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闘病記⑥

6章 転院


106日、都内大学病院へ転院。

病室に入るとすぐに、“大学病院”独特の冷たさと無機質さの洗礼を受ける。


まずトラブルとなったのは、痛みが起きたときの対処について。

これまで何ヶ月も死にたくなるほどの痛みと闘ってきた。
薬も試行錯誤しながら、ドクターが何度も変えてきた。
ようやく痛みを抑えるベターな方法が固定してきたところでの転院だった。


ところが、

「痛くなったらロキソニンを使いましょう。それでもだめなときはボルタレンで」

ナースが私に伝えた薬は、半年前に自己判断で散々飲み、座薬で入れ、
それでも全く効果のなかったもので、
これまでの主治医からは「作用機序が異なるから痛みは治まらない」と説明されていた薬だった。


その主治医は転院に際して、私の痛みの状況や使用している薬について詳細に書いてくれた。
その細やかさに患者である私は感動したくらいだ。


なのに、


新しい病院で、患者の私自身がまた一から痛みの説明をし、
これまでの治療の経緯についても一つ一つ説明し、訴えなければならなかった。

あの「診療情報提供書」はいったい読んでくれたのだろうか?


ナースはさらに、
「痛みなんて、転地療養でのんびりすれば案外治っちゃうんじゃないですか?
と心ないことを言う。
ベッドサイドに届いた花を見れば、
「お花もきれいだけれど、退院した後のお返しを考えると面倒よね」と笑う。
病室に入って30分もしないうちに、この病院に対する不信感でいっぱいになった。


夕方、病棟担当医という、セカンドオピニオンをしてくれた執刀医とは別のドクターがやってきた。
私がナースに訴えた痛み止めのことを、越権行為だとばかりに文句を言い、
挙句に「じゃあ、なんでいまの薬が効いているわけ?たいして強い薬でもないのに」と吐き捨てられる。

わかるわけない。私は医者ではないのだ!

でもそのときに提示された薬が効かないことは事実なのだ。


ドクターは、手術までの1週間にはまったく関心がない様子。外科医とはこんなものなのか?

もう、うんざり。逃げ出したい。新しい病院にはどうにも馴染めない気がした。


転院した先での救いは、

執刀してくれるドクターへの信頼がセカンドオピニオンを受けていたときから絶対的なものであり、
彼の明確で丁寧な説明に、手術そのものに対しての不安がなかったことだ。

それでも手術を受ける“患者”としては、自分でも気づかない大きな不安があったのだと思う。
それが、病院への不満となって表れていたのではないだろうか。


そんな馴染めない空気の中でも、

手術直後の呼吸のために「風船を膨らませる練習をしなさい」と言われたり、
手術室のナースや麻酔科医が訪ねてきたり、もちろん家族で手術の説明を受けたりと、
手術までの1週間はあっという間に過ぎた。


by mori-mado | 2011-08-31 14:28 | SMA症候群 闘病記 | Comments(0)

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