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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
“ デザートはいかがされます?”
“プロフィテロールを”。メニューを覗いて僕は答えた。 “ クラシカルなお好みで”、とマネジャーはにやりとした。 酒があまり飲めない僕にとって、デザートはメインと同じように重要案件である。 プロフィテロールは好物の一つだが、ヌーベル・キジーヌがはやり始めてから、メニューに入れているところは少なくなってきた。 このプチ・シュウのピラミッドにチョコレート・ソースをたっぷりとかけたデザートを口にする時、第二次大戦末期、パリ陥落の前夜がまぶたに浮かぶ。 すでに連合軍が完全にパリを包囲し、明日は総攻撃という前の晩、パリ守備軍のドイツ司令官コルテツは宿舎のホテル・ムーリスに部下を集め、最後の晩餐会を催した。 そのときにメニューが残されている。そしてデザートはプロフィテロールだった。 じつはこのとき彼が、重大な決意を秘めていた。 連合軍に奪還される直前に、パリを爆破せよという、ヒットラー総統の命令を無視するという決断である。 爆薬はすでにパリ全市街に仕掛けられていた。 忠実なドイツ将軍ではあった彼は悩み続けた。彼はだが同時に人類の財産としてのパリを守らねばとも信じた。この芸術品ともいえる都市を破壊すれば、今後何世紀にも亘って彼はその蛮行の責めを負うことになるだろう。 翌日、パリ陥落のほうを受け、ベルリンの地下壕からヒットラーは叫び続けたという、「パリは燃えているか?」と。 だが、コルテツ将軍の決断がパリを救った。 プロフィテロールが来た。 プチ・シューの中のバニラアイスクリームと、少しビターなチョコレート・ソースとの絶妙な絡み合いを味わいながら、僕はコルテツの家族に思いを馳せた。 どのような運命が家族を襲ったか、当然コルテツは覚悟していたはずである。 だが、彼はパリを救う道を選んだ。その後の彼と其の家族の運命はご想像に任せます。
by n_shioya
| 2013-02-02 20:49
| コーヒーブレーク
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Comments(2)
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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