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先月からせっかく真面目に書いていましたが、ミランがCLに続いてスクデットまで逃してしまい、また空白期間が続いてしまいました。また今日から心を入れ替えて書こうと思います。
ゴールデンウィークのことになりますが、武蔵野音大江古田校舎のベートーヴェンホールで「魔笛」が上演されました。Wキャストによる2公演ずつが行われましたが、私が行ったのはAキャストの2回目、5月2日の公演でした。 最初に申し上げますが、素晴らしい公演でした。「魔笛」は数限りないほど見ていますが、日本国内で上演された「魔笛」としては、新国や二期会よりも素晴らしく、今まで1番良かったと思います。 まず、パミーナの藤原歌劇団が誇るプリマドンナの砂川涼子。出産による1年くらいのブランクがありましたが、見事復活し、さらにヴァージョンアップした感じです。人並み外れた大きな声を持っている訳ではありませんが、透明感が非常に高く磨き抜かれた美声に素晴らしいフレージングのテクニックなどが合わさり、現在、日本最高のソプラノ歌手と言えるのではないでしょうか。パミーナというのは、なかなか評価されるのが難しい微妙な役どころなのですが、彼女の素晴らしい表現力によって、非常に魅力的な役となっていました。 夜の女王の佐藤美枝子。チャイコフスキーに優勝した後も活躍が続いていますが、そのコロラトゥーラのテクニックはいささかも衰えることなく、アジリタのテクニックは無敵です。2つの夜の女王のアリアを完璧にこなし、万雷の拍手を浴びていました。 パパゲーノは谷友博。飛び抜けた声を持っているわけではありませんが、安定感のある歌唱に卓越した演技力。パパゲーノ役はまさにはまり役です。 タミーノは樋口達哉。このブログでも何度も触れてきましたが、二期会のエース・テノールで、男声ユニット「ザ・ジェイド」等いろいろなジャンルで活躍しています。リッカルドやレンスキー、ピンカートン等々、素晴らしい役を数々見てきましたが、モーツァルトはあまり得意ではないようで、1幕冒頭、大蛇に追われて出てきた時に、「あれれ、調子が悪いのかな?」と思ったほどです。しかし、それなりにちゃんとまとめていて存在感は出せていました。 ザラストロは豊島雄一。公演前、彼のスケールの大きな良く通る声は非常に魅力的ですが、バリトンなのでバスの役は大丈夫かな?と思っていましたが、さすがにキチンと歌っていました。しかし、やはりAよりも下の声はやはり少し厳しく、ちゃんと出てはいますが、館内中に響かせるところまでいっていませんでした。 それに対して弁者の三戸大久。彼の声はバスバリトンだと思いますが、実に魅力的で良く響く中低音を持っています。ザラストロにバスがキャスティング出来ないのであれば、彼がザラストロをやれば良かったのではないでしょうか?いずれにしても上記のビッグネームたちに比べるとまだまだ名前が知られていませんが、これからの活躍が大いに期待されます。 パパゲーナの赤星啓子も良かったです。この類の役をやらせたら本当に上手い!終演後、本人に会いましたが、相変わらずお若くて学生時代と何も変わらない感じでした。 いずれにしても大学の後輩たちがこのような素晴らしいオペラを作り上げてくれるのは、本当に嬉しいことです。彼らのさらなる活躍に期待しています。 それ以外にも、山口道子、小畑朱実、森永朝子といった普段はどこのオペラでも主役級の歌手たちが3人の侍女をやるという豪華なキャスティングですから、素晴らしいに決まっています。
昨日は1月のオペラを1つ書き残してしまいましたので、今日はそれを。
1月29日(日)江東区文化センター大ホール 江東オペラ「ラ・ボエーム」 この江東オペラのシリーズも最近はかなり行くようになりましたが、年に3回も4回もオペラを上演するというのは素晴らしいことです。私が行くようになったのはバリトンの山口邦明が出るようになってからですが、当日もマルチェッロを歌うということで、東陽町まで出かけていきました。この役はアリアこそないものの、2重唱、4重唱で聞かせるところも多く、バリトンにとってはなかなか美味しい役と言えます。彼にしては割と軽めに当てていたような気がしますが、素晴らしい声で響いていました。ぜひ二期会の本公演でも聞いてみたいものですが、二期会の関係者の方々、ぜひ如何でしょうか?イタリアの本物の声を求め続けてきた彼ですが、今が脂が乗って最高の時期だと思いますよ! ロドルフォは江東オペラ代表の土師雅人。リリコ・レッジェーロのロドルフォ役は彼の声にぴったりですし、アクートがとても強いので、上のCの音も良かったと思います。あとはミミに沖山周子、ムゼッタに高山由美、ショナールに東原貞彦、ショナールに飯田裕之というメンバー。声的にも演技的にも粒が揃った公演だったと思います。 この江東オペラは3月にもルチアがありましたので、それも後日書きます。
先月末、テノール歌手のサルヴァトーレ・リチートラがシチリア島にてスクーターで交通事故に遭い重体という第一報に接し、非常に心配しておりましたが、今朝、脳死判定を受け、臓器提供というショッキングなNEWSが入ってきました。彼は1968年8月10日生まれなので43歳になったばかり。今月のボローニャ歌劇場の来日公演では、「エルナーニ」のタイトルロールを歌う予定でした。最近は、まさに脂が乗り切った感じでしたので、残念でなりません。
スイス生まれですがシチリア人の両親を持ち、パルマで声楽の勉強し、カルロ・ベルゴンツィに師事し、1998年パルマ・レッジョ劇場の「仮面舞踏会」のリッカルド役でデビュー。同年のヴェローナ野外音楽祭で急遽同役の代役のオファーがあり、大成功。2000年にはムーティ指揮の「トスカ」のカヴァラドッシ役でスカラ座にデビュー、12月7日には「トロヴァトーレ」のマンリーコ役にも大抜擢されました。METではパヴァロッティのドタキャンを受け、カヴァラドッシ役でセンセーショナルな成功を収め、その後も順調にキャリアを重ねてきました。声は本格的なテノーレ・スピントで、ポスト3大テノールの最右翼とも言われました。アクートが強く、中低音から高音まで安定感があり、繊細な表現も出来る非常に貴重な歌手でした。 素顔の彼は、大スターであるのにまったくおごることがなく、イタリア人にしては無口で多くを語らず、しかし人懐っこい笑顔が魅力的なナイスガイでした。2年前にミラノで食事をした時も、イタリアとスイスの国境近くの実家からバイクで来ていて、しかも数年前にもバイクで大きな事故を起こしていたので、くれぐれも気をつけて運転して下さいね!と言っていたのに。 このブログでも彼のことは何度も書いてきました。良いことも悪いことも。今朝からずっと彼のCDを聞いていますが、本当に残念です。心から冥福を祈っています。 ![]()
津田ホールでオペラ?最初に聞いた時に驚きましたが、演奏会形式で伴奏はピアノと聞き、納得しました。舞台の後方に30名ちょっとで2列の合唱団、上手奥にピアノ、上手手前に指揮者、そして、舞台前方に6名のソリストたちと譜面台という並びでした。そして驚いたのは、舞台後方の反響板の中央部に映し出された字幕です。スクリーンなどはまったくなく、普通の備え付けの反響板に見えるところに字幕が映し出されるのですが、非常に読みやすく、クリアーでキレイなのです。プロジェクターから投影されていると思いますが、あんなにキレイならスクリーンは要らないかも知れません。
さて「夢遊病の女」ですが、ベッリーニの作品の中では圧倒的に「ノルマ」が有名で上演回数も多いでしょう。「カプレーティとモンテッキ」「清教徒」「テンダのベアトリーチェ」などと並び時々上演される、というのがこの「夢遊病の女」です。ストーリーは主役の夢遊病の娘が眠ったまま細い橋を渡るという荒唐無稽にもほどがある内容ですが、スイスを舞台とした牧歌劇です。音楽は素晴らしいのですが、アミーナとリーザという2人の卓越した技術を持つコロラトゥーラ・ソプラノが必要なのと、エルヴィーノというハイCの上の超高音が必要となるテノールがいないとオペラにならないので、なかなか上演回数に恵まれないのでしょう。しかし、アリアや合唱などの旋律の美しさはベッリーニのオペラの中でも特筆すべきオペラと言えます。 私もこのオペラを見るのは2003年のウィーン国立歌劇場以来のような気がします。この時はとにかくステファニア・ボンファデッリが全盛期で、完璧なテクニックに容姿の美しさで1人で観客を魅了していました。最近はまったく彼女の話を聞かなくなってしまいましたが、どうしたのでしょうか。音声障害になってしまったのは知っていますが、そのあと復活したはずだったのですが。やはりコロラトゥーラは難しいのですね。グルベローヴァやデヴィアは特別の中の特別なのでしょう。 さて、話がすっかり横に逸れてしまいました。当日のキャストは、主役のアミーナに平井香織、ライヴァルのリーザに村瀬美和、エルヴィーノの青柳明、ロドルフォにバリトンの折河宏治というメンバー。不勉強で申し訳ありませんが、ほとんど見たことがないメンバーながら、まず平井香織さんは素晴らしいソプラノでした。コロラトゥーラにしては少し太く当てすぎかな?という箇所もありましたが、アジリタのテクニック、高音から中低音域までムラのない声、音量的にも申し分ない立派な声でした。プログラムのプロフィールを見るとR.シュトラウスやワグナーを多く歌っているようですが、ベルカント・オペラも十分に行ける感じでしたが。今度はもう少し大きなホールでコンサート形式ではないちゃんとした演技付きのオペラを見てみたいものです。 テノールの青柳明さんはある意味で驚愕させられました。まず良い面は、とにかく上が強く、ハイCよりも上の音でもさほどムリなく出すことが出来ます。レッジェーロのテノールにしては音量も十分で、最後の方でもまだまだ大丈夫そうでしたので、発声も悪くないのかも知れません。しかし、あまりに棒声で、抑揚がなく、浅いポジションでアペルトに当たりすぎている感じです。あと、曲の最初のフレーズのところの音程が悪く、いつもふらついてしまうのはなぜでしょうか?きっと持っている素質は大きいのだと思いますが、あの歌い方では素人にも素人くさく見えてしまうと思います。
昨日の投稿がなぜか文章の途中で切れてしまって、最後の方が見れなくなっていましたので、続きを書きます。
ただ私は、オペラというものは基本的にはその国の言語でやるべき、というのが持論なので、イタリア語で上演し、そして字幕をつけた方が良かったのではないでしょうか?日本語訳はなかなか上手いと思いましたが、言葉の特性上、どうしても台本通りにするのは難しいですし、歌手が歌いづらそうなところも何箇所か見受けられました。特にイタリア語の場合、言語自体が非常に美しく、作曲家もそれに合わせて作曲をしていますので、外国の言語を無理に当て嵌めると、音楽自体に影響を及ぼしてしまいます。 また、若い歌手たちがこれから海外へ渡っていったり、大きな舞台に立つ場合、必ず原語でということになりますが、日本語で勉強したオペラはほとんど役に立ちません。同じオペラでも、日本語訳のものと原語のものでは、2度勉強をしなければならないことになってしまいます。 チェコ語とかロシア語とか日本語で上演するのが困難な言語であれば、また状況は変わってきますが、少なくともイタリア語のオペラの場合、言語で上演して字幕を流す、というのが良いと思われます。 それから合唱団です。おそらくトラの方たちが入られていたと思いますが(特に男声)、とても良かったと思います。声も良く出ていましたし、アンサンブルも悪くありませんでした。アマチュアの方々も、それぞれに演技を楽しんで舞台に立っているという感じが良く伝わってきました。 最後に当日は六男の仲間も大勢応援に駆けつけていましたが、武蔵野音大の卒業生が多く出ていたこともあって、武蔵野音大の関係者の方とも何名かお会いしました。その中でもテノールの菊池英美先生は学生時代も親しくさせて頂いた方ですが、スピリチュアルの江原啓之さんと一緒に来ていらっしゃいました。菊池先生はアディーナの西本さんの先生ですが、そういえば江原さんも菊池門下だったことを思い出しました。実は江原さんは六男の古いメンバーで、最近はお忙しいのかほとんどお会いしていませんでしたが、久々にお会いしてとてもお元気そうでした。「幽霊メンバーですみません」とおっしゃっていたので、まだ六男のメンバーのつもりでいてくれているようです。江原さんとは六男の横浜のインターコンチネンタルホテルのディナーショーの打ち上げ2次会の時に、彼に歌ってもらうことになり、私が急遽楽譜もないのにピアノで伴奏したことを覚えています。確か「セヴィリアの理髪師」のフィガロのアリア「私は町の何でも屋」ではなかったでしょうか。
ドニゼッティの傑作ブッファ「愛の妙薬」は、何十回も見てきた超スタンダードナンバーですが、いろいろな思い出がたくさんあります。その中でも、ネモリーノに関するだけでも、パヴァロッティが歌えなくなる直前にナポリのサン・カルロ劇場で椅子に寄り掛りながら「人知れぬ涙」を2回歌ってくれたことや、その直後にピッツァ・マルゲリータ発祥の店「ブランディ」で食事をしていたらパヴァロッティが仲間に両側から支えられてようやく店に入ってきたこと。ベルリン国立歌劇場でまだまったく無名だったローランド・ヴィラゾンを見て、彼は絶対にこれから出てくる歌手だと思ったこと。ウィーン国立歌劇場で見た故山路芳久さんの素晴らしいネモリーノ。先日亡くなってしまったヴィンチェンツォ・ラ・スコラのスカラ座での名演等々。テノーレ・レッジェーロにとっては絶対にはずすことができないのがこのネモリーノ役と言えるでしょう。
前置きが長くなってしまいましが、六男のバリトンのパートリーダーで東浩市さんがベルコーレ役で出演するとあって応援に行ったのです。出演者には東さんの他にも何人か知っている人がいましたが、1人1人がとても良く、大満足のオペラとなりました。 まず最大のサプライズはアディーナ役の西本真子さん。おそらく私は彼女の声を少なくとも主役では聞いたことがなかったと思いますが、素晴らしいソプラノでした。低音から高音まで非常に安定感があり、喉に無理のないベルカントな発声法、フレージングやブレッシングも実に上手く、アジリタも軽々こなしていましたので、コロラトゥーラの役もできるでしょう。声の伸びやヴィブラートのかかり方もまったく問題がありません。次はぜひもうちょっと大きなホールで、別の役を聞いてみたいものです。 ネモリーノは青地英幸さん。実にネモリーノらしい輝かしく繊細なレッジェーロです。1幕のフィナーレの方で少し疲れ気味な感じがありましたが、2幕は見事に立て直してくれました。この西本、青地のお2人で私の後輩なので、ますますの活躍を期待しています。 ドゥルカマーラは岡元敦司さん。六男がイタリアで「Jr.バタフライ」の合唱を歌った時に、トラとして手伝ってもらったことがありますが、朗々たる美声の持ち主です。彼もとても良かったですし、演技もとても上手でした。しかし、2幕のフィナーレはちょっと疲れてしまったでしょうか? そして我らが東さん。普段は六男のバリトンパートを後ろかから支えてくれているので、あまりソロを聞かせて頂く機会はありませんが、さすがでした。フレーズの作り方が上手く、喉も良く鳴っていたと思います。演技も生真面目なベルコーレがとても合っていました。 最後に字幕と上演言語について。当日は日本語上演でさらに日本語の字幕付きという新国のように非常に親切な舞台となっていました。ただよくよく聞いてみると、日本語上演というのは主催者の方針で、オペラを分かりやすく紹介するため、とのこと。そして本来は字幕を入れたくないが、ホールが響きすぎて言葉が聞きづらいということなので、初めて導入したとのことです。 ただ、今回の公演に関していえば、字幕はまったく要らなかったと思います。まず歌手たちの日本語がとてもはっきり聞き取りやすいものだったということ。次に愛の妙薬と言うオペラはちょっと言葉が聞き取れなかったとしても、ストーリーが分からなくなってしまうことは決して無いでしょう。 ただ私は、オペラというものは基本的にはその国の言語でやるべき、というのが持論なので、イタリア語で上演し、そして字幕をつけた方が良かったのではないでしょうか?日本語訳はなかなか上手いと思いましたが
世の中に本当にスペシャルなコンサート、オペラというものは数ありますが、その最高峰はずばりミラノ・スカラ座のシーズン・オープニングのプレミエ公演でしょう。
世界中の王侯・貴族、政治家、映画俳優、大企業の社長、歌手、スポーツ選手たち、要するにセレブたちが一堂に会し、オペラを楽しむのです。開演前や休憩のホワイエは、私でも知っている欧米の有名人たちがあちこちで会話を楽しんでいて、まさに別世界。 この日は毎年12月7日と決まっていますが、これはミラノの守護聖人サンタンブロージョのお祭りの日で、ミラノの祝日なのです。スカラ座の前は、マスコミ、警官、野次馬で人が溢れ、車は特別な車以外、かなり遠くで降ろされて歩かなければなりません。入口には赤の絨毯が敷き詰められ、さながらアカデミー賞の授賞式のようです。その絨毯の上をきらびやかに着飾った紳士淑女がオペラハウスに入って行くのです。昔は一部の特権階級に抗議する過激な連中が卵を投げつけるなんてこともあったそうですが、今は、警官や警備が非常に厳しいので、近づくこともできません。 もちろんチケットも超プラチナチケットです。一応、売りには出ますが、普通に買うことはまったく不可能です。ウィーンの1月1日のニューイヤーコンサート、バイロイト音楽祭のリングなど、入手困難なチケットは他にもありますが、その中でも1番難しいのがこのスカラ座のオープニングと言われています。 昨日、ガランチャの時にも少しだけ申し上げましたが、スカラ座の2011年-2012年シーズンのオープニングは、2011年12月7日の「ドン・ジョヴァンニ」なのです。もちろんキャストも超一流です。指揮はもちろん首席指揮者のダニエル・バレンボイム。ドン・ジョヴァンニにペーター・マッテイ、ドンナ・アンナにアンナ・ネトレプコ、レポレッロにブリン・ターフェル、オッターヴィオにジュゼッペ・フィリアノーティ、等々。ここにエルヴィラにガランチャという予定だったのですが、残念ながら妊娠によるキャンセルでまだ代役は発表されていません。しかし、エルヴィラの裏のキャストがバルバラ・フリットリなので、彼女が歌ってくれるのではないでしょうか? ムーティの時代には弊社(ラテーザ)でも何度もこのスカラ座オープニングのツアーを催行していましたが、今年は久々に「ドン・ジョヴァンニ」のツアーを催行するつもりです。ご興味のある方はぜひご参加下さい!
エリーナ・ガランチャが、現在、世界最高のメッツォ・ソプラノの1人であるということに異議のある方はおそらくいらっしゃらないでしょう。そのガランチャが妊娠をしてしまったという情報をキャッチしました。本来、喜ばなければならないのにちょっと残念という何とも複雑な心境です。
今年のミラノ・スカラ座のオープニングは「ドン・ジョヴァンニ」なのですが、つい先日までは、HPにはエルヴィラにガランチャがアサインされていたのですが、先ほどそのHPを見たところ、2012年2月まで妊娠によってすべてのスケジュールをキャンセルすると書いてあります。そういえば2011-2012シーズンのMETのオープニングがドニゼッティの「アンナ・ボレーナ」でネトレプコとの共演が話題になっていたのを思い出し、METのHPをチェックしましたら、やはりガランチャの名前はなく、代わりにエカテリーナ・グバノヴァの名前がありました。グバノヴァは現在来日中のMETでも、ボロディアのキャンセルにによって来日し、「ドン・カルロ」のエボリを歌っています。 さて、ガランチャですが、1976年にラトヴィアの首都リーガ生まれ。のびやかな美声と豊かな声量を持ち、メッツォらしい低音から高音のアジリタまで自由自在のテクニックを持ち、ソプラノを歌うことも出来、抜群の演技力とエキゾチックな美貌を持っているのですから人気が出ない方がおかしいくらいです。あと10年は彼女の時代が続くと思っていましたので、母子ともに無事な出産を祈っています。実は彼女、まったく無名の時代の2003年に、新国立劇場の「ホフマン物語」の二クラウス役で来日し、私も驚いたことを良く覚えています。 さてご主人にも少しだけ触れておきましょう。1971年ロンドン生まれのジブラルタル人指揮者、カレル・マーク・チチョンという人です。ラトヴィア国立交響楽団やグラーツ交響楽団の首席指揮者ののち、2012年シーズンからは、ザールブリュッケンのドイツ放送フィルの首席指揮者になる予定です。そこそこの活躍は見せていますが、どうもグルベローヴァのご主人ハイダーの匂いがするのは私だけでしょうか。
実はこのニュース、お恥ずかしいことですが、つい先日まで知りませんでした。渋谷のタワーレコードのCD売り場で知ったのですが、亡くなったのは何と2ヶ月も前の4月14日とのこと。日本ではほとんどニュースにもならなかったように思います。死因は心臓麻痺とのことですが、トルコのメルシンというところでオペラのマスタークラスを教えていたそうです。
1958年にシチリア島のパレルモに生まれ、アリゴ・ポーラ、カルロ・ベルゴンツィに師事し1983年にパルマで「ドン・パスクアーレ」のエルネストでデビュー。スカラ座では「愛の妙薬」のネモリーノで、METでは「ボエーム」のロドルフォでデビューを果たしました。日本が大好きで、何度も来日しましたが、特にフィレンツェの「ルチア」のエドガルドが素晴らしかったです。これらの役で分かるように、明るい美声のリリコ・レッジェーロでしたが、徐々にスピント、ドラマティコの諸役を歌うようになり、「アイーダ」のラダメス、「トスカ」のカヴァラドッシ、「トゥーランドット」のカラフなどを歌うようになっていきました。 スピントのものに挑戦していくレッジェーロなテノールは世界中に幾らでもいますが、彼が凄いのは、これらスピントの役とレッジェーロの役を並行して歌い続けていたことです。簡単に言ってしまうと、自分が歌いたい役はどんな役でも受けてしまっていたのでしょう。彼の主戦場は絶対にリリコ・レッジェーロあたりの諸役だったので、私はとても心配していました。案の定、2000年代に入ると明らかに喉が不調のことが多くなり、ドンドン出番も減ってきてしまっていました。 全盛期は、ロベルト・アラーニャ、ホセ・クーラ、マルセロ・アルヴァレス、ジュゼッペ・サッバッティーニなど同世代の歌手たちとポスト3大テノールの1人としても注目を浴び、世界中の一流歌劇場で大活躍していたので残念でなりません。 一緒に食事をしたこともありますが、寿司が好きで、いかにも陽気なシチリアーノらしく、人懐っこい笑顔と厚い胸板が印象的でした。あまりにも早すぎる死に言葉が見つかりません。ご冥福を祈ります。
先週末の愛知県芸からMETの来日高音が始まりました。まだ私のところに情報は入ってきていませんが、今回の公演は、前代未聞なほどのキャンセルが出てしまいました。
まず、指揮のレヴァイン。最近の彼は本当に体が悪いようなので、これは仕方ありません。代わりにファビオ・ルイージが「ボエーム」と「ドン・カルロ」を振ることになりました。このあたりの演目は彼にとって得意中の得意なので、安心して聞けると思います。そして、「ドン・カルロ」のエボリにアサインされていたメッツォのオリガ・ボロディナ。彼女も健康の問題でキャンセルということですが、真相はわかりません。そして、今世界のオペラハウスを席巻しているテノールのヨナス・カウフマン。彼は「ドン・カルロ」のタイトルロールを歌うはずだったのですが、原発が怖いという理由でキャンセルになってしまったのです。ここまでは5月中旬に発表されていました。 しかし、来日直前の5月末になって、「ボエーム」のミミを歌うはずだった現在、世界一の歌姫と言われるアンナ・ネトレプコが同じく原発を理由にキャンセルになってしまいました。さらには、「ボエーム」のロドルフォ、「ルチア」のエドガルドにアサインされていたテノールのジョセフ・カレーヤまでキャンセルになってしまったのです。ただこの2人は今までずっと来日を表明しており、直前のドタキャンには不信感が募ります。本当に来る気があったのでしょうか? 特にアンナ・ネトレプコは日本中のファンが楽しみにしていただけにがっかりされた方も多いことでしょう。妊娠によってザルツブルク音楽祭の「ロメオとジュリエット」がキャンセルされたのは仕方ないですが、彼女はキャンセルが多すぎると思います。私自身、何度も彼女のキャンセルに遭遇してきました。ちょっと暗めの美声、天性の容姿、抜群の歌唱力と演技力で、ここ数年世界中のオペラハウスから引っ張りだこになっていた彼女ですが、喉や体には相当無理な負担をかけ続けていたのではないでしょうか?こうなると実質的には10年くらいしか全盛期がなかったマリア・カラスを思い出さずにはいられませんが、まだ若いのですからそうならないことを祈っています。 さて天下のMETですので、すぐに代役を発表しました。相当ドタバタがあったようですが、何とか形にはなったと思います。まず、「ドン・カルロ」でエリザベッタを歌うまずだったバルバラ・フリットリをアンナの代役として「ボエーム」のミミに回したのです。そして、ロドルフォのカレーヤの代役はマルセロ・アルヴァレス。昨日のトロヴァトーレでも書きましたが、脂の乗った素晴らしいテノールですので、はっきり言ってカレーヤよりもはるかに良いと思います。しかし、バルバラとマルセロの「ボエーム」というと去年のトリノの来日公演とまったく同じキャストになってしまったので、日本のファンとしては新鮮味がなくなってしまったかも知れません。しかし、アンナが落ちてしまった今、これしか方法がなかったのでしょう。 1番酷いのは「ドン・カルロ」です。カウフマン、ボロディナが落ちてしまった上に、バルバラまで「ボエーム」に取られてしまったのですから。主役級で残ったのはロドリーゴのディミトリ・ホロストフスキーとフィリッポ2世のルネ・パーペだけになってしまいました。バルバラの代役は若いロシア人ソプラノのマリーナ・ポプラフスカヤ。カウフマンの代役は、韓国のテノール、ヨンフン・リー。エボリの代役はエカテリーナ・グバノヴァというメンバー。もちろん普通のオペラハウスでは悪いキャストではありませんが、スター揃いの素晴らしいキャスティングに惹かれてチケットを買った人たちのショックははかり知れません。 「ルチア」は被害が最小だったと言えるでしょう。カレーヤの代役として、ローランド・ヴィラゾンとアレクセリ・ドルゴフがアサインされましたが、ヴィラゾンは一時期の不調から立ち直り、術後の経過も順調なので、かなり期待できます。それに、指揮のノセダ、タイトルロールのディアナ・ダムラウもそのままですし、エンリーコのルチッチ、ライモンドのアブドラザコフも実力派です。当初は「ルチア」が1番地味なキャストかも?と言われましたが、ここに至っては、「ルチア」のチケットを買った方が正解だったかもしれません。 ショックを受けた方々も決して少なくないでしょうが、METが世界屈指の実力を誇るオペラハウスであることは疑いのない事実です。合唱団やオーケストラが我々の期待を裏切ることはないでしょう。払い戻しもまったくないそうなので、気持ちを切り替えて、楽しまないと損ですよ! < 前のページ次のページ >
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【筆者のプロフィール】 上月光 (KOZUKI,Hikari) 株式会社ラテーザ代表取締役社長。音楽評論家。青山女声合唱団団長、指導者。六本木男声合唱団倶楽部バリトンメンバー。ロイヤルチェンバーオーケストラ相談役、評議員。武蔵野音楽大学声楽科卒業。バリトン。趣味ゴルフ、スポーツ観戦等。熱狂的なACミランのファン(ミラニスタ) 【リンク】 男の隠れ家~大人の男のためのオペラ入門塾~ 六本木男声合唱団倶楽部 株式会社ラテーザ ピアニスト一世オフィシャルサイト カテゴリ
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