佐々木明(ガーラ湯沢)、3年ぶりの表彰台2位!!日本勢(佐々木明2位、皆川賢太郎6位)快挙達成で
トリノ五輪への期待高まる
佐々木明は土壇場に強いということを久しく忘れていました。いや、本当に勝負強い。
もともと今回から3シーズンぶりの第1シード落ちということになったわけですが、本人はそんなことはまったく気にもならない様子でした。というより自分のスタートは16番だとスタートビブを朝もらうまで思っていたようで、800ポイントルール(現在の総合のスターティングリストで800ポイント以上持っている選手に限って15番の次にスタートする権利がある:今回の対象者はボディ・ミラーとアクセルンド・スヴィンダルの2名)が2名適応されて18番だとわかったときは、コース整備後すぐに滑ることができないことだけを嘆いていたのでした。というのも16番以降に勝機があることを本人が理解していたので逆にいい感触を感じていたといったほうがいいのかもしれないのです。
5万人近くがこのシュラドミングという小さな町に一気に集まり、熱気むんむんのレース。これぞアルペン王国オーストリアを感じさせてくれるSL最高峰のクラシックレース。キッツビューエルよりもむしろ観衆が集まるこのレースにこそ勝ちたいと思うレーサーが少なくないことが理解できます。
そして昨晩から下がった気温は今日日中、晴天であったおかげでさらに下がっているように感じさせられます。朝の最低気温がマイナス20度だったので今はマイナス15度はあるのでしょうか?コースも水が撒かれて非常に硬いバーンに仕上がっています。ただインジェクションによって水が浸透していますので、ただのアイスバーンというよりはグリップが効くレースとしては絶好のコンディションです。

1本目18番スタートの佐々木明は硬くて急な斜面をいとも簡単に降りていきます。
「攻めているときほどたぶん余裕があるように見えるのではないかな?それぐらい今日はいけると思ったし、1戦ですぐに第1シードに復帰してやるって思っていた。1本目はリズムもよかったし、後半もポール間のディスタンスが少しこれまでとは広くなって高速SLなので得意意識が強かった。でもちょっと後半はよれちゃったかな(苦笑)」
というように前半の中斜面や急斜面の前半部分は他の選手に比べてもゆっくりに見えるほど、非常にリラックスして滑っていました。タイム差もカレ・パランダー(FIN)に遅れること0.56秒。ゴール時点で暫定4位でしたが、20番スタートの皆川選手の素晴らしい攻めの滑りで1つ順位を落として5位でフィニッシュ。
「18番スタートがこんなに滑りやすかったなんてびっくり。特にこの時期はコースが非常にいいので、コースに一度傷がついて、スキーが引っかかりやすい時間帯に当たってラッキーだったかな」
でもこの辺のスタート順では18番佐々木明、20番皆川選手がトップ10以内のタイムを出しましたが、それ以外の選手は非常に苦しんでコースアウトする選手が続出。やはり彼らは現在戦える実力を備えていたことを周囲に再確認させることになったわけです。

また今日は日本勢は5名が出場しました。ビブナンバー52番の湯浅選手は中間計時で1.13秒遅れの23位で通過し、さらに後半の急斜面で果敢に攻めて15位以内は確実かと思われたのですが、ゴール前の斜面でバランスを崩し大きなタイムロスを犯しながらのゴールで残念ながら2本目に進出することはできませんでした。また63番ビブの生田康弘選手はコースアウト、75番ビブの岡田利修選手は40位で2本目に進むことができませんでした。
1本目を振り返ると、4位の皆川選手の安定度の高いそして全盛期を上回る反応スピードの速さと正確なスキー捌きは非常にクオリティの高さを感じさせましたし、もちろん佐々木明のダイレクトで正確な攻めも徐々に安定度を増してきて頼もしさを感じさせられました。1本目日本勢が4位、5位と複数で上位に来たのは初めての出来事ではないでしょうか。

そして迎えた2本目、セッティングとしては1本目よりさらにポール間のディスタンスが広くなりリズム的にも非常にいいセッティングがたちました。ターン数で1本目より3ターン減りましたので、さらに高速レースになることがレース前から予想されていました。
1本目10位と珍しく振るわなかったベンジャミン・ライヒ(AUT)でしたが、2本目歴代優勝者の意地を見せてスーパーランを地元で披露し、暫定のベストタイムを記録します。その後、多くの選手のタイムが伸び悩みライヒがトップのまま1本目5位の佐々木明のスタートとなったのです。

「とにかくこのコースは無駄な動きは禁物、急斜面で一番速くてうまいのは俺だというのをこの大観衆に見せつけてやるという気持ちで滑った。ゴールしてすごい充実感を味わって本当に気持ちよかった」
佐々木明は久々に2本目も最後までノーミスでゴールラインを通過しました。中間計時で0.2秒強ライヒのタイムに遅れをとりましたが、その後の急斜面でまったくスキーのずれない彼本来のアドバンテージをこのもっとも大切な局面で発揮することができたのです。遅れを取り戻しなおかつ0.02秒という本当に僅差ではありましたが、ライヒのタイムを上回りトップタイムを奪い返したのです。近くで見ていてライヒの落胆ぶりはすごくカメラの前では気丈にしていましたが、そこから外れた場面では、ショックを隠そうともせず悔しがっていました。
そして次に皆川選手が登場。中間まではアドバンテージをキープできていましたが、後半失速し、暫定で5位でゴール、今時点で日本人が一桁入賞を決定付けました。

そして、1本目3位のシェーンフェルダーはリズムが取れないままに暫定10位でゴール、この時点で佐々木明の表彰台が決まりました。次のレーサーはジョルジョ・ロッカ。前半部分は無難にきますが5連勝当時の勢いは感じられません。後半の急斜面でもいつもよりスキーがずれているように見られ、昨年後半でコースアウトしたトラウマがあるのか、または佐々木明のタイムがプレッシャーになったのか、ターン前半でスキーをずらし気味に捌いてきて、問題のゴール前部分で彼にとっての悪夢を再現する形になり痛恨のコースアウト、この時点で佐々木明にとって自己最高タイの2位が決まった。
そして最後のレーサー、カレ・パランダーがスタート。
「難しいレースだったけど快心の滑りができた」
と本人が振り返るようにまったく危なげなく、そしてノーミスでタイム差を広げてのゴール、今シーズンの初優勝が決定した瞬間だった。
「勝つまでは難しいなとは思っていたので、優勝できなかったショックはないですよ。もう次のレースに対して自分が準備しなければいけないことがはっきりと見えてきているから。表彰台の上からの景色を3年ぶりに見ることができてすごくモチベーションが高まるのを感じた。感触?悪いわけないでしょ!!」
日本アルペン界悲願の優勝には一歩及びませんでしたが、佐々木明を含め日本勢の活躍が光ったSLクラシックレース、シュラドミング大会1ヵ月後にトリノ五輪SL本番を控えて、日本チームの勢いがさらに増したことだけは確かです。レース本番が待ち遠しいです。
写真提供:SALOMON_Pentaphoto