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ザハ・ハディドは語る
 複雑で、ダイナミックで、流れるような近未来的空間の創造者、ザハ・ハディド。彼女がデザインしたシャネル モバイルアートのパビリオン前に立ってみると、ふとしたおもしろい発見がある。

 背景に見える国立代々木競技場は、戦後の日本を代表する建築家・丹下健三の設計で1964年に誕生。富士山の尾根のような、神社仏閣を意識したとも言われる優美な屋根のフォルムは、原宿から渋谷へつづくこのエリアでもう40年以上もそのランドマークとして親しまれているものだ。今回、この有名建築の目前に突然現れたザハのオーガニックフォーム。このふたつの建物が思いもかけず不思議な一体感を感じさせる点がおもしろいのだ。
 建築家としては当たり前のことかもしれないが、ザハはどんな小さなプロジェクトでも毎回のプロジェクト予定地について徹底的に調査し、膨大な資料を入手するそうだ。今回もおそらく彼女の調査はぬかりなく行われたに違いない。絶妙な配置関係によってまったく異質なふたつの建物が、不思議な融合感を築いている事実。そして、その内部に踏み込んでみるとなおさらにして、ザハの建築に対する考え方にある種のシンパシーを感じずにはいられない。

「わたしたちが建築を通じて実現すべきは、 普段体験し得ない別世界を人々に垣間みてもらうこと。直感的で、ラディカルで、全世界的で、ダイナミック。その体験は感激と興奮を伴うものでなければいけない。建築とは、 人々がそれぞれにもつ過去の体験を呼び起こす装置をつくり出すことであり、新しい土地へ踏み込んだ時に誰もが感じる、“記憶の底に刻み込まれたデジャブのような感覚と、まったく未知なる感覚が入り交じったような体験”を促すもの…」

 このパビリオンは、そうした自らの建築に対する基本的概念のもとに生まれたものであると、ザハ・ハディドは語っている。

 彼女は現在、世界各地で大規模な都市計画や文化施設、国際的なコンペなど、大型プロジェクトを多数抱える、世界でもっとも多忙な建築家のひとりだ。「アブダビ・パフォーミング・アーツ・センター」「スペイン北部の都市ビルバオの再開発計画」「広州オペラハウス」「ソウルのデザイン広場」など、近年その実現化が発表され、現在進行中のプロジェクトはどれも大変興味深く、ザハの建築観や世界観が満載されている。

 大胆でドラマティックな、地上に漂着したユートピアのような空間。この旅するアートコンテイナーを東京で体験できるチャンスは残すところあとわずか。N.Yに向けて飛び立つまでに、もう一度踏み込むチャンスは訪れるだろうか?

文・松浦明


by mobileart | 2008-06-18 14:11 | 松浦明
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