【ラストワルツ】鳴り止まぬ歓声。
Wアンコール。
45年目のサンキューのサビを涙ながらに大合唱する老若男女入り混じったファンたち。
楽屋裏。
最後のステージに向かって、ミクロの車椅子を押す僕。
ユーイチは、すでに老眼鏡をかけDJブースでスタンバっている。
早い歌はもう唄えない。
流行り歌もよくわからない。
あるのは、昔の自分達の、今では懐メロになって何度もコンピレーションに入れられた曲たちだけ。
だけど、ここ30回目の武道館でほぼすべての曲を唄いきった。
ただし、少年ハートだけを除いては…。
今年、72を迎えるジジイたちに少年ハートもクソもないだろう。
この45年間をしばし目を閉じ回想してみる。
思えば色んな人たちに支えられてきた。
しかしそれは同時にたくさんの人たちとの出会いとさよならの45年間でもあった。
僕らをインディーズのときから全国津々浦々駆け回ってくれたGM大野さんも、
度重なる苦労と食べすぎで一昨年、逝った。
死ぬまで僕らと心中すると誓ったマネージャーのリュータは、
デビューして10年目のアフターパーティーでエイベックスにヘッドハンティングされたと皆の前で打ち明け、
その後EXILEの担当になった。
ブリジットはその際、一緒に移動しEXILEに吸収され、さらなるモンスターとなった。
人は一生のうちに数回だけ人生の転換期を迎えるというが、
あいつにとってはあの時がそうだったんだろう。
ま、色んなことあったが、今はもうすべていい。
全部ひっくるめてそれも人生だ。
今日は、あいつも孫と一緒に会場に見に来てくれている。
あいつだけじゃない。お世話になったたくさんの人たち、応援してくれた親族、関係者、
ほとんどすべての人が今日は集まってくれている。
最後のスポットライトの下、あの大きな日の丸の下できちんと皆にお礼を言わなくちゃ。
もつか、僕の腰…。
思わず、車椅子の取っ手にギュッと力が入る。
「いこうか、ミクロ」
返事はない。
無理もない、
まさか解散の原因がポンパドールが結えなくなったからだなんて、本人が一番責任を感じていることだろう。
数人のスタッフに手伝われ、最後のステージへと向かう。
そういえば、イヤモニ(註釈:イヤーモニター)もいつからか普段の生活でも使うようになった。
歳をとるというのは、嫌なものだな…。
モジャの息子が僕にマイクを渡し、「今までお疲れ様でした、お疲れ様です」と言いサッと背を向けた。
僕のマイクはしっとり濡れていた。
このマイク、この緊張感、このスタッフ、このメンバーともさよならだ。
そして、みんなの前でこうやって唄うのもさよならだ。
さ、胸を張っていこう。
僕の人生は最高だった。
ホントに、
ホントに…。
一度もステージで涙を流したことがなかった僕だったけど、
どうやらさすがに今日だけはダメみたいだ…。
けど、
最後のワルツをみんなと一緒に踊ろう。

営業日:適当
本日の店内BGM
Teddy Pendergrass / Turn Off The Lights