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カテゴリ:松浦明
  • ザハ・ハディドは語る
    [ 2008-06-18 14:11 ]
  • 鑑賞レポート2
    [ 2008-06-11 17:04 ]
  • 日本初のザハ・ハディド建築
    [ 2008-05-14 11:25 ]
  • まずは知るべき人物、 ザハ・ハディド
    [ 2008-05-07 13:15 ]
ザハ・ハディドは語る
 複雑で、ダイナミックで、流れるような近未来的空間の創造者、ザハ・ハディド。彼女がデザインしたシャネル モバイルアートのパビリオン前に立ってみると、ふとしたおもしろい発見がある。

 背景に見える国立代々木競技場は、戦後の日本を代表する建築家・丹下健三の設計で1964年に誕生。富士山の尾根のような、神社仏閣を意識したとも言われる優美な屋根のフォルムは、原宿から渋谷へつづくこのエリアでもう40年以上もそのランドマークとして親しまれているものだ。今回、この有名建築の目前に突然現れたザハのオーガニックフォーム。このふたつの建物が思いもかけず不思議な一体感を感じさせる点がおもしろいのだ。
 建築家としては当たり前のことかもしれないが、ザハはどんな小さなプロジェクトでも毎回のプロジェクト予定地について徹底的に調査し、膨大な資料を入手するそうだ。今回もおそらく彼女の調査はぬかりなく行われたに違いない。絶妙な配置関係によってまったく異質なふたつの建物が、不思議な融合感を築いている事実。そして、その内部に踏み込んでみるとなおさらにして、ザハの建築に対する考え方にある種のシンパシーを感じずにはいられない。

「わたしたちが建築を通じて実現すべきは、 普段体験し得ない別世界を人々に垣間みてもらうこと。直感的で、ラディカルで、全世界的で、ダイナミック。その体験は感激と興奮を伴うものでなければいけない。建築とは、 人々がそれぞれにもつ過去の体験を呼び起こす装置をつくり出すことであり、新しい土地へ踏み込んだ時に誰もが感じる、“記憶の底に刻み込まれたデジャブのような感覚と、まったく未知なる感覚が入り交じったような体験”を促すもの…」

 このパビリオンは、そうした自らの建築に対する基本的概念のもとに生まれたものであると、ザハ・ハディドは語っている。

 彼女は現在、世界各地で大規模な都市計画や文化施設、国際的なコンペなど、大型プロジェクトを多数抱える、世界でもっとも多忙な建築家のひとりだ。「アブダビ・パフォーミング・アーツ・センター」「スペイン北部の都市ビルバオの再開発計画」「広州オペラハウス」「ソウルのデザイン広場」など、近年その実現化が発表され、現在進行中のプロジェクトはどれも大変興味深く、ザハの建築観や世界観が満載されている。

 大胆でドラマティックな、地上に漂着したユートピアのような空間。この旅するアートコンテイナーを東京で体験できるチャンスは残すところあとわずか。N.Yに向けて飛び立つまでに、もう一度踏み込むチャンスは訪れるだろうか?

文・松浦明


by mobileart | 2008-06-18 14:11 | 松浦明
鑑賞レポート2
 さまざまなメディアで話題の「シャネル モバイルアート」。国立代々木競技場のすぐ脇に、飛来したアートコンテイナー 。建築家ザハ・ハディドによるこのパビリオンは、一望にしてやはりなかなかにして圧巻だ。 
 “圧巻”とひとことで言ってしまうと、どうも重々しく感じるかもしれないが、グラスファイバー製で世界7ヵ国を旅するザハのパビリオンは、まるでそのまま空を旅してきたかのような、特有の軽やかさを感じさせる。

 内部をさっそく体験してきた。 MP3プレイヤーを装着してナレーションや音楽とともに空間を移動するという“サウンドウォーク”も今回が初体験だった。サウンドウォークに従って空間に佇んだり、歩いたり。とにかくゆっくりと移動する。アートを鑑賞しながら、ザハの空間にドキドキする人も少なくないだろう。待ち受けているのは、 流れるような曲線、うねる壁、どことなく人の体内に入り込んだような不思議な感覚だ。

 以前、東京の原美術館で開催された『舞い降りた桜 ザハ・ハディドとめぐるドイツ銀行コレクション展』でも、彼女は会場デザインと中庭にインストールされた巨大オブジェをデザインしていたが、こうやって彼女の“建築の内部”に本格的に入るのは初めての体験という人も多いことだろう。建築ファンやザハファンにとって本展の一番の見どころは、アートと建築が一体になったこのコンテイナーの内部での体験。彼女が繰り出した空間や導線を体感することは、貴重な体験であることには違いない(その詳細は次回あらためてレポートしたい)。

 作品において印象的だったのは、 全体的にシニカルな表現を自由に用いたアーティストが多かったこと。作品の制作テーマとなったシャネルのキルティングバッグは、ときに“タトゥー入りの豚皮製”となり、“氾濫する高級ファッションのアイコン”となる。作品を観た人の中には「えっ」と驚いた人も少なくないはずだ。ところがそこに我々は、世界で活躍する現代アーティストにとって重要なパトロンでもあるシャネルの、自由さと誇りと懐の広さを知ることにもなるのだ。

 5月30日に開かれたオープニングパーティーで、「俺の作品が一番!」と高らかに叫んでいたアラーキーの作品は、確かに見応えがある。
(c) Nobuyoshi Araki, slides from Arakinema “Kaori and Painting Flowers”, 2006–2007, slideshow, courtesy of the artist

 「エロスなんだよ、シャネルは!」と彼が語っていたように、キルティングバッグのチェーンを身体に纏った女性と鮮烈な花々が奏でる写真は、エロティックでありながら叙情的で、思わず画面に吸い込まれてしまう。

 モバイルアートは、建築とアートとファッションの融合。そこにあるのは、新しい体験であり、ちょっとした謎かけであり、決して堅苦しくない芸術との出逢いであり… 7月4日までの開催期間中、それをひとりでも多くの人が体験できることを祈っている。

取材・松浦明

by mobileart | 2008-06-11 17:04 | 松浦明
日本初のザハ・ハディド建築
 まるで宇宙から舞い降りたUFO。ひと言でいい表せばそんな感覚だろうか。2008年1月、香港島は中環地区にあるスターフェリー駐車場に出現した宇宙船型の白い建築物で辺りは一時騒然となった。設計を手掛けたのは、イラク出身の建築家ザハ・ハディド。
(c)Tony Sze/Hong Kong

 グラスファイバー(ガラス繊維)製のユニットトラスによる建物は高さ6メートル、建坪約700平米。表面を覆うパネルは幅約2.25メートルで、これらのパネルを含むすべてのパーツはすべて分解可能だという。

 シャネルの現代アート展のパビリオンとして香港で初公開されたこの建築物は、2007年にイギリス・ヨークシャーで試験的に組み立てられたものを分解し、香港へ輸送、再度組み立てられたものなのだ。

 このパビリオン「アートコンテイナー」は、出点作品のテーマでもあるシャネルのキルティングバッグを彷佛とさせる。実際に、キルティングバッグの象徴的な幾何学的パターンにインスパイアされたというその外装しかり、内部にもキルティングバッグの機能性や構造がザハ流の手法で表現されているという。

 一歩踏み込めば、そこはザハならではの流れるような曲線が織り成すダイナミックな世界が広がる。 来館者ひとりひとりがMP3プレーヤーのヘッドセットを装着し、ザハが描き出す(まるで人間の体内のような)有機的な建築構造と、現代アート、ファッションの融合空間をナレーションに誘導されながら鑑賞するというユニークな仕組みだ。(「サウンドウォーク」という新しい鑑賞スタイル)

 「国際的なアーティストによる現代アートを立体的に体験する」。有りそうで無かった体験型のアートパビリオン。アートのために計算しつくされた建築空間で、来館者は今まで経験し得ない非日常の感覚を味わいながら約40分の鑑賞時間を過ごす。どんな体験が待っているのかは、実際に訪れてみない限りこれ以上を語ることは不可能に近いだろう。

 日本でザハの建築はまだ実現していない。つまり、期限付きとはいえ同展は日本でザハの建築を体験できるまたとないチャンスでもある。建築ファンもアートファンも、さまざまなアプローチで、ザハ・ハディドとシャネルが織り成す悠然たる世界観をぜひこの機会に体感してみてほしい。

文・松浦明

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by mobileart | 2008-05-14 11:25 | 松浦明
まずは知るべき人物、 ザハ・ハディド
  いよいよ開催を5/31に控えた『シャネル モバイルアート』。香港から話題のアートコンテイナーが“漂着”するのも、もう間近だ。そこで、まず知っておきたい人物がいる。このパビリオンの設計者、建築家ザハ・ハディドだ。

 本展を楽しむ上では、展覧会の中核も成す建築の創造者を知っておいて損は無し。名前は何となく聞いたことがあるものの、まだよくご存知じゃないという方に、まずは簡単に彼女のプロフィールからご紹介することにしよう。

 ザハ・ハディドは1950年生まれ、イラク、バグダッド出身。現在ロンドンをベースに活動中の女性建築家だ。2004年には、建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を女性で唯一受賞。現在その活躍ぶりは英国のみならず世界的にも注目されている。

 作風の特徴は、「フリーフォームによる近未来的な流線型」。ドローイングによって描き出される “流れるような線の動き”を主体とした独創的なデザイン手法で知られ、脱構築主義(デコンストラクティビズム)の騎手として、建築界でもそのオリジナリティは群を抜いた存在。とはいえ、その過激な作風からか、30年余りのキャリアの前半は実作に恵まれず、83年の香港ビクトリア・ピーク山「ピーク・クラブ」のコンペで磯崎新にその才能を見出されたことをきっかけにようやく世界的注目を集めることになる。

 ロンドンAAスクールで学び、1977年の卒業後は、レム・コールハースとともにその活動の場を広げるが、前述のとおり、そのキャリアの前半はコンペで優勝を勝ち取っても実作に至らない(いわゆるアンビルトの)プロジェクトが大半を締めていた。しかし、過去10年間はヨーロッパやアメリカで次々と大型プロジェクトを実現。驚くべき快進撃をつづけている。

  「時代がようやくザハに追いついた」とも言われるように、近年ではオハイオ州・シンシナティ「ローゼンタール現代美術センター」、デンマーク・コペンハーゲン「オードルップゴー美術館増築棟」、ドイツ・ライプティヒ「BMWセントラルビルディング」など高く評価される実作も多い。 現在建築ラッシュのドバイや中東諸国でも、彼女による目を見張るような独創的な建築物が多数建設中だ。

 その他、2012年ロンドンで開催予定のオリンピック競技場の「アクアティックセンター(水上競技場)」をはじめ、今後建設予定のプロジェクトの話題は業界でももちきり。 建築のみならず、 Established & SonsやB&Bをはじめとする人気インテリアメーカーからプロダクトなども多数発表している。先月ミラノで開催された今年のミラノサローネでもスワロフスキー(スワロフスキー・クリスタルパレス)で発表した作品が話題を集めていた。

 ちなみに、ファッションの好みも脱構築主義なのか、イッセイ・ミヤケのプリーツ・プリーズが大好きという彼女。その出で立ちも独特のインパクトを放ち、事務所のあるロンドンでは「あまりにも目立つので」移動には運転手付きのブラックキャブを愛用しているそう。公私ともにエキセントリックな人物象が浮かびあがる。

  さて、そのザハが今回手掛けたパビリオン「アートコンテイナー」は一体どんな内容なのか?次回はその詳細に迫りたい。

文・松浦明

※「TOPICS」も更新されました!:チケット予約いよいよ、はじまる

by mobileart | 2008-05-07 13:15 | 松浦明
 
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