
とても不思議なことが起こった。世にも不思議なこと。
プエルトリコの南に浮かぶ無人島を目指しているわたしは、昨日、船長との間を取り持ってくれるというラファエル氏と電話で話し、明朝ホテルまでやって来てくれるということになった。環境保護の観点から政府が訪れる人の数をコントロールしているため特別の許可を取らなければ島へは簡単に入れない。唯一の手段が、許可を得たツアー会社を通して出かけることでラファエルはその担当者とのこと。
だが朝、わたしの前に現れたのはツアー会社のラファエルではなく、弁護士のラファエルであった。どうも昨日わたしは間違い電話をかけてしまったらしい。普通は間違いにお互いすぐに気がつくはずなのだが、さまざまな共通点が一致して、それに気がつかないままわたしは弁護士のラファエル氏と会ったのである。と言うのも間違い電話をした先に、ラファエル氏がおり、「チリから電話をした」とわたしが言えば、ラファエル氏も数ヶ月前にチリへ2週間出かけていたという偶然があった。さらに「船長とコンタクトして無人島へ」というわたしのリクエストに対しても、ラファエル氏はボートを個人所有していてその無人島へもでかけたことがあったという。しかも無人島へは約80-90キロ離れている島の南岸のポンセから出るのだが、彼はポンセで弁護士を開業しているのだ。
やって来たラファエル氏は、スーツをドレッシーに着こなすジェントルマンであったが、ひょんな偶然で出会ったわたしの無人島へ渡ろうという試みに手助けをしてくれることになった。というのもやはり、ツアー会社はいくら電話をかけても留守電になっているからだ。
わたしは明日までの予定のサンファンのホテルを急遽チェックアウトして、ラファエル氏とポンセに向った。そして政府の環境保護管理事務所へでかけ、そこで許可と船を願い出ようということになった。わたしの興味が「海賊とか宝島」であることを知っていたラファエル氏はわたしに「そこではそういうテーマを口にすると許可とりにも支障が出る恐れがあるから、島に出かける目的を自然環境の取材にしたほうがいい」とアドヴァイスしてくれた。いかにも弁護士らしい助言。
ところが出てきた環境保護管理事務所のオフィサーは、われわれと会うや「その無人島は海賊の逸話がいっぱいで・・・」と海賊のことを話し始めた。私がロビンソン・クルーソーの住居を発見したことを話すと、彼は「それはすげえや!」と興奮してさらに熱っぽく海賊話を始めた。よく見ると彼の机には日本刀のレプリカが置いてある。尋ねてみると彼は元軍人で沖縄嘉手納基地にいたという。これまた何という偶然。案の定、彼は大の日本ファンでもあった。

意気投合したわれわれは、その足で「海賊の洞窟」というパブへ向った。そこには海賊に縁の武器や絵が壁にかけられていた。そしてそこでわたしはまるで海賊の末裔のようなオーナーから海賊の話をきいたのである。
一本の間違い電話から始まったこの旅の果てには何がまっているのか・・・。そしてわたしは無事に島へ渡れるのか・・・。
写真、海賊の洞窟のオーナーと壁に掲げられた本物の海賊の武器。