2007年5月28日
パスポートが期限切れになっていた。3月末日で。
10年前。11歳になった娘と10歳の息子を連れてハ
ワイに行くときに一家全員パスポートを新しくした。成
長期にある子どもは5年間の有効期限もの。成長が止ま
っている大人は、年齢が重なったからと云ってそうそう
顔が変わるわけでなしと10年間の有効期限を持つパス
ポートを取得できたのだが、あれからすでに10年たっ
たのである。
業界団体の役員の仕事と海外へ仕事で出かけることはぶ
つかっていることではないが、毎月必ず2回ある役員会
への出席と案件によっては委員会への出席。また音楽関
連団体の理事会・委員会への出席が義務づけられている
から、時間に対する自由度が拘束され、海外への渡航回
数が少なくなってきていた。パスポートの必需性が薄れ
たのである。で、期限が切れたにも関わらず更新してい
なかった。
しばらく前までは年に8回はロンドンに行く用事があっ
た。決算、会計士との会議、契約に関する弁護士会議、
制作会議等々で、2泊3日などという、時差に翻弄され
まくりながら仕事をこなすという恐ろしい日程でも出か
けたものだった。
イギリスで一人でいると仕事では困らなかったが夜の食
事には困った。だいたい、イギリス人は夜は仕事での食
事会などはしないものなのだ。ビジネスミーティングは
たいがいランチミーティングで、しばしばブレックファ
ーストミーティングもした。ブレックファーストミーテ
ィングは当然朝も早よから仕事話をやるわけだが、こち
らは幸いなことに時差ボケしてる。早い時には午前3時
頃から目が覚めている。時差にはまって目が覚めるとい
うのは経験した方も多くいると思うが、たった3時間前
にベッドに入ってうとうとしたかと思う間もなく目が覚
めてしまい、しかも寝不足は明らかであるにもかかわら
ず、目が覚めるとまったく眠くないのであるから、暗い
うちからシャワーを浴び、早く夜が明けないかな、腹が
減ったぞ、早くホテルのレストランが開かないかな・・
と朝が来るのを心待ちにしているのだから朝飯ミーティ
ングはむしろウエルカムであった。朝飯会議を済ますと
事務所で打ち合わせを済ませ、午後は軽くイタリアンで
ランチミーティング。ワインなどもすすめられるままに
おいしくいただく。昼真っから飲むワインは、また、た
いへんよろしい。そして事務所に戻り夕方まで会議をし、
会議が終われば、それで今日の日はサヨウナラとなって、
ホテルに帰るが、それから一人になってしまう。
英国は、先ほども云ったが仕事人同士で(日本式営業接
待というやつです)ディナーをするという習慣がない。
夜はプライベートな食事である。であるからたいがいは
夫婦や恋人同士ででかける。男同士でもでかけるが、そ
んな場合はゲイであることが多い。まして、ひとりでデ
ィナーをとっているなど見たことがない。カップルでも
なくゲイでもなく、回りや店の者から見ればただの変人
としか見えないだろう。一人で夕飯を食うのは家かファ
ースト・フード店に限られていて、すくなくともレスト
ランではない。であるから、せっかくロンドンにいなが
ら、数ある美味いレストランにいけなくて大変困ってし
まうのだ。イギリス・ロンドンは飯が美味くないと云っ
ているのは、美味い店を捜しだせる嗅覚が働かない人か、
一部の物知り顔のエセロンドン通や知ったかぶりの観光
客が云うことであって、ロンドンには美味い店がうんと
たくさんある。どんなにたくさんあっても、一人では行
けないからリンダは困っちゃうのである。
フレンチにも行けず、イタリアンにも行けず、ターキッ
シュにも行けず、ジョージ・マイケルの叔父さん一家が
やっているギリシャ料理屋にも一人では行けず、結局、
毎度お馴染み、しかも会社員同士の接待食事会も行われ、
スシカウンターで一人でネタをつまみちびちびと日本酒
を飲んでいてもなんとか恰好がつく日本飯屋にでかける
ことになる。
好きな日本飯が食えるのだから、なにも困るということ
はないのだが、季節になればオイスターバー&レストラ
ンで美味い牡蠣を食いたいじゃないですか。日本の牡蠣
もおいしいが、あなた、一度北海の牡蠣食うてごらんな
さい。ノルマンディーの牡蠣食うてごらなさい。日本産
より小粒だがプチプチとしていて病みつきになりますよ。
海水自体の塩味で。レモンを絞ってさわやかに。トマト
ケチャップにホースラディッシュで辛みをつけた牡蠣の
美味いこと。冷えたシャンパンで食らう牡蠣の美味いこ
と。1ダーズン(12個)では足りませんってなくらい
美味いものであるが、ひとりでは行けません。独り身の
わたくしは、スシカウンターで「サーモン切ってくださ
い。日本酒熱燗おかわりください」と、話し相手もない
夕食を黙々ととるだけであります。ガールフレンドをつ
くる技量も度胸もないわたくしは、ひとり黙々と夕食を
食べるのであります。
ぐずぐずとロンドンでの食事のことを書いているがパス
ポートのことである。ここ数年、海外には疎遠だったわ
たくしに、先日、急遽北京行きの話が降ってわいたので
ある。大あわてでパスポートを申請した。受け取り日は
5月31日。なんとか6月1日の出発に間に合うことに
なった。北京用にと新調したヨージ・ヤマモトの新作コ
ットンスーツも出発前日に出来上がることになった。
準備は万端である。北京ではT君とS君が、手ぐすね引
いて待っていますと云ってくれている。音楽仕事の打ち
合わせから夏のチベット高原列車旅行の打ち合わせから
と忙しい北京の初夏となるが、たのしみ満載である。ち
なみに飯は地元の人しか知らないガイドブックには載っ
ていない名店を用意してくれているらしい。すくなくと
も飯には困らないぞと行ってきまーす。