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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
最近のテレビは食いものの番組で占領された感がある。
何の変哲もない食事を、タレントがもっともらしく口に含み、ややあって“いやーこれは素晴らしい”とか何とか褒める。なんでぇこんなまずいものと思いながら褒め言葉を考えているので、タイムラグを生ずるようだ。 そして最近の傾向は医学番組の氾濫である。 真面目な啓蒙番組というより、ワイドショーである。 大したことでもないのに、おっかなく仕立てたり、一番困るのは、これですべてが解決と、まだエビデンスもなく定説にもなってない、ことを強調することだ。 昔の医学番組はもっと素朴だった。 素人に知って欲しい常識を、淡々と語る。なにも手の込んだ張りぼてなど作らず、簡単なイラスト程度で間に合った。 40年前、“唇裂の話”の時にプロデューサーがそっと教えてくれた。 “医学番組は一番金がかからないんですよ。「先生」と相方のアナウンサーがいれば、それにちょっとしたイラストを用意するだけで済みますから。” 「先生」のギャラが、タレントより一桁も二ケタも下だと言うことは触れなかったが。 たしかに最近の医学の進歩は目覚ましく、またあまりにも専門化されてきたので、我々でも専門外の新知識はテレビ番組で得ることも多いのは確かである。 だが、そんなに革新的な発見が年中生まれるわけでもないし、一つの手法で万事解決などあり得ない。 また手術にしても人の技(わざ)である。“神の手“等、いかがわしい言葉が連発されると、神様も迷惑至極だろう。 テレビは視聴率がすべての世界である。 どんな手を使っても興味をそそろうとする。 その為に誇張、やらせが横行する。 そのため、ニュース番組では、いくら重要でも、ビジュアルなものがなければカットされてしまうと言う。 医療の世界では反対に、いくらニュース性がなくても、ビジュアルにどぎつく加工できる。 グルメと医療、そしてワイドショーという白痴番組。この金はかかるが安価な三点セットでテレビは墓穴を掘り続けているのではないか。
福岡で開催された三日間の日中形成外科学会を終えて帰宅したところ。
今回が21会目だったが、会長の福岡大学の大慈弥教授の人気もあってか、今までにない盛会だった。 ![]() 20年前、さまざまな困難の末開催された、西安での初回会議を思い出して、感無量だった。 会議そのものも充実していたが、圧巻は会長招宴のアトラクション。 福岡大学付属若葉高校のダンス部の演技。国際大会で優勝しただけあって、若さの炸裂した、ベジャールのバレーローザンヌ顔負けの迫力のある踊りだった。 ![]() 〆の挨拶を指名されて僕はこう言った。 「日本にとって中国は最も近く、最も遠い国である。一つには我々が、太平洋の反対側にばかり気をとられ、我々の文化のルーツをないがしろにしてきたからでもある。 それどころとか、つい先ごろは、欧米の植民政策の尻馬に乗って、多大の迷惑をおかけした。 だが、その非を未だに認めようとしない輩がのさばっていることは、同じ日本人として、まことに申し訳なく思う。 だが、学問に国境は無い。 これからは良き隣人として、形成外科の発展のため、共に歩み、また学問を通じて、日中の親善を深めていきたい}と。 最近、「国家のプライド」を云々することが流行っているが、虚心に己が非を認めて謝罪せずになんの「品格」かというのが、僕の本音である。 ![]() フォトは、この挨拶に暖かな拍手で応えてくれた隣国の賓客たちである。
今朝の日経新聞に以下の記事があった。
「厚生労働省は麻薬注射や投薬など、現在は原則として医師にしか認められていない診療行為を担う看護師制度を創設する。5年以上の実務経験があり、一定の研修を受けた看護師を「特定看護師」【仮称】として認証し、2013年度をメド二救急や在宅医療の現場に導入する。医師を補助する看護師の役割を広げ、医師不足の緩和や医療サービスの効率化につなげる狙い。年内に制度案をまとめ、来年の通常国会に関連法案を提出する方針だ・・・」 朗報である。 医師の間では反対もあるかもしれない。また、現状を知らない一般の方は不安に思われるかもしれない。 だが、僕は大賛成である。 医師不足などというケチな次元の問題ではない。 これで看護師の本来の能力が認められ、活用されると言うわけだからだ。 そもそも、恥をさらすようだが、患者さんの状態は看護師さんの方がよく把握していることが多い。 患者さんに接する時間も多いし、また、患者さんも医師に対するような遠慮もなく、本音が出せるからである。 また、僕の専門とするキズの処置にしても、実際にキズをよく診ているのは看護師さん達である。 また、患者さんの訴えを直接受け止めるのも、彼女らである。 だから、彼女らはよく勉強する。なまけものの医師よりはずっと最新情報をつかんでいる。 その為、主治医との間に深刻なギャップを今までは生ずることもあった。 僕の尊敬する東大の老年看護学の真田教授など、そういう意味で看護学のチャンピオンである。 ついでに言わしてもらうと、医学部と看護学部の両方の面接に関わって感じたことだが、看護師志望の方々の方が、医師の志望者よりもはるかに目的意識の高い方達が多いのも事実である。 是非この制度が実現するように。 また、全国の看護師さん、ぜひ頑張ってください。
大慈弥君の第34回日本美容外科学会に出席、福岡での三日間を終えて帰宅したところ。
さすが大慈弥君である。 美容外科の最新話題、解決を迫られている政治的な難問、すべて網羅して盛会裏に終わった。 参加者700名。ということは1000名の会員組織としては、異例の高出席率である。 ![]() そしてこの後期高齢者も、ランチョンの座長、基調講演、シンポジュームの司会、そして2回の乾杯の音頭を務めさせていただき、くたくたになってしまった。 ![]() だが、大変実りある学会であり、また、後期高齢者には大変有効なアンチエイジングの三日間だった。 ![]()
今日もまたニア午前様。
二つの日本美容外科学会の統合問題の討議。 幸いコンセンサスが得られて、合併への道を歩み始めることとなった。 これもまた別の機会に、ご説明させていただく。
先ほどまで“射手座”と夕食を食べながら、介護について話し合っていた。
射手座はというのはあだ名で、配偶者の友人である。 我々より二回りも若いが、たまたま誕生日が僕と同じ射手座の12月14日なので、配偶者が誕生日を一緒に祝ってくれる仲だ。 射手座というのは、一か所にじっとして居れず、飛び回るのが性癖とされているが、僕も彼女も其の呪縛にかかっているので、話は会う。 働く必要のない御身分だが、何か役に立つことをと、介護という最も大変だが、もっとも今必要とされる分野に身を捧げている。 丁度我々夫婦も80の大台を前にして、要介護になったらどうすべぇと悩んでいたところなので、彼女の現場での苦労話は大変参考になった。 ちなみに平均寿命が80前後、というのは今の先進国の標準だが、最後の5年間は要介護というのも平均の値とされている。 結論から言うと ①こと介護に関しては、いつ、どういう形で必要になるかは分からない。 ②今の介護制度は朝令暮改で現場では泣かされる。 ③どのような形の対介護準備が望ましいかは、あまりにも個人差があるので一般論は成り立たない。 ④また、介護施設も様々なカテゴリーがあり、厳密には20ほどだが、どれを選ぶかは、その人の状態、好み、家庭事情、経済状態など、受ける側の条件も様々なので、非常に選択は難しい。 ⑤これに医療が絡むと、問題はさらに複雑になる。 ついでに話題になったのが遺言書である。 僕みたいな若造はまだ遺言書などと思っていたが、これは80にもなればとっくに準備されているべきで、人によっては毎年年が改まるごとに書き改めるそうだ。 幸か不幸か、遺産と呼べるものは残りそうもないが、埋葬の方法ぐらいを決めておかねばと思う。 この前の日曜日に多磨墓地に墓参したばかりだが、正直、あんな狭い地下の穴倉に閉じ込められるのは、射手座の性に会わない。 灰にして、野山か大海原に撒いてもらうか、そう、チベットあたりでは当たり前の、鳥に食べられる鳥葬などは如何かと考えている、これなら鳥と共に大空を駆け巡ることになるから。
最近どういうわけかテレビの医学番組が急増している。
最も多いのは食べ物の番組だが、医学番組はそれを追っかけている感じだ。 最近の医学の発達は目覚ましく、我々医者でも専門外のことは意外にテレビで知ったりもする。 啓蒙という意味では随分役立っていると思うが、中には随分乱暴な危ない番組もある。 ま、すべてがワイドショウ化しているせいだろうか。 エンターテイメントと銘打ってる番組もあるようだが、これはもう論外である。 一つには、本の題でもそうだが、断定的か刺激的でないと視聴欲をそそらないからだ。 初めてとか、絶対とか、間違いだらけとか扇情的な表現が好まれる。 治る場合もあるでは、インパクトが弱いとなると、必ず治るとか、これですべてが解明されたと言いきる。だが本当はある一つの関連あるファクターが見つかったにすぎないことの方が多い。しかもまだ動物実験の段階にすぎないこともある。 視聴者は心してみる必要がある。 取材を受ける側にも、ある程度の心がまえが必要だ。 大体個々の取材に入るときは、あらすじというかシナリオはできあがっていて、個々の被取材者の言葉は、それに都合のよいものだけを拾っていく。 極端に言えば全体の文脈の中で、自分の意図が逆転させられていることが分かってももう手遅れということもある。 問題はそのシナリオ作りの段階で、適切な専門家が関わっているかどうかにもある。 だが、バランスの取れた意見だと面白みがないので、ともすると学会での問題児の発言にプロデューサーが引っかかってしまうこともある。 しかし、プロデューサーは手の内を明かしたがらないものだから、共犯者にされぬよう、細心の注意は必要だ。 僕は原則として取材を受ける際、 ①まず、取材なのかその下調べの段階なのかはっきりさせる。 ②また、ほかに誰を取材したか、またする予定か知らせてもらう。 ただこれはオーム事件以来、放送倫理コード上、難しい面もあるというが、オーム事件の大ポカと医療の取材とは、本質的に異なるはず。 ③上記が満たされれば、取材に応じることになる。そしていったん取材を受けた後は、その料理法についてはとやかく言わぬことにしている。 医者の言うことが、必ずしも患者の知りたいことに答えてない場合もあり、そのギャップを埋めるのは、プロデューサー方の役目であり、権利でもあるから。 というのが医療について取材を受ける場合の僕のおおよその原則だ。
今日、三男から約束の時間に遅れるが、という電話が携帯に入った。
何か一緒に仕事をしているのが足に熱湯がかかって火傷になり、某大学病院の皮膚科で治療を受けているからという。 別に某大学では悪いわけではないが、この親父だってかつては形成外科医として火傷の治療を専門にし、日本熱傷学会の会長まで務めた男のはずである。 “なんで俺に知らせなかった?”というと、 “いやー、ちょっと、忙しい親父を煩わしくなくて…“ と歯切れが悪い。 と、昔のことを思い出した。 次男がイェール大学に留学中のこと。赤ん坊にやけどをさせてしまった。 慌てて手元にあった「家庭の医学」の火傷の項を“ふん、ふん”うなずきながら読み始め、最後の執筆者の名を見て“やべぇ、親父が書いている”と言って、本を放り出し、早速救急室に赤ん坊を連れていったことがある、とあとで嫁さんから話を聞いたことがある。 僕は家では信用がない。 我が家は無医村だと配偶者は公言する。 彼女が最初の妊娠でつわりで不調を訴えた時、頭が痛いならと精神科に送り込んだ前歴があるのでやむを得ない。 弁解にはならないが、当時の女性誌に「決して医者とは結婚するな」という記事があった。 「貴女は人類愛に燃えた崇高な男と結婚したと思うかもしれないが、その崇高さは、昼間のうちに患者のために使い果たし、貴方のもとに戻ってくる男は医師ではなく、其の燃えカスである。」 配偶者がそれを見つけ、「もう手遅れね」とため息をついたとは、以前書いた記憶があるが。
今日は一日医者通い。
朝は眼科。 前回のレーザー治療の効果もあってか、徐々に回復は進んでいる。 主治医としては、もう一回レーザーを打ちたいところだが、あまりにも黄半分に近いので、このまま経過を見たいという。 次は歯科。 これまで、左上と右下と、ブリッジを支えている臼歯の治療を続けていたが、先々週から左上の小臼歯がいたずらを始めている。 元来、抜くべき歯をだましだまし抑え込んでいるので、今度何か起こったら入れ歯しかありませんな、と脅かされている。 自分が医師であるので、時間的にも、治療面でも、またこの春の連休など救急患者として随分と便宜を図ってもらうことが多いが、これが普通の患者だったら毎日が医者通いでつぶれてしまうのでは、と申し訳ない気がする。 その意味でも、予防医学でもあるアンチエイジングには若いうちから真剣に取り組むべきだと、改めて感ずる次第。
先日富士フィルムの研究所で、「アンチエイジング」と「再生医療」の話をさせていただいた。
当然のことながら、フィルム技術を支えてきた「高分子化学」を、この二つの分野にいかに役立てるかという命題である。 この三つを結び付けるのは、何か落語の三題噺にも聞こえるが、講演の準備をしながら、この三者は意外に関連性があるのに気がついた。 その軸はコラーゲンである。 まず、人間の体全体は、皮膚というフィルムで覆われている。これが損傷を受ければ、感染を防御できず、また体液の漏出も防げない。つまりただちに生命が脅かされる。 勿論、皮膚は高分子フィルムよりはるかに複雑な構造を機能を有しているが、基本的には、この二つのバリア機能である。あ、今一つ、知覚器官でもあるが。 そして20年ほど前、シリコン膜を基材とした人工皮膚が考案された。バイオブレーンという。 それなりに熱傷患者の治療に使われたが、高価なことと、長期の生着が不可能なので、すたれてしまった。 そして最近話題になるのが、再生医療である。これは本人の皮膚の基底層と呼ばれるところにある幹細胞という、いわば表皮細胞のもとの細胞が利用される。具体的には切手大の皮膚から三週間ほどで全身を覆うだけの皮膚シートがつくられる。本人の細胞だから拒絶されることは無い。 これを企業化したのが、ブログにもたびたびご登場いただいた(株)J-tecで、その製品がジェイスである。 この培養皮膚の生着に重要なのがコラーゲンの存在である。 今のは皮膚が欠損を生じた時の話だが、老化した皮膚の若返りはどうか。 これもコラーゲンという高分子が関わっている。 表皮の下にある真皮層は大部分がコラーゲンで、その劣化とひ薄化が皮膚老化の最大原因だ。それを何らかの形で補充するにも、富士フィルムの高分子テクノロジーが応用されて良い。 工学者はいろいろなテクノロジーを開発している。 我々医療側は、この疾患の治療にはこういうものがあればと模索している。 この二つを結びつけたのが医療工学であり、その結果生まれたももの一つが現在脚光を浴びている再生医療だと御理解いただきたい。 だが、その成果がベッドサイトの患者まで還元されるには、まだ遠い道のりがあることは確かだ。 |
![]() 塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日) by n_shioya 以前の記事
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