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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
今日は久しぶりのドサ廻りだった。
ドサ周りとは失礼な、と愛知県岡崎市の方は言われるかもしれないが、僕これを楽しんできたので、誤解ないよう願いたい。 あまり聞きいた事もない、自分でわざわざ行くことのないような僻地?に、また失礼なことを言ってしまったが、仕事を口実に訪れることができるのは、得難いチャンスである。 今回も目的は、「モイストヒーリング」のセミナーで、対象は愛知学泉短期大学の幼児教育学科の生徒さんたちだった。 教室いっぱいの若い女の子に拍手で迎えられたのは、最近はめったにない経験なのですっかり嬉しくなってしまった。 「モイストヒーリング」はこれまで何度もブログで取り上げたので説明の必要はないかもしれないが、一言でいえば、“傷を乾かしてかさぶたを作って治そうするのは間違いで、傷口から染み出る体液を逃さず、湿潤環境を保ったほうが傷が早くきれいに治る”という最近の「創傷治癒」の理論である。 そのために開発されたのが、ポリウレタンフィルムとハイドロイドを組み合わせた「モダーン・ドレッシング」で、医療用には各種の製品があるが、家庭用にはジョンソン&ジョンソンから「キズパワーパッド」という商品が発売されていることは先刻述べたとおり。 「モダーン・ドレッシング」の解説もさることながら、このような機会に僕がいつも強調するのは次の数点である。 まず、傷を治すのは本人の持つ、「自然の治癒能力」であり、医師の務めはそれを助けるだけにすぎないこと。 そしてその「自然の治癒能力」のメカニズムをまず理解することが大切なこと。 また「モダーン・ドレッシング」はすぐれものであるが、それなりに正しい使用法や効用と限界を理解しないとかえって問題を起こすこともあること。 ちなみに怪我であれ、手術の切開であれ、いったん出来た傷は消せないこと。我々形成外科医に出来ることは、その傷跡をなるべく目立たなくすることである、等々。 そしていつものように、最後は次の点を強調して締めくくった。 すなわち、5人の子供を育てた経験からいうと、といっても僕ではなく配偶者の役目だったが、子供が怪我をしないで育つのは奇跡である。 むしろ、元気に遊ぶのが子供の役目であり、“怪我をするのも子供の特権”と思ってほしい。それだけうちの子は元気なんだと受け止め、親御さんは怪我をさせまいと過保護にならずおおらかに育ててほしい。 また、怪我を親の責任と思い込むと、そのギルト・コンプレックス(過度の罪悪感)は決して子供に良い影響を与えない。 ただ、運悪く怪我をした時には、その時点で可能な限り適切な処置を行い、また必要なら医師の指導を仰ぐのは親の務めではあるが。 まだ二十歳の若いお嬢さんたちだったが、熱心に聞いてくださって、最後はまた盛大な拍手腕見送られ、こちらも十分満足して新幹線で帰宅した。
by n_shioya
| 2008-12-03 23:12
| キズのケア
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Comments(6)
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icelandia at 2008-12-04 01:19
とびきりフレッシュな女性陣に囲まれた楽しい遠足だったと書くのが恥ずかしくて、ドサ廻りとおっしゃっているように思えます。ですよね?!
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kenjyuojisan at 2008-12-04 08:07
今日友人に勧められてこのブログを拝読して感銘しました。70才以上のブラガーはそうざらにいるものではありません。しかも毎日更新となると大変です。私も70才のブロガー(http://kenjyu.exbiog.jp/)で毎日更新していますのでその大変さがよくわかります。
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vicoprofen at 2008-12-04 15:08
子供の頃は必ずどこかに外傷がありましたね。大人になったら内側の傷が目立ちます(笑)。昨日、血流障害で病院へ行ったのですが、処方箋に担当医の判があったのでジェネリック医薬品に変更することが出来ませんでした。このシステムはなぜあるのかな?
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n_shioya at 2008-12-04 22:50
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n_shioya at 2008-12-04 22:51
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n_shioya at 2008-12-04 22:53
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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