超満員だった昨日のファースト・セットを観てきました。
今回は先ごろ発売された新作の『オウトラ・ヴェス~ふたたび~』にちなみ、レコーディングで共演したミュージシャンをブラジルから招聘してのライヴ。
アルバムもよかったですが、今回の貞夫さん、いつにも増して素晴らしかったです。アルバムからの曲を中心に、「エリス」やトッキーニョの「再会」、さらには最後に「シェガ・ヂ・サウダージ」、アンコールに「フェリシダージ」というラインアップ。
貞夫さんとブラジル音楽。アフリカン・テイストの演奏もいいのですが、こちらも文句なしに楽しい。しかも貞夫さんの持つ哀愁がブラジリアン・テイストにぴったり。だから、レコーディングする前からこのプロジェクトは素晴らしいものになる。そう予感していました。
その結果がアルバムと今回のライヴ。貞夫さんは今年で80歳になりますが、いまも新しい音楽に挑戦中。その姿も素晴らしいし、とにかくかっこいい。
60年代から貞夫さんの音楽を聴いてきたぼくは、最後の「フェリシダージ」で感極まりました。当時のことを知っているひとならこの気持ち、わかるんじゃないでしょうか? しかも繰り返しの部分だけですが、この曲ではヴォーカルも披露。
珍しいことはこれ以外にもありました。いつもはあまりMCはしないのですが、今回は曲ごとにMCをしていました。それぞれの曲に強い思い入れがあるんでしょう。
「Jazz Conversation」に出演していただいたときも、「いまだにいい音が出るように努力している」と仰っていたとおり、音楽と演奏に懸ける意欲は少しも衰えていません。
しかも貞夫さんが素敵なところはクリエイティヴなことをやっているにもかかわらず、聴くひとをハッピーな気持ちにさせてくれること。同時に楽しい音楽を追求してきたからこそ、いまもトップ・ミュージシャンのひとりでいるんでしょう。
半世紀以上にわたって常にナンバー・ワンのポジションにいる。この事実はさまざまなことを示唆してくれます。努力だけではないでしょうし、才能だけでもありません。そういうことを考えながら、貞夫さんの音楽を聴いていたら、ぼくもやる気が湧いてきました。
音楽を聴いていると、たまにすべてを投げ出してもいいくらい凄く幸せな気分になることがあります。昨日は音楽に感激したこともさることながら、貞夫さんの若々しい姿を目の前できたことで、そんな気分を味わいました。
翻ってみると、ぼくはつくづくいい音楽やいいひとたちに囲まれています。この歳になって、加山雄三じゃないですが「幸せだなぁ」って思える人生。最高でしょ?
【出演メンバー】
渡辺貞夫(as)
Fabio Torres(p)
Swami Jr.(g)
Bruno Migotto(b)
Celso de Almeida(ds)
2013年7月9日 「南青山 ブルーノート東京」 ファースト・セット