデザインが、いま書いたとおり、良く出来ている。落ち着いた雰囲気すら漂っている。読んでみようか、と思わなくもないのだが。
by yoshio-kataoka | 2006-10-10 10:50




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