丹後半島は、浦島太郎のふるさと。
北方ロシアからメッセージボトルが、あるいは南海からはココナッツが、南北からそれぞれが漂着した丹後半島は、浦島太郎出生の地でもある。この重なりに、ただの偶然、とは言いがたい何か奥深いものの気配を感じる。
丹後の浦嶋伝説は古い。
それは日本の歴史とともにある。それくらい果てしない。
丹後に浦島太郎がいたことは『日本書紀』『万葉集」そして『丹後国風土記(逸文)』に書かれている。『日本書紀』といえば日本最古の正史。まとめられたのは720年、今からおよそ1300年も前のことになる
しかしそのお話は現代の浦島太郎とは違っている。
それをみると、浦島太郎はその昔、「浦嶋子」(うらしまこ)という名前だった。
本当は女の人だったのか!
と、ビックリしてしまいそうだが、浦嶋子の「子」は孟子、孔子、聖徳太子、蘇我馬子の「子」と同じ。古代日本で「子」はいわば男性の尊称。
その浦嶋子は、魚釣りに出て亀を釣り上げる。
ところがその亀は、亀姫の化身。今の乙姫様の原型。浦嶋子は彼女にプロポーズをされるまま常世の国へと出かけていく。そしてそこで楽しく過ごし、3年が過ぎたある日、故郷なつかしさのあまり帰還を決意。浦嶋子は、亀姫から「決して開けてはならない」と玉櫛笥(玉手箱)を受け取り、故郷へ戻ってきた。しかしそこでは300年もの時間が経ってしまっていたのだ。
それを知った浦嶋子は動転し、亀姫との約束も忘れて玉手箱を開いてしまう。
すると白煙が立ち上り・・・。
この伝説を裏付けるかのように、丹後半島には浦嶋神社があり、何と、玉手箱が奉納されているのだ。

神社を訪ねると、宮司の宮嶋淑久氏が伝説についての話をしてくれて、さらにはその玉手箱も見せてくれた。
それは、まさに禁断の玉手箱。
しかしそれを前にすると、わたしはどうしても中身を見たくなった。
この好奇心を他にうっちゃることなど、とてもできそうに無い。
しかしそんなことをしたら、白煙とともに、本当に老人になってしまうかもしれない。
それでは困る・・・物語を読んでも何も学ばないやからには天罰がくだることは、みえみえだ。
しかし、わたしはこのまま引き下がれるだろうか?
いや、ほんの一目でいい・・・。
しかし、「どうしても中を見たい」と言ったら、宮司から一喝されてしまうかもしれない。
開けずの箱を前に、わたしの葛藤はつのり、自分自身を追い詰めていく。
そしてついに、わたしは宮嶋宮司に思いのたけを伝えたのであるが・・・。