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ファーシーズンズホテルをチェックアウトし、 向かったのは、グランド ハイアット エラワン バンコクです。 実は、フォーシーズンズからグランド ハイアットまでは、 わずかワンブロックしか離れていません。 歩いて、たったの数分。 なので、小さなキャリーケースをころがして徒歩で。 でもね、ここ、写真のようにエントランス前がかなり急な坂になっているのです。 タクシーなんかを利用していると、まったく気にならないのですが、 小さいとはいえスーツケースをひっぱって登るのはキツイ。 おまけに、高級ホテルに敬意を表してジャケットまで着こんでる始末。 汗をかきながら、1/3ほど坂を歩いていたら、 ベルマンが見つけてくれて、あわてて駆け寄ってくる。 「マダ~ム、Where did you come from ?」 フォーシーズンズからなの、と言うと、 「オォ~、I see 」と納得顔。 荷物をポーターに手渡し、中に入ります。 吹き抜けの高い天井に、グリーンがみずみずしい。 シャム時代を思わせる純白のユニフォームのドアマンたちも凛々しいものです。 ここも、宿泊するのは久しぶりですが、 バンコクを代表する一流ホテルとしての存在感は健在です。 チェックイン後、PRマネージャーのタイ人女性、Pさんとランチをご一緒することに。 新しくオープンした、レストラン「テーブル」に向かいます。 このレストランのコンセプトは、 名前のとおり店内に配された5つのテーブルを使ってシェフが目の前で、 ステーキを焼き上げ、シーザーサラダなどを作ってくれるライブなプレゼンテーション。 空間デザインは、トニー・チー。 六本木のグランド ハイアットのダイニング「チャイナルーム」を手がけたのも彼。 まるで、ニューヨークにでもいるような 重厚さとグラマラスな店内で、大人のムードです。 「テーブル」のご自慢は最上質のプライムビーフの各種ステーキ。 オーストラリア産の最上級ワギュウビーフをいただきましたが、 ジューシーかつ、適度な熟成感が味わい深く、 ランチでいただくにはもったいないほど。 ミディアムレアの焼き加減も完ぺきでした。 赤ワインが欲しい。 でも、食後は周辺の視察をするので、我慢です(笑)。 すばらしいお肉を堪能しながらも、 Pさんに5月からのバンコクのホテルの状況をうかがいます。 赤い服を着たデモ集団がグランド ハイアット エラワンの目の前の道路をいきなり、 バリケードを築き、占拠したのが4月14日のこと。 当日はウェディングが何組か行われる予定で、さらに客室も満室にちかい状態。 すでに入口からは車も人も入れないため、 スタッフがそれぞれ手分けをしてウェディング参列者のゲストに連絡を取り、 裏口から誘導したということです。 急きょ、ホテルを代わりたいゲストに別のホテルを手配して送迎を行い、 また、滞在されるゲストへのケアも行うなど。 スタッフ総出で、不測の事態に対処していったということ。 その後、数日はゲストを抱えていましたが、 さすがに安全性が確保できないとの判断から、4月20日に完全にクローズ。 とはいえ、スタッフは毎日、ホテルへ通ったそうです。 クローズから再開まで、一ヶ月以上も稼働ゼロのままでしたが、 この期間は、前向きにスタッフの研修やスキルアップのためのトレーニングに充てたとのこと。このあたりの有事に対するスキルは、大手ならではですね。 経験値が物語ります。 また、給与も通常どおり支払っただけではなく、 サービス料の分の上乗せもきちんと行ったと聞き、感心しました。 ゲストが支払うサービス料は、毎月、総額をスタッフに分配します。 当然、クローズ中は一切、収入がないわけですからサービス料も派生しません。 それをホテルとオーナー側が、その月のバンコクの主要ホテルの売上高からサービス料の平均を割り出し、それに準じた金額をスタッフに支払いました。 「一生懸命、ゲストとホテルを守ってくれたスタッフをねぎらいたかったの」と、Pさん。 デモ隊と治安部隊の衝突もなく、 小康状態のまま5月半ばまでホテルの目の前はデモ隊が占拠。 一気に緊張感が高まってきたのが、5月13日のこと。 この日、政府はホテルのすぐ横のラチャプラソン交差点を封鎖する旨を発令。 その後、非常事態宣言、夜間外出禁止令が出されます。 そして、5月19日、大規模な衝突があり、 今までお伝えしてきたような商業施設が暴徒により焼き討ちにあい、崩壊しました。 多数の犠牲者、被害を出したものの、 事態はこれにより終息していきます。 グランド ハイアット、そしてフォーシーズンズが再開をするのは、5月26日。 その数日前は、交差点周辺で大がかりなボランティアによる清掃活動が行われ、 各ホテルもミネラルウォーターや、食事を用意するなど炊き出しをしてサポートしました。 柔らかい笑みをたたえて、話をするPさん。 タイ人として今回の事態にはとても心を痛めているはず。 それゆえに、自分たちが、そしてホテルがどういう姿勢を見せなければならないのかも、 痛感していることでしょう。 部屋に戻り、窓の外を見ると、ラチャプラソン交差点が見下ろせる。 焼け落ちたZENの上部が痛々しい。 バンコクが失ったものは、あまりにも大きすぎます。
by naoko_terada
| 2010-08-08 03:59
| トラベル
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Tracked
from hommania+blog
at 2010-08-23 14:40
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筆者のプロフィール
寺田直子(てらだなおこ)
トラベルジャーナリスト。旅歴30年。訪れた国は90ヶ国超え。女性誌、旅行サイト、新聞、週刊誌などで紀行文、旅情報などを執筆。独自の視点とトレンドを考えた斬新な切り口には定評あり。日本の観光活性化にも尽力。著書に「ホテルブランド物語」(角川書店)」、「泣くために旅に出よう」(実業之日本社)、「フランスの美しい村を歩く」(東海教育研究所)など。 問い合わせメール happytraveldays@aol.com インスタグラム Happy Travel Days 寺田直子 ツイッター ブログパーツ
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