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川隆夫の JAZZ BLOG
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©Kozocom (photo by Shuichi Kasahara)
職業:JAZZジャーナリスト、整形外科医、DJ

ニューヨーク大学の大学院在学中にアート・ブレーキーやマルサリス兄弟など数多くのミュージシャンと知り合う。帰国後、JAZZを中心に約3000本のライナーノーツを手がけると共にJAZZ関連の著書を多数出版。ブルーノートの完全コレクターとしても有名。その他、マイルス・デイヴィスやブルーノートの創始者アルフレッド・ライオンの来日時の主治医を勤めるなど、現役の整形外科医としても第一線で活躍中。

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「ジャケ裏の真実
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小川隆夫ONGAKUゼミナール
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3.19:ジャズメン、ジャズを聴く!


■TALK EVENT■
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TEL: 078-265-6595

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 先月の「総集編」のところでお知らせしましたが、『愛しのJazz Man』の原稿を先日書き上げました。現在は出版社に回っていて、初校が上がってくるのを待っているところです。あとは年内に何度か見直して、写真などの手配を済ませ、来年2月に出版ができればと思っています。まだ第一段階をクリアしたところですから、これからもう少し気合を入れて完成度の高いものを目指します。
 内容はこの連載とまったく違っています。すべて新たに書き下ろしました。これを『第1集』にして、好評ならなるべく短いインターバルで『第2集』を出版しようと目論んでいます。そちらにはこの連載で紹介したエピソードも盛り込むつもりです。
 それでは今月の「愛しのJazz Man」総集編です。


#018:Kenny Garrett ケニー・ギャレット(as)e0021965_0123065.jpg
 最近は日本語をほとんど喋らなくなってしまったが、ケニー・ギャレットの日本語熱にはひところすさまじいものあがった。自腹を切っては日本に来て、日本語学校に通っていたことも一度や二度ではない。そんな日本語熱と共に、彼は日本の曲にも精通するようになっていた。
 いまから15年くらい前、ぼくはニューヨークでプロデューサー稼業をしていた。それで、マイルス・デイヴィスのグループでキーボード奏者だったアダム・ホルツマンのレコーディングをしたことがある。ケニーもマイルス・バンドのメンバーだったことから、そのレコーディングに加わってもらうことにした。
全文はhttp://www.kozocom.com/entertainment/music/a00018.html

#019:Marcus Roberts マーカス・ロバーツ(p)e0021965_0125421.jpg
 盲目のピアニスト、マーカス・ロバーツの存在がクローズ・アップされたのは、ウイントン・マルサリスがそれまでのクインテットからカルテットに編成を変えた1985年6月のことである。旧クインテットにはウイントンの兄でサックス奏者のブランフォード・マルサリスと、ピアノのケニー・カークランドが参加していた。このふたりが折りから結成されたスティングのバンドに入ったための抜擢である。
 新加入のロバーツ以外は、ベースのチャーネット・モフェットとドラムスのジェフ・ワッツが残り、9月に入ってチャーネットが抜けて、ボブ・ハーストが参加してウイントンのカルテットはこのメンバーでしばらく活動を続けていく。中でも、ロバーツの参加はリーダーにそれまで以上の刺激を与えたようで、この時期のウイントンはライヴ活動も精力的にこなすようになっていた。
全文はhttp://www.kozocom.com/entertainment/music/a00019.html

#020:Horace Silver ホレス・シルヴァ(p)e0021965_0131075.jpg
 留学中は買いたいレコードも随分と我慢しました。のどから手が出るほどほしかったレコードもいろいろあります。《ファンキー・ピアノの元祖》と呼ばれるホレス・シルヴァーが自費出版したアルバムもそんな1枚でした。『Guides To Growing Up』(Silverto)というのですが、これが簡単には入手できません。
 シルヴァーはロスに済んでいましたので、そちらでは売られていたのでしょうが、ニューヨークのレコード店では扱っていません。そんなあるとき、彼がアパート近くの「ファット・チューズデイズ」に出演することになりました。そして、そのレコードを休憩時間にみずからの手で売っていたんです。
全文はhttp://www.kozocom.com/entertainment/music/a00020.html

#021:Terumasa Hino 日野皓正(tp)e0021965_0132383.jpg
 ニューヨークには多くの日本人ジャズ・ミュージシャンが住んでいます。ピークは1970年代半ばから80年代前半にかけてでしょうか。ぼくがいたころは、大御所の秋吉敏子さんを筆頭に、有名どころでは、中村照夫、菊地雅章、日野皓正、増尾好秋、鈴木良雄、大野俊三、大森明さんたちが住んでいました。そのほかに、無名のミュージシャン、それからミュージシャン志望のひとたちまでを加えれば、かなりの数の日本人ミュージシャンがいたことになります。
 ただし仕事があるかといえば、これは別の話になります。アメリカで確固たる地位を確立した秋吉さんと中村さんを例外にすれば、日本でトップ・クラスの人気を誇っていた菊地さんにしても日野さんにしても、ニューヨークで得られるまともな仕事は年に数回あればいいほうでした。
全文はhttp://www.kozocom.com/entertainment/music/a00021.html

#021:John Coltrane ジョン・コルトレーン(ts)e0021965_0133711.jpg
 ジョン・コルトレーンは麻薬の常習が理由でマイルス・デイヴィスのグループを一度くびになっています。1956年の末に楽屋でそのことから喧嘩になり、マイルスがコルトレーンをなぐってくびにしたということですが、ぼくは目撃していないので(当然ですが)、真相はよくわかりません。
 その場に居合わせたセロニアス・モンクがふたりの間をとりなしてくれたため、大事には至らなかったそうです。モンクはその場でコルトレーンを自分のグループに誘います。
 それで仕事は繋がったのですが、マイルスのバンドとモンクのバンドとではギャラにかなりの開きがありました。もちろんマイルスのところで働いていたほうが収入はあります。そのため、コルトレーンは麻薬代に事欠くようになりました。困った彼は、親友のカーティス・フラーに相談します。
全文はhttp://www.kozocom.com/entertainment/music/index.html
by jazz_ogawa | 2006-11-30 00:19 | 愛しのJazz Man | Trackback(2) | Comments(6)
e0021965_1128301.jpg
 銀座のこぢんまりとしたバー「le sept」でのイヴェントも昨日で3回目を迎えることができました。毎回このイヴェントを主催してくださっている有志のみなさんやお店の則子ママにはお世話になりっぱなしで、昨日も楽しい時間が過ごせました。飛び石連休の合間にもかかわらず、集まっていただいた皆さん、ありがとうございました。

e0021965_11284728.jpg いまごろは書店に並び始めていると思いますが、今回は全音楽譜出版社から発刊した『スタンダード・ジャズのすべて 大事典』に合わせて、スタンダード特集、それも大好きなマイルス・デイヴィスこだわって選曲をしました。
 たまたま9月から今月にかけて、毎月10枚、ソニーからマイルスのアルバムが紙ジャケット化されて発売されたこともあり、その中から曲を選ぶことにしました。ソニーのマイルスに関しては、これまでに何度か紙ジャケ化が行なわれています。しかし、今回は紙ジャケットの出来が一番いいんですね。オリジナルの帯や内袋も再現しましたし、音に関してもしばらく前にぼくが監修したアナログ盤20枚セットを発売する際に行なったマスタリングがかなり使われています。というわけで、好みはそれぞれあるでしょうが、音質的にもぼくとしては納得のいくものになっています。
 それでスタンダードですから、このような曲をみなさんと聴きました。

1.'Round About Midnight from「'Round About Midnight」
2.Lament from「Miles Ahead」
3.Milestones from「Milestones」
4.Stella By Starlight from「1958 Miles」 
5.I Loves You, Porgy from「Porgy And Bess」
6.Blue In Green from「Kind Of Blue」
7.Concierto De Aranjuez from「Sketches Of Spain」
8.Someday My Prince Will Come from「Someday My Prince Will Come」
9.I Fall In Love Too Easily from「Seven Steps To Heaven」
10.My Funny Valentine from「Miles In Tokyo」

 一部マイルスのオリジナルも含まれていますが、ジャズ・ファンならすべてお馴染みの曲ばかりでしょう。というわけで、「スタンダード」としたんですが、ちょっとバラードが多かったかな? という印象も持ちました。お集まりいただいた皆さんには楽しんでいただけたでしょうか?

e0021965_1129397.jpg 2時間のイヴェントですから、これらの曲を聴きながら、マイルスに関する与太話をしていくわけですね。相変わらずの脱線振りで、話の内容をご理解していただけたかどうか不安ですが、終わってしまったものは仕方がありません。ぼくもマイルスと同じ照れ屋の性分なもので、話が妙な方向に進んでいくのも照れ隠しのひとつだと思ってください。

 それはそれとして、やっぱりマイルスは別格ですね。これほど豊かな表現力と説得力を持つプレイヤーはほかにいません。そのことを昨日も強く感じていました。テクニックだけならもっとうまいひともたくさんいます。それでも、マイルスにはそういうひとより聴くものの心を掴む何かがあるんじゃないでしょうか。理由はいろいろ考えられるんですが、結局はヒューマンな暖かさに尽きると思います。

e0021965_11292187.jpg マイルスの演奏は「クール」とよく形容されます。熱い演奏とは違って、醒めているところが持ち味です。それを含めて、マイルスの演奏はとても人間味に溢れたものに聴こえます。それは、ぼくがたまたま彼の知己を得て、その優しさに触れたことで、勝手にそう感じているのかもしれません。
 でも、ぼくはそれ以前からマイルスの音楽に心を揺さぶられてきました。心の襞の隙間にそうっと入り込んで、冷え切った気持ちや、やるせない思いを慰めてもらったことが何度もあります。浮き浮きしているときは、その気持ちをもっと盛り上げてもくれました。

e0021965_11293528.jpg 音楽は個人的な思い入れで聴く要素が非常に強いものです。みなさんが同じ体験をするとは思いませんが、マイルスでそういう気分を味わったことがあるひとは結構いるんじゃないでしょうか? 音楽の持つ力は偉大だと思います。音楽にすべてを委ねるつもりなんてまったくありませんが、それでも音楽は裏切らないなぁと思ったことは再三です。
 多分、ぼくはこの世の中からマイルスの音楽がなくなったって、その代わりのものは探せるでしょう。その程度のものなんです。自分にとっては大切なものであっても、あまり過大な期待はしません。
 マイルスに限らず、どんなものだってなければないで生きていけます。マイルスを聴きながら妙なことを考えていたものです。今日は、ちょっとへそ曲がりの気分なのかもしれませんね。


e0021965_11294849.jpg 最後にひとつ宣伝です。今度の土曜日に次のHI-FIが開催されます。26回目の今回は90年代特集ということですが、ぼくのテーマはいつものように「踊れるものなら踊ってみろ」です。何が飛び出すか? たいしたものは飛び出しません(苦笑)。ぼくの受け持ち時間は23:30から30分です。終電車に間に合います。
 また今回のゲストにはフランスからフィリップ氏、CLUB BAGSY(http://sound.jp/bagsy/)の人気DJムラカミ ダイスケを迎え、VJにはharax(http://harax.jugem.cc/)をフィーチャーするそうです。ぼくより他のメンバーやこちらに期待してください。
【DATE】12/2(sat)
【PLACE】 @Shibuya PLUG(http://www.shibuya-plug.tv/
【TIME】23:00-05:00
【CHARGE】1500yen
by jazz_ogawa | 2006-11-26 11:43 | ONGAKUゼミナール | Trackback(4) | Comments(18)
e0021965_1172022.jpg 20日の全世界一斉発売を首を長くして待っていたのはぼくだけでないでしょう。というわけで、前日にレコファンやディスク・ユニオンなら入荷しているのでは? と考えて渋谷まで行きました。無駄足でしたが。他の作品なら発売日の前日にたいていは店頭に出ますが、さすがビートルズ、このあたりの規制もしっかりしています。
 音楽の内容は予測がついていましたから、そんなに急がなくてもいいんです。でも、出るとなればやっぱり一刻も早く聴いてみたい。いつものせっかちな性格が顔を出すんですね。今回は5.1チャンネルのミックスが「スペシャル・エディション」の2枚組についてくるので、とにかく聴きたいと。
 レコード会社は「ザ・ビートルズ最新作」と謳っていますが、これはレコード会社ならではの誇張です。最新作でないことはビートルズのファンじゃなくたって知っているでしょう。まあレコード会社のご愛嬌ということで、それほど目くじらを立てる必要もありません。
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e0021965_1174872.jpg ところでこの『LOVE』は、シルク・ドゥ・ソレイユがラスヴェガスで公演しているパフォーマンスのサウンドトラックみたいなものです。そのうち日本にも来るかもしれませんが、いまのところはヴェガスのミラージュ・ホテルで上演されているだけです。これもそのうち観にいきたいと思っています。

 多くの曲は、他の曲の音源の一部をダビングしたコラージュ風の作りになっています。未発表録音もあるといわれていましたが、実際はジョンのデモ・テープの一部(「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」が使われているくらいで、これもどうって内容ではありません。
 『アンソロジー』や『レット・イット・ビー:ネイキッド』もそうでしたが、このアルバムはマニア向けと考えたほうがいいでしょう。まずはオリジナル・アルバムをしっかり聴くことです。その上でこの作品を聴くと、実に楽しめます。とにかくあちこちにいろいろな音が使われているんですから。
 たとえば「ゲット・バック」では、オープニングに「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のオーケストラ・パートが出てきます。そのあとに「ア・ハード・デイズ・ナイト」のオープニング・ギターが登場し、「ゲット・バック」「サージェント・ペパーズ~」の歓声なんかも聴こえます。
 びっくりしたのは「GNIK NUS」と題された曲です。タイトルをさかさまに読めば曲名がわかります。その曲を逆回転させたヴァージョンがこれなんですが、荘厳な響きを伴う印象的なメロディになっています。「SUN KING」よりいいかもしれないなんて、ぼくは思っているほどです。逆回転もビートルズの得意技ですし、それを使ってこのような曲にしてみせる手腕に舌を巻きました。
 プロデューサーのジョージ・マーティンと息子のジャイルが、ビートルズの音源を使って自由に遊んでみましたっていう内容です。こういう曲が次から次に出てきますから、その謎解きの面白さに、はまるひとははまるでしょう。ぼくもそのひとりです。収録されたのは26曲ですが、そのために120曲以上のビートルズの楽曲の断片が使用されているとのことです。
 プロデューサーのジャイルズ・マーティンみずからが「モナ・リザに口ひげを描き加えるような気分」といっているように、「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」のベースとドラムスをジョージの「ウィズイン・ユー、ウィズアウト・ユー」にミックスするなど、いってみればやりたい放題です。
 それゆえ、「ビートルズに対する冒涜」というひともいます。その気持ちもよーくわかりますが、よーくわかった上で、個人的にはこういう試みも面白いと思いました。だって原曲を否定しているわけでもなければ、この作品が出たことで原曲がなくなるわけでもないんですから。つまり、もう1枚アルバムが増えたことをぼくは単純に喜んでいます。根が単純なもので。

 それでこの作品、とくに5.1チャンネルで聴くと、あちこちからいろいろな音が出てきて楽しいですね。ぼくはサラウンド・フェチでもありますから、こういう作品が出ると嬉しくて仕方ありません。
 ただし、サラウンドの度合いがちょっと弱い感じもします。多くの5.1チャンネル・リミックスに共通している不満が、リア・スピーカーの音量がフロント・スピーカーより低いことです。うしろからもがんがん音が出てくると楽しめるんですが。
 これまでに聴いたサラウンドで一番よかったのはピンク・フロイドの『狂気』です。あと、ニール・ヤングの『ハーヴェスト』もグッドでした。居間にあるDVDプレイヤーはリア・スピーカーの音量が調節できません。寝室にも格安の装置があって、こちらは5つのスピーカーのすべてが音量調節可能です。ちゃちな装置なので音質的には落ちますが、こちらでリア・スピーカーの音を上げてきくと、『LOVE』も相当楽しめました。
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 ちなみに寝室のサラウンド・システムは総額で2万円もしません。この安さ、とても自慢です。テレビは捨てられそうになったものを使っていますし、ホーム・シアターのシステムはアマゾンでランク1位か2位だったもので、9000円台でした。これがばかにできない音です。DVDプレイヤーはKakaku.comで見つけたリージョン・フリーの中国製で6800円。総額1万5千円くらいで、寝室がホーム・シアター化しました。しかも世界中のDVDが観れます。いい時代になりました。

 それで『LOVE』ですが、今回もEU盤、アメリカ盤、国内盤を買います。それぞれ通常盤とスペシャル・エディション盤がありますから全部で6種類。ただし、国内盤のスペシャル・エディションはEU盤に解説書をつけたものなので、EU盤のスペシャル・エディションは買いません。
 というわけで5種類を購入することになりますが、いまのところアメリカ盤のスペシャル・エディションがどこにも入荷していないようで、これはニューヨークにいったときに買うかなと思っています。アメリカ盤の通常盤も、HMVでは通常出荷になっていますが、アマゾンではなぜか12月に入ってからの出荷です。
 とてもせこいのですが、ほんの少しだけアマゾンのほうが安いのでそちらでオーダーしています。ですから、現在手元にあるのは国内盤の2種類とEU盤の通常盤だけです。アメリカ盤の2種類をゲットすればコンプリートは達成です。今回はアナログ盤が発売されないようで、そこが残念です。

 この秋はビートルズ関連の作品がいろいろ出て、コレクションを増やすことができました。ジョージの『リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』、ポールのクラシック・アルバム、ジョンのサントラ盤、ポールのアメリカ・ツアーのDVD、そして締めが『ラヴ』です。リンゴ関連のみありませんでしたが、そのうちまたオールスターズ物が出ることでしょう。

e0021965_1182965.jpg そうそう数日前に、イギリスの出版社Genesisからまた豪華本発刊の知らせが届きました。今回はジョージ・マーティン著の『SUMMER OF LOVE~THE MAKING OF SGT. PEPPER』です。Genesisはこれまでにもジョージやリンゴの豪華本を何冊も出しています。限定2000部くらいで、本人の直筆サイン入りです。
 今回も2000部限定でジョージ・マーティンのサインがつきます。価格は予約オーダーなら250ポンド、1月2日以降はレギュラー・プライスの295ポンドになりす。送料を入れれば6万円強でしょうか。
 迷っているところですが、迷っているときは買ってしまうのがぼくですから、多分オーダーするでしょうね。自分へのクリスマス・プレゼントかな? もうエクスキューズまで考えているんですから、困った性格です。

 だらだら書いて申し訳ありませんが、あさっての土曜は銀座でトーク・イヴェントをします。定員一杯になっているようですが、キャンセルが出る場合もありますので、興味があるかたはイベント運営委員会matc@wind.sannet.ne.jp(HKO商会)までご連絡ください。詳細は11月の「Works & Information」をご覧ください。
by jazz_ogawa | 2006-11-23 11:18 | MHR | Trackback(7) | Comments(6)
e0021965_17354642.jpg これまでにいろいろな戦争映画を観てきましたが、昨日の『父親たちの星条旗』は、戦争の悲惨さやおろかさだけではなく、ちょっと違ったことも考えさせられました。1枚の写真が持つ影響力についてです。
 真実を伝えていない写真であっても、使いかたによっては歴史も変えてしまう可能性があります。ぼくが仕事をしている音楽の世界、とくにジャズの場合、世の中全体から見ればそれほど大きなものではありません。それでも、たとえばどのアルバムを大きく取り上げられるかによって状況が変わってくることだってあるでしょう。
 この映画でも、隠された真実が大きなポイントになっています。何かの話題を取り上げるときだって、重要なことより面白いことを優先するなんてことは日常茶飯事です。それに目くじらを立てる気持ちはありませんが、得られた情報をどういう観点で紹介するかによって、ひょっとするとミュージシャンの人生を変えてしまうことだってあるかもしれません。

 もちろんぼくにそんな力はありません。書いていることだって毒にも薬にもなりませんから気楽なものです。「また小川がほざいている」くらいで終わりでしょうが、それでもいちおうはちゃんとした出版社や雑誌社やレコード会社なんかからも原稿の依頼を受けていますので、それなりに責任があることは自覚しています。
 真実とはなかなかわからないものです。それで自分なりに当事者に聞いたことでまとめたのが『マイルス・デイヴィスの真実』や『ブルーノートの真実』です。伝えられている逸話やさまざまなことに対してまずは「ほんまいかいな?」と思うのがぼくの癖で、その思いがもとになってこうした本や、ほかの本も書いてきました。
 それでも、本当に「真実」を伝えられたかどうかは自信がありません。というより、何を持って「真実」というかは神のみぞ知る、ということです。ですから「真実のひとつ」ということでしょう。嘘は書いていませんから。

e0021965_17361046.jpg 『父親たちの星条旗』は、星条旗を掲げた写真に写っていた帰還兵の苦悩が物語の柱になっています。写っていたのは6人でしたが、3人は硫黄島から帰ることができませんでした。帰還した3人は、英雄視されればされるほど苦悩していきます。結局、真実は語られことなく、そのうちのひとりが晩年を迎えます。
 その老人が衛生兵のドクことジョン・ブラッドリーです。そして息子のジェイムズ・ブラッドリー他によって書かれた『硫黄島の星条旗』を映画化したのが『父親たちの星条旗』です。
 息子が真実をたどっていくことでこの物語は書かれました。その書いていく過程を映画化してくれたらもっと興味が持てたのですが、それでは映画として成立しないんでしょう。英雄を迎えるさまざまなシーンの合間に挿入される戦場シーンのフラッシュバック。それがまた壮絶極まりないもので、改めて、戦争の無意味さを伝えています。

e0021965_1737727.jpg きな臭い世の中になっていますが、この映画を観ていて、改めて若者を戦争に向かわせる力は何なのだろうと思いました。多くは愛国心から来るのでしょうが、率先して死に向かっていく姿を、平和ボケしているぼくは不思議な思いで観ていました。
 目の前で仲間が銃弾に倒れる姿を見てもひるまずに突き進んでいくのはどういう気持ちからなんでしょう? マインド・コントロールなんでしょうか? それとも時代の空気? 愛国心? 正義感?
 次はほぼ確実に自分が死ぬってわかっていても、大半の若者は前に進んでいったんでしょう? ぼくにそんな勇気はありません。そんなもの対して愛国心を示せとか正義感を示せといわれたら、つばを吐くでしょうね。そして何とか逃げ出したいと思うでしょう。実際にその局面に立たされたら、それすら出来ないとは思いますが。
 当時の日本人なら戦争に行って死ぬのが当たり前と思っていたかもしれませんが(実際は仕方ないと諦めていたかもしれませんが)、アメリカではそれなりに自由で豊かで便利な生活が戦時中でも享受できていたように思います。日本ほど切羽詰まった状況に追い込まれていたとは思えません。それでも、ヴェトナム戦争のときのようには反戦運動は起こりませんでした。ぼくにはそのメンタリティがどうしても理解できません。

 それにしてもクリント・イーストウッドは心に残るいい映画を連発していますね。『ミリオンダラー・ベイビー』もよかったですし、『ミスティック・リヴァー』にも考えさせられるものがありました。いずれも重いテーマですが、確実にぼくの琴線は揺さぶられます。それだけに、もうすぐ公開される『硫黄島からの手紙』にも期待しています。
 こちらは12月になってからの公開ですが、日本で観るかアメリカで観るか、迷っています。アメリカの映画館で観て、その反応も感じてみたいんですね。ちょうどクリスマス前からニューヨークに行きますし。両方で観るっていうのも選択肢に入れておこうと思います。
by jazz_ogawa | 2006-11-20 18:05 | 映画&DVD | Trackback(1) | Comments(10)
e0021965_112858.jpg このところ入れ込んでいる渋さ知らズを15日に「渋谷O-EAST」で聴いてきました。9月にも「東京JAZZ」で観ましたし、その前は、同じ「渋谷O-EAST」で1月に観ていますす。これはぼくにしては珍しいことで、それだけこのオーケストラに興味を持っているってことです。

 どこが面白いかといえば、何でもありのごった煮的なサウンドに魅かれています。フリー・ジャズによる集団即興演奏がベースなんですが、その中にロックもあれば、何がなんだかわからない響きの音楽も盛り込まれていて、おまけにダンスも舞踏も登場するといった按配です。
 混沌としていて祝祭的。ひたすらテンションの高い音楽は、お祭り騒ぎと形容するのがぴったりかもしれません。それも夏祭りの乗りですね。子どものころにテントの中で見たサーカス。そんな、どこか懐かしい気分にもなります。ですから、オーケストラというより「一座」といったほうがしっくりします。
 お客さんも音楽を楽しむひと、パフォーマンスを楽しむひと、何だかわからないけれどこの狂乱状態を楽しむひとと、目的はさまざまなようです。
e0021965_11283473.jpg 感心するのは、そうしたアナーキーに近い展開をしているようで、きちんとステージを完結させてみせる点です。計算はあまりされていないと思うんですが、メンバーの意思疎通がいいんでしょうか。このオーケストラを観ていると、サン・ラのアーケストラを思い出します。
 太陽の神=サン・ラは、フリー・ジャズを中心にしながらも、ありとあらゆる音楽要素を盛り込んで、「アーケストラ」と名乗るオーケストラで独自の音楽を聴かせてくれました。それに通じているのが渋さ知らズです。カオスの中から顔を覗かせる音楽性がしっかりしたものであることも似ています。ぼくが魅了されるのもそういう面があるからでしょう。
 行き当たりばったりで面白いことを追求するだけならそれほど魅力は感じません。それなら1回観れば充分です。繰り返しこのオーケストラを聴きに行くのは、毎回似たような演奏をやっていながら、どんなことが起こるかわからないところに期待が持てるからです。いつも違う演奏を聴かせてくれる点ではアート・アンサンブル・オブ・シカゴにも通じています。
 それと、ずっと以前にニューヨークの「シンフォニー・スペース」で聴いたリチャード・エイブラムスのオーケストラも渋さ知らズみたいな形で演奏をしていました。このときは総勢40名くらいのシカゴ派が結集して、それぞれがやりたいことを順番にやってみせたんですね。さまざまなバック・グラウンドのミュージシャンが思い思いに楽器を持って集まってきました。代わるがわるにソロを取りながら、残ったメンバーが見事なアンサンブルを聴かせます。いくつかのアンサンブル・パターンが用意されていたんでしょうけれど、それを巧みに組み合わせてソロイストを盛り上げてみせるところがエイブラムスの手腕でした。
 似たような試みをスモール・オーケストラで同じころにやっていたのがジョン・ゾーンです。「パブリック・シアター」で聴いたトラック&フィールドと名づけられたコンサートでは、ミュージシャンが半円形に並び、中央でジョンが指揮者よろしく番号を書いたボードを提示します。メンバーはそれにしたがって演奏していくわけです。
 そういえば晩年のマイルスも、番号を書いた紙をメンバーに示し、それによってリズムの変更をさせていました。渋さ知らズはそういうことはやりませんが、メンバーの並べかたがリチャード・エイブラムスやジョン・ゾーンと似ています。通常のオーケストラのようにはホーン奏者を並べず、横に広がるセッティングです。ジョン・コルトレーンが『アセンション』を録音したときも、そういう並べかたをしていました。この一致は興味深いですね。

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 渋さ知らズで重要なのは、リーダーの不破大輔さんの存在です。彼はベーシストですが、オーケストラでは「ダンドリスト」を名乗り、指揮者の役割をします。とはいっても、全然指揮者らしくなくて、たまに指示は与えますが、それ以外のときはミュージシャンのほうに向けた椅子にすわって煙草を吸ったりしています。しかし、彼が音楽の方向を次々と変えていくことで、コンサートは実にまとまりのいいものになっていくのですから、やっぱり指揮者なんでしょう。

e0021965_11292830.jpg コンサート終了後、舞台裏で不破さんと少し話をすることができました。ばたばたした中でのちょっとした会話でしたが、それでも彼がいろいろな音楽を聴いていることはすぐにわかりました。欧米のジャズも聴き込んでいるようです。だからこそ、渋さ知らズは独自のサウンドが生み出せるのだと思います。

 ぼくはこのオーケストラからとても日本的なものを感じています。子どものころのお祭りが情景として浮かんでくる音楽。こういうのはヨーロッパで絶対に受けるんじゃないでしょうか。事実、渋さ知らズはヨーロッパで大受けと聞いています。こういう音楽を野外のフェスティヴァルなんかでやったら、受けないはずがありません。
 日本的といっても、妙な日本情緒はありません。むしろ国籍不明です。そもそも不破さん自体がいったいどこのひとかわからない感じですから。その無国籍風が、ステージも終わりに近づくころにはいつの間にか強く日本を感じさせるものになっています。これはぼくの感想ですが、おそらくヨーロッパのひとも「なんだかわからないけれど日本」みたいな印象を覚えるんじゃないでしょうか。
 こういう表現ができるところに、このオーケストラならではの強みと創造性を感じます。もし不破さんやメンバーがこの文章を読んだら、「とんちんかんなことを書くやつだなぁ」と呆れるかもしれません。当事者でもないのに勝手なことを書いてすいません。でも、ぼくはそう感じ、そしてそう感じさせる彼らの音楽にとても興味を持っています。
 そうそう、渋さ知らズは一度でもメンバーに加われば永久にメンバーとして登録されるそうです。というわけで、「ぼくもそのうち白衣を着てギターを弾かせてね」と図々しく不破さんにお願いしておきました。
by jazz_ogawa | 2006-11-18 11:37 | ライヴは天国 | Trackback(2) | Comments(2)
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 感動しました。やっぱりサム・ムーアは最高です。ついにアルバムが出たと喜んでいたところに、この来日です。若いひとはご存知ないかもしませんが、サム・ムーアとはサム&デイヴのサムのことです。もっとも、サム&デイヴといっても誰のことだかわからないかもしれませんね。「ホールド・オン」や「ソウル・マン」をうたったひとたちといえば、「ああそうか」と思うひともいるでしょう。
 このソウル・デュオ・チームが活躍していたのは1960年代後半のことです。日本では彼らが歌う「ホールド・オン」が流行っていました。高校1年のときですから、1966年、いまからちょうど40年前です。
 この年は、ぼくの人生にとってかなり重要な1年になりました。ビートルズとジョン・コルトレーンの来日公演を観ておおいに触発された年ですから。そしてサム&デイヴの歌にも魅了されて、初めてリズム&ブルースという音楽に触れました。
 それからは、ロック、ボサノヴァ、ジャズ、フォーク、歌謡曲に加えてリズム&ブルースも興味の対象になったわけです。そのとっかかりがサム&デイヴで、そのあとすぐにオーティス・レディングやアレサ・フランクリンを知りました。

e0021965_23572566.jpg 中でも最初に好きになったサム&デイヴに一番思い入れが強く、小遣いをためてデビュー・アルバムの『ホールド・オン』を買いました。シングル盤は出ていましたが、LPの国内盤は出ていなくて、渋谷のヤマハで輸入盤を買った記憶があります。これを来る日も来る日も聴いていました。「ホールド・オン」のほかにも「イーズ・ミー」や「ユー・ドント・ノウ・アイ・ライク・アイ・ノウ」なんていう曲が大好きでしたが、そのほかの曲もすべてメロディがよくて、サム&デイヴの歌にも迫力があって、ひとり悦に入ったものです。
 それこそ盤が擦り切れるほど聴いたころに、次の『ダブル・ダイナマイト』が発売されて、こちらのよさにもノックアウトされました。「ユー・ゴット・ミー・ハミン」や「アイム・ユア・パペット」もよかったですし、何より「ぼくのベイビーに何か」の味わい深さは何度聴いても飽きるものでなかったです。ぼくはこれを聴いて、歌の持つ奥深さとか歌の力というものを本当の意味で実感したように思います。
 e0021965_23574663.jpgその後に『ソウル・マン』と『アイ・サンキュー』を立て続けに発表して、サム&デイヴの時代は終わります。それからもしばらくは活動を続けていたんですが、LP的にはスタックスから出た最初の2枚とアトランティックから出た次の2枚、つまり聴くべきものはこれら4枚だけでした。その最後のころに彼らは来日をしています。
 高校を卒業したその日の夜に、厚生年金ホールに観にいった記憶があります。彼らはその後にもう一度来たはずで、もちろんどちらのコンサートにも行きました。あの時代はもうひとりの大物ソウル・シンガーのウィルソン・ピケットも渋谷公会堂で観ています。それらを通して、初めて本場のソウル・ショウに触れました。単純なぼくは、自分も黒人になった気分を味わったものです。

 黒人になった気分といえば、サム&デイヴを聴き始めたころに、ちょっとしたショックを受けました。バックのミュージシャンに白人がいたんですね。いまならどうってことはありませんが、あの時代は公民権運動が盛んで、人種差別は撤廃されたものの、まだあからさまに差別のあった時代です。
 ぼくは日本人なんで、差別についてはぴんときません。でもバック・バンドの写真を見て、そこに白人がいることに複雑な思いをしました。逆差別はされないんだろうか? みたいなことです。しかも、そのうちにスティーヴ・クロッパーというギタリストがリズム&ブルース世界では重要な存在で、彼は白人なんですが、オーティス・レディングの曲を書いたりしていたこともわかりました。
 ぼくはやがてこのスティーヴ・クロッパーのプレイに魅せられて、同じギターとアンプを買うまで惚れ込みます。でも、最初のころは白人がリズム&ブルースで主要な役割をしていたことに複雑な思いを覚えました。エンジニアもプロデューサーも白人だったことをあとで知って、ちょっと裏切られた思いがしたんですね。
 黒人の魂を歌うのがリズム&ブルースではありませんか。その曲を白人が書いて伴奏もしていたなんて。ぼくの心の中は「???」という感じでした。でも、音楽に差別はありません。白人が書いた曲を黒人が歌うのは、考えてみればよくあることです。そのシンガーがいかに自分のソウルを表現するかが重要なことにすぐ気がつきました。ジャズだって同じです。ビジネスとして成立させるには、白人の力が必要不可欠ですから。

e0021965_2358863.jpg さて、昨日のサム・ムーアです。心から感動しました。サム&デイヴ時代より歌がうまくなっていることもびっくりです。あのころはストレートにソウルフルな表現をしていたのが、深みを増して情感豊かな歌をうたうシンガーに変身していました。
 サム&デイヴを解散して以降、これだけ歌がうまかったにもかかわらず、今回出た『オーヴァーナイト・センセーショナル』がソロ・デビュー作のはずです。40年近くアルバムを出していなかったことが不思議でなりません。1970年代にも1枚ソロ・アルバムを吹き込んでいますが、数年前にリリースされるまでお蔵入りしていました。これも素晴らしい内容です。
 「ブルーノート」では、有難いことにサムのほぼ正面、前から2列目のテーブルに座らせてもらいました。至近距離で聴いたのは、ニューヨークにいたときの「ローンスター・カフェ」以来です。というか、彼のソロ・パフォーマンスをライヴで聴いたのは、あとにも先にもそのときだけです。この話を書くと長くなりますので、これは割愛です。

e0021965_23582384.jpg 昨日はエディ・フロイドの「ノック・オン・ウッド」から始まって、「アイ・サンキュー」「雨のジョージア」「アイ・キャント・ターン・ユー・ルーズ」「ブレイム・イット・オン・ザ・レイン」「ナン・オブ・アス・アー・フリー」「ぼくのベイビーに何か」などを次々に披露し、「ソウル・マン」でおおいに盛り上がり、アンコールに「ユー・ア・ザ・ビューティフル」を歌う構成でした。
 他人のヒット曲や新作からの曲もいろいろあって、サム&デイヴ時代の曲はそれほど多くは歌いません。でも、どんな曲を歌ってもサムの歌になってしまいます。それらを聴きながら、サム&デイヴの姿を思い浮かべていたひとはぼくだけでないでしょう。
 デイヴことデイヴ・クロフォードは1988年に交通事故死を遂げています。サム&デイヴの解散は1971年で、その後もたまにはコンビを復活させていたようです。でも、これで永遠にサム&デイヴは消滅しました。
 いまもデイヴが生きていたら、どんな風になっていたかと思います。でも歌は圧倒的にサムのほうがうまくて、その美声がまったく衰えていないことに改めて感激しました。前のほうにいたので、サムを取り囲むような感じで歌が聴けたのもよかったです。彼が目の前でひとりひとりの顔を見ながら歌ってくれました。まるで辻説法のような感じです。
 サム&デイヴ時代に観たときはそれほどひょうきんな印象がなかったんですが、昨日はいい感じに年を取って、優しそうなひとがらがにじみ出ていました。コミカルなところもあって、イメージとしてはルーファス・トーマスとだぶります。ルーファス・トーマスといっても、知らないひとが多いでしょうけど。

 先日のジョアン・ジルベルトでも痛感したことですが、サムも古い曲では昔のアレンジをそのまま使っていました。アトランティック系のリズム&ブルースではホーンの響きが大好きです。それもオリジナルどおりに再現されていて、気分は高校~大学時代に戻っていました。
 ここ数年、生きててよかったと思うことがしばしばあるんですが、昨日も本当に生きててよかったと思いました。音楽が与えてくれる幸福感。それはそのひとにしか味わえないものですが、昨日の「ブルーノート」にいたお客さんは皆さんが多かれ少なかれそんな気持ちで家に帰られたんじゃないでしょうか。
by jazz_ogawa | 2006-11-15 23:56 | ライヴは天国 | Trackback | Comments(11)
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 昨日は3ヵ月ぶりに駒場東大前の「Orcard Bar」で「ONGAKUゼミナール」の第11回目をやってきました。いつもは2ヶ月に1回の開催ですが、今回はお店の諸事情で1ヵ月ずれての開催になりました。いらっしゃってくださったみなさん、どうもありがとうございました。

 原点に戻ってではないですが、このところジャズ以外のテーマが続いていたので、今回はスタンダード特集です。なんていって、実は今月25日に発売される『スタンダード・ジャズのすべて 大事典』から曲を選べばいいやという、いつもどおりのイージーな発想です。
 どれだけイージーかっていうと、この本、全部で850曲を紹介しているんですが、それらを「A」「B」「C」の3ランクにわけた中から「A」ランクの曲を選んだっていうだけの話です。でもイージーですが、理にはかなっています。だって「A」ランクは誰でも知っている曲ということで、つまりスタンダード中のスタンダードなんですから。しかも、たった13曲しかありません。曲数もちょうど手ごろでしょう? これらのベスト・パフォーマンスを選んで聴いていただけば、まさに今回のテーマにぴったりです。

 ぼくの場合、考えすぎはいけません。考えすぎるとたいていつまらないものになります。ですから、今回は「A」ランクでいこうと思いついてから5分ですべてが終わりました。こういうときは、手前味噌ですが、絶対いいものになります。原稿もそうですが、ぼくはスピードが勝負ですから。
 曲順も考えません。アルファベット順に並べただけです。聴いていただくものも、iPODに入っているものから選びます。それ以外の曲から選ぶなんていうことはしません。だって、iPODに入っているっていうことは、ぼくの好きな曲っていうことですから。自分が好きな曲をかけるのが一番でしょう。これだから、5分で準備万端です。
 選曲はこんなものです。

【songlist】
1.Autumn Leaves by Cannonball Adderley from「Somethin' Else」(Blue Note)
2.Body And Soul by Coleman Hawkins(ts)
3.The Days Of Wine And Roses by Oscar Peterson from「We Get Request」(Verve)
4.Fly Me To The Moon by Astrud Gilberto from「The Shadow Of Your Smile」(Verve)
5.Misty by Erroll Garner 「Contrasts」(EmArcy)
6.My Favorite Things by John Coltrane from「My Favorite Things」(Impulse)
7.My Funny Valentine by Chet Baker 「Chet Baker Sings」(Pacific Jazz)
8.Over The Rainbow by Bud Powell from「The Amazing Bud Powell Vol.2」(Blue Note)
9.The Shadow Of Your Smile by Wes Montgomery 「Bumpin'」(Verve)
10.Stardust by Nat King Cole 「Love Is The Thing」(Capitol)
11.Stella By Starlight by Keith Jarrett 「Standards Live」(ECM)
12.Summertime by Miles Davis from「Porgy And Bess」(Sony)
13.When You Wish Upon A Star by Wynton Marsalis 「Hot House Flowers」(Sony)
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 これをiPODのプレイリストに入れて試しに聴いてみたんですが、実にいい感じです。自画自賛ですが、「深く考えないほうがいいものになる」という持論は証明されました。って、勝手に自分でいっているだけで、昨日いらっしゃってくださった皆さんは、「冗談じゃないよ」と思っているかもしれませんね。そうだとしたら、ごめんなさい。

e0021965_185649.jpg 昨日は、いつものように脱線話や裏話ばかりで、曲自体の説明や、一番肝心な「スタンダードとはなんぞや」ということには触れませんでした(忘れていたわけではないんですが)。そのあたりについては、『スタンダード・ジャズのすべて 大事典』にばっちり書いてありますので、興味のあるかたは立ち読みで結構ですからのぞいてみてください。発売は今月の25日です。と、またまた宣伝をして今日はおしまいです。

 そうそう、その25日には銀座でトーク・イヴェントをします。「イージー小川」ですから、次のテーマも「マイルスで聴くスタンダード・ジャズ」です。でも、これも面白いなぁと自画自賛しています。興味のあるかたは「Information & Works」をご覧ください。この日は抽選であたるプレゼントも用意しています。
by jazz_ogawa | 2006-11-12 11:26 | ONGAKUゼミナール | Trackback(5) | Comments(13)
e0021965_93801.jpg 読書の秋も終わりそうですが、今年は聴きたい新譜がたくさん出た秋でした。とりわけ発売を楽しみにしていたのがサディスティック・ミカ・バンドの『ナルキッソス』です。加藤和彦、高中正義、小原礼、高橋ユキヒロのオリジナル・メンバーに、今回は木村カエラがシンガーとして加わっています。そこで、バンド名も英語表記の場合はSadistic Mikaela Bandとなっています。こういう遊び心、ぼくは大好きです。

 肝心の内容も素晴らしい。加藤さんがインタヴューで、「これまでで一番うまい」とカエラさんのことを褒めていましたが、それはそうでしょう。初代のミカさんにしても再結成されたときの桐島カレンさんにしても、シンガーとしてのキャリアはなかったひとですから、彼女たちにくらべれば全然実力が違います。とはいっても、前任者のしろうとっぽいヴォーカルも好きなんですけどね。
 で、当然のことながら<タイムマシンにおねがい>が再演されるわけですが、これが最高です。オリジナル・ヴァージョンとアレンジは同じっていうか、コピーしただけのような感じではあります。ですが、こちらのほうがオリジナルでは? と思うほど見事な出来映えになっていました。初回限定盤についているDVDでは、この曲のレコーディング風景や野外のステージでのシーンなどが登場します。それもぼくにとってはわくわくする内容でした。

e0021965_9381512.jpg そのときのインタヴューで高橋さんが「まさか全曲ドラムスを叩かされるとは思っていなかった」といっていますが、これには「おいおい、あんたドラマーだろ」といいたくなりました。この言葉で象徴されているように、ミカ・バンドが活動していた30数年前といまとでは、当然音楽の制作の仕方が変わっているわけです。でも、今回は原点に戻ったということでしょう。

 古い世代のぼくには、こうした音作りのほうが自然に聴こえます。もちろん打ち込みやコンピューターも駆使しているんでしょうけれど、それに主体を置くのではなく、きちんとメンバーが自分の手で楽器を演奏して歌う、当たり前のことですが、そういう過程を経て作られたのが今回のアルバムなんでしょう。実際はどうだったか知りませんが。
 録音のありかたと共に、もうひとつぼくがこの作品を聴いて思ったのは、カエラさんを別にすれば、ミカ・バンドのメンバーはみんなぼくと同じような世代だってことです。したがって、同じようなロック体験、音楽体験をしているんでしょう。ですから、共通のロック言語みたいなものがあるんだと思います。
 ぼくがもすんなりと入っていけたり共鳴することができたりするのもそこに理由があると思います。大半の曲はぼくの好みです。とくに加藤さんのヴォーカルをフィーチャーした<イン・ディープ・ハート>がよかったですね。いかにも加藤さんらしいメロディ・ラインが、懐かしさと共にいまの時代にもこういうロックは魅力的だと思わせるものがあります。あとは<タイムマシンにお願い>の続篇みたいな<ビッグ、バン、バン!>もご機嫌です。

e0021965_9383340.jpg 思い出すのは、ミカ・バンドが『黒船』を出したときです。調べてみると、このアルバムは1974年に出ているんですね。ヨーロッパでもアルバムが発売されることになって、そのためにプロデューサーもバッドフィンガーやロキシー・ミュージックの作品なんかを作っていたクリス・トーマスが迎えられました。このアルバム、いまだにぼくのフェイヴァリットですが(これに<タイムマシンにお願い>も収録されています)、このアルバム発売にあわせて新宿の厚生年金ホールで彼らのライヴがありました。そのときに、ミカさんが天井から吊るされたブランコに乗って<タイムマシンにお願い>を歌いながら降りてきたんですね。その印象が鮮烈で、いまもこの曲を聴くとあのシーンが思い出されます。
 このアルバムでミカ・バンドのことがすっかり好きになったぼくですが、その前に発売されたデビュー作の『サディスティック・ミカ・バンド』にはぴんときませんでした。それというのも、フォークルや加藤さんのソロ・アルバムとかなり路線が違っていたからです。
 その上、グループ名もプラスティック・オノ・バンドのコピーですし、シングル・カットされた<サイクリング・ブギ>もダウンタウン・ブギウギ・バンドの<スモーキング・ブギ>のパクリのようで、しかもオノ・バンドもダウンタウンもミカ・バンドと同じ東芝からアルバムがリリースされていることもあって、何となく二番煎じの印象だったんですね。
 しかしクリス・トーマスがプロデュースした『黒船』は、ミカ・バンドにグラム・ロックをさせることでイメージを一新させました。1作目でもその傾向はあったんですが、グラム・ロックの本場から来たプロデューサーによって、ミカ・バンドは本物の味付けが施されたんでしょう。ぼくはこのころから、ジャズでもロックでもプロデューサーの存在の大きさを強く認識するようになります。
 ミカ・バンドはこのアルバムがイギリスやアメリカでも発売され、その後にロキシー・ミュージックの全英ツアーにオープニング・アクトとして参加します。ぼくは『黒船』のイギリス盤もアメリカ盤も持っていますが、とくにイギリス盤はヴィニール・コーティングされたジャケットがとてもいい感じです。

 その後ミカさんは離婚してクリス・トーマスと再婚しますが、そういうことでミカ・バンドも4枚のアルバムを残して解散しました。その後、加藤さんはソロ活動をスタートさせ、その中では最初に発売された『それから先のことは』もぼくの中では名盤中の名盤です。とくに<シンガプーラ>と<それから先のことは>を聴いていると、自分の人生や生き方のことを考えさせられます。
 といったことをぐだぐだ書いていくといつまでたっても終わりませんので、今日はこのくらいで。

 そうそう、このところiPOD、カー・ステレオ、そして家のオーディオ装置をフル稼働させて聴いている新譜をメモしておきます。
 『サム・ムーア/オーヴァーナイト・センセーショナル』(ワーナー)
 『トニー・ベネット/デュエッツ:アメリカン・クラシックス』(ソニー)
 『アーロン・ネヴィル/ソウル・クラシックを歌う』(ソニー)
 『ジョニー・キャシュ/アメリカンV:ア・ハンドレッド・ハイウェイズ』(ソニー)
 『ダイアナ・クラール/フロム・ディス・モーメント・オン』(ユニバーサル)
 『ダイアナ・ロス/ブルー』(ユニバーサル)
 『スモーキー・ロビンソン/タイムレス・ラヴ』(ユニバーサル)
 『ロッド・スチュワート/グレイト・ロック・クラシックス』(BMG)
 『フリオ・イグレシアス/今宵もロマンティック~ロマンティック・クラシックス』(ソニー)

 こうやってみると、すべてヴォーカル。アルバム、そしてカヴァー集というか「クラシックス」という言葉が使われているアルバムが随分多いことがわかります。ここにぼくの懐古趣味が反映されているようです。
by jazz_ogawa | 2006-11-10 09:52 | MHR | Trackback(1) | Comments(6)
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 8月に河出書房新社から発売された『ジャズマンが愛する不朽のJAZZ名盤100』が昨日の朝日新聞夕刊「読むエンタ」で紹介されました。発売からしばらくたちますが、こうして紹介していただくのはありがたいことです。
 それにしても、この記事、効果絶大です。さっきAmazon.comをチェックしてみたところ、「Amazon.co.jpランキング:本で1,706位」となっていました。これまで5桁台だったものがこんなに上がるとは・・・。
 でもこのランキングがどうやって決まるのか、つき合いのある出版社関係のひとは誰も知りません。ちなみにぼくの名前で検索をすると、23冊の本が売れ行き順に出てきます。しかしこの売れ行き順と、個別のランキングが連動していません。下位に位置している本でも「Amazon.co.jpランキング:本で★★位」では上位に位置している本より上のものがあります。
 「★★位」というのは1時間とかの短いタームでの集計で、画面に並んでいる1~23位までの順番はこれまでの全売れ行きでは? というひともいます。しかしこれにも無理があります。だってぼくの本では、現在売れ行きの2位に位置しているのが出たばかりの『となりのウイントン』です。まだ出て2週間少しですから、そんなに売れているはずはありません。
e0021965_23285974.jpg しかも1時間おきくらいにランキングが変わる上に、1万とか2万くらい下がったり上がったりします。これだけ本が多いのですから、1冊でも売れれば1万や2万くらいは上がるのかもしれません。ただしぼくの23冊(1冊は同名異人のひとの本ですが)の中でも、それまで3位だった本がいっきに最下位になったりもします。こういう現象は、4位以下の本がある時間帯にすべて売れなければ起こらないはずなので、これまたありえません。
 どなたかこの仕組みをご存知なら、ぜひとも教えていただきたいものです。でもどうやら企業秘密で、関係者以外は誰もs知らないとの意見もあります。うーん、気になる。

 とかなんとかいいながら、今日は著書の宣伝をさせてもらいました。興味のあるかたはAmazon.comでお買い求めて、順位がどうなるかを観察してください。
by jazz_ogawa | 2006-11-08 23:31 | Works | Trackback | Comments(6)
e0021965_2328351.jpg ぼくがジャズを好きになったきっかけは、ジョアン・ジルベルトとスタン・ゲッツの共演した『ゲッツ=ジルベルト』です。そのときには気がついていなかったのですが、大げさにいえば人生の素晴らしさを教えてくれたのがそのレコードでした。

 ジョアン・ジルベルト。
 あれから彼のレコードはどのくらい聴いてきたでしょう? 『ゲッツ=ジルベルト』だけでも何枚もレコードを買い換えました。CDも音質が向上するたびに聴き入っています。留学中に初めて「カーネギー・ホール」で聴いた生のジョアンにも感動しました。
 来日はあり得ないといわれていたジョアンが、21世紀になって奇跡と呼ばれるステージを日本でも聴かせてくれるようになりました。今回は3回目の来日ですが、相変わらずのマイ・ペースぶりに、苦笑しつつも感動した一夜を昨日は過ごすことができました。

 「開演時間は予定です。アーティストの都合で開演時間が遅れる場合がございますので予めご了承ください」
 コンサートの広告にこういう一文が載せられています。「開演時間が遅れるかもしれない」なんて告知されるアーティストは他に知りません。ジョアンは遅刻の常習者なんですね。これまでの来日でも、時間どおりに始まったことは一度としてなかったんじゃないでしょうか。ぼくが観に行ったときもそうでした。
e0021965_23295390.jpg それは昨日も同様です。このマエストロは開演時間の5時になっても宿舎のホテルから出ていません。そんなアナウンスが場内に流れ、超満員になっていた客席からため息ともどよめきともつかない声が漏れます。ホールでは、「演奏者の意向で空調装置は切っております」のアナウンスもありました。まったくわがままなマエストロです。
 でも、待たされることによって聴きたい気持ちが高まってきます。遅れても、最初からそんなものだと思っているので腹は立ちません。普段は何でも予定どおりにいかないといやなぼくですが、ジョアンの場合は待たされることがほどよいアペタイザーになっています。
 5時50分になって「ただいまホテルを出発しました」のアナウンス。経験から、ここまで来ればあとはとんとん拍子に進んでいくことがわかっています。
 「ただいま到着しました。間もなくコンサートが始まりますので、ロビーのお客様はお席にお戻りください」。これが6時10分。そして5分後に場内の明かりが落とされ、しばしの沈黙ののち、ギターを持ったジョアンがたったひとりでステージに現れました。

 それから8時まで、1時間45分にわたってジョアンは昔ながらのジョアンであることを淡々とした歌とギターで披露し、そして静かに舞台から去っていきました。ぼくには至福の時間です。さまざまな思いと思い出が、心地よい響きの中で頭の中を巡っていました。ジョアンのライヴを聴くときは、いつも自分の音楽遍歴を心の中でなぞる旅になります。
e0021965_23301185.jpg 中学のときに出会った『ゲッツ=ジルベルト』。偶然とはいえ、この名盤をぼくは新譜で出たときに聴いていたんですね。日本ではボサノヴァなんてほとんどのひとが知らなかった時代です。ぼくだってそんなことには無頓着でした。かっこいいからひたすら聴いて、このかっこいいギターとヴォーカルを何とか真似していただけです。学校から帰ると、毎日何度も何度も繰り返し聴いてはコピーしていました。
 コード進行がわからなかったり、音が拾えなかったり、最初は楽譜もなかったので苦労したことを思い出します。でも、お陰で大学生のときには代々木上原にあったスナックでボサノヴァの弾き語りができるまでになっていました。その後もボサノヴァはあちこちのバンドで演奏してきましたし、演奏することをやめてからもずっと聴き続けてきました。ボサノヴァがいつもぼくの横にはあったんですね。

e0021965_23384752.jpg その象徴的な人物のひとりがジョアンです。彼は40年以上前に初めて聴いた『ゲッツ=ジルベルト』そのままの歌とギターで、昨日もぼくの前にいました。細かいことをいえば、この40年以上の間にはジョアンも変わっているはずです。でも、ぼくにはまったく同じに聴こえます。この普遍性が尊く思えました。
 音楽でも何でもそうですが、発展していくことは重要です。でもジョアンにはいつまでも昔のままでいてほしい、変わってほしくない、と思います。彼にも新しいことをやろうという気持ちがあるとは思えません。ジョアンの場合は60年代のスタイルでストップしていてほしいし、懐メロでいいんです。それが聴きたいんですから。
 もちろんこんな意見に大反対のひとも多いでしょう。でも、ジョアンについてのぼくの気持ちはこういうものです。ですから、昨日は最高に素晴らしいライヴに接することができました。
 それから、これまでの来日だと2時間半以上のコンサートはざらで、前回のラスト・コンサートでは4時間近くやったと聞きます。けれど、ぼくは昨日の2時間弱くらいがちょうどいいように思いました。長くやればいいというものではありません。
 素敵な音楽は腹いっぱい詰め込みたくないんですね。もう少し聴きたいなっていうところでやめるのが美しいじゃありませんか。ジョアンの歌とギターは1時間半くらい聴ければ大満足です。余韻に浸りながら帰ることが出来ますから。
 音楽はぼくの生活にとって必要不可欠なものです。でもそれだけにのめり込んでいたくないって気持ちがどこかにあります(もう充分にのめり込んでいますが)。音楽以外にも、この世の中、素晴らしいことや楽しいことがたくさんありますからね。このごろは、そんなバランス感覚を大事にしていきたいと考えています。
by jazz_ogawa | 2006-11-05 23:42 | ライヴは天国 | Trackback(1) | Comments(6)
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