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「岸辺のふたり」マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督
観ていただけたでしょうか・・・。
タイトルを入れて8分、賞味だと7分強の作品で、一生を描いています。
父と分かれた幼年期から老人までの間、ずーっと父を待ち続けた描写です。
年が変わるごとに少しずつ成長して大きくなった姿が、父と分かれた場所に向かいます。そのたびに季節や機構も変わり、強い風が吹いたり、雨が降ったり、雪の積もった風景だったり、短い描写の中で、簡潔に表現されています。
何より素晴らしいのはLongshotでこれだけ上官を出す描写をしていることです。人物のupは見せていません。upのshotは車輪のupだけです。
年齢と状況に応じてそれぞれに異なる動きの自転車の車輪だけがup shotです。
父と娘の二人の車輪が重なって回っていきます。
(二人の写真が一緒に見えるのは1shotだけ)
※上記、手書きのイラストを参照ください。
赤い夕日のBackで坂を登る少女の漕ぐ車輪のup。
※上記、手書きのイラストを参照ください。
影が水溜りに映っている。
※上記、手書きのイラストを参照ください。
あとはLongshotで描写しています。
小さなシルエットで、全身のシルエットの動きで、感情表現をしています。
セリフもupの顔の表情もなく、Longshotのみの動きでの語り口はまさにアニメ的な表現と言えます。
私の師匠とも言えるアニメーターの森やすじさんが良くいわれていました。
キャラクターのシルエットのポーズや動きで、その人物が、何を考え、何を感じているのかを理解させるように画面の構図やポーズ、動きを考えなければいけないと。
マイケルの演出、作画はまさに、森さんの言葉通りの描写です。
父のボート遠ざかっていくのを見送る少女が、手前の土手でピョンピョンはねます。
あのshotが好きです。
※上記、手書きのイラストを参照ください。
そのcutの後の3cutのつなぎも簡潔で父が行ってしまった!
ということを実にすっきりと描写しています。鳥がスーッと通貨する(F.O)shotがInsetされて、何も見えない海。
普通だと、最初のフレームの中でボートが消えていく。或いは3cut目のcutで消えていくと言う見せ方がよくあります。
このつなぎに、私は小津安二郎監督のある部分のcutのつなぎを思い出しました。
男性のupを挟んで女優のupの切り直しだったと思います。女性の表情の変化を見せずに、男性のupを挟んで、女優の変化した顔にカットバックさせたつなぎで、小津監督は表情の変わる動くを見せたくなかった。と語ったと言われています。
動きを省略することで、より強いAccentを求めたカットのつなぎだと、若かりし私は学んだものです。すみません。勝手なことを書いています。
次に感心するのは画面の構図です。みなさんも見てお分かりだと思いますが、影を使うことによって、空間を描写しています。
殆んど無地に近いバックで、横に走る自転車の絵はともすると、平面的な表現として見られがちです。そこに木の陰を縦に手前に落とすことによって奥行きのある空間が作られています。
※上記、手書きのイラストを参照ください。
木々の影だけではなく、時には人物の影も水面に落としていきます。
影と共に動くキャラクターは、Longの小さな人影を長く伸びる影によって、その存在感が強調されています。
地面と空、それに数本の糸形の木、そこに過ぎの木の影が落ちただけで、空間が生まれ、そこに空気が誕生します。
そこを駆ける成長していく娘の動き・・・これも自転車を使うことでリズミカルに爽やかな描写になっています。自転車を使うことで、歩いたり、走ったりするよりもスピードの振幅の巾が大きくなります。スピードのメリハリによって心理的な感情の起伏の表現にも効果を大きくしています。
雨の水たまりに映る影
坂をケンメイにのぼる・・・
※上記、手書きのイラストを参照ください。
なかでも強風にとばされながら自転車が猛スピードで、立ちすくむ老婆の自転車とすれちがうところは、ユーモアを感じさせます。
髪の毛が前方になびいている。ヒューッと通り過ぎます。
※上記、手書きのイラストを参照ください。
いつもアニメーションの作品の中で重要な要素は、画面構成、構図、そして動きが(動くの軌跡とそのタイミング・・・スピードやリズム)だと思っています。
構図による心理描写、これほどそれを見せてくれた作品はこのマイケルの「岸辺のふたり」をおいて他にいないのではないでしょうか。能弁な台詞にもまさる表現をその描写から受け取れます。
私にとって、この作品がAnimoというデジタルシステムで作られたと聞いて、懐かしい気持ちです。日本のデジタルペイントの開発当時、このAnimoというシステムにはお世話になって、いくつかの作品を作った体験があります。
マイケルの今後の作品を期待しつつ。ダラダラとすみません。
黒田昌郎 2008.8.30
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