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前作「ハッシュ!」以来、6年ぶりとなる橋口亮輔監督作「ぐるりのこと。」。
90年代初頭から21世紀へと時代が激変した10年。実際に起きた社会的事件の数々を背景に、一組の夫婦の時の流れを、丁寧に、心にしみいるように紡ぎだした物語です。
妻・翔子役に、これが初の映画主演作となる木村多江(『大奥』『スターフィッシュ・ホテル』)。ただ彼女にあたたかく寄り添う法廷画家の夫・カナオ役にリリー・フランキー(小説「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」)。人と人とのつながりから生まれる“ささやかだけど大きな幸せと希望”が見事に描かれます。10年、20年後も心に残る、いとおしい珠玉の名作が誕生しました。
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暑かったりシトシト雨だったりの季節の変わり目、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
映画監督は、普段何してるの? と不思議に思われる方も多いと思いますが、別に何もしてません。最近は、天気のいい日は、ゆっくり散歩するとか、おかずを何品も作って好きなDVDを観ながら食事するとかするのが楽しみです。 6年ぶりの映画『ぐるりのこと。』も初日が近づき、ソワソワする気持ちを出来るだけ穏やかにしようとしているのかもしれません。 早いもので、撮影からもう1年も経ってしまいました。それでも体の芯に疲れが残っている感じですが、おかげ様で現在まで試写等でご覧になった方がたの評判もよくホッとしています。しかし、こんなときこそ緩みが出るもの。全国の皆さんに映画をお届けするまでは、プロデューサー、宣伝部ともども"あぐら"をかくことなく頑張りたいと思います! 映画のあらましや説明は、すでに記事やホームページでご存知の方もいらっしゃると思います。誰かのブログで『橋口さんは鶴だ』と書かれていて爆笑しましたが、自分でもその通りだと思います。今度の映画ほど、まさに命を削っている実感があった作品はありませんでした。せっかくマッチョ(なりかけ)だったのに2ヶ月で10キロも痩せてしまうと、心と体にかなりのダメージがありました。(注 無理なダイエットはやめましょうね) それと反対にリリーさんはムチムチ太っていき、顔色もつやつや。でも、生き生きと本当に楽しそうに現場にいるリリーさんの姿にどんなに励まされたことか! 木村の多江ちゃんも同様です。 彼女が泣きながら本屋の中を走る場面があります。夜通しの撮影で時刻は朝の7時。みんなヘトヘトです。1テイク目。OKを出したものの、もう一回できるか? 限界か? 僕は、彼女の元へ走りました。座り込んでる彼女の顔を覗きこみました。数秒だったと思いますが、無言のその間で全てが通じ合う感じがしました。「もう一回いこう!」と言うと、彼女は黙って、力強く頷きました。一緒に何かを作り上げている同志のような、戦友のような、そんな存在でした。 何かの取材で、「監督が手を離さずにいてくれた」とありましたが、リリーさんと多江ちゃんのほうこそ、僕にその身を投げ出すように繋がっていてくれました。 撮影終了の日。その日はリリーさんと柄本明さんの屋上の場面でした。雲一つない快晴で太陽が眩しすぎるほどでした。一日やっていたので、みな鼻の頭とか赤く日焼けしていました。最後のカットにOKを出した後、僕はスタッフに胴上げされました。人生で初めてのことです。驚いたのと、屋上の上なので恐いやらですっかりテンションが上がったのでしょう。その後の挨拶では号泣(こんなに人前で泣くかというくらい)してしまいました。 立てないほど疲れているのに、加瀬亮君の芝居を見た途端エネルギーが溢れてきたこと、子供を殺された遺族の母を演じて下さった佐藤直子さんは、お子さんが出来たばかり。きつい芝居だったはずですが、繰り返すテスト、本番と同じテンションでやりきられたこと。 母役の倍賞美津子さんは、本当に太陽のような人で、常に現場を引っ張ってくれたこと。 その他、大勢の出演陣、またスタッフもしかり。『ああ、これがプロなんだなぁ』と感じられる素晴らしい方たちと仕事ができた喜びが込み上げてきたのだと思います。 ヒクヒクしゃくり上げていた、その時、誰かが後ろから抱きしめてくれました。リリーさんだということはすぐにわかりましたが、泣き顔が恥ずかしくて振り返りませんでした。すると僕の手をギュッと握ってくれました。この世のものではない柔らかいものに包まれているようでした。 本当に幸せでした。一瞬で過ぎていく幸せですが、"生きていると素晴らしいものが見れるんだなぁ。こんな幸せもあるんだなぁ"と、そんな想いで一杯でした。 長くなりましたが、この6年の間、撮影も含めて、様々な出来事があった映画ですので、これだけではお伝えできませんが、また何かの機会があるやもしれません。 最後になりますが、これから映画をご覧になる皆さん。 この映画は、昨今の邦画のようにあれやこれやで飾り立て感動のしどころ、ここ泣きどころ! と説明する過剰サービスでラッピングされた映画ではありません。 かといって重く暗い映画でもありません。痛みとユーモア、希望と絶望、明と暗、そしてその間のグラデーションで出来上がっています。僕たちの生活がまさにそのようだと思っているからです。 そこにご自分の姿を見るかもしれません。それが嫌な方は、この映画は何も語ってはこないでしょう。しかし、色々ある世の中だけど、日々、少しでも人生を丁寧に生きたいと思われてるような人なら映画は雄弁に語りだし、うるさいくらいだと思います。 "ひたむき"に生きるって人にとって大切です。でも、そうして生きる人が報われることの少ない世の中です。僕は、この映画で、ひたむきに生きる人が最後は報われる、そんな瞬間を描きたいなと思いました。そして、それが描けたと思います。 この映画が、皆さんにとって時に雄弁だったり、寡黙だけど信頼できる友人だったり、なにかそんな存在になれば、作り手としてこんな幸せはありません。 どうぞ公開まで、今しばらくお待ちくださいね。 では……。 橋口亮輔 ![]() by gururinokoto | 2008-06-06 14:53 | おしらせ
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