1月29日
山名昇氏に会い、飲みながらフリージャズの話や、『ソウルシンガーの訛り』についての話など小一時間音楽談義。しかし、今日会ったのはそれだけが目的ではなかった。以前、買っておいてもらったレコードを受け取る、という素敵な目的があったのである。

ジャズドラマー・Art Blakeyのアルバム『Buhaina』。このアルバム、何を隠そう、FUNKY4だけでなくPLUS ONE MOREのソウルの導火線にも火をつける、SCOOBIE DOライブオープニングテーマ「Chant for Bu」が収められているアルバムであり、つまりはSCOOBIE DOアルバム『Funk-a-lismo!』の一曲目にカバー収録されている曲のオリジナルバージョンが収められているアルバム、なのである。なのであるが、俺、この曲をレコードどころかCDでも持っていなかった。わーお。そしたら昨年の秋頃。そんな話をした覚えも無かったのだが、ある日突然。山名氏から「Bu、売ってるけど買っとく?」みたいなメールが来たりして。その俺のレコード棚事情を熟知しているかの様なメールになんだかハッとしてグッとアガり、買っておいてもらった、というわけなのである。学生さん音楽サークル仲間みたいで、我ながら微笑ましいぜ。
ちなみにこの「Chant for Bu」はオカモト“MOBY ヒゲノブ J.A.M”タクヤの提案により、SCOOBIE DO登場テーマ、となったわけであるが、俺が覚えている限りこのナンバーに決定する前に、確かもう二曲くらい別のヤツで登場したことがあった、ような気がする。
一曲は、Archie Sheppの『ATTICA BLUES』というアルバムに入っていた「Blues for Brother George Jackson」だったはずで、これもオカモト“リトルリーグ”タクヤの提案により 使われた、と記憶している。久しぶりに聴いたが、これはなかなかに登場テーマ曲としてありそうなFUNKYなナンバーだ。
もう一曲は、俺、コヤマ“ピェンロー”シュウの提案により使われた、Miles Davis『Sketch of Spain』に収録されている「SOLEA」という曲だった。この曲、俺はとてつもなく好きだった。どれくらい好きだったかというと、俺がプロレスラーになることがあったら、絶対この曲を入場テーマにしてやろう、俺が無理ならせめてケンドー・カシンの入場テーマになるように新日本プロレスに働きかけよう、と高校生の頃からMY脳内で暖めていたくらい、好きだったのだ。
しかし時は過ぎ、プロレスラーになる事もなく、ケンドー・カシンは俺のイメージとはまったく違う自社製のオリジナルナンバーでガッツリ入場しており、このままでは石ころを卵だと思い、暖め続ける親鳥のようだにゃあー、と孵化することのない思いを抱えながら、まぁしかし、空想妄想の類いとは所詮ほとんどが石ころのようなもの、そんなことよりバンドは最高だ、と、ライヴに勤しむ俺であったわけである。がしかしそうかそうか閃いた。じゃあバンド入場テーマにしてしまえば、ええじゃないか、そうじゃないか。しようしようそうしよう。で、提案即採用。おおおお。あっさり。遂に、この曲でステージに登場することに相成ったのである。プロレスラーにもならなかったし、ケンドー・カシンのテーマ曲にもなることはなかった。が、自分のバンドの入場テーマさ、素敵じゃないか。石ころどころか、アヒルの子供、大人になったら白鳥だった。『みにくいアヒルの子』って確かそんな話だったよなぁ!
で、当日本番前。興奮(俺だけ)の心持ちで、登場を待つ。誰からともなく「どこらへんで出ようか」との声が。この曲を持って来たのは俺であるから、ここは俺、責任を持って「前奏があって、途中からリズムが出てくるから、そこで出よう」と。既にカッコE心持ち。大興奮(俺だけ)。と、程なくすると、マイルスのトランペットが静かに鳴り、曲が流れ始める。おおおお。この曲のイメージに合わせステージも真っ赤な照明で照らしてもらっているのさ、イカすぜ。そして、いまからステージに出るのは、ダイナマイト関東でもなく、ケンドー・カシンでもなく、SCOOBIE DOなのだ。痺れる。
しかし、結論から言うと、この曲が使われたのはこれ一回だけだった。
Because 前奏長過ぎ、であった。
「まだ?まだなの?」「いやぁいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、もー少しじゃないかなぁ…」下北沢Queの楽屋でそんな内容の会話、したっけなぁ。リズムが出て来るまで、約2分弱もかかるということは俺の中でまったくの想定外だった。前奏もまったくもって不穏なまま、な曲であった。この曲で出るのだ、という熱い思いa.k.a “向こう見ず”により、そこんとこはうまい具合に脳内編集されていたのだろう。結局、リズムが出て来るまでの約2分間、この時間が一生続くんじゃないか、と時間感覚を麻痺させられながらメンバー一同、テンション下がらぬよう気張ってやり過ごしたと思われる。ライブ後、誰からともなく「不安だよ お客も俺も この曲じゃ」と駄目出し川柳が詠まれ、この後、この曲が使われることは二度と無かったのだった。
「つーわけで 入場曲は Chant for Bu」(字余り)
コヤマシュウ