【ちぐはぐ】なつかしい 痛みだわ
ずっと前に 忘れていた
でもあなたを 見たとき
時間だけ 後戻りしたの
「幸福?」と 聞かないで
嘘つくのは 上手じゃない
友だちなら いるけど
あんなには 燃えあがれなくて
失った 夢だけが
美しく 見えるのは何故かしら
過ぎ去った 優しさも
今は 甘い記憶
Sweet Memories
Don't kiss me baby
We can never be
So don't add more pain
Please don't hurt me again
I have spent so many night thinking of you
Longing for your touch
I have once loved you so much
あの頃は 若過ぎて
悪戯に 傷つけあった二人
色褪せた 哀しみも
今は 遠い記憶
Sweet Memories
作詞:松本隆
作曲:大村雅朗
『Sweet Memories』時間をちょっと巻戻してみよう。
まだ、衛星中継やインターネットが一般でなかった頃、アメリカに住む日本人が日本の番組や情報を手に入れる唯一の手段が、小さなオリエンタルコミュニティーが経営するレンタルビデオショップでした。
陳列棚にある作品は、どれも市販された正規のものではなく、日本に住んでいる誰かが自宅でバラエティーやドラマを録画したものに手書きで書かれたラベルを貼っつけただけの、なんともお粗末なものでした。(今思えば、かなりアコギな商売だな…)
それでも、遠く離れた地で母国の番組をほぼリアルタイムで楽しめるというのは、外国に住む日本人にとってはこの上なく有り難い場所でした。
飽きもせず、同じビデオを何回も何回も巻戻してよく観たものです。
そんな中で育った僕は、お陰でさほど話題に取り残されることもなく、日本に帰ってからも同じ時間を過ごしてきたかのように、同年代の奴ら、ひいては年上の人たちとも当時の歌やドラマについて熱く語ることができます。
だから、よく
「オマエ、本当にアメリカに居たのか??」
なんて、言われます。
これも、そんな中で出会った一曲。
確か、借りてきたビデオの中に入っていたCMソングでした。
それは、全編アニメーションでペンギンがジャズバーで歌っているという、異様にインパクトのあるものでした。

初めは、何かの新しいアニメかと思ったのですが、そうではなく普通の短いCMで、しかも歌が英詩だったので、まさか松田聖子さんが唄っているとは思いもよりませんでした。
ただ、なんて心地の良いメロディーなんだ~と、子供ながらに聴き惚れたのを憶えています。
多分、アニメというのも幼心に良かったのでしょうね。
その後、しばらくしてそのCMが映画化されます。
「ペンギンズ・メモリー 幸福物語」です。

これも、そのレンタルビデオショップで借りて観ました。
可愛いペンギンのキャラクターとは裏腹に、ストーリーが思いの外シリアスで当時の僕にはまだ難しくて、何度巻戻して観ても内容がいまいち理解できませんでした。
戦争から帰還した、ペンギンのマイクが戦場の日々にずっと悩まされながら、故郷で英雄視されることに疑問を抱き、図書館で司書をしながら出逢った歌手志望のジルと恋に落ちます。しかし、彼女の成功のため、そして一人静かな街で暮らすため、マイクは別れを決意するのです…
ね、なかなかディープな話でしょ。
大人のペンギンってちぐはぐしてますよねー。
でも、それを知ってこの曲を聴くと更にグッときますね。
そして僕は、大人になってからもまたこの曲と再会することになります。
当時、付き合っていた彼女がなにげなくこの歌を唄い出したのです。
久しぶりに聴いた、それは
なぜだか妙に切なくて、ただ黙ってずっと聴いていたのを憶えています。
松田聖子さんは、この曲がきっかけでそれまでの“少女でアイドル”というイメージから“大人で本格的なアーティスト”にイメージを移すことに成功したそうです。
でもきっと、理由はそれだけではなかったのでしょう。
時を経て、
僕もいくつかの恋愛を経験し、傷ついた戦場からの帰還兵マイクのように思い悩む日々を越え、ようやくこの歌詞の味がなんとなく理解できる歳になりました。
子供から大人へ。
あの日への、巻戻しはありません。
同じ歌でも、時間と共に違って聴こえてくるものですね。

営業日:適当
本日の店内BGM
Lou Rawls / You'll Never Find Another Love Like Mine