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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
ト調のメヌエット
ト調のメヌエット_b0084241_10174565.jpg今日は孫娘のピアノの発表会だった。
孫の曲目は、想い出深い「ベートーベンのト調のメヌエット」だった。
幼稚園児から高校生まで、みな一生懸命日ごろの成果をアピールしている。
たどたどしく、時にはつっかえながらも、何を演奏しているかわかるところはピアノのありがたさである。

実は今まで隠していただが、あることがきっかけで旧制高校に入った年、一年間ピアノを習ったことがある。
近くの従妹の家のピアノを借りて、ひと夏でバイエルをあげてしまい、“あら、こういうピアノの練習もあるのね”と叔母に呆れられたものである。
叔父には、“ピアノは叩けば音が出るからいいよ、バイオリンならそうはいかんがね”と厳しいお言葉をいただいた。
一つ下の従妹はスラリとした理知的な美少女で、議論では僕はいつも言い負かされていた。

そしてチェルニーに進んで、最初にいただいた曲がト調のメヌエットだった。
その年学制が変わり、また大学入試を受ける羽目になり練習は中断したが、無事東大に合格し、またピアノを再開しようと意気込んで従妹の家を訪ねたのがその年の夏だった。

ところが玄関に出てきた叔母が“今日は悪いけど帰って頂戴”と泣きながら言う。
数日前、従妹が湘南海岸で入水自殺したという。
その前から、自分も東大に行きたいと云いつのるので、前日に“東大なんか女の子のいくところじゃありません”とさとしたら、パット家を出ていってしまったそうな。

暫くはピアノを弾かせてもらうのもためらわれ、その後僕は医学部に進み、ト調のメヌエットを最初で最後に、ピアノから遠ざかってしまった。
もう半世紀以上も前の話である。
by n_shioya | 2008-12-21 23:23 | コーヒーブレーク | Comments(9)
Commented at 2008-12-21 23:47 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by icelandia at 2008-12-22 01:49
 可愛らしい光景と、痛ましい光景が交差して、複雑な心境です。私の母は先生と同世代で、「大学へ行きたい」と父親に言った時、「女に学問は無用」と取り合ってくれなかったそうです。そのような時代の、非情な出来事ですね・・・。
 そんな私の母は、今はピアノの練習に勤しんでいます。音大へは行けなかったけれど、アンチエイジングには役立っていることでしょう。私も老後はピアノをやる予定。中学時代にチェルニー40番までやったので、さて、何から始めましょうか。ショパンかな。
Commented by きのこ組 at 2008-12-22 03:25 x
その時代から戦後までの上流階級の世界は美しさと悲しさとおどろおどろしさが交差し非常に文学的です。 

私は18歳の時以来、ピアノを見ると動悸と吐き気がして、一回もピアノに触れたことがありません。 きっと嫌いなのに無理やり習わされたからだと思うのです。
Commented by ruhiginoue at 2008-12-22 13:09
 かつて東京大学には「振り分け制度」があって、医学部は今のように理科三類として独立しておらず二類に含まれていたそうですが、塩谷先生はどうされましたか。
 確実に医学部に行きたいからと、せっかく受かった東大理科二類を蹴って慶応など他の医学部へ入った人もいたそうですが。
Commented by n_shioya at 2008-12-22 23:52
katzさん:
お久しぶり。新天地で頑張ってください。
来春、学会でモナコに行きます。もしお会いでいればうれしいです。
Commented by n_shioya at 2008-12-22 23:53
icelandiaさん:
お好きな曲からどうぞ。
楽しみにしています。
Commented by n_shioya at 2008-12-22 23:54
きのこ組 さん:
過酷な幼児体験は洗い流せるといいですね。
ピアノを封じ込めるのはもったいない。
Commented by n_shioya at 2008-12-22 23:56
ruhiginoueさん:
まず理2に入り、二年後、また医学部の試験を受けねばなりませんでした。
Commented at 2008-12-23 05:11 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


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