しかし、僕の家ではファーストフードが禁止されていたのだ。
禁止されていたとはいえ、こっそりと友だちと行っていたのだけれど、そのころはとても理不尽な話だと思った。
僕の母というのは、アラブの人間だから基本的に食べ物はアラブ料理が基本。
そして母は、アラブの料理に関しては強いこだわりがあった。
例えば、モロヘイヤを刻み、ほかの野菜や鶏肉と一緒にドロドロになるまで煮込んでスープを作る。アラブの人にとっては、いわゆる日本のみそ汁に相当するものだろうか。グリーンのスープ。日本に住んでいるころ、母がよく作ってくれた。
当時はいまと異なり、アラブ料理で使う食材や調味料は簡単に手に入らなかった。よく母は、青山通りにある紀ノ国屋までわざわざ通って食材を調達していた。
現在は、ファミリーレストランも珍しくはなく、さまざまな料理が簡単に食べられるようになった。コンビニの弁当も種類は豊富だし、電子レンジでチンすれば家でも暖かい弁当が食べられる。
昔と比べてライフスタイルや食生活も変化し、家庭や母親の味というものが希薄になった思う。幼少のころの記憶というのは、年をとるごとに徐々に忘れてしまう。しかし、両親が作ってくれた料理の味や匂いはなかなか忘れないものだ。
母は、アラブ料理を作って自分の故郷を思い出しながら僕に食べさせていたのだろう。
母が作る弁当はシンプルだったけど、料理は本当に一生懸命作っていた。僕にとっての「もったいない」味のひとつだ。
いまでも、モロヘイヤなどのアラブ料理の食材の匂いをかぐと、幼少のころ母が作ってくれた料理を思い出す。




































