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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
塩野七生
幸い風邪も峠を越したようである。
まだ咳は結構出るが、本を読むには差し支えない。
ということで今日は塩野七生の「人びとのかたち」を読みえた。
これはどこかの雑誌に連載した映画評を纏めたもののようである。
「ルネッサンスの女たち」いらい主な作品には接してきたが、これほどの映画狂とは知らなかった。
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僕は彼女の本領はこのような短編のエッセイにあると思う。
ベネチアを描いた「海の都の物語」は力作ではあるが、考証が過ぎていっそ学術書にすればよかったのと感じた。
また、ベネチア、ローマそしてフィレンツェを舞台した、推理小説仕立ての「三つの都の物語」は、小説としてのインパクトがいまいちだった。
というわけで「ローマ人の物語」はあまりにも大部なのでまだ手にしていない。
良く売れてはいるようだが、買われた方は皆読んでられるのだろうかいささか気になるところだ。

さて「人びとのかたち」だが、なかなかおもしろかった。
映画もこういう見方もあるのかと思わせる。
眼光「紙背」ではなく「銀幕背」に徹すると言う感じだ。
それに年季が入っている。
俳優にしても、その役柄にしても、彼女の最大関心事は“人の営み”にあるのではなかろうか。
そしてまた、作中人物や場面を借りて、彼女自身の好みというか、人生観を主張する。それがちっとも独善的に響かないから面白い。

例えば「ランボー」の括りは“誰もわかってくれない”である。
そしてこのことについて彼女はこういう。
“では、人間が、誰もわかってくれないと思いはじめたらどうなるか。過激化、である。尖鋭化は、孤立感の結果であることが多い。そして孤立感から過激化した人は、他者の道場は得られても、敬意までは得られない。”
これはまさに3/11直後の僕の心境だった。
何故皆は、欺瞞に満ちた無責任な大本営発表を唯唯諾諾と鵜呑みしていたのか。一人ブログでのたうちまわっていたのを思い出す。

ところでこの本の中には150ほどの作品がでてくるが、僕はその一割も見ていないのではなかろうか。
だが、彼女の手にかかると、どれもぜひ見たいと思わせるところはさすがである。
by n_shioya | 2011-05-04 18:50 | コーヒーブレーク | Comments(2)
Commented by valkyries at 2011-05-05 10:05 x
先生、彼女の素晴らしい点は、言動がローマ史研究家ら培った価値観から全くぶれないところだと思います。私の尊敬する現代人の一人ですが、さすがに「ローマ人の物語」全巻読破は・・・。
Commented by n_shioya at 2011-05-05 22:55
valkyries さん:
やはり何を書いてるか、「ローマ人の物語」も読むことにしますか。


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