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カテゴリ:展覧会( 248 )
渡邉良重さんの展覧会
現在、アートディレクター/グラフィックデザイナーの渡邉良重さん(以下敬称略)の作品展示が2か所で行われている。

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クリエイションギャラリーG8
第19回亀倉雄策賞受賞記念 渡邉良重展 「絵をつくること」

OFS gallery (OUR FAVOURITE SHOP内)
渡邉良重原画展

まずはG8へ。
大きく3つに別れている会場の構成は、各展示者の意図の出るところでもある。
今回は、まず受賞作の洋菓子ブランド「AUDREY(オードリー)」のパッケージデザイン、次の部屋では「D-BROS」、洋服のブランドCACUMA のプロダクトや、イラストを提供している絵本作品、最後の奥の小部屋では刺繍作品と KIKOF の陶器が並んでいる。

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1番目の部屋。苺とチョコレートをメインにする洋菓子ブランド「AUDREY」のパッケージがまるでショウルームのような真面目さでずらりと並べられている。写真には映っていないが、壁とガラス面にはメインビジュアルとなるイラストレーションが大きく描かれている。


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2番目の部屋では、作家性の出やすいプロダクト。作品のほとんどはアクリルケース越しに見る仕組み。

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最後の小部屋。ここはもともとがドアが小さくスペースも狭いので、なんとなく秘密の小部屋っぽい。刺繍、焼き物という作家性も職人の手業も感じる濃密な世界となっている。
3部屋共通で、蛍光ピンクの梁が使われているのだけれど、最後の部屋ではこの梁が作品と見る者を区切る柵の役割をし、危ういくらいのバランスで KIKOF の陶製品が置かれ緊張を感じさせる。

一番最初のスペースから奥へ向かうほど、作家性、表現性が高くなるという仕組みだ。展示を見終えて、逆走すると、奥の部屋にあった作家性の根幹から徐々に、デザイン=複製、量産品としての一般性を増していく。

ふと見ると、最初の「AUDREY(オードリー)」のスペースの床に苺が置かれていた。
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入った時はストレートに製品が並んでいる堂々とした展示という印象だったのが、このほんの少しのアクセントによって、これは製品のショウルームではなく、やはり渡邉良重の世界を表現する展示だったのだ、と気付く。

展示、2つ目。
OUR FAVOURITE SHOP の OFS gallery で行われている「渡邉良重原画展」では絵本や D-BROS の製品で使われたイラストの原画を展示している
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今考えるときちんと原画と製品になったものを個々に写真を撮りメモしておけばよかったと思うのだが展示会場となっている OUR FAVOURITE SHOP の雰囲気もあってかその絵一つ一つに集中するというよりはただ絵を見ているのが楽しいとふわーっと見続けてしまった
ライターの仕事として見るよりは、渡邉良重の絵の世界に入っていきたい気持ちが勝ってしまったのかもしれない。それだけ強く、深い力のある作品が揃う。

驚いたのは、同時に展示されていた製品化された絵本やガラス製品と原画のテクスチャーがほとんど変わらないことだった。薄い紙にエンボス加工されたり、紙媒体からガラスへと素材を変えたりしても、手描き独自のタッチが残っている。
D-BROS などの製品は作る度印刷所や加工所を回って何度も試作を重ねてやっとできたという制作背景がある過去取材で何度か話を聞いてきた事だったが緻密で繊細な絵をよくここまで再現できたものだと改めて感じてしまった

G8でも OFS gallery でも 来場者の多くが若い女性で「かわいい」と表現していた。D-BROS の製品や絵本などで使われるイラストレーションの作品は、かわいらしさと同時に、その製品加工技術であったり、物語性を増す緻密さであったり、背景込みで評価されていたように思う。
取材で話を聞いたことやイラストレーション独自の世界感もあって、渡邉良重の世界をただ単純に「かわいい」で済ませたくないという思いは今でもある。

だが「AUDREY(オードリー)」のパッケージでは少し違う印象を受ける。渡邉良重のイラストが持つ、物語を深読みしたくなる緻密な線や水彩の色むらから来る手の感覚は、太い線や色ベタ面に変わり、個性(いわば、渡邉良重性)を抑え、より多くの量産に向くグラフィカルな表現となっている。

「AUDREY(オードリー)」は現在タカシマヤ2店舗で展開されている、一般向けの洋菓子ブランドだ。人に見せたくなるパッケージに包まれた甘いお菓子を買う場所であり、デパート販売なりの量産性、一般性が求められている。ここでは渡邉良重や KIGI というデザイナーの作品を買うのではない。

手描きの繊細な作品も一般的なパッケージも、その場その場に応じて消費者に向くグラフィックを作れるのは、ドラフト在籍時代も含め約30年もの間、マス向けの広告から、消費者を絞った商品のパッケージまで、多様な媒体、商品を手がけてきた経験がなせることだろう。

デザイナーが絵画やイラストレーションの表現をし、発表することはよくあるが、概ねデザインとは切り離された世界感を求めて制作することが多いように思う。その中で渡邉良重はデザインとも切り離さず、どちらの領域も自由自在に行き来できる、希有な存在である。
銀座で見たせいなのか、かつて資生堂で活躍した山名文夫を思い出した。

by dezagen | 2017-05-02 03:04 | 展覧会
展覧会 マルセル・ブロイヤーの家具: Improvement for good
ブログ久々、ライター渡部のほうです。

まず余談から。
この1ヶ月半ほど視神経が痛い!くらい海外ドラマにのめり込むだけのめり込んでいる。
主に見ているのはクライム/ミステリ系と歴史(19世紀以降)ドラマ。
DVDで見ている分にはまだ自己制御できていたような気がするのだが、配信のドラマや映画まで見出すと、もうかなり切りがなく自分でもヤバいなーと思っているところ。

配信のドラマを見始めたきっかけになったはAmazon ビデオの
歴史改変ドラマで、第二次世界大戦でアメリカが敗戦し、西側が日本(日本太平洋合衆国)の、東側がドイツ(大ナチス帝国)の占領地となっている状況の、1962年というのが設定。

私的な見所ポイントは、主に美術方面。映像の中の日本の表現で、セットの中に日本語看板など多く出て来るのだけれど1960年代にこの書体ないよなー、とか、そんな重箱の隅を突くような見方をしている。
書体の話は宮後さんに任せるとして(無責任)、話の流れで気になっていたのが裕福な日本人の家にイームズの椅子(だったはず、ちょっと前に見たので若干うろ覚え)があったり、家全体の作りがミッドセンチュリーモダンの建築だったりしたところ。
歴史改変のフィクションなので、どんな解釈もできるものの、例えば、ナチスの迫害を受けてアメリカに亡命/移住したドイツ系の建築家やデザイナーがいなかったら、アメリカの建築や家具の世界はかなり違ったものになっていたのではないか、とも考えられるし、また、ドイツに負けたアメリカの中で亡命建築家やデザイナーはどうなっていたのだろうという疑問も湧く。

歴史改変ドラマであっても、歴史を扱う以上、美術作りで気にしなければならないのは、実際の歴史上でどのような物が作られて、どれだけ普及していたか、どんな素材が入手でき、どんな加工方法が可能だったのか、という史実で、それを下敷きに「もしこうだったら」という美術のセットを作らなければ、違和感に引きずられて、ドラマという虚構の世界の嘘を突き通すことが難しくなってくる。
(未知の世界を描くSFや、あり得ない世界を描くファンタジーの場合はまたちょっと話が違うかもしれないが、それでも、ある程度の現実味にズレがあることで、フィクションの面白味が生まれると思う)

歴史ドラマの美術は実際の本物を見ないとダメだなあ、というのと、多くアメリカに亡命/移住したバウハウスのデザイナー達はどう暮らしていたのだろう、というのが気になっていたところに、バウハウスを代表するデザイナー、建築家の1人、マルセル・ブロイヤーの展覧会があると聞き、絶好の機会!と見に行ってきた。

東京国立近代美術館で3月3日から開かれている
マルセル・ブロイヤーの家具: Improvement for good」
は、タイトル通り、ブロイヤーの家具に焦点を当てたもの。

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事前に「ここが見所」と、ワシリーチェア(展覧会中では「クラブチェアB3」)の初期モデルとその後の量産型では、パイプのジョイント部分が違う、ということを伝えられていた。
初期モデルではパイプのジョイントがほとんど熔接になっている、というので、実際に見てみると、X字に組み合わされた部分など難しそうなところも、しっかりと熔接されている!溶接工の手間も技術も要るので、これでは量を作るのが大変。
で、その後のモデルでは徐々にビス留めに変更され、工程も簡略化、熔接では固定されていた部分に若干のゆるみが出来ることで、クッション性も増している。
なーるーほーどー。
バウハウス関係の資料は多くあるので、写真で確認することもむろん出来るのだが、現物を見ると仕上がり具合や質感も分かる。熔接もきれいな仕上がりなのでドイツの溶接工の仕事の巧さも感じることができる。


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《アイソコン・サイドチェア BC3》 1936年 東京国立近代美術館蔵

ワシリーチェアやカンティレバーチェア(「サイドチェアB32」)に比べると、地味な存在だが、ブロイアーがイギリス滞在時(1935年〜36年)に作った、アイソコン社のプライウッド椅子「アイソコン・サイドチェア BC3」。
プライウッドのモールディング技術が向上してきた時代。家具へ応用はまだ挑戦部分の多い時期。新しい素材にチャレンジするだけでなく、スタッキングできる利便なデザインを作ったところもブロイアーらしい。

アメリカに渡った後(1937年〜)の活動(主に建築物)、日本の建築家芦原義信との交流なども紹介されている。
ものすごい細かすぎるところだけれど、1981年、芦原義信に送られたブロイヤー訃報の手紙がタイプライターでもなし、不思議な紙質と文字だな、と思ったら「電報」だった。

などなど、1つ1つ見て行くと、その時代の感触が分かってきてとても楽しい。
東京国立近代美術館の展示のいいところは、内容物は濃く、とはいえスペースはそれほど大きくないので、一つ一つの展示物を丹念に見て行ってもあまり疲れないジャストサイズだな、といつも思う。

もちろん、これは企画や会場構成スタッフの成果。
フライヤーも非常にいいので、是非手に取ってもらいたい。

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制作スタッフが気になったので、図録の奥付から。以下、敬称略。

会場構成 Landscape Products、
会場グラフィック・図録デザイン(及びフライヤーデザイン) PLUG-IN GRAPHIC(平林奈緒美、星野久美子)
図録制作 Butter Inc
企画・図録編集 東京国立近代美術館

展覧会は2017年5月7日(日)まで。

by dezagen | 2017-03-03 17:58 | 展覧会
中村至男展と仲條正義展
ライター渡部のほうです。

1月13日から銀座で始まった2つの展覧会。
1つはクリエイションギャラリーG8の『中村至男展』(2月16日(木)まで)、
もう1つはギンザ・グラフィック・ギャラリーの『仲條正義 IN & OUT, あるいは飲&嘔吐』(3月18日(土)まで)。

仲條正義 IN & OUT, あるいは飲&嘔吐 http://www.dnp.co.jp/CGI/gallery/schedule/detail.cgi?l=1&t=1&seq=00000683


中村至男と仲條正義。
(以下、時々敬称略)
言っていいのかどうかよく分からないけど、普通にグラフィックの仕事を頼みづらそうなグラフィックデザイナーランキング多分5位以内の2人。だって、普通に文庫本の装丁(文字組込み)とか、コンビニで売る飲料のパッケージデザインとか、この2人に頼んだらどんなものが出て来るか全く予想が付かない。

逆に言えば、予測の付かないものが出て来るのがたまらない面白味であるところの2人だ。
まずは中村至男展(グラフィックデザイナー歴25年にして初の個展!)のほうに足を運ぶ。

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入っていきなり、多分、龍。多分、新年っぽい。
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でも今年酉年だし、何なのだろう…。とりあえず自分の理解できないものは後で中村さんに話を聞こう…。

壁を隔てて、二部屋+小部屋からなるG8の手前は新作。奥の部屋はこれまでの作品からの抜粋。一番奥の小部屋はデビュー時、ソニーエンターテイメント在籍時(1990〜1997年)から大体2000年くらいまで。奥に行くほど中村至男の原点に近づいていく、という仕組み。

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とりあえず奥までずんずん見て行く。
ああ、懐かしいな「携帯電話サイト「うごく-ID」(2000年)」

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の、小さい画面!
自分の名前等を入力すると、4コマもしくは5コマのアニメの中に名前の文字が登場する、というもの。とても小さいギミックがむしろ新鮮に思えた。
小さい画面だとやれることに限度があると思っていた時に、むしろこの限度内に収まっているからこその面白味を見いだしたものだった。

要素が少ない、というのは中村至男の特徴の一つだ(明和電機などの例外はあれ)。グラフィックの要素をギリギリまで削ることで、純粋に「見る」ことの面白さ、「発見」の驚きの強さを増す。

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例えばこの新作シリーズ。
手前のケーキのグラフィックは本展のポスターにも使われている、メインビジュアルでもある。ぱっと見るとホールのケーキを切った、ハッピーなグラフィックだけれど、よく見ればロウソクも切れている、火も半分に切れている。
現実ではこんな風には切ることができない。ひょっとしたら、すごい切れ味の真剣で剣士の師範の人に切ってもらったら、こういう切り方が出来るのかもしれないけれど、それを人間の目で見ることはできない。ひょっとするとありうるのかもしれない、それが目に見えないだけなのかもしれない。こんな疑問を起こさせる。
これにもっと説明的な、例えば上述したような剣士を書き入れたりとか、こんなのないよね、というような説明文が入ったとしたら若干しらけてしまう。
何も説明ないからこそ、自分の目で見たことでやってくる突然の驚きのインパクトが強い。
隣のグラフィックは水滴が指の間で止まっている。これはひょっとすると高性能写真で捉えれば撮れるのかもしれない。だが、中村至男特有のシンプルなまっすぐな線で描かれ、とても停止している。永遠にこれが続くのではないかと思う。
中村至男のグラフィックは時々、こんな風に見ている人を驚かす。

過去25年分(!)のグラフィックを集めて見ると、過去のものはより説明的だったようにも見える。
毎日広告デザイン賞に応募した1990年代前半の「としまえん」の作品は
(反射が見え見えで作品自体見にくくてすいません)、
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普段見慣れた原稿用紙なのに、くるん、と回っている。そして「としまえん」の文字を見ることで「ジェットコースターなんだな」と思う。これも非常にシンプルな手法で人を驚かしたグラフィックだったけれど、最近の作品に比べると「原稿用紙だよね」「回っているよね」という、明らかさ、が際立っていた。
今はもっと要素を削いでそれを伝えている。修練のなせる業だと思う。中村至男の作品はさらっとしていて簡単に作られたように見えるが、余計な要素をコンマ1ミリでも減らし、ギリギリのラインはどこなんだろう、と徹底的に最後の瞬間まで悩み続けてやっとここだと選ぶ。
そんな苦労が見えないところも中村風ではある。

ちなみに、前述の「龍」。
中村さんに聞いてみたら「ベクターで龍を書いてみたかった」とのこと。
なるほど。
「イラレってごくたまにソフトのバグで線が割れたり、バリがでたりするんですね。ベクターデータの第一メデイアとしてのマチエル(筆ムラや滲みかすれような)で質感を表現できないかなあ、、と前から思っていました。」
とのこと。
予想の付かない面白さで、今のソフトだから出て来る面白さで何かを表現できるか、そんなところに進化しているようだ。
って、技術が未熟だからこそ面白かった「うごく-ID」とも近いのかも…。まだまだ研究が足りないなあ。

G8で満喫した後に、中村至男展とスタンプラリーも行われている『仲條正義 IN & OUT, あるいは飲&嘔吐』へ。

もうこのタイトルだけで、何が出て来るやら…ドキドキワクワクハラハラするのだけれど、何が出てきても、もう仲條世界に入っていくしかないなあ、とも思うなあ、と想像していたら、やはりそうだった。

本当に圧倒されて、ブログに書こうと思いつつ写真を撮るのをほとんど忘れていたので、公式の会場写真はこちらで堪能して下さい。

1階の新作ポスター群(22点)は「MOTHER & OTHERS」がテーマになっているのだが、
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どこら辺がMotherでどこがOthersなんだろうか、とか、こっちが考える隙も与えず、勢いのあるグラフィックが目に飛び込んでくる。
仲條正義のグラフィックは言葉にするのが難しい。説明もしにくい。
写真の右端のグラフィックを見て、ライター歴24年の私の頭に浮かんだ言葉は

「ポッポー!」。

これだけ。
本当にこれではライター失格なのだが、多分バカボンのパパなら「これでいいのだ」と言ってくれると思う。
そして地階は仲條正義がエディトリアルを手掛けた『花椿』のページが平台というか斜め台というかの台にがーっと並んでいる。
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なんでファッション誌に力士なの?とか、考えても分からない。

デザイン系のライターとしてはデザインを解読したり、説明したりすることが仕事であり、また自然とそう向き合うものなのだが、仲條正義の作品に対してはもうこっちとしてはそんな努力はしない。
出てきたものを受け入れるしかない。
見て、その迫力に圧倒されてしまうので、受け入れます!という姿勢になってしまう。

ブログ読者には悪いが、仲條正義の世界感は言葉に出来ないので、とにかく期間中にgggに足を運んで、圧倒されて来て、と言いたい。

中村至男と仲條正義の展覧会に共通するのは、意外性とそれを受け入れる喜び、だろうか。
今、私は美術系の大学の先生という仕事もしているので、きれいな文字組だとか、人に理解されるための構成とか、グラフィックのお作法を一生懸命教えている立場ではある。
だが、たまにこうした「お作法」からぐっと突き抜けて「先生」の予想の付かないものを見たくなる。ルール度外視(じゃない場合もあるけど)で、ただひたすら見ていて生理的に気持ち良いもの、考えなくても頭の中で楽しくなってしまうもの、そんなものがもっと見たい。

by dezagen | 2017-01-19 16:28 | 展覧会
print galleryの展示
編集宮後です。
2017年もよろしくお願いいたします。

年末に白金高輪のprint galleryで開催されている、イ・ギョンスによるタイポグラフィ展「迷い鳥たち:文字の練習」を見てきました。会場には、韓国ソウルを拠点に活動するデザイナー、イ・ギョンスさんの作品14点が展示されています。

イ・ギョンスさんは、弘益大学大学院でヘルムート・シュミットに タイポグラフィを学び、ハングルとアルファベットの融合、字間や余白について考える作品を制作されてきた方。今回の個展では、過去10年の仕事で、タイポグラフィ上の問題が生じた 細部を極端に拡大したポスターを展示しています。普段気にとめないような細部をあえて拡大して見せることによって、作品として成立させると同時に、見る人に問題提起をするという実験的な作品です。

こちらが展示風景。print galleryからお借りしました。
展示の詳細はこちらをご覧ください。

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print galleryは、海外のデザイナー、タイポグラファーのタイポグラフィ作品を積極的に紹介しているギャラリーです。最新のタイポグラフィ作品を直接見られる大変貴重な場所でもあります。日本で初めて紹介される作家も多く、いつも新鮮な作品が展示されているので、「どのように運営しているのだろう?」と思っていました。

ギャラリーを主催しているのは、デザイナーの阿部宏史さん。スイスのバーゼルでデザインとタイポグラフィを学び、2012年から白金1丁目(最寄り駅は白金高輪駅)のこちらの場所にギャラリーとご自身の事務所を構え、運営していらっしゃいます。ギャラリーを始めたきっかけは、ヘルムート・シュミットの「politypographien ポリティポグラフィーエン」を展示したいと考えたことから。東京でもギンザ・グラフィック・ギャラリーなどを除けばデザインやタイポグラフィ、アート作品ではない印刷物を専門に展示する場所もほとんどないことも、始めた理由の一つだそうです。

基本的には阿部さんがほぼお一人で企画から運営を担当。作家から返事がなかったり、諸般の事情で断念せざるを得なかったりすることも。海外とのやりとりは大変そうですが、メールやFAX、時には国際電話やスカイプなども使ってやりとりしているとか。

展示する作家と期間が決まったあとも、展示内容、説明文、作品の搬入搬出方法、保険、宣伝物の制作、告知など、決めなくてはならないことがたくさんあります。これらをほぼ阿部さんお一人で担当されているというから驚きです。

ギャラリーを運営していてよかったことをうかがうと、展示期間中、その作品に囲まれて過ごしていると段々とコンセプトや制作背景、作家が考えていることなどが身にしみてわかってくるような感覚があるのだそうです。あと、普段会わないような人に会えるのでこの点も良い点だとか。

現在の展示が終わったあとは、2017年3月中旬から、ヘルムート・シュミットの先生で現在92歳のクルト・ハウエルトの展示をするそうです。ほかにもいくつかの企画を進行中とのことなので、楽しみです。今後はテーマにそった企画展や日本人の作品も紹介していきたいとのこと。

年明けのオープンは、1月6日(金)から。展覧会詳細は以下になります。

「迷い鳥たち:文字の練習  イ・ギョンス」
会期:2016年12月17日(土) から 2017年1月29日(日)
         [12月30日から1月5日は冬期閉廊]
         土日祝 13:30 から 20:00
月金 15:00 から 20:00
         火水木 休み
場所:東京都港区白金1-8-6, 1F(最寄り駅は白金高輪駅)
展覧会詳細:
http://www.printgallerytokyo.com/ex-lee-kyeongsoo.html
by dezagen | 2017-01-04 23:20 | 展覧会 | Comments(0)
世界のブックデザイン2015-16
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編集宮後です。今年も世界のブックデザインの季節になりました。

今年は「世界のブックデザイン2015-16 feat.造本装幀コンクール50回記念展」というタイトルで、日本の造本装幀コンクールで過去50年に受賞した50作品が展示されていました。会場の中央に置かれた日本の作品を取り囲むように海外の受賞作が並びます。2016年3月に開催された「世界で最も美しい本コンクール」の入選図書13点に、6カ国(日本、ドイツ、オランダ、オーストリア、カナダ、中国)のコンクール入選図書を加えたおよそ180点が展示されていました。

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オランダとフランダース 金の活字賞
『Other Evidence Blindfold』(別の証拠:目隠し)
著者、発行:Titus Knegtel 

1995年にボスニア・ヘルツェゴビナで8000人以上が殺害された「スレプレニツァの虐殺」の記録集。国際司法裁判所に提出された客観的データとビジュアル(被害者の遺品など)が淡々とつづられています。青と緑の2色印刷でスタイリッシュにまとめられていますが、扱われている内容は非常に重く、事件の残虐性が控えめなデザインの中から浮かびあがってくるようです。

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オランダとフランダース 銀賞
『Brick, An Exacting Material』(レンガの魅力)
編著:Jan Peter Wingender  発行:Architecture & Natura, Amsterdam

オランダの建築でレンガがどのように使われているのかをまとめたハンドブック。建築関係者のための専門書なので、機能的に整理されたレイアウトが特徴的。左と右のページが左右非対称だったり、インデントが大きめに取られていたり、所々で細かい工夫が感じされる好著。

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中国
『上海字記 百年漢字設計檔案』
著者:姜慶共、劉瑞桜  発行:上海人民美術出版社

20世紀の100年間に上海で記録された古い看板やポスターをあつめた本。著者自ら装幀も担当。古い文字を見られる貴重な資料であると同時に、造本もこってました。著者が楽しみながら作っているのが伝わってくるような本。

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カナダ
『The Missing Novella』(失われた本)
著者:Jon Davies, Derek Sullivan 発行:Oakville Galleries

外側のカバーを開くと、中には何もありません。「失われた本」というタイトルが示す通り、外側だけあって、中身が丸ごとなくなっているというコンセプト。アイデア一発勝負の珍書です。

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オランダ
『Life is Strange』
著者:Rob Moorees   発行:nai010 publishers, Rotterdam

オランダ国立公文書館の写真コレクションを研究していたキュレーターが、そこで発見した劇的な事故や不思議な出来事の写真を集めた写真集。いわば「へんてこ写真」の寄せ集めでありますが、サブカル趣味にならず、奇妙で素晴らしいアートブックのよう。この手のテーマの本はやはりオランダが群を抜いていると感じました。

他にも気になった本はなぜか建築書が多め。レンガの本とか、去年あった堤防の本とか、テーマがマニアックな上、書体の使い方や組み方がうまく、印刷や加工などにも凝っているのがツボに刺さるのかもしれません。「日本では絶対に売れないだろうな」と思える珍書が海外で普通に出版されていることに驚きます。こうした本を見ていると、「世の中にはおかしな本があるもんだ」と安心してしまい、海の向こうから背中を押されているような、励まされているような不思議な気持ちになります。

展覧会は、来年3月5日まで。1回で見切れないので、何回か通うのがオススメです。

「世界のブックデザイン2015-16 feat.造本装幀コンクール50回記念展」
会 期:2016年12月3日(土)~2017年3月5日(日)
休館日:毎週月曜日(ただし2017年1月9日(月)は開館)、12月29日(木)~2017年1月3日(火)、1月10日(火)
開館時間:10:00~18:00
入場料:無料
http://www.printing-museum.org/exhibition/pp/161203/index.html
by dezagen | 2016-12-12 18:58 | 展覧会 | Comments(0)
太田泰友ブックアート展
編集宮後です。伊勢丹 新宿店 本館5階 アートギャラリーで開催されている「太田泰友ブックアート展」を見てきました。

太田さんは日本とドイツを行き来して制作するブックアーティスト(「ブックアーティスト」については、以前このブログでもご紹介したので、そちらをご覧ください)。

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以前制作した作品にくわえ、今回の個展のために新作(上の3つ写真の真ん中の写真参照)を発表。本の背を並べて額装したこの新作は、折ごとではなく、1ページずつ糸でかがっているそう。非常に手がこんでいて、ドイツでも珍しい製本方法なのだとか。

太田さんは近々、再びドイツに渡り、製本の勉強をしてくるそうです。ドイツでもアートとして本をつくる作家は少ないらしく、日本でこの分野が浸透するにはまだまだ時間がかかりそうですが、一歩ずつ着実に進んでいらっしゃる様子が印象的でした。

展示は11月22日(火)まで伊勢丹新宿店本館5Fで開催とのことです。
https://www.facebook.com/events/1699049790415469/
by dezagen | 2016-11-19 13:46 | 展覧会 | Comments(0)
『デザインの解剖展』
ライター渡部のほうです。

本日、10月14日(金)から21_21 DESIGN SITEで『デザインの解剖展』が始まる。

自分も部分的に参加している展覧会、というのはなんだか紹介が難しい。

展覧会ディレクターは佐藤卓氏。これまでもキシリトールガムや写ルンですなどを対象とし「「デザインの解剖」のテーマを10年以上続けている。
プレスプレビューでの、佐藤氏(左から2番目)と岡崎智弘氏(中央)。
岡崎氏は展示の企画製作を担当し、佐藤氏と話し合いながら、展示の内容、工夫、参加アーティストの選択などを行った。
中野豪雄氏(左)の作品「ウェブサイトの解析」の前で。

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そもそも「デザインの解剖」とは何か?
入口入ってすぐ、佐藤氏からのメッセージが分かりやすい。

「デザインの解剖」とは、
①身近なものを
②デザインの視点で
③外側から内側に向かって
④細かく分析することで
⑤ものを通して世界を見る
⑥プロジェクトです。

今回の展示で「解剖」されたのは、明治の誠品、
きのこの山、明治ブルガリアヨーグルト、明治ミルクチョコレート、明治エッセルスーパーカップ、明治おいしい牛乳、
5種。

分析する「外側」の最も外側は商品名、だと、佐藤氏は言う。実物がなくても、名前が人々に認識され、語られ存在する。視覚的にはロゴマークとなる。そこからさらに内側へ向かっていくと、外観、パッケージのグラフィック要素や素材、内容物。さらにそれらを解剖していくと、分子レベルまで達する。

こちらは巨大ミルクチョコレート。
分子レベルまでは見えないものの、大きなチョコレートを分析の目で眺める。
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分析のテキストは柱状のボードに。各商品に付き約50強、5商品すべてで合計約300の項目に分かれ、解説。

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これを全部読んでいると多分1日が終わる。
ので、各柱には、このように要約が。
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先に、この展覧会に自分も部分的に参加、と書いたが、この中の明治ブルガリアヨーグルトのテキストを担当した。
商品のテキスト担当はそれぞれ以下の通り
きのこの山 高橋美礼
ミルクチョコレート 杉江あこ
明治ミルクチョコレート 神吉弘邦
明治おいしい牛乳 廣川淳哉
総合編集 下川一哉、杉江あこ
総合要約 土田貴宏

テキストと図版をまとめた書籍は11月半ばに刊行予定なので、会場ではここでしか見れない立体作品や、アーティストの参加作品を中心に楽しんで欲しい。

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ブルガリアヨーグルトのグラフィック要素を一つ一つ分解し、立体化したもの。
テキストを書いている時は、正にこんな風にバラバラにしながら分析を進めて行ったので、展覧会のプレビューで初めてこの作品を見て感動。

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私が一番傑作だと思ったもの。
チョコレートとクラッカーで出来ているきのこの山、をしめじ、えのき、エリンギ、椎茸で作った場合。
エリンギは食べにくそう。シメジをボロボロこぼしながら食べてみたい!!
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アーティスト参加作品の中で、ついつい遊んでしまっていたもの。
明治おいしい牛乳の「ロゴタイプの拡張」アーティスト 下浜臨太郎氏。
「おいしい」の文字部分を他のひらがなで作ったパーツを積み上げ、自分の好きな言葉で「〜の牛乳」ができあがる。
強い主張をしないおだやかなタイポグラフィーだが、言葉を変えても「おいしい牛乳」感がある。タイポグラフィーの力を実感する作品。

取りあげているものが本当に身近なものだけに、(例えばデヴィッド・ボウイ大回顧展みたいな)華々しさはないけれど、身近にあるものがこんなに面白いのか、と思ってもらえると嬉しい。
って、極力客観的に書こうと思ったのだが、やはり主観的になってしまった。皆様是非。





by dezagen | 2016-10-14 08:57 | 展覧会
雑貨展
続けて編集宮後です。
21_21 DESIGN SIGHTで開催されている「雑貨展」を見てきました。

暮らしの中にある「雑貨」をテーマに、デザイナーやスタイリスト、店主など12組がキュレーションする雑貨と、参加作家19組による多彩な雑貨観を展示した展覧会。「雑貨」というのは、何が雑貨で何は雑貨ではないのか、選ぶ人それぞれによって解釈が異なりそうなテーマです。それだけに一つの展覧会としてまとめるのは難しいと思いますが、見事に雑貨的な、「全部乗せ」の楽しさを表現したような展覧会になっていました。

参加作家が21組、出展者が12組。作家枠の方は、雑貨をテーマにした作品を制作して展示し、出展者枠の方は、ご自身が「雑貨的」と思うものを編集して展示しているという解釈でいいのでしょうか。以下の参加者クレジットだけでも相当な人数に及びます。

[参加作家]
青田真也、池田秀紀/伊藤菜衣子(暮らしかた冒険家)、WE MAKE CARPETS、川原真由美、国松 遥(Jamo Associates)、小島準矢(Superposition Inc.)、島本 塁/玄 宇民(CGM)、清水久和(S&O DESIGN)、シンプル組合&RONDADE、菅 俊一、D&DEPARTMENT、寺山紀彦(studio note)、野本哲平、萩原俊矢、藤城成貴、町田 忍、松野屋、三宅瑠人、フィリップ・ワイズベッカー

[出展者]
井出恭子(YAECA)、岡尾美代子、小林和人(Roundabout, OUTBOUND)、小林 恭・マナ(設計事務所ima)、たかはしよしこ(S/S/A/W)、平林奈緒美、ルーカス B.B.(PAPERSKY)、PUEBCO INC.、保里正人・享子(CINQ, SAML.WALTZ)、松場登美(群言堂)、南 貴之(alpha.co.ltd)、森岡督行(森岡書店)

[展覧会チーム]
展覧会ディレクター:深澤直人企画:井出幸亮/テキスト
熊谷彰博/コンセプトリサーチ
中安秀夫/コンテンツリサーチ
橋詰 宗/展示グラフィック会場構成デザイン:荒井心平(NAOTO FUKASAWA DESIGN)会場構成協力:五十嵐瑠衣ショップ監修:山田 遊(method)展覧会グラフィック:葛西 薫企画構成:前村達也(21_21 DESIGN SIGHT)


出展者ゾーンの会場写真はこちら。全部見せるとネタバレになるので、一部だけ。

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雑貨展の雑貨/展覧会企画チーム



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森岡督行さん(森岡書店)



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小林和人さん(Roundabout, OUTBOUND)



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平林奈緒美さん



展覧会全体で33組が出展しているので、バラエティ豊かな展示になることはおおよそ想像がつくのですが、それをどうまとめて一つの展覧会にするかというのは非常に編集的だと思いました。それぞれの作家が自由に表現しているように見えて、実は「誰に出展してもらうのか?」を決める時点で展覧会の着地点が決まっているのではないかと。

出展者を決めた時点で展覧会全体の内容が決まるというのは、取材先を決めた時点で雑誌全体の方向性が決まる雑誌編集の仕事にも似ていると思いました。だからこそ、雑誌やウェブサイトの編集をしている方々にもぜひ見ていただきたい展覧会なのです。

展示は、六本木の21_21 DESIGN SIGHTにて6月5日まで開催。
http://www.2121designsight.jp/program/zakka/index.html
by dezagen | 2016-05-08 22:53 | 展覧会 | Comments(0)
全国カレンダー展&全国カタログ展
編集宮後です。
1月13日から17日まで、ゲートシティ大崎で開催されていた「全国カレンダー展」「全国カタログ展」を見てきました。読んで字のごとく、企業や団体のカレンダーとカタログの中から優れた作品に与えられる賞で、印刷団体「日本印刷産業連合会」の主催で毎年開催されています。

カレンダー展は、第一部門(一般企業カレンダー。おもに配布用)、第二部門(販促カレンダー。企業が販促のために配布、販売するもの)、第三部門(出版されている販売用カレンダ−)、カタログ展は、第一部門(展覧会などの図録)、第二部門(商品カタログ、通販カタログ、企業案内、学校案内、PR誌、各種報告書など)に分かれ、部門ごとに受賞作品の現物が展示されます。普段あまり目にしない印刷物が見られるので、毎年楽しみにしています。

ゲートシティ大崎での展示風景。
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入選作はこちらにまとめてアップされています(画像なし、受賞タイトルのみ。PDF注意)

第67回全国カレンダー展の入選作
http://www.jfpi.or.jp/topics_images/tpc243_359.pdf

第57回全国カタログ展の入選作
http://www.jfpi.or.jp/topics_images/tpc239_353.pdf

私が興味あるのはカタログ展のほう。受賞した美術展の図録などがまとめて見られるので、テンションがあがります。今年も山田写真製版所の仕事が目立ちました。昨年受賞した『しかけ絵本の世界』も山田写真さんのお仕事。

会場では受賞作品をまとめた小冊子が置かれていました。ウェブでもPDFで公開していただけると、展示を見に行けない方もうれしいのでは?と思いましたが、関係者の皆様いかがでしょう? 展示は終了しましたが、毎年1月に表彰式と展覧会があるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
by dezagen | 2016-01-20 07:52 | 展覧会 | Comments(0)
世界のブックデザイン 2014-15[後編]
前編からの続きです。

私がひそかに珍本多発国と呼んでいるオランダから印象に残った本をご紹介。

都会で傷ついた鳥たちを手厚く処置し、再び自然に帰す保護施設に運び込まれた鳥を撮影した写真集。「なぜ、けがした鳥を撮影?」と思ったら、この施設でボランティアをしている写真家が撮影したのだとか。青い手袋をした保護員にかかえられた鳥が表紙。まさに治療中という感じのリアルな印象と、写真集としてのアート性がまざりあう不思議な本。

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『Vogels huilen niet klein --vogelled in de grote stad--』(鳥は啼かない 都会での鳥の苦しみ)
オランダ


タイトルどおり、オランダの堤防の写真をまとめた本。延々と堤防ばかり出てきます。おそらくオランダの土木建築関係者向けにつくられた専門書だと思うので、資料的価値の高い本ですが、門外漢から見るとかなりシュール。

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『Dutch Dikes / Dijken van Nederland』(オランダの堤防)
オランダ


こちらは中国の受賞作品。
毎年、「これでもか」というインパクトのある造本が多かったのですが、
落ち着いた感じの装幀が多かったのが意外でした。
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いろいろな職人の仕事を紹介した本。この本自体の造本もおもしろいのですが、華美な感じではなく、おちついたいいかんじに仕上がっています。

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『黟県百工』
中国


音楽家ルー・リードに関する文章の本。ぱっと見、ルー・リードの本って全然わからないくらい地味ですが、よくみると表紙に文字のエンボスが施されていたり、細かい配慮が感じされる本。


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『pass thru Fire』(パス スルー ファイア)
中国 


上海のブックデザイナーの作品を集めた本。表紙のタイトル文字(漢字)の横画を型抜きして、読ませることと、視覚的効果の両方を成立させています。

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『上海書籍設計師作品集』


最後に日本の造本装幀コンクールの受賞作から。

武蔵野美術大学 美術館・図書館のデジタルアーカイブをまとめた書籍。全5巻を1冊にまとめて、手製本した特装本だそう。

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『博物図譜とデジタルアーカイブ特装本』
日本 文部科学大臣賞、日本印刷産業連合会会長賞


まだまだ紹介したい本はありますが、現物をじかに見ていただければと思います。
展覧会情報はこちら。来年2月末までの開催です。

日時:2015年12月5日(土)~2016年2月28日(日) 月曜日休館
場所:印刷博物館(東京都文京区水道1丁目3番3号 トッパン小石川ビル)
http://www.printing-museum.org/exhibition/pp/151205/index.html

関連イベント:
トークショー「2015年造本装幀コンクール受賞者「受賞作」を語る」
2016年1月30日(土) 15:00~17:00

美篶堂による製本ワークショップ
2016年2月7日(日)10:10~12:40 中級「フランス装」
14:00~17:00 中級「B6各背上製ノート」


過去に書いた記事のリンクはこちら。

世界のブックデザイン2012-13
世界のブックデザイン2012-2013[続き]
世界のブックデザイン2011-12
世界のブックデザイン2010-11展
世界のブックデザイン2009-10
世界のブックデザイン2008-2009展[前編]
世界のブックデザイン2008-2009展[後編]
by dezagen | 2015-12-11 07:14 | 展覧会 | Comments(2)