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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
若い医師へ
数日前に届いた同門会誌「匠」に伊藤元助教授巻頭言が載っていた。
伊藤先生は僕が在任中、腎不全で完全透析にもかかわらず、助教授として無能な僕をよく支えてくださった。
温厚だが我慢強く、一度も弱音を吐くのを聞いたことがなかった。
助教授は教授にとっては女房役であり、教室員にとってはお袋のようなものである。僕が23年の教授職をつつがなく勤め上げることが出来たのも、ひとえに伊藤先生のお陰である。

心を打たれる巻頭言なので、是非皆さんに、特に若い医師の方々に読んでいただきたく思い、全文を掲載させていただく。

『巻頭のことば』
    同門会会長 伊藤 正嗣

 「私は最近10ヶ月ほど入院治療を受けた。痛みは耐えがたいもので、最初の半年はこのため不眠が続いた。幸い手術を受けて、長い経過ではあったが退院する事が出来た。
 入院患者で扱いにくいのは役人と医者と言われているらしい。
 其の医者が一人の患者として入院した思いを記してみた。
 手術と言うのはつくづく大変だと感じた。無論この場合は手術をすることでなく、手術されることである。
 医学は進んで色々な病気を治せるようになったけれど、手術はやっぱりしんどかった。
私達形成外科医は何気なく、手術をして苦しむ患者に「頑張りなさい」なんて言ったけど、切られる方はまさに死ぬ思いである。
 私は医師になってから約40年の間に、小さな手術を含めて数千列はやってきた、手術は日常茶飯事であり、手術後も適切な対応をして来たと思っている。しかし、今回手術を受けてみて、患者の術後の苦しみが本当に辛い事をしらされた。逆の立場におかれてみて、本当の苦しみを分かっていたかと言うと自信が無い。
 手術後、患者が傷の痛みを熱での苦しみを訴える時は確かに患者の苦しみを知って注射や内服薬を投与するが、患者を離れるともう彼の苦しみは忘れてしまう。
 しかし、当の患者は主治医が忘れている間も痛みに耐え続けているかもしれない。
 患者の立場に立って手術を行っているつもりでも、実際は何も考えずに行っていたと思う。
 形成外科医として手術に自信が付いてくるのは、30代半ばから40代ではないかと思う。
この頃は体力もあるし、なんでも出来ると言う思いが湧いてくる。だが患者の苦しみまでは分からない。
 今回手術を受けてようやく患者の立場になれた様な気がする。他人の苦しみを自分の事に置き換えて、其の2割でも考えようなら真の友人であり、5割も考えられたら聖人で、
8割を越すようなら神か仏だと言う。100%までは行かなくとも5割くらいは分かって欲しい。
 私は手術前に検査に継ぐ検査でだいぶ疲れた。術後もX-P・CT・MRI.採血と毎日の
ように検査が行われた。どの検査も必要であろうが、中には医師の興味本位や、調べておいた方が無難といった理由から行われたと思われることもあった。患者は其の検査でどれだけ苦しむかをまず考えるべきと思う。
 若い30代の医師は60・70代の気持ちを推測する事は難しい。老いた人の気持ちは今最も知られていないかもしれない。
 患者の真の痛みを知らずに、立派な手術をしていると思い込んでいるのかもしれない。
 私もこういった思いで手術を行っていれば・・・と反省する今日である。

 年寄りの愚痴になってしまったが、若い医師の昼夜を問わずの働きに感謝している。」
by n_shioya | 2006-12-14 22:20 | コーヒーブレーク | Comments(2)
Commented at 2006-12-14 23:35 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by n_shioya at 2006-12-15 09:34

“門松は冥土の旅の一里塚。めでたくもあり、めでたくもなし。”
一休和尚のひねた名句です。昔は正月に一つ年を取ったもので、へ、へ。
でも有難う。


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