メディア向けのセミナーで「刑務所医療のかかえる課題」と
「薬物依存症女性の子育て支援プログラム」について取材してきました。
まったく初めての分野。
刑務所内(医療刑務所ではなく一般の刑務所)の医療は、
医師と患者という信頼関係よりも、
刑務所職員と受刑者という関係の上に成り立っているケースが多い、
という点が問題の根本だそうで、
「受刑者は健康な状態で社会に戻る権利がある」という点が見過ごされがち、とのこと。
「詐病」であるかどうかの判断が難しいという課題はあるものの、
受刑者の高齢化により持病を持ったケースも少なくないし、
適切な医療が受けられないことでがんが進行し転移したケースもあるそうで、
一層の改善が求められています。
また、服役中は公的健康保険が停止されるため自由診療になるそうで、
外部の医療機関を受診できない理由のひとつに、
医療費を調達できないというのもあるそうです。
(※外部の医療機関に入院する場合はその期間刑を停止し、治療するそうです)
刑務所というと殺人犯などの極端な例をイメージしてしまい、
そこにおける医療のことを考えたこともありませんでした。
しかし、ほとんどの人は刑期を終えて社会へ復帰するわけだから、
確かに「法務」の問題ではなく「医療」の問題として捉えなければいけないのかもしれない。
初めて、そのような問題意識を持ちました。
「薬物依存症女性の子育て支援プログラム」についての講演では、
薬物を始めとする依存症は、 DV被害、性暴力、虐待を経験しているケースが非常に多く
「ドラッグを撲滅するには、虐待を撲滅させる必要がある」
と、ダルク女性ハウスの上岡代表。
虐待から逃れるために十代で家を出た少女が最初に“ドラッグ”と出会うのは、
“痛みを止めるくすり”として、というのが多いそうです。
親との関係が自らにないため「子どもとどう生きていいかわからない」という女性たちが
薬物を再使用しないために
(再使用の75%が“子どもの問題がうまくいかない”を理由に挙げている)、
看護師、児童福祉の専門家、スクールソーシャルワーカーなどもダルクスタッフに加わって、
母と子をサポート。
「母子分離より、統合を支援することが母親の回復につながる。
そのために子どもの権利と安全を守るプログラムを行う」とのことでした。
また依存症には精神疾患や発達障害が重なっているケースも多く、
長期間にわたる横断的な支援が必要だとも話していました。
特別な世界のことではなく、これも私たちが暮らす社会の一つの側面。
マイナスの連鎖を止めるために、
縁がないと思っている私たちも、知り、考え、
できることは行動しなければならないと思いました。
(主催:ファイザー)