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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
進駐軍がやってきた
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机の周りがあまりにも乱雑になり、身辺整理をしていたら昔の掲載記事が目に留まったので、ここにご紹介する。
2000年9月の「諸君」の特集「進駐軍がやってきた!80人の証言」の一つである。
『その日の昼も我々四人は、築地明石町の一膳飯屋の二階で豚鍋をつっついていた。
 川向こうには、黄色い煉瓦の聖路加病院が聳えている。 
 戦後まもなく聖路加病院は進駐軍に接収されて、海軍病院(今の国立がんセンター)と同愛病院を合わせ、東京陸軍病院として米軍の極東での医療センターとなっていた。我々がそこでインターンをしていたのは昭和三十年のことである。
我々というのは、新潟大学の橋本、大阪大学の三木、日本大学の柳沢そして僕の四人である。
米軍病院では、すべてが驚きであった。
まず、聴診器が違う顔をしている。学生時代のは、耳に当てる部分が、耳の穴に唯つっこむようになっているだけの、明治の頃から変わらぬスタイルで、今のイヤフォーンの様にバネの支えを持たず、僕の様に耳の穴が小さいとすぐ外れてしまう。その為実習で聴診に難航して指導教官に訴えると、テメー、誠意がないからだ、と必勝の信念で自滅していった、旧日本軍のメンタリティでどやされる。おかげで僕は心音もろくに聞けないまま、医学部を出されてしまった。
もっと本質的な違いは、ディスカッションである。日本の医学部では、教授がオールマイティで、批評は許されない。まして他科の教授が口を挟むことはあり得ない。すべてのカンファレンスは国会の審議と同じで、時間潰しの茶番である。
 それが、アメリカ式のCPC(臨床医と病理学者の合同会議)では、ふだんは縁の下の力持ちの病理の教授が主役である。肝心の病理の確定診断を伏せ、途中経過だけを明かして、当該科以外の教授に診断を試みさせる意地の悪い試みである。結構有名な教授でも間違った診断をくだし、学生も居並ぶ満座の中で、恥をかかされる。なかなかに楽しめる知的ショウである。このような面子を抜きにしたディスカッションは、日本の医学部では不可能であったし、今も成功しない。官僚と同じく日本の教授連は、自分の恥部に関しては、なりふりかまわず守秘義務主張する種族であるから。
だが最大のカルチャーショックは、コーヒーショップにあった。そこで始めてチーズバーガーなるものに遭遇した。その美味なこと。しかも一緒の飲み物が、チョコレートのシェークである。このような取り合わせは、食いしん坊で甘党の僕にとっては、夢のような饗宴であった。
そして時代は移り、進駐軍といってももう通じない世代が、最も軽便な食生活として、当たり前の様にチーズバーガーを自分で買って、気楽に食するようになったのである。』
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by n_shioya | 2016-02-13 22:10 | コーヒーブレーク | Comments(0)


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