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カテゴリ:コラム
2006年 11月 27日
現代社会を、そしてマンガをキーワードで読み解くコミダス。 えーと今回は、なんというのか、お世話になりっぱなしなkashmirさん初単行本を御紹介。 都会の片隅にひっそりと肩を寄せ合うふたりきりの兄妹を主人公にしたハートフル4コマのような気もちょっとだけする『○本の住人』を取り上げました! 『○本の住人』(kashmir/芳文社/1巻~)蓼科のりこは小学四年生。早くに両親を事故で亡くし、絵本作家の兄とふたり暮し。(後先考えず大人買いしまくる兄のせいで)生活は楽ではないけど、(ありえないレベルのボケをかますクラスメイトたちにツッコミを入れたりしながら)けなげに日々を生きています! 「前立腺肥大は切らずに治せる!!!」 兄というのは難儀なもの。 世の妹たちはみな、骨身に染みて実感していることでしょう。 雛鳥には初めて目にした動くものを自分の親だと思い込む習性があるといいますが、妹たちは初めて目にした動く兄の存在によって、男がいかなるものかを認識します。 この妹インプリンティングはなぜだかプラスに働くようで、どうにも冴えないそこらの兄さんが、刷り込み効果によって「カッコいいお兄ちゃん」なる幻想の衣を身にまとってみたりします。これぞお兄ちゃんイリュージョン、前途有望な妹さんの男性観を狂わせ人生を見誤らせる、世にもいらない魔法です。 あまねく妹たちが兄の魅力にメロメロになりて、ほかの男子に鼻もかけなくなったら、少子化はますます進み、それどころかここには書けないたいへんなことがいろいろ起こって、人類の未来は閉ざされるでしょう。げに怖ろしきはカッコいい兄。政府はカッコいい兄禁止令を発令すべきです。 また、ぶっちゃけ兄がアレだった場合もやっかい極まる。「あれ? うちのお兄ちゃん、ちょっとアレな人かも……」、「マジ、キモい」、「おい、○△(名字)、コンビニでパン買ってこい」の三段階を経て打ち砕かれる兄の幻想は、思春期女子の異性に対する憧れもついでに木っ端微塵にしたりして、どうにもこうにも困ります。性欲を持て余し、不自然にごそごそする輩が(しかも対象は二次元)同じ屋根の下に住んでたらそりゃあイヤですね。汚物は消毒だ! 焼き払え!! つまり、妹にとって兄という存在は真実カッコよかろうが、どうにもアレだろうが、難儀なものなのであります。 今回紹介するのは、kashmirの初単行本『○本の住人』。 しっかりもので苦労性な小学四年生・のりこと、児童向けカルト絵本作家(どんなだ)であるのりこの兄のふたりを中心にした(たぶん)ハートフル4コマであります。 長々と兄について書いてきたことからもおわかりかもしれませんが、のりことのりこの兄、ふたりの関係が物語のポイントであります。 幼くして両親と死別したのりこは、兄とふたりきりの生活。オタクな兄とつつましやかな生活を送りながら(理由は兄がプラモの大人買いするから)ときに兄と自分のあいだにココロの絆を感じとったりする。たいていそれは勘ちがいで、多分にアレすぎる思考の兄にツッコミ入れなきゃいけなかったりするけど、たまに真実だったりする。その絶妙なはぐらかしがkashmirセンスだなあとしみじみ感じ入ったりするのでした。 たぶんにアレな兄のせいで、のりこの生活は楽にならない。 ![]() ほか登場人物も、金髪ツインテールのバーサク少女・ちーちゃんや、見た目無難キャラながら実はけっこうそうでもない同級生・みかちゃん、度を超えすぎた天然ボケ担任・さなえちゃんなどなど、ボケにボケてボケ倒すキャラばかり、なんというのか、のりこちゃんツッコミおおわらわであります。 わりかし狂騒的な展開でありながら、どこか程よい距離感を保ってるように感じられるあたりもkashmirらしいところかも。行動はとびきりの奇人であるのりこの兄が、キャラとしては妙に印象が薄く、読者とほど近い存在のように感じられるところが面白い(兄には名前が与えられていないところにも注目)。つまり、ツッコミ役であるのりこと、凶悪狂人ボケであるのりこ兄のふたりがともに視点人物になっているわけです。 読者は、眼鏡な小学四年生のりこちゃんを愛でながらアレなオタクネタを繰り広げ、同時にダメダメな兄にツッコミを入れているのでした。批評性というとなんだかですけど、要はそういうことですよね。 電撃大王連載中の『百合星人ナオコサン』第1巻も12月9日に発売(初回限定版は主題歌CD付き)。可愛らしい絵柄、特異な言語感覚から繰り出されるシュールでオタクなネタにやられた方はこちらもチェックしてみること。 2006年 10月 26日
現代社会を、そしてマンガをキーワードで読み解くコミダス。 今回は珍しく実用漫画。坂本タクマの新境地『坂本タクマの実戦株入門』を御紹介しましょう! ![]() 『坂本タクマの実戦株入門』(坂本タクマ/白夜コミックス) これからはパチンコじゃなく、株だ! 坂本タクマ、2年ぶりの単行本は、いちばんわかりやすく、いちばんドラマティックな、株で勝ち続けるための株入門漫画。 目指すは生涯10億円! 気分次第の材料取引きから、自らプログラミングした「坂本システム」によるシステムトレードまで、男の本気がかいまみえる一冊です! 世はなべて株ブーム、らしい! らしい、というのは実感がないからで、たしかに最近「中国株」「注目銘柄」などの株関係タームを新聞、雑誌などの見出しでやたら目にするなーとは感じるし、ライブドア、村上ファンドやジェイコム株のごたごたもニュースやワイドショーであれだけ取り上げられてりゃ目に入ってきて、でも何が起こったかはよくわかってません。どうも自分のいる世界の出来事とは思えないんですね。 恥ずかしながら株の知識はぜんぜんなくて、「ローソク足? それどんな妖怪?」などと聞き返してしまいそうな体たらくであります。 そんな自分が今回とりあげるのが『坂本タクマの実戦株入門』。株知識皆無の男にも多大な感銘を与える一冊だったのでした。 坂本タクマといえば、強烈ルールの学生寮麻雀漫画(回転寿司方式による100人麻雀が印象的)『ぶんぶんレジデンス』の2巻がついに出なかったり、コミックバンチ連載の『屈辱er大河原上』がいつまでたっても2巻が発売されない屈辱……だったり(のちに三才ブックスより新版として2巻まで発売された。が、3巻は……)、いつのまにか麻雀漫画前人未踏の長期連載になってる4コマ『シンケン君』も、単行本にならなかったりと、とにかく単行本が出ない人という印象があります。なぜだ、こんなに面白いのに……。 そんな坂本タクマが描く株漫画。ライブドアを全力買いして体中に矢が刺さったり(『ぶんぶんレジデンス』の矢鴨くんですね)、「損切りのタイミングを逃し、自分でもどうしたらいいのかわからないレベルまで下がってしまった屈辱、早めに切った銘柄が爆上げしてしまう屈辱」とか、なりそうなもんですが、なりません! そんなことしたら即破産で連載終了ですがな。 この『坂本タクマの実戦株入門』。きわめて実践的な、地に足がついた株入門漫画だったのでした。タイトルに偽りはなし。 左:2003年、なんとなくの材料取引きから……。 右:2005年、「面白さ」を完全に捨て、利益の追求へ。 ![]() 2002年の11月、『屈辱er大河原上』単行本の印税を元手に、坂本タクマは株を始めます。CS放送のマーケット情報をソースに、上がりそうな銘柄をなんとなく買い、株価の変動に一喜一憂する日々を送る坂本タクマでしたが、人生の転機をきっかけに(ネタバレになるので詳しくは書かず)、自らの取引きスタイルを変えます。面白さの排除こそが勝利への道だと。 株以前、パチンコにハマっていた当時の坂本タクマは、徹底した収支管理により、確実なプラスを叩き出す、ギャンブルにロマンを求めない派の人間だったのでした。そして、同じ方法論を株式投資にも適用します。 坂本タクマがたどりついた解答、それはシステムトレード。 株価の変動をコンピュータにより解析し、売り買いのタイミングを決定する手法です。 坂本タクマはデータ検証&収集のためのシステム「坂本システム」をオブジェクト指向言語「Ruby」にてプログラミングし、東証の全銘柄過去20年のデータで検証、プラスの数値を叩き出すことを確認した上で実際に運用し始めるのでした。な、なんと! 株価の変動に一喜一憂してしまう感情を必死に押さえ込み、システムの精度をひたすら高めていくストイックな姿勢、そしてまさに落書きとしか表現のできない画のギャップ。たいへん興味深い作品です。 本作品は「パニック7ゴールド」誌で好評連載中。最近もあいかわらず調子いいみたいで、坂本タクマがこのまま株漫画の人になってしまったらどうしよう、ともちょっと思ってしまうのでした。く、屈辱が足りない! でも、シンケンに、勝ち続けていきそうではあるんですよね。坂本タクマ、まさに本気であります。 2006年 10月 05日
現代社会を、そしてマンガをキーワードで読み解くコミダス。 インタビュー記事は絶賛中休み中!(すみません、次回から掲載に延びました) 今回は麻雀漫画。『かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相』>の我孫子武丸と『PS-羅生門-』の中山昌亮がタッグを組んだ異色の捨て牌読みポリス・ストーリー『迷彩都市(カモフラージュ・シティ)』をご紹介しましょう! 『迷彩都市』(原作:我孫子武丸 作画:中山昌亮/竹書房近代麻雀コミックス)右手の指をすべて切り落とすという猟奇連続殺人が発生、死体のそばには特注の麻雀牌が置かれていた。これは何をあらわすメッセージなのか? 元警視庁捜査一課の切れ者・大内は2年ぶりに現場復帰、後輩・堀井、交通課・森下とともに遊撃隊を結成、捨て牌殺人の謎を追う。 さてさて。麻雀というゲームをご存じないかたにご説明申し上げますと、牌を1枚取ってきて(ツモる、といいます)手持ちの牌の中から要らないものを捨てる。これを順番に繰り返し、手役を作った人間が和了(あが)り、最終的に点数が一番高い人間が勝つ。すごく簡単に書いてしまえば、麻雀とはこんなゲームであります。 場に捨てられている牌はつまり、その人にとっては不要な牌なわけで、一連の捨て牌をみれば、その人がどんな手役を狙っているのか、その傾向がつかめるというわけですね。 * 牌画作成にはizumickさん作成のパイガを使用させていただいております。 これは僕の実践譜なんですが、一・九・字牌が捨てられ、最後に待ちの周辺牌が飛び出すという典型的な断公九(タンヤオ)捨て牌。ちなみに、その時の手牌はこんな感じで、まさにそのまんまでした。 つまり、捨て牌には推理の材料が存在するわけですが、だからといってそれで事件を捜査するなよ! というお話がこの『迷彩都市』(原作:我孫子武丸 作画:中山昌亮)。連続殺人の捨て牌読みであります。 右手の指がすべて切り取られているという連続殺人事件が発生、死体のそばには特注の麻雀牌が。何かを意味した犯人からのメッセージだろうか? 高レート雀荘から連行された元・警視庁捜査一課刑事の大内は、後輩・堀井、交通課の森下と遊撃隊を結成、独自の捜査方法で事件にあたることになった……。 客観的に考えてみて、麻雀をしながら連続殺人事件の捜査ができるわけないんですが、そこは我孫子武丸マジック。関係者と麻雀をしてみたり、現場に残された捨て牌を検討したりしながら、じわじわと犯人を追い詰めていったりします。 また、そんなどう考えてもありえないストーリーを、地に足が着いたリアルな描写で読ませてしまうあたりは作画を担当する中山昌亮の手柄。 『迷彩都市』は、我孫子武丸×中山昌亮のタッグにより、まさに麻雀漫画でしかありえない、ある種の魔法がかかったポリス・ストーリーに仕上がっているわけなのでした。 現場に残された捨て牌から手役を検討。この超展開が麻雀漫画の醍醐味。 ![]() 『迷彩都市』を語るうえで忘れてはいけないのが、交通課婦警(あ、女性警官か)である森下雲雀(ひばり)さん。通称・ウンジャク。 捜査会議の手伝いに駆り出されただけのはずが、ホワイトボードで「何切る」させられた挙句に遊撃隊に無理やり参加させられた人なわけですが、眼鏡キャラとしての彼女のポテンシャルは激しく高い、高すぎです。清一(チンイツ)好きで牌譜マニア、勝負度胸もありのでほとんど完璧。超人気なのも頷けます。 ウンジャク先生。地味ながら素晴らしいポテンシャルを誇る眼鏡キャラ。 ![]() 事件の全貌が浮かび上っていき、重要参考人らしき人物の尻尾もつかめたこの第1巻、事件のクライマックスは12月発売予定の完結2巻にてとのことであります。全2巻と短いですし、ふだん麻雀漫画を読まない人でも手に取られてみてはいかがでしょうか。描き下ろしショートストーリーも収録されるとのことなので、ウンジャク先生ファンは単行本もぜひ! 諸般の事情により、一週掲載が延期となりましたが、次回からは『ゆびさきミルクティー』、宮野ともちかさんインタビューを掲載します! お楽しみに! 2006年 09月 28日
現代社会を、そしてマンガをキーワードで読み解くコミダス。 インタビュー記事は絶賛中休み中!(次回からやります) 今回は、孫は世界を制す! SABEひさしぶりの新刊『世界の孫』をとりあげてみました! 『世界の孫』(SABE/講談社アフタヌーンKC)鰊中学に転校してきたのは究極の「孫顔」少女・甘栗甘水。あまりにもお孫なその表情、立ち居振る舞い。新たなるカリスマの登場により、鰊中学に戦乱の嵐が吹き荒れようとしていた。 ……なぜだ?? 孫は妹よりも強し! ましてや委員長なんぞは!! 一時期12人とかいて、えらく高かった妹の出生率も落ち着いてきた昨今、妹、委員長、姉に代わる新たな刺客がわれわれの前にあらわれました。それが孫、『世界の孫』なのです!! わりとひさかたぶりとなるSABEの新刊『世界の孫』。 鰊中学校に転校してきたのは甘栗甘水(あまぐり・あまみ)、ぷっくらとした頬、チコチコとした立ち居振る舞い、完璧なまでの孫顔を誇る彼女は、その風貌ゆえか老若男女問わず人々の寵愛を一手に引き受ける。究極の孫・甘栗甘水の参戦により、学園に戦乱の火蓋が切って落とされた! とか、そんなお話。いや、本当なのです。 「そんなもの もういらない!! 本物の愛に目覚めたんだ!! 肉欲を超えた愛……!! お孫を愛でる心こそ無償の愛だ!!」 転校初日、甘栗甘水は、自分の中の「女」を武器に学園に君臨する女帝・担任教師のイカ子(無類のイカ好き)を孫パワーにより撃破。返す刀でお世話役を押し付けられた委員長の伝宝寺をその麻薬的とまでいえる孫振る舞いで廃人同様まで追い込みます。絶対的妹キャラとして学内の地位を不動のものとしていた日蓮尚和(にちれん・なおか)は、復讐の機会をうかがうイカ子先生と手を組んで……。 「孫」の脅威を感じる担任教師・イカ子。このころはまだイカイカしていない。 ![]() そう、この物語は、「孫」なる新概念をひっさげてあらわれたカリスマの登場により、「お姉さん」や「妹」や「委員長」なる既存のキャラたちがそのレーゾンデートルをおびやかされるという、一種の概念バトルなのでした。 「孫」の理不尽さを訴える日蓮さん。「妹」の皮をかぶった超絶危険人物。 ![]() ほんと、妹キャラ・日蓮さんのいうとおり、「孫」はズルい。寵愛の対象として、ほとんど理不尽なまでに強烈な存在なのです。 そんな「孫」の出現が、実際に血で血を洗うバトルに発展してしまうのが、いかにもSABEチック。いけない脳内物質が全開になってそうな登場人物たちのテンパった表情、邪悪で短絡的で快楽優先の思考、予想を遥かに上回るシュールで先が読めない物語展開が読者のハートをとりこにします。やっぱりこの人の描くマンガはブチ切れていてよいなあ。 やはり孫は何よりも強し! ところで今回、SABEのマンガにしてはブルマが出ませんね。ブルマはかせたら孫っぽくなくなるからかしらん。 次回コミダスは『ゆびさきミルクティー』の宮野ともちかさんインタビューをお送りします。Y・M・T! Y・M・T! お楽しみに! 2006年 09月 21日
現代社会を、そしてマンガをキーワードで読み解くコミダス。 インタビュー記事は絶賛中休み中!(いや、やりますよ) カラスヤサトシの4コマ単行本、その名も『カラスヤサトシ』を紹介してみました! 『カラスヤサトシ』(カラスヤサトシ/講談社アフタヌーンKC)月刊アフタヌーン誌の読者コーナー「愛読者ボイス選手権」にひっそりと咲く路傍の花がついに単行本化! どうしようもなくあふれ出す自意識が300本弱! 「アフタヌーンで一番最初に読んでます!」との自薦文も軽やかに、「あるある」と「いや、ない」の境界上を右往左往するヘタレ系なごみ4コマの決定版がここに誕生! 夜、布団に潜りこむと、今までの人生で自分がしでかした恥ずかしい事、失敗の記憶が脳裏によみがえり、身悶えして眠れなくなる、と書いたのは、遠藤周作だったろうか。 恥の記憶に煩悶し、眠れぬ夜を過ごす遠藤周作のような人間、考えても仕方ない事はさっぱり忘れてすやすや眠ってしまう人間、人には二通りのタイプがあるが、繊細だとか鈍感だとか、後ろ向きだとか前向きだとか、そんなことはさておいて、前者は一文の得にもなりません。無駄に身悶えしてるだけ。 人間とはたいがい不合理な存在であり、わけのわからない強迫観念やら意味の通らない自己衝動やらに駆られ、自分でもよく理解できないことをしでかす。また、そんな意味不明な行動も、自分の中ではきちんと正当化されてたりして性質が悪く、えーと、つまりどうしようもないですね。 そんな、人生の糧にもなんにもならない由無し事を4コマにして、きちんと糧にしてしまったのが、この『カラスヤサトシ』であります。でも単行本1冊に3年かかった! コストパフォーマンス悪い芸風! 編集者が出したお題に対して面白い答えを募るという、月刊アフタヌーンの読者ページ「愛読者ボイス選手権」があって、読者投稿でもないのにページの片すみに掲載されているのが、カラスヤサトシの4コマ。そのたいがいではない煩悶レベル(精神的にドM)に、読んでるこっちも身をよじります。 左:2004年秋 右:2005年6月より。中学時代も今も自意識のあり方に大差はない。 ![]() さして親しくもない知人と出くわした際、知人の連れていた人々に「サイババを信じてる男」とだけ、紹介されたエピソード、書店で本についてくる結婚相談所のチラシは店員が人を選んで渡してるものだと思い込んでいたエピソードなどなど、右往左往する自意識がすばらしい。自意識暴走エピソードながらも、押し付けがましくないところもすばらしい。いい具合に肩の力が抜けているので、笑ったあとに気が楽になるのであります。 詰めに詰め込んだネタが300本弱、次の巻出るとしても2~3年はかかると思うんで、見かけたら買っておくこと。レジでお釣りを受け取る際、妙に不自然な行動を取ったりするとカラスヤチック(読めばわかります)! 2006年 09月 14日
現代社会を、そしてマンガをキーワードで読み解くコミダス。 インタビュー記事はちょっと中休み。今回は特別コラムとして、古谷実の最新作品についてとりあげてみました! ![]() 【あわててうかぶな深海魚】 『わにとかげぎす』。古谷実の新刊です。 意味不明なタイトルは魚類の分類のひとつ、ワニトカゲギス目に由来します。深海魚の代表的な種類であるとのこと。まんまな名前の「ワニトカゲギス」というのもいて(→参考)、ううむ、なるほど、いかにもなルックスです。 『わにとかげぎす』のストーリーはこんな感じ。 主人公・富岡は、巨大スーパーマーケットで深夜警備をしている32歳。 たったひとりの職場をいいことに、パンツ一枚になって筋トレしたり、屋上でコーヒー飲んだり、ただ時間を潰すだけの暇な日々を過ごしてきた。 ある日、富岡は得体の知れない不安に襲われる。富岡は気づいてしまったのだ。自分が人生に遭難しかかってることに。自分がどうしようもなく孤独であることに。 「友達をください」富岡は流れ星に祈った。 すると手紙が舞いこんだ。「お前は 一年以内に 頭がおかしくなって 死ぬ」 ⇒『わにとかげぎす』第1話はこちらから読めます。 7年間の深夜勤務で陽の光を浴びることなく、なんとなく社会の底っぽい場所に身体が適応してしまった富岡。「ワニトカゲギス」とは彼のことです。 困難や面倒から目をそらし続け、誰もいない場所に辿りついてしまった富岡が「寂しい!! 友達が欲しい!!」と強く強く願った時、物語は動きはじめます。富岡の願いなど、まるでおかまいなしに。 『わにとかげぎす』で重要なポイントは、主人公の富岡がきわめて普通な人間であるところです。富岡は、孤独な境遇にありながらも変に屈折もせず、飄々としています。基本的に善人、わりとバカ、とにかく友達になってもそんなに悪くない、感情移入がたやすい人間です。 第1話の脅迫状を手始めに、ダークなもろもろが富岡の周辺にまとわりつき始めます。富岡が棲息する場所が暗い場所だからでしょうか。そして、ダークなもろもろと同時に、バカやちょっとヘンな人もまとわりつき始めます。これは場所とは関係なさそうです。 死と隣り合わせの暗黒と、死をも意に介さないとんでもないバカ。相反するようで、実は近いところにあるかもしれないふたつのパワーにひきずられ、物語の進む方向はさっぱりわかりません。 【古谷実の生態観察劇場!】 さて、『わにとかげぎす』を読んで、同じように自分が孤独であると突然気づいてしまう『最強伝説黒沢』(福本伸行/小学館)を連想される方は多いと思われます。 漠然と働いてきた男がいきなり寂しさを覚えて、という展開など、実際に共通点は多い。されど、『わにとかげぎす』と『最強伝説黒沢』は根本的な部分で異なっています。 それは、古谷実と福本伸行の資質の差によります。 福本伸行の場合、理解可能な存在として人間を描きます。福本の描く人間はわかりやすい。『最強伝説黒沢』で話題を呼んだ黒沢のアジフライ事件にしても、突飛かつ奇矯な行動ではありますが、他人によく思われたいという卑近な思いのもっとも愚かな具現化として理解できます。 他人の思考をトレースすることが前提となっている『カイジ』における心理戦にしても、やはり「理解」が鍵だといえます。 古谷実はそうは描きません。 『ヒミズ』の少年を、日の差す世界では長く生きられないモグラ(日見ず)のように描いたように、『シガテラ』で弱者から強者への無意識の毒(不幸)の伝播を描いたように、古谷実は、人間を理解不可能な動物と見なした上で、まるでその生態を観察するように、物語を描いているような気がしてなりません。 その点において、『わにとかげぎす』は『ヒミズ』、『シガテラ』の流れを汲む、生態観察シリーズ(勝手な命名)第3弾ではないかと考えるのでした。 はてさて、いつのまにか深海魚だった(32年、気づかなかった!)富岡が日の当たる世界に浮上を目指した時、何が起こるのでしょうか? 最近の連載では案の定ブルブルな展開になってきておりますが、個人的には幸多かれ、と願っております。富岡には妙な親近感抱いちゃってるしな! < 前のページ次のページ >
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