このアニメを見なきゃMOTTAINAI!/黒田昌郎さんからのお勧めアニメ

アニメーション監督・黒田昌郎さん。
名作「フランダースの犬」「ふしぎな島のフローネ」などの
作品を手掛けていらっしゃいます。

監督に、「このアニメを見なきゃMOTTAINAI!」ってありますか?
とお聞きしたら、メールで、見た方がいいリストをお送り頂きました。
カントク、本当にありがとうございます!
少しずつ、紹介していきたいと思います。



まず。 山村浩二 さんの作品をご紹介頂きました。
山村さんは、様々なアニメ作品で、世界の主要なアニメーション映画祭において
数々賞を受賞されています。(詳しくは、
山村さんのHPへ>>
かなり多くの作品がありますが、まず見るべきはコチラだそうです!


頭山 2002年の作品

a0083222_1318565.jpg


「頭山」山村浩二作品集
発売元:GENEON
Amazonの購入はコチラから



落語が元になっている、アニメーションで、シュールな世界観が面白いです。
10分程があっと言う間に、見入ってしまいました。
『頭山』は、アヌシー国際アニメーション映画祭が選ぶ
「アニメーションの一世紀 100作品」、
「ASIFA50周年記念アニメーションベスト50」に選出された作品です。

そして、

遠近法の箱 1990年の作品

上記と同じDVDに収録されています。
不思議な世界観に引き込まれます



そして最後にご紹介する1本は、
マイブリッジの糸  2011年の作品

カナダ国立映画制作庁とのアジア初の
共同制作アニメーションとして制作された本作は、
大藤信郎賞、広島での2度のグランプリ、
文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞5回受賞など、
他にも多数の受賞をしているそうです。

予告編が公開されていたので、掲載します。




作品について詳しくは、公式HPへ


他にもご紹介頂いた作品がありますので、
この続きは次回のお楽しみです!
MOTTAINAIスタッフ 
 
   by mottainai-lab | 2013-08-30 14:02 | 黒田昌郎 | Comments(0)   

インタビュー:黒田監督 /アニメーションの監督と言う仕事

アニメーション監督・黒田昌郎さんにスタッフがインタビューさせて頂き、
アニメにまつわる楽しいお話を色々とお聞きしました。
その内容を数回に分けてご紹介しています。

第2回目の今回は、アニメーションの監督って
具体的に何をするのか?
お聞きしました。

a0083222_13474597.jpg



■ アニメーションの監督って具体的に何をするんですか?

実写映画の場合、撮影現場はスタッフ、キャストの全ての人たちが、集まって、監督の指示のもとに撮影が行われます。その現場では、監督は作品内容も含めて、現場の作業を円滑に進めるための管理者でもあるのです。時には人事管理も行うこともあります。演劇の舞台監督は、当日の舞台の進行の全て、そして本番に至る迄の稽古スケジュール、スタッフ、キャストの人事管理も兼ねる役を果たしています。作品の内容の提示をするのは演出です。監督と演出の違いは、そんなところです。当時日本の映画の最高責任者は監督でした。アニメーションの場合は演出と呼ばれていました。

つまりは、アニメーションの場合、人事やスケジュールの管理はノータッチでした。現場では実写とは異なり、スタッフは分散しているので管理の仕様がありません。最近、アニメーションでも監督と呼ばれるようになっているのは、まずは映画の場合、実写と合わせようと考えたのだと思います。またTVのシリーズの場合、週一本放映のため各話別々の演出が担当するようになり、そのため全話をまとめる人が必要になり、監督という肩書きの監修者が置かれるようになったのです。

監督や演出が何をするかというと、作品を作る流れで言うと、先ずは企画。企画がOKになり、制作開始のGOがかかると、現場ではプロデューサーが動き出します。監督の決定、そしてシナリオライターの人選。時にはこの二人は企画の段階で既に決まっていることもあります。同時に、キャラクターデザイン美術監督を決めていきます。これも場合によっては、企画書の中にキャラクター、美術のサンプルを入れなければならないので、先行して決めれられる場合もあります。

特に、キャラクターは、実写の場合の俳優と同じ役割ですので、作品のカラーにも大きな影響を与えます。シナリオ、キャラクター、舞台画面スタイルの検討が一斉にスタートします。ストーリー、キャラクターの性格、画面の美的要素をどうするか?監督は全てのイメージをまとめることになります。

イメージが固まったところで、仕上がったストーリーをどのような画面に作っていくかの全体の指示プランを作ります。それが「絵コンテ」です。映画はいくつものcut(カット)が積み重なって構成されます。例えば、long shot、full shot、upなど、サイズを変えたり、アングルを変えたり、写すキャラクターを変えたカットをつないで作ります。監督は、絵コンテをカット毎にどんなサイズで画面の中で誰がどんな演技をして、どんなセリフを喋るのかということを決めて、絵にしていきます。長い映画の場合、このカットが1000ぐらいになります。絵コンテ用紙が300枚ぐらいになることもあります。

実写と決定的に違うところです。実写では全員が撮影現場に集まり、用意!スタート!で撮ります。カットの号令で1カット撮り終えたことになります。アニメーションは何百人ものスタッフが別々な場所で作業をします。原画・動画を描いて、線をデジタル化して、着色して背景を描いて、着色したキャラと背景を合わせて撮影してやっと1カットの画面が出来上がります。長い場合は1つのカットが出来上がるのに何ヶ月もかかります。カット毎に、多くのスタッフが、それぞれの作業を同時進行ですすめていきます。そのためには詳細に指示の書かれた絵コンテが必要になるのです。実写の場合は字コンテといって、絵のない、カット割りの指示とカット内の演技プラン、照明などの注文の入ったものを書く監督さんが多いのですが、アニメーションは基本が絵なので絵コンテになる訳です。

構図(angle、size)を決め、その画面の中での動きプランを描く訳ですが、私はあまり、絵が上手ではありません。正直言って、私の下手な絵を作画のスタッフが「こういうふうに描いて欲しいんだよ」とイメージを汲み取ってくれるので、救われました。今更、絵が上手になるように頑張るより、絵は上手な専門家にお願いしよう。僕はその代わりに何が出来るか?を考えました。絵描きさんの絵、動画をより効果的に見せるためにどうしたら役立てるかを考えた時、自分の演出としての立ち位置というか、そんなものが見えてきたといえます。
多くの戯曲、小説、演劇、映画を読み、観まくったおかげでドラマツルギーといえば大げさですが、作品全体の設計図の中でどう見せるか…その演出的な技法を勉強しました。絵の描けない演出にとってはそれが自分の役割だという開き直りです。
   by mottainai-lab | 2012-01-19 14:33 | 黒田昌郎 | Comments(0)   

インタビュー:黒田監督/アニメーション監督になるキッカケ

アニメーション監督・黒田昌郎さん。
名作「フランダースの犬」「ふしぎな島のフローネ」などの作品を手掛けていらっしゃいます。

黒田監督にスタッフがインタビューさせて頂き、
アニメにまつわる楽しいお話を色々とお聞きしました。
その内容を数回に分けてご紹介していきます。

今回は、黒田監督はどのようにしてアニメーション監督になられたのか?
そんなお話です。


a0083222_1851080.jpg



黒田監督はどういう経緯でアニメーション監督になられたんですか?

私は、小学校の時から子どもの劇団に入っていて
女子高の文化祭とか、地方の映画館での公演などで子役で出演していました。

中学時代には、兄の友人、現在の劇団「四季」の
演出家の浅利慶太氏が慶応高校時代演劇部で
演出をする芝居に出演したこともありました。

私も高校では演劇部で活動していたのですが、
いつまでたっても背が伸びないし、
本を読むことが好きで夜中暗い灯りの下で長時間読みふけっていたおかげで
目を悪くしてしまいました。暗い舞台の端に立つと怖くなりなりました。
これはもうだめかなーと思って役者をあきらめました。

でも、舞台の勉強だけは続けたいと思い早稲田の仏文科に入り、
フランス演劇、当時劇団四季がスタートの頃公演した
アンチゴーヌやジロドーの芝居の勉強をしました。

ところが、大学に入ってからどういう訳か映画漬けになってしまい、
一年に400本という数の映画をみることになりました。

嬉しいことに、その頃、7本建てという映画館があって、
一日に7本違う映画が観られるのです。
学校に行かず映画館に直行、朝から晩まで映画を堪能した時もありました。


特にフランス映画特集などがあって、
ジャンギャバンの渋い演技に魅せられていました。

その頃、有名なスター映画も沢山ありましたが、
中でもミュージカル映画のとりこになりました。

ジーン・ケリーの「踊る大紐育」「巴里のアメリカ人」「雨に唱えば」、


雨に唱えば

フレッド・アステアの「バンド・ワゴン」「踊る大紐育」のエレノア・パウエルや
リタ・ヘイワーズとのタップ・ダンスなど踊りの画面に惹かれました。

その中でも、「踊る大紐育」の監督スタンリー・ドーネンの
「略奪された七人の花嫁」(1954)の多勢の群舞に魅了され、日本でも、
こんなミュージカルができたらいいなあと思いました。


略奪された七人の花嫁

でも、当時の日本の演劇界には歌って踊れる役者がそんなにいない。
日本には土壌がないなあと思っていたんです。

そんな時にディズニーの「ファンタジア」を見ました。
アニメーションの作品は他にも何本か入って来ていました。


ファンタジア

同じディズニーの白雪姫(1950公開)、
ポール・グリモーの「やぶにらみの暴君」(1950公開)、ロシアの「イワンと仔馬」(1947)など。


やぶにらみの暴君

「ファンタジア」のミッキーマウスの「魔法使いの弟子」それ以上に惹かれたのは
「時の踊り」でした。ダチョウやカバやゾウがバレエを踊っています。
絵を動かしてミュージカルが作れる!そう思いました。


時の踊り

学生時代の映画漬けのおかげで日本映画も良く観ました。
京都の時代劇のスタジオに行きたいなと思っていたのですが、
その時東映でアニメーションのスタジオが出来たと聞き応募したのが
私のアニメーション人生のスタートです。

スタジオは当時は東映動画株式会社といっていました。
入社当時は日本の映画は全盛期で最高に儲かっていたのです。

当時の社長大川博氏はディズニーのアニメーションが好きで
日本にもディズニーのようなスタジオを作りたいと考えたそうです。

それまでも、松竹動画や日本動画、おとぎプロというスタジオがあったようですが
規模の大きなスタジオは東映が初めてだったようです。

1959年に助監督志望で入社、「シンドバッドの冒険」という作品で助監督につきました。
制作スタートの直後、監督が体調を崩し
毎日監督の自宅とスタジオを往復して支持を仰ぎながら作品を完成させました。

その努力が報われて共同演出というタイトルをいただいたのが監督第一歩です。
その後、単独での監督作品に「ガリバーの宇宙旅行」があります。


ガリバーの宇宙旅行


第1回目はここまで、、、次回は『アニメーションの監督って具体的に何をするのですか??』そんな質問を投げかけさせて頂きました。お楽しみに!
   by mottainai-lab | 2011-12-12 18:50 | 黒田昌郎 | Comments(0)   

このアニメを見なきゃMOTTAINAI!/文:黒田昌郎

a0083222_16195226.jpg


大変長い時間を空けてしまいました。
「このアニメを見ないともったいない・・・」のシリーズ三作目をご紹介してコメントを送ることを怠っていました。申し訳ありません。


作品は「老人と海」
アーネスト・ヘミングウェイの原作をアニメ化して様々な賞をとった作品です。
先ずびっくりさせてれるのは、その技法です。
透明なアクリル板に油絵具で絵を描き、その一部、場合によっては全てを指先で書き直しながら、コマ撮りするという方法です。紙に書いた動画や、切り紙などは全く使っていません。

ペトロフにとっては彼のアニメーションを作るにはこれ以上の手法はないといっています。幼い時からレンブラントの絵に魅せられた彼にとっては、油絵具による描写が全く自然なものとして感じられたのだと思います。特に水の表現にそのことが見てとれます。作品中の海の水の描写の写実性は、この技法ならではのものがあります。

彼自身も水の流動性・変化を表現するのにぴったりの技法だと言っています。Low Angleで海を見せる時の画面手前の水の流れ、櫂で切られる水の流れはコマ撮りとは思えぬリアルな感覚です。

セルアニメの場合、私たちは紙に水の一瞬一瞬の絵をフォルムとしてとらえて、セルにしてコマ撮りします。フォルムがその輪郭をキチッと型どった動画によって動かされます。どうしても流れるような動きには、そのフォルムがじゃまになります。

油絵具の場合、輪郭をあいまいに、にじませるようなもので撮られるぶん、流動間はセルアニメを越える写実性を持つことが出来るのです。
水を描くことが好きなペトロフにとっては、セルアニメや切り絵のようなキチッとしたフォルムを持つ絵のコマ撮りは技法上受け入れがたかったのだと思います。

それにしても私が好きなCut、7分過ぎ位のところで、老人のボートの上で一日が暮れて、次の朝、雲間から鳥の群れが現れて、その中の一羽だけが群れを離れてカメラに向かってくると、そのまま水面に足をつけるようにポチャンと水を揺らして水面近くを毛下を落としながら、飛ぶと最後に舟から降ろした釣糸(といっても太いロープのような)の上にのる鳥のCut。
カメラワークと水と鳥の動きの調和がみごとなCutです。

ところで、まだこの作品の画面のサイズについて触れていませんでした。この作品は東京の新宿高島屋のIMAX劇場で上映するために作られた大型画面の映像です。
通常の映画の場合35mm巾のフィルム(一コマあたり4つの穴-パーフォレーション)ですが、IMAXは70mm巾のフィルム(一コマあたり15のパーフォレーション)画面の露光面積は35mm画面の10倍くらいになります。こんな大きな画面でカメラの動くをつけるとその作業スペースは通常の劇場用のサイズをはるかに上回る大きな撮影台を必要とします。

水面に反射した光の照り返しが、老人や舟に映って揺れる描写。カジキがさめに襲われて身体をボロボロにされてしまうシーンのラストの赤い空に禍々(まがまが)しく流れる黒雲など、みごたえのある作品です。

前作「マーメイド」、最近作「春のめざめ」なども機会があったらぜひご覧ください。
長期間のご無沙汰、すみませんでした。

Y.Kuroda

老人と海

アレキサンドル・ペドロフ氏からのメッセージ
   by mottainai-lab | 2009-08-18 16:27 | 黒田昌郎 | Comments(0)   

このアニメを見なきゃMOTTAINAI!!『老人と海』/文:黒田昌郎

a0083222_11271171.jpg

****************************************
 三作目の紹介です。
「老人と海」アレクサンドル・ペトロフ作
同じ題名のヘミングウェイの小説を原作として、4年間にわたってガラスの上に指で描く独特な手法の油絵をアニメーションし作りあげた作品です。
第72回アカデミー賞、短編アニメーション部門のオスカーを受賞した。
日本、ロシア、カナダの国際共同製作としてIMAX、大型映像作品として製作が開始されたのが1996年の春ということなので、完成1999年6月6日までの道のりは並々ならぬものだったと推挙します。
海、そして波のアニメーションの迫力は、見事としか言いようがありません。
一人の老人が海の上で、魚と対決する。単純な話の中に激しいドラマを見ることになる…作品です。
Y.KURODA
2008.10.23
****************************************
『老人と海/ヘミングウェイ・ポートレイト』DVD

『老人と海』(前半)


『老人と海』(後半)

   by mottainai-lab | 2008-11-25 11:27 | 黒田昌郎 | Comments(0)   

このアニメを見なきゃMOTTAINAI『琴と少年』/文:黒田昌郎

a0083222_10572165.jpg
******************************
「琴と少年」(山水情) ごらんになっていただけたでしょうか?
しばし余談。 5~6歳のときの記憶です。私の姉(当時女学校に通っていました。)が個人教授で水墨画を習っていました。週に一度先生が見えて家で指導下さるのですが、姉は当時それが嫌だったらしく、前日になると、「お前習っておいて!」と私に言いわたし、当日学校から帰らず、練習をさぼっていました。おかげで、代りに、私は先生からランの花の描き方を習っていたことを記憶しています。

筆を湿らせた墨が和紙にふれるやいなやすーっとしみこんでいく、鉛筆やクレヨンでは出ない描法が不思議に感じられ、何度もランの葉を描いた記憶があります。 余談ついでに、今80才半ばになる姉上は、水墨画の会員になり年に二度の展覧会に出展、私もその画を観に行くのがイベントになっています。

アニメーションの世界には、セルアニメから入った私にとって水墨アニメーションのあのニジンダ絵をどうやって撮影しているのか気になっていました。 和紙に描いた絵は重ねが出来ません。ですが映像は間違いなく、重ねて撮影されている筈です。 私が最初に水墨アニメーションを観たのは、「牧笛」(1963)だったと思います。 東映動画スタジオに入社し、アニメーションの作業工程を知ってからいくらもたたない時期でした。 紙に描いた動画をトレス、彩色したセルを重ねて撮影するいわゆるセルアニメで作られていた頃です。 輪郭線を塗りつぶすぬり絵風に着彩したアニメーションしか知らなかった私にとって、水墨アニメーションのにじむ輪郭は驚きでした。紙ににじませればレイヤーは重ねられません。しかし画面は間違いなくレイヤーは重なって見えます。しばらく後になって知ったのですが、何枚ものセルを使って少しずつ濃度の違う色を塗ったセルを重ねていったということです。しかしデジタルと違って重ね枚数には限界があります。撮影による合成もあったと推察します。

 手法のことはとり敢えず、作品について…。
「琴と少年」
画面はどれも掛軸の水彩画の一部が動画になって動き出したかの構図です。白い無地の上に筆のタッチそのまま、描かれた絵の中で同質の筆のタッチのキャラクターが動き出しています。実写的な描写というより、全く絵画としての構図のshotが映像を構成して行きます。 白い無地のBackに自然の一部を水墨のタッチで描き込むことで、全面の白地が空間に変貌します。

 水の流れにそってカメラがパンすると、白いシルエットの人物が現われ岸辺の桟橋に渡し舟を待ちます。風の音…髪や衣装が揺れます。水の音が聞え、笛の音が、振り向くと、水鳥が鳴き声と共に飛びたち、小舟を操る少年が登場します。Top Sceneです。約1分半。老人と少年の出会いです。

 老人は少年の舟にのり、少年は笛を吹きながら、別の岸辺に老人を連れて行きます。老人は下舟後、フラフラとよろめいて倒れます。手にしていた長細い袋が落ちて、音をたてます。古琴の弦の音です。少年に助けられた老人は古琴の奏者でした。少年の家で休ませてもらった老人が爪弾く琴の音が、仕事から帰った少年を魅了します。

琴に興味を持った少年に老人は演奏の手ほどきを始めます。 紅く色づいた葉が散る中で、水面に満月の光を落す夜。そして雪の降る小屋で、火をくべる老人の脇で練習し、冷えた手をふく(あたためる)少年…端的な季節の移り変わりのあと少年の写しのLong shotが、更にTrack backされて…春の雪どけ水から始まり、笹の葉がゆらぐ中、竹の子が出て、老人は水面に釣糸をたれ、少年は木の下で琴を弾きます。 この作品の中で私が一番好きな構図です。 私の絵では下手なので、こんな絵を本編の中から探して下さい。 老人は少年の琴の音に聞きほれて、餌がとられているのも気がつかずにいます。この辺までが前半でしょうか。  

鷹が空を飛び交うshotがかなり長く入ります。 老人が何やら決意したらしくアゴヒゲを撫でます。 二人は小舟で幽谷、深山に入り込んでいきます。 水の流れが激しく動画で動かされます。 高い山を登る二人です。落ちる滝…縦に縦に登っていく構図は長い掛軸をさかのぼっていくようです。カメラで何フレームもパンしていきます。パンの途中の構図も崩れることなく、その瞬間の美しさを描写しています。すぐれた画力に感動します。 まさに仙境でしょうか。老人は少年に琴を授け別れを告げます。老人が仙境の彼方に姿を消す時、少年は琴を弾き始めます。雪の間に見える岩の上で琴を弾く少年。 いつしか、太々とした墨汁のニジンだ荒々しい黒が画面ににじみ、黒い雨…そして滝…カメラが下がり広々とした水面に小さな帆かけ舟が大ロングで遠去っていきます。

この作品も、一作目の「岸辺のふたり」同様、一言の台詞もありません。しかし何百言の台詞以上に、と、今回はそれほどの動きはありませんが、アニメーションで、観る我々に感動を与えてくれます。Long shotによる描写が多いです。その中で、わずかに使われたup shotの印象がいつまでも残ります。老人の琴の演奏にびっくりするup shot、冷たい手に息を吹きかけて温める横顔、無心に琴を弾くup、老人との別れの前に見せるこらえきれぬ表情。 どれもが、素晴らしい表情です。

 もう一つの作品「おたまじゃくしがお母さんを探す」は「琴と少年」より約30年余り前の作品ですが、おたまじゃくしや小さな動物たちの動きは素晴らしいです。やはり、セルアニメのベタ塗りのキャラクターではなく、ボンヤリとしたタッチや、ブラシを使ったようなキャラクターはやはり、セルによる塗り分けと重ねの技術で作られているとのことです。この作品は62年のフランス、アヌシー国際アニメーション映画祭で児童映画賞を、64年のカンヌの映画祭では栄誉賞を受賞しています。

Y.KURODA 2008.10.21.
   by mottainai-lab | 2008-11-17 10:48 | 黒田昌郎 | Comments(0)   

このアニメを見なきゃMOTTAINAI(2)/文:黒田昌郎

a0083222_10384728.jpg

*********************************************
このアニメを見なきゃMOTTAINAIの第二作目を紹介します。
一作目からずいぶん時間が経ってしまいましたが・・・。

琴と少年」(原題「山水情」)
中国の水墨アニメーションです。
1988年に上海美術電影映画制作所が制作したアニメーションです。
監督・盛特偉(ターウェイ)、閻善春、馬克宜。
キャラクターは現在中国美術学院で教授をやられている方です。
私は以前から水墨画が大好きでしたが、これほど美しい水墨アニメに接して大変感動しました。
10年位前に始めて観て以来、現在の私の教え子たちに毎年紹介して観せています。
ストーリーは単純です。年老いたこちの演奏家が旅の途中で倒れ、村の少年に助けられます。老人はお礼に琴を弾き、山の上へと立ち去ります。少年はその琴の音色に打たれる・・・。という話をシンプルな画調で描写します。

ついでに・・・同じ制作所の作品「おたまじゃくし、お母さんを探す」もご覧になってください。

黒田昌郎 2008.9.2
   by mottainai-lab | 2008-10-06 11:58 | 黒田昌郎 | Comments(0)   

このアニメを見なきゃMOTTAINAI『岸辺のふたり』/文:黒田昌郎

a0083222_1247385.jpg


******************************
「岸辺のふたり」マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督

観ていただけたでしょうか・・・。
タイトルを入れて8分、賞味だと7分強の作品で、一生を描いています。
父と分かれた幼年期から老人までの間、ずーっと父を待ち続けた描写です。

年が変わるごとに少しずつ成長して大きくなった姿が、父と分かれた場所に向かいます。そのたびに季節や機構も変わり、強い風が吹いたり、雨が降ったり、雪の積もった風景だったり、短い描写の中で、簡潔に表現されています。

何より素晴らしいのはLongshotでこれだけ上官を出す描写をしていることです。人物のupは見せていません。upのshotは車輪のupだけです。
年齢と状況に応じてそれぞれに異なる動きの自転車の車輪だけがup shotです。

父と娘の二人の車輪が重なって回っていきます。
(二人の写真が一緒に見えるのは1shotだけ)
※上記、手書きのイラストを参照ください。


赤い夕日のBackで坂を登る少女の漕ぐ車輪のup。
※上記、手書きのイラストを参照ください。

影が水溜りに映っている。
※上記、手書きのイラストを参照ください。


あとはLongshotで描写しています。
小さなシルエットで、全身のシルエットの動きで、感情表現をしています。
セリフもupの顔の表情もなく、Longshotのみの動きでの語り口はまさにアニメ的な表現と言えます。

私の師匠とも言えるアニメーターの森やすじさんが良くいわれていました。
キャラクターのシルエットのポーズや動きで、その人物が、何を考え、何を感じているのかを理解させるように画面の構図やポーズ、動きを考えなければいけないと。
マイケルの演出、作画はまさに、森さんの言葉通りの描写です。

父のボート遠ざかっていくのを見送る少女が、手前の土手でピョンピョンはねます。
あのshotが好きです。

※上記、手書きのイラストを参照ください。
そのcutの後の3cutのつなぎも簡潔で父が行ってしまった!
ということを実にすっきりと描写しています。鳥がスーッと通貨する(F.O)shotがInsetされて、何も見えない海。
普通だと、最初のフレームの中でボートが消えていく。或いは3cut目のcutで消えていくと言う見せ方がよくあります。

このつなぎに、私は小津安二郎監督のある部分のcutのつなぎを思い出しました。
男性のupを挟んで女優のupの切り直しだったと思います。女性の表情の変化を見せずに、男性のupを挟んで、女優の変化した顔にカットバックさせたつなぎで、小津監督は表情の変わる動くを見せたくなかった。と語ったと言われています。
動きを省略することで、より強いAccentを求めたカットのつなぎだと、若かりし私は学んだものです。すみません。勝手なことを書いています。

次に感心するのは画面の構図です。みなさんも見てお分かりだと思いますが、影を使うことによって、空間を描写しています。
殆んど無地に近いバックで、横に走る自転車の絵はともすると、平面的な表現として見られがちです。そこに木の陰を縦に手前に落とすことによって奥行きのある空間が作られています。
※上記、手書きのイラストを参照ください。

木々の影だけではなく、時には人物の影も水面に落としていきます。
影と共に動くキャラクターは、Longの小さな人影を長く伸びる影によって、その存在感が強調されています。

地面と空、それに数本の糸形の木、そこに過ぎの木の影が落ちただけで、空間が生まれ、そこに空気が誕生します。
そこを駆ける成長していく娘の動き・・・これも自転車を使うことでリズミカルに爽やかな描写になっています。自転車を使うことで、歩いたり、走ったりするよりもスピードの振幅の巾が大きくなります。スピードのメリハリによって心理的な感情の起伏の表現にも効果を大きくしています。

雨の水たまりに映る影
坂をケンメイにのぼる・・・
※上記、手書きのイラストを参照ください。


なかでも強風にとばされながら自転車が猛スピードで、立ちすくむ老婆の自転車とすれちがうところは、ユーモアを感じさせます。

髪の毛が前方になびいている。ヒューッと通り過ぎます。
※上記、手書きのイラストを参照ください。



いつもアニメーションの作品の中で重要な要素は、画面構成、構図、そして動きが(動くの軌跡とそのタイミング・・・スピードやリズム)だと思っています。
構図による心理描写、これほどそれを見せてくれた作品はこのマイケルの「岸辺のふたり」をおいて他にいないのではないでしょうか。能弁な台詞にもまさる表現をその描写から受け取れます。
私にとって、この作品がAnimoというデジタルシステムで作られたと聞いて、懐かしい気持ちです。日本のデジタルペイントの開発当時、このAnimoというシステムにはお世話になって、いくつかの作品を作った体験があります。

マイケルの今後の作品を期待しつつ。ダラダラとすみません。

黒田昌郎 2008.8.30

******************************

◎岸辺のふたり


◎岸辺のふたり情報サイト
   by mottainai-lab | 2008-09-10 12:51 | 黒田昌郎 | Comments(1)   

CALENDAR

S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

ABOUT MOTTAINAI Lab

ちょっとしたモッタイナイをみんなで集めて考える、ありそうでなかった研究所。

ABOUT 研究員Blog.

ものの価値をとことん生かす方法を考えるためのキーワード、MOTTAINAI。さまざまなジャンルのエキスパートの日常に、MOTTAINAI目線を持ち込んでいただきました。「もったいない」からビックなアイディアが生まれる日がくるかも!?


ラボスタッフブログ

MOTTAINAI Home

MOTTAINAI Shop

安藤美冬 安藤美冬
Profile
黒田昌郎 黒田昌郎
Profile
島本美由紀 島本美由紀
Profile
真珠まりこ 真珠まりこ
Profile
セキユリヲ セキユリヲ
Profile
滝田明日香 滝田明日香
Profile
Char Char
Profile
永田哲也 永田哲也
Profile
長野麻子 長野麻子
Profile
仁科幸子 仁科幸子
Profile
ハセベ ケン ハセベ ケン
Profile
守時タツミ 守時タツミ
Profile
山田悦子 山田悦子
Profile
寄藤文平 寄藤文平
Profile
ルー大柴 ルー大柴
Profile