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闘病記⑪

あとがき


「うちの大学病院で初めての症例です」と言われた手術からまもなく9年になる。

当時を思い出すことも滅多になくなった。

たまに健康診断や初めてのドクターにかかると、

問診票に書かれた「既往歴:上腸間膜動脈症候群」のことを必ず尋ねられ、

「教科書でしか知らなかったけれど、本当になるんですね」と驚くドクターと、

笑って話題にするくらいだ。


そう、あの当時も、現在も、「上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)」は、ほとんど知られていない。

症例が無い。情報が無い。得体の知れないこの病気に苦しんでいる人は確実に居るのに。


がんのように再発の心配は無いし、生活習慣病のように長く付き合うわけでもない。

それでも、私がこの病気を、本当の意味で乗り越えるまでには45年かかったように思える。

手術の痕はあっという間に気にならなくなったが、

人格を変えるほどの苦しみだった痛みの経験を長く引きずり、仕事に復帰してからうつにもなった。

胃の圧痛や引っ張られる感じの調子悪さは何年も続いた。

情報が無いため、治療後の経過も、ある意味では長いトンネルのようなものだ。


2つ目のトンネルを抜けた現在だから、ようやく冷静に振り返ることができる。

あの悪夢のような日々はいったい何だったんだろう。

その記録を発信することで、誰かの何かの光になれたらいいと、8年が過ぎてようやく思った。


手術1年後にまとめた闘病の記録を、

いま改めて加筆修正し、公式ブログに掲載しようと思う。

同じ病気で苦しむ人の少しでも参考になればいいと思うし、医療関係者にも読んでほしい。


必ず、トンネルは終わる。私はいま人生で最も健康な毎日を過ごしている。

治療に関わって下さったすべての方への感謝と、

支えてくれたすべての方への感謝を胸に抱きながら…。


とくに、診断から内科治療、そして退院後何年も、本当に長く長くお世話になったI先生と、

治療を決意させてくれ、執刀してくださり、術後しばらく診ていただいたY先生には、

言葉では表せないほど感謝しています。


ありがとうございました。



20148月 森 まどか


by mori-mado | 2011-08-31 14:40 | SMA症候群 闘病記 | Comments(9)

Commented at 2017-09-21 19:40 x
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Commented by mori-mado at 2017-09-21 23:57
だいすけさん、コメントありがとうございます。
入院で保存治療中とのこと、なかなか思うように症状が改善しないと辛いですよね。お見舞い申し上げます。
私は中心静脈栄養で高カロリーを1ヶ月入れましたが、結果的には手術となりました。でも、手術したいと焦っていた時に、保存療法のたいせつさと、手術のリスクを丁寧に説明してもらい、治療には段階があるということを理解しました。手術によって現在は元気に生活していますが、直後は合併症やら何やらで入院が長期化したり…ということもありました。
思うようにスムーズに快復せず焦る気持ちはあると思いますが、主治医の先生と納得いくまで話し合い、ご自身の納得いく形の治療を受けられることを祈っております。情報量も少なくて不安になる病気ですが、きっと乗り越えられると思います。いまはとにかくゆっくりと身体を休めてあげてください。どうぞお大事に。
Commented at 2017-11-28 21:41 x
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Commented at 2018-02-15 16:14 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by mori-mado at 2018-02-20 23:51
> キキララさん
しばらくブログから離れていたのでキキララさんのコメントに気づかず、返信が遅れてごめんなさい。
体調はいかがでしょうか? 診断がつかなかったり、治療方針が決まらなかったり…のもどかしさはとてもわかります。症状が苦しいからなおさらですよね。
同じSMA症候群であっても病気の背景や症状のあらわれかた、体型、年齢・・・様々な要素が絡み合うから難しいですよね。ドクターの考え方や相性というのもあると思います。
あまり参考になるようなことは言えないのが心苦しいのですが、あきらめず、絶望せず、必ずトンネルを抜けられると信じて病気と向き合ってください。私は思い出すのも嫌なくらい苦しい時間でしたが、なんとか乗り越えることができました。キキララさんもきっと大丈夫、そう信じています。私が手術したのは東大病院ですが、執刀医はすでに別の病院へ移られたようです。なかなかSMAに詳しいドクターがいないというのが現実だと思いますが、どうか信頼できるドクターと巡りあえ、少しずつでも良くなることをお祈りしております。お大事になさってくださいね。
Commented by mori-mado at 2018-02-21 00:01
> まりもさん
体の具合はいかがですか? 主治医の先生とはお話できましたか?
症状がつらいときに、コメントをありがとうございます。
「太れば治る」と言われるのが、私もとても苦しかったです。食べると痛くなるので、太りたくても太れない・・・というのが現実ですよね。
私も仕事が忙しい時期だったので、とにかく入院を短く早く治る方法を…と当時は思っていましたが、治療には段階があるということを身をもって経験しました。そして、手術を簡単に考えてはいけないということを、自分の経験を通して知りました。まりもさんはまだ20代ですから、焦る必要は本当にないと思います。痛みや苦しみで私は心のバランスも崩したので、どうかご自分の身体と心を大切にしてくださいね。私はまず体重を増やすために栄養点滴やリキッドという方法をとりました。あとは味がないパン(ロールパン)は食べても比較的痛くならなくてよく食べていました。少しずつトライ&エラーで、食べられそうなものを見つけられるといいですね。トンネルはいつか必ず出口にたどり着きます。焦らずに、がんばりすぎずに、病気と付き合う自分のライフスタイルを見つけてくださいね。少しでも良くなりますように。お祈りしています。
Commented at 2018-05-20 22:29 x
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Commented by だいすけ at 2018-05-20 22:37 x
コメント後、保存療法で、急速に回復し今現在退院し半年が経過して、やっと入院前の体調に戻ってきました。
私の場合は手術はしないで、保存療法が、正解立ったとの結果になりましたが、本当に判断はその人の体調により、難しいと感じました。
遅くなりましたが、ご報告させて頂きました。
Commented by mori-mado at 2018-05-21 16:10
> だいすけさん
回復され体調が戻られたとのこと、本当によかったです。
長い闘病で心身ともに頑張ってこられたと思いますので、まずは心身ともにゆっくりされてくださいね。
同じ病気でも本当に1人1人ベストな(ベター)な治療が異なりますよね。それが難しいところですが、保存療法で回復されたのは何よりだと思います。
ご報告をありがとうございました。
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