闘病記②
第2章 診断
胃カメラ、超音波、血液検査…、何の検査をしても「正常」という結果しか出ない。
医師は首を傾げるばかり。その一方で、痛みが起こる頻度は高くなっていく。
耐え切れず、痛み止めの点滴に通う日々が続いていた。
診断がつかない。
「神経性のものでは?」ナーバスになっている私に突き刺さる視線と言葉は、
「じゃあ、どんな神経なんだよ!」と心の中で吐き捨てるほど辛かったし、
痛みは、この世のものとは思えないほどだった。
その夜、またあの痛みに襲われた。
当直中の顔見知りのドクターが点滴をしてくれたものの、痛みは一向に治まらない。
結局、いつも診てもらっているドクターも心配して病院に戻ってきてくれた。
うめき声をあげる私を前に、2人のドクターが考え込む時間が続く。
初めて受診したときからずっと一緒に悩んでくれていた、信頼するドクターたちである。
「もしかして…」
点滴が終わるころ、ふたりが口にした病名は、
まったく聞いたことがなく、想像すらつかない名前だった。
「ジョーチョーカンマクドーミャクショウコウグン???」
天井をみつめる宙に漢字を思い浮かべてみたが、
変換されたのは「症候群」だけだった。
数日後、シャーカステンに私のCT画像が並べられていく。
「内臓脂肪が極端に少ないんです」
「食後4~5時間経過しているとは思えないほど、胃の残存量が多いんです」
ただ頷くしかない。
身体の中のイラストを描いて説明してくれるには、
「胃から食べものが消化されていくときに、
内臓脂肪がないために十二指腸が上腸間膜動脈という血管に挟まれてしまい、
よって十二指腸で通過障害を起こしている」ということであった。
私が把握している解剖図のレベルをはるかに超えているため、さっぱりイメージできない。
そして次の言葉に愕然とする。
「治療法がないんです。太って、内臓脂肪を付けるしか…」
本気で耳を疑った。
医療がこれだけ進歩し、様々な薬剤や医療機器が開発されているこの世の中で、
“太るしか治療法がない”という病気があるのだろうか?!
私は決して痩せたためにこの症状が現れた訳ではない。
体重も体型も変わらないある日突然に、痛みが始まったのだ。
そんな私に「太れ」といわれても、食べていないどころかよく食べているのだから、
これ以上体重を増やす方法など見つからない。
しかも、最近は食後のみぞおちの激痛が多くなり、痛くて食べられないことが多い。
食べられなければ痩せて、さらに内臓脂肪が減っていく…。
直感的に矛盾を感じたこの病気に、まさか半年以上も振り回されることになるとは、
このときは思いもしなかった。
医師の説明に何ひとつ納得できるものはなく、
はっきりしていることは、“痛みは確実にやってくる”、それだけだった。
by mori-mado | 2011-08-31 14:16 | SMA症候群 闘病記 | Comments(0)