ステージの横で緊張しながらスタンバイをしているメンバーが思わず笑ってしまうほどであった。
今夜はLOUDNESSのデビューライブである。
まだ一度もその正体を現したことの無いバンドであるにもかかわらず、この割れんばかりの怒涛の歓声はいったい・・・・。
この歓声はまさに日本のロックが生まれ変わる歓喜の産声でもあった。
この歓喜の歓声は、ハードロックは売れないと断言していた大人達への強烈なアンチテーゼであった。
大人達の思惑外のところで新たな日本のヘビーメタルの波が誕生したのだ。
そのジャパニーズヘビーメタルの幕開けに若者達が敏感に反応し狂喜乱舞した。
暗転の中うっすらとタッカンにスポットライトが当たる。
その瞬間、又再び歓声が沸き起こった。
タッカンのランダムスターが吼えた!!
タッカンのアームダウンのまさに咆哮である。
「キュイ~~~ン!!グオォ~~~ン!!!!!」
「ウォ~~~~!!!!」歓声が呼応した。
「キュイ~~ンキュイ~~ンドッカ~~~~ン!!!!グオォ~~ン!!」
「ウォ~~~~~~~~~~~~!!!!!」歓声が再びより一層大きく響いた。
タッカンはアームダウンをしながら、まるで何かに憑りつかれたようにのけぞった。
照明は見事にその誕生の瞬間を演出した。
まるで映画のワンシーンのようだった。
ひぐっつあん、マー君、そして僕がそれぞれの位置に付く為にステージへ歩き出した。
その瞬間「ウォ~~~~~~!!!!!!!」と再び怒涛の歓声が沸き起こった。
僕はその歓声を体に感じながらまるでフワフワ宙に浮いている感じがした。
マイクスタンドの前に立った。
真っ暗な客席がまるで大きな真っ黒い怪物のようだった。
客席にはマグマのような熱いとてつもないエネルギーが渦巻いていた。
まるでLOUDNESSと大きな怪物が対峙しているようだ。
僕にはお客さんの顔がまだ見えなかった。
怒涛の歓声がLOUDNESSを包み込んだ。
タッカンの咆哮がやがてフィードバック音へと変わった。
「キ~~~~ン キ~~~ン ヒィ~~ン!!!」
マーシャルアンプの前に立ちフィードバック音の最適な場所を捉えた。
「ヒィ~ン、ヒィ~ン、ヒィ~ン、ヒィ~ン」
タッカンのフィードバックカウントと共にオープニングナンバーが始まった。
「ドドン!!」
ひぐっつあんとマー君が強烈なカウントを入れた!
その強烈なカウントにぴったりのタイミングで照明が炸裂した。
「ウォ~~~~!!!」
歓声がなおも大きな悲鳴に変わった。
タッカンが”LOUDNESS”のメインリフを刻んだ。
“Oh Yeah!!!!!!!! We are~~~~~~ LOUDNESS!~~~!!!!! Come on~~~!!!!!!!! Now~~~~!!!!!!! Woooooooo!!!Yeah!!!」
僕が叫んだ瞬間、耳を裂く強烈な爆音と共にマグネシュームが炸裂し、もうもうと白い煙に包まれた。
僕の目の前は真っ白い世界になった。
何も見えない。
すべてがスローモーションのようになった。
僕はLOUDNESSが切り刻む激しいシャッフルのリズムに身を任せ、宙を舞っている錯覚を感じた。
「ドドドドドドドド~~ン!ドドドドドドドド~~ン!タタタタタタ!タタタタタタ!」
歌の出だしのフィルで我に返った。
「ふさぎ込むのはやめにしよ~~ぜ~~~!!かたい頭に釘を打ち込め~~~~!!!」
僕はありったけの声を出した。
僕の声が会場全体にこだましているのを感じた。
僕のシャウトが会場を包んだ。
会場の怒涛の歓声と僕のシャウトが混ざり合い一つになった。
歌い始めると、マグネシウムの白い煙が少しずつ無くなり、お客さんの顔が見え始めた!!!
笑顔!笑顔!笑顔!笑顔!笑顔!笑顔!笑顔!笑顔!笑顔!笑顔!笑顔!笑顔!
ついにお客さんが見えた!!
お客さん一人ひとりが素晴らしいエネルギーを放っている。
腕を振り上げている人、ひたすらクビを振っている人、涙を流している人、そして僕と一緒に歌っている人!!
LOUDNESSはついにお客さんと合体した。
まさに熱狂の幕開けだった。
僕は全身に鳥肌が立った。
アドレナリンが沸騰し、かつて感じたことの無いような高揚感、興奮が襲った。
「We are the LOUDNESS guy!!! Feel in the sky!!」
サビで大合唱が起こった。
圧巻の2700人の大合唱である。
みんなが大きな口を開けてありったけの声で叫んでいるのが嬉しかった。
自分の歌でこんな大合唱が起こるなんて・・・・。
この初体験にションベンがちびりそうになった。
つい数ヶ月前まで数十人の前でひっそり歌っていたのに、まさに一夜明けたら大スターだった。
ソロのセクションに突入した。
マー君のベースリフとひぐっつあんだけのリズムセクションのダイナミズムが浅草国際劇場を揺るがした。
「ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!・・・」
お客さんが手拍子と共に叫んでいる。
マー君の重低音ゴリゴリのメタルベースがお客さんをより一層煽りまくる!!
そして、タッカンのギターソロが始まった。
その瞬間、再び怒涛の歓声が沸き起こった。
そして、タッカンの超人ソロが炸裂するや否や、一瞬静まり返った。
固唾を呑んでいる・・・・。
5400の目がタッカンの指に注目した。
最後の決めメロディーで再び怒涛の歓声が沸き起こった!
「Oh!!!!!!Yeah~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!」
ギターソロ後、再びマー君とひぐっつあんだけのアクセントになり、僕は絶叫してお客さんを煽りまくった。
最後のコーラスで再び大合唱となった。
素晴らしいこの一体感!
「ジャジャジャジャ~~ン!!!!」
「ウォ~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!」
地鳴りがする歓声と共に1曲目が終わった・・・・。
涙で顔がグシャグシャになっている人が沢山いた。
僕は言葉に出来ないほどの感動で胸が一杯になった。
音楽・ロックの持つ興奮、感動、素晴らしさを全身で感じた。
新たな日本のロックの幕開けであった。
まさに歓喜の夜明けの瞬間であった。