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カテゴリ:展覧会( 256 )
紙活字 日めくりカレンダー展
編集宮後です。
紙活字®をつくっているPaper Parade Printingさんの企画で、10月下旬の週末にBook&Designでイベントを行いました。

紙活字は、文字どおり、紙でできた活字。木活字に近いのですが、紙でできているので、活字の表面をけずってテクスチャーをつけられ、誰もが気軽に活版印刷を楽しめるのが特徴です。
http://papertype.jp/
https://www.makuake.com/project/paperparadeprinting/

紙活字の考案者、和田由利子さんに初めて取材したのは、2011〜12年のあたり。個展の会場で実物を見せていただきました。その後、文字のデザインが調整されたり、クラウドファンディングで卓上の紙活字の活版印刷キットがつくられたりと徐々に進化していく様子を拝見していました。

和田さんが守田篤史さんと一緒にPaper Parade Printingとして活動をはじめ、365日の日めくりカレンダーを制作したと聞いて、展示のお手伝いをすることに。本とデザインのスペース、Book&Designで展示、トークイベント、ワークショップのイベントを行うことになりました。

詳細はこちら。
http://book-design.jp/events/130/

10月21日(土)のトークイベントでは、日めくりカレンダーの印刷加工のお話を中心にお話していただきました。限られた予算の中で、表現したいことをどのように実現したのか?、繊細な諧調を印刷でどう再現したのか?など、興味深いお話が。特に、Photoshop上でスクリーン線数を調節し、コンビニのカラーコピー機で校正を出力する技は新鮮でした。そのほか、オンデマンド印刷機の丁合機能を使って印刷する技やページの開きをよくするための製本の仕方など、知らない技法をたくさんうかがいました。

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10月21日のトークイベントの様子。Paper Parade Printingのお二人、篠原紙工の篠原慶丞社長のトークセッション。トーク終了後、活発な質問や意見交換があり、多いに盛り上がりました。印刷加工のお話が中心だったので、次回はぜひ文字デザインのお話をうかがってみたいです。

また、28日(土)に開催された紙活字ワークショップでは、デザイナーさんや美術大学の学生さんなど、7名の方に参加していただきました。Paper Parade Printingのお二人が講師になり、「Book』の文字で印刷。ワークショップに参加した方々は、紙活字の表面を傷つけてテクスチャーをつけたり、ランダムに並べたり、思い思いのデザインを楽しまれていたようです。まわりの方のアイデアに触発されたり、お互いの紙活字を交換して作品をつくったりできるのがワークショップのおもしろいところですね。

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ワークショップの様子。全員がデザイン関係者だったためか、紙活字を斜めにカットしてずらして印刷したり、他の人の紙活字を借りたり、斬新なアイデアの作品が多かったです。

22日と29日の日曜日は展示デー。日めくりカレンダーの原画や途中過程の色校や試作が展示され、作者のお二人も在廊されていました。

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1日ずつ印刷された日めくりカレンダー。御徒町の家具店WOODWORKでは額装された製品も販売していました。

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右上は、卓上の紙活字の印刷キット。このキット用に開発されたインキもついていて、自宅で紙活字の印刷が楽しめます。展示会場でも販売しました。

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壁面に貼られた校正紙。紙活字を活版印刷した原画をスキャンし、Photoshop上でスクリーン線数を何パターンか変えてデータを制作。コンビニのコピー機でテスト出力し、本番の印刷に適したスクリーン線数を検討。線数を決めてから、オンデマンド印刷機で印刷し、篠原紙工で製本。中央のテーブルには製本の試作が並んでいます。

今回のイベントは Paper Parade Printingの企画で、台東区浅草のBoo&Designのほか、蔵前のWOODWORK、墨田区のMoi Coffee、東向島珈琲店の4カ所で開催。Book&Designでの展示期間は台風が近づく中の開催でしたが、雨のなか、足を運んでくださった皆様、ありがとうございました。

製品に関するお問い合わせはこちらまで。
http://papertype.jp/

by dezagen | 2017-10-29 22:28 | 展覧会 | Comments(0)
台湾で田部井美奈個展「PANTIE and OTHERS つまんでひらいて」を見る
ライター渡部のほうです。

現在、台湾中部の都市、台中のギャラリー綠光+marute (uは上に‥のウムラウト)にて、グラフィックデザイナー田部井美奈氏の個展「PANTIE and OTHERS つまんでひらいて」が開かれている。

田部井美奈氏のウェブサイト

ギャラリー綠光+marute 

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こちらはDM。少し版ズレさせてレトロな感覚もあるいい感じの味わい。

そもそもこの綠光+marute、どういう場所なのかというと、香川県高松市の書店 BOOKMARUTE  http://book-marute.com を営み、イベントを行っている小笠原哲也氏と、台中で古い建築の再生プロジェクトを行っている木村一心氏 https://www.isshin-taiwan.com により運営されているギャラリー。これまでも数多くの日本人アーティスト(写真家、イラストレーター、デザイナーなど含む)を紹介してきている。

小笠原氏が運営に関わるせとうちアートブックフェアに田部井氏が出展したことをきっかけに、この個展の企画に繋がったのだという。
テーマになっている「PANTIE and OTHERS」のPANTIEは、アートブックフェアで出展した際に作ったzineの名前。その他の作品も、という意味で「PANTIE and OTHERS つまんでひらいて」なのだが、ちょっとどきっとする展覧会名だ。

こちらが古い家を改造したギャラリーの外観。
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ちょうどオープニングのトークが始まったところ。ギャラリーの外にまで来場者が溢れている。
むしろ来場者に「どうして来たの?」「どうやって知ったの?」など聞いてみたかったが、来場者があまりにも熱心に田部井氏の話を聞いていて、そんなことを聞ける雰囲気ではなかった。いずれ、台湾における日本のデザインの受容性について調べてみたいとも思う。

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中に入ったところ。
展示の様子はこんな感じ。
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大判で出した写真は、田部井氏の事務所で撮影したもの。過去の仕事、作品など、
「すべては持って来れないので、お部屋をそのまま持ってきたような感じで見てもらえばと思い、写真を使っています」と田部井氏。
紙の質感や手触り感を伝えるため、左側はいくつか拡大した作品の写真を飾っている。

こちら(下)は別のお部屋。
「直線や円など、定規で書いたような線でどんな表情が作れるか、試している」とのこと。
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田部井氏のデザインは、ブックデザインやポスター、ロゴなどでは、対象物のイメージをさらっと仕上げているように見える。だが、そこで使われる、パターンや色はこうした自由作品を作りながら積み重ねているものなのだと感じた。

PANTIE他、今回の個展に合わせて作った作品やポストカードにもなるポスターなど印刷物も気になるところ。
最初の写真のDMは東京用のものをgraphicで、台湾で配布するものをレトロ印刷の台湾支店で刷ったもの。
作品集(写真下の2枚)はサンエムカラー。
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切り取るとポストカードにもなるポスター(下)は、PAPIE LABO.
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展示用ポスターと写真の出力はショウエイによるもの。
紙モノそれぞれの印刷の表情が異なっているのも楽しかった。
(写真上から5〜9枚目は田部井美奈氏提供。1〜4枚目は渡部撮影)

展示は11月6日まで。この時期、台中に行く機会のある方は是非(同、ギャラリーでユトレヒト http://utrecht.jp の出張販売もあり。また周辺エリアも新旧入り交じる面白いエリアなのでお奨め)。
木曜日から月曜日までの、14:00〜19:00
火曜日と水曜日はお休みなのでお気を付け下さい。


by dezagen | 2017-10-24 14:30 | 展覧会
TAKAIYAMA inc. EXHIBITION 3F/B.C.G 渡部篇
ライター渡部のほうです。

ブログ相方、宮後さんがすでにレポート 
http://blog.excite.co.jp/dezagen/27124562/ をしていますが、追加でワタクシも。

DESIGN小石川での「TAKAIYAMA inc. EXHIBITION 3F/B.C.G」を見て来ました。

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14本の柱+壁面でテーマ毎に展示。
後ろの B.C.G=僕の C.G、の力強い事。1つの作品+9枚はその作品をの拡大、トリミングしたもの。1つの作品も全体像だけを見ているわけではないし、むしろ制作側にしてみると全体像が見える時間は結構少なくて、ディテールを延々見ている時間のほうが長い。制作の視点で見れる作品群。

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こちらはロゴのコーナー。こんなに沢山やってたのかと驚く。こんなにバリエーションが作れるのかと驚く。
なんでこんなに作れるのー?という疑問は、展示に行くともらえるリーフレットの、江口宏志さんの解説文「フロム風呂」に正に解説的な事が書いてあって、そうだったんだ、と、まあ、色々驚く。
(フロム風呂、が読みたい人は、多分他の場所では読めないので、展覧会に行ってもらって下さい。無料ですから。会期も9日まで延長されましたから)

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サイン計画を紹介するコーナーなのだが、なぜか不動産物件風な紹介。

私も宮後さんと同じく、山野英之さんとは2004年の『これ、誰がデザインしたの?』ブックデザイン以来のお付き合い。ということは13年くらい知ってることになるのだが、未だに全然分からないことが沢山ある。

山野さんは器用なのか不器用(だからすごい考える)のか。
恥ずかしがり屋なのか図々しいのか。
他もろもろ。
多分、センサー感度が高くて感性/感受性が高い、のは当たってると思う。
でも普通考えるところの「感性が高い」という言葉から連想される、おしゃれ(っぽ)さとは違うところにも着地するのが、不思議と言えば不思議。

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「インスピレーション」と題された、事務所に転がっている変なもののコーナー。
解説曰く「いくらコンセプトやアイデアを詰めても、変なモノのパワーには勝てない」。
なるほど。
なんとなく1つの謎は解けた。ような気がする。


by dezagen | 2017-10-03 14:11 | 展覧会
高田唯展「遊泳グラフィック」
ライター渡部のほうです。

現在、クリエーションギャラリー G8で高田唯展「遊泳グラフィック」が行われている。(高田唯の高は「はしごだか」。以下、「高」を使います)

G8の3つのスペースを
・Allright の部屋
・ゼミの部屋
・三角の部屋
と分け、それぞれの活動を展示。

すいません。気がついたら全然全景を撮ってきませんでした。

高田唯氏は、東京造形大学での同僚なので一応毎週顔を見てるのだけれど、大学にいる時はバタバタしていて、個人のプロジェクトの話やそれぞれの教員が担当するゼミの内容なども話す機会があまりない、というのが実情。
先月の青山見本帖での展示 http://blog.excite.co.jp/dezagen/27111749/ も合わせて、高田氏のデザイナーとしての仕事が見れるいい機会だった。
とはいえ、この展示もオープニングをミスってしまったこともあり、個々の作品コンセプトや高田氏のグラフィックへの考え方などはほぼ推測。

Allright の部屋。
2006年に始まった、グラフィックデザイン事務所 Allright Graphics から、活版印刷部門 Allright Printing、さらに音楽部門(え!?)Allright Music まで。

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東京ステーションギャラリーのジョルジョ・モランディ展と、確かデザインタイドに出ていた seeds のステーショナリーが並列で並んでいるところが素晴らしい。

高田氏の作品は、クライアントも大手からとても小さなグループ・個人まで、スタイルもストイックに活版と向き合ってるものから、混沌としているものまで、幅が広い。
展覧会のタイトルが「遊泳グラフィック」なだけに、まだまだ遊泳中、挑戦中、実験中なところもあるのだろうが、それぞれのクライアント+それを見る人に向けたグラフィックに収めつつ、少しの「ひっかかり」を残しているのが高田氏のスタイルのように思う。ただ気持ちよく馴染みすぎて見過ごしにならない、むしろ少しの違和感が後で記憶に残る。

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一緒に仕事させてもらった、東京造形大学の彫刻専攻紹介冊子(2段目、左端と真ん中)。
隠れエピソードとしては、2014年(2段目の左端)は舟越桂先生の既存の作品写真を使ったのだけれど、2015年はカバー写真の候補がなかなか決まらなかった。20分という短い間に先生方がどれだけ作れるかというかなりチャレンジャーな企画「塑造デモンストレーション」(参照 東京造形大学彫刻4年選抜展'15「塑造デモンストレーション」前方カメラ https://youtu.be/WKU8SPoKORA )で作られた塑像が大学のアトリウムに飾られていて(というか、置かれていて)、何もない背景だっただけに作品途中の勢いがぐっと伝わるいい感じだったのを、高田氏が「これいいかも」と両手で画角を作って枠組みを決め、さくっと決めたもの。
直感的に決められるこの人すごいな、と思った瞬間。

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JAGDA年鑑のラフ。こういう完成形前の仕事が見れるのは嬉しい。コピーの切り貼りでかなりアナログな作業だと気付かされる。

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ポストイットに書いてあるエピソード(笑)。

ゼミの部屋。
東京造形大学での高田ゼミ作品群。高田ゼミは普段気に留めないような、もしくは既存の美術教育の中で「グラフィックデザイン」と意識しないような、視覚への気づきをテーマとしている。

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紙パックの飲料の底を模写したもの。
通常は見えないところ。グラフィックデザイン/パッケージとして意識されているわけではない。完成品に印刷の色指定が見れる希有な場所でもある。

三角の部屋
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高田唯氏が延々と手がけている三角のグラフィック習作が G8の奥の小部屋にぎっしり貼ってある。
部活の壁打ちとかパス練習とかを思い出す。延々と同じ事を繰り返して、1つのフォームを完成させる練習なのだけれど、繰り返していくうちに、いつどこに変化球を入れると、相手がどう反応するか分かってくる。変化球の練習をしていても見つけられなくて、無心にやってると「あ」と気がつく行程。

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紙の端が焼けてる。意図した味わいなのか、経年なのか、今度会ったら聞いてみよう。

私が行った時は、台湾(多分)の若者が5人ほど熱心に見ていた。かなり親日な台湾のグラフィック界だけれど、高田氏のデザインは台湾でどう見られているのか(すごい人気なのかも)気になった。

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会期は10月19日(木)まで。
開館時間:11:00a.m.-7:00p.m. 日曜・祝日休館 入場無料
です。

Allight graphicsのHP

by dezagen | 2017-10-03 06:36 | 展覧会
Can Graphic Design Save Your Life? 展覧会
ライター渡部のほうです。

現在、ロンドン滞在中。
まずは気になっていた展覧会『Can Graphic Design Save Your Life?』へ。https://wellcomecollection.org/graphicdesign

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文字通り、グラフィックデザインは命を救う事が出来るのだろうか?をテーマにしたもの。


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  1. Provocation (挑発)のコーナーよりマラリヤを媒介する蚊が髑髏の顔になっているポスター。1941年 © Estate of Abram Games

展示は6つのコーナーに分かれている。
1)Persuasion(説得) 
 煙草を例に、いかに喫煙が健康を損ねるか、アニメーションやパッケージ、切手、ポスターなど(JTのマナー広告含む)。
2)Education (教育)
 人体の仕組みの説明、病気の説明など、書籍やアプリなどを紹介。いわゆる「保健体育」的な教育ではなく、知識の伝達方法。
3)Hospitalisation(入院治療)
 病院でのサイン計画(原研哉氏が手掛けた梅田病院含む)、タイポグラフィー、北米で使われている患者とのコミュニケーションを促すピクトグラムを使ったコミュカード、ディック・ブルーナの絵本など。
4)Medication (薬)
 薬のパッケージデザインや、製薬メーカーの機関誌など。
5)Contagion (伝染病)
 マラリア、AIDS/HIV、エボラ熱、ジカ熱まで、正しい知識を促すポスター、パンフレット類。
6)Provocation (挑発)
 がんや心臓病、摂食障害、アルツハイマーについての正しい知識を促すキャンペーン、自殺防止のホットラインなどのポスター、パンフレット、Tシャツグラフィックなど。

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Hospitalisation(入院治療)のセクションより。Illustration Dick Bruna © copyright Mercis bv, 1986

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Persuasion(説得)のコーナーより禁煙を促す切手類。various countries around the world

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Persuasion(説得)のコーナーより。Biman Mullick, Cleanair


 面白いのは、この展示会場のWellcome Collectionという施設は、デザイン専門の会場ではなく、医療や健康をテーマにした文化総合施設であること。展示も入場無料なので誰でもが入れる。
 企画は GraphicDesign& http://www.graphicdesignand.com という出版社も兼ねるデザインのプロによるものだが、医療、健康の場にいる人々など、より一般の目線に近いところから見たグラフィックデザインの可能性を探っている。
 会場を訪れる人々もカフェを利用したついでに見てみた、という感じの人も多く、それを意識してか、内容も分かりやすく、デザイン業界だけに閉じた展示ではなかったところはとても良かった。
 日本でもこうした、デザインや美術の専門でない場所で見れる企画がもっとあっても良いのではないだろうか。例が思いつかないけれど、例えば医大や大型病院の一角、あるいは小さいスケールでドラッグストアの中で個展、というのも有効かもしれない。

 展示に合わせて出版された同名の書籍では、参加デザイナーらに「グラフィックデザインは命を救う事が出来るのだろうか?」を聞いた回答が掲載されている。「YES」の答えが多い中で、オランダのアルツハイマー基金のロゴなどを手掛けたスタジオダンバーの答えは「NO」。「命を救うのは医者である。(中略)グラフィックデザインは相互理解を促す手段だ」と言う。
 
 グラフィックデザインの役割は大きいが、命を救う、というところまでは行かないのかもしれない。ただ、ポスターによって、メディアによって、健康管理アプリによって、知識を得て、未然に防いだり、周囲の理解を促すことは可能だ。

 欲を言えば模範的なグラフィックばかりではなく、効果のない(効果の出なかった)グラフィックとの比較もあればさらに理解しやすかったのではないかと思う。 
 常々、日本の麻薬防止ポスター「ダメ、絶対」のシリーズは影響力がないと考えている。最近はアイドルでもなくイラストレーションの女の子を使っているのを見て、もう全く訴求力はない、と感じた。
 麻薬が「ダメ」なものであることは誰でもが知っている。むしろ、なぜそれを必要とするようになるのか、一度依存するとどうなるのか、なぜやめられないのか、Contagion (伝染病)とProvocation (挑発)のコーナーではその点秀逸な作品が揃っており、「なぜ」を人々に理解してもらうことが必要なのだと感じた。


by dezagen | 2017-09-21 14:36 | 展覧会
TAKAIYAMA inc. EXHIBITION「3F/B.C.G」
編集宮後です。
デザイナー、山野英之さんの事務所 TAKAIYAMA inc. の展覧会「3F/B.C.G」に行ってきました。タイトルになっている「3F」はTAKAIYAMA inc.のアプローチの法則であるFocus/Frame/Function(焦点、枠組、機能)、「B.C.G」(僕のCG)は山野さんのプライベートワーク名だそう。

展示ではこれまでの仕事を、フォーカス、フレームとグリッド、機能と構造、印刷、本、ロゴ、サイン、写真、動画、プロジェクトの10カテゴリーに分けて紹介。山野さんのプライベートワーク「B.C.G」の新作も展示されていました。会場はデザイン小石川、会場構成はDaisuke Motogi Architecture。山野さんの考え方やアプローチがまるっとわかる展示です。

こちらが会場写真。かなり広い空間ですが、14本の柱を中心にカテゴリー分けされており、1つずつ見ていくとかなり見応えがあります。小さな名刺から巨大なサイン計画、映像作品まで、様々なサイズや時間軸の仕事が一緒に並んでいて、山野さんのお仕事の幅広さを感じました。

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山野さんとは、2004年に『これ、誰がデザインしたの?』のブックデザインをお願いしてからのお付き合い。今は、文字デザイン誌『Typography』のデザインでお世話になっています。柱に貼ってある下2枚のレイアウトは『Typography』の誌面。かなり細かくグリッドが切られているのがわかると思います。印刷物で見ると、画像をポンと配置したように見えますが、レイアウトデータを開くと、このように緻密に計算されているのがわかるのです。

表面的には「センスがいい人が作った感じのいいグラフィック」に見えるのですが、その裏でかなりいろいろ考えられているのがTAKAIYAMAのデザインかなと思います。きれいなグラフィックで終わらず、ちゃんと機能しているんですね。建築家とのサイン計画の仕事が多いのも、感覚的ではなく、空間の中でグラフィックがどのように機能するかを考える構造的なアプローチをしているからなのではないでしょうか。

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こちらは、山野さん個人の作品「B.C.G」の展示。一番右がIllustratorで描いた元の絵で、その部分を切り取った作品が左側に並んでいます。Illustratorのデータを拡大しても画素が粗くならず、どこまでも均質に拡大されていく様子を作品にしたもの。一見、きれいな色の抽象画に見えますが、「スケールとは何か?」を再考させられる作品だと思いました。

こうして見ていくと、感覚的な部分と構造的な部分との振れ幅がかなり広いことに気づくかと思います。どちらかに秀でたデザイナーは多いのですが、両方をハイレベルにこなせる人は案外少ないのです。その振れ幅を楽しんでいただくためにも、じっくりと時間をかけて展覧会をご覧になることをお勧めします。

展覧会は、10月1日(日)までデザイン小石川で開催。
文京区小石川2-5-7 佐佐木ビルB棟2F
http://designkoishikawa.com/exhibition/383/
http://takaiyama.jp/news-post/exhibition-bcg/


by dezagen | 2017-09-20 08:11 | 展覧会 | Comments(0)
髙田唯 日刊トリミング速報
ライター渡部のほうです。

現在、青山見本帖で高田唯氏の展覧会「AOYAMA CREATORS STOCK 09 髙田唯 日刊トリミング速報」が行われている。

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と、この写真ではなんだか分からないと思うのだが、このショーケースの中、
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このように、スポーツ新聞からの切り抜き(20×28mm。おおよそポスターやチラシの規格サイズと同じ比率(1:√2))が約1200枚(!)並べられている、というもの。
また、スポーツ新聞の切り抜きからインスピレーションを得たポスター作品10枚を展示。こちらの使用紙は新聞紙をイメージした紙「タブロ」。

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元の素材となっているスポーツ新聞は、エディトリアルデザインの観点からすると「きれい」や「上手」とは評されないものである。
むしろ、デザイン=設計などされていないような雑多な世界だ。
スポーツから芸能、エロまで、もろもろな情報を、1日という考える時間もないようなスピードで、一定の紙面サイズに詰め込むのだから、そこにデザインのお作法としての美的完成度までを求めるほうが無理と言うものだろう。

とはいえ、デザインのお作法に沿った美的完成度だけが視覚の楽しみではない。
変な話、ある程度「きれいなデザインとはこういうものである」という指南ができている現在、きれいなデザインを作るのは難しいことではないし、世の中に溢れている。
その作法から外れたものを見つけるほうが難しいくらいだ。

この展示は、高田唯氏が東京造形大学の高田ゼミで行われている「いつもと違う視点・角度・解釈などをテーマに」という作業がベースになっている。きれいに作る、分かりやすく作る、などのルールから外れたところにある面白さを、スポーツ新聞、さらにそのトリミング、から発見していこうという試みだ。
ショーケースの中に入ったグラフィックの断片は、理解できない形となって現れ、理解できないがゆえに面白味を発揮している。

東京造形大学ということは、すなわち、高田唯氏は私の同僚であるわけなのだが、高田唯氏の下で勉強できる学生は幸せだな、と常々思う(渡部ゼミも幸せですよ、言っとくけど!)。

展覧会は9月29日(金)まで。
11:00-19:00 土日祝/休
青山見本帖
東京都渋谷区渋谷4-2-5 プレイス青山1F 
TEL:03-3409-8931
です。是非!

by dezagen | 2017-09-13 08:38 | 展覧会
mt lab. で「紙展」が始まりました
編集宮後です。
全然ブログを書いてなくって、すみません。

以前、渡部さんがレポートしてくれたマスキングテープmtの路面店「mt lab.」で、
6月14日から新しい展示「紙展」が始まりました。

前回の展示は粘着がテーマでしたが、今度のテーマは紙。
mt製品に使われている、さまざまな原紙が展示されています。

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原紙といっても、通常のマスキングテープに使われている紙から
インテリアで使われるmt CASAの紙、壁紙の紙など、さまざま。
実際の製品に使われている原紙がロール状に展示されており、
素材感を触って確かめることができるようになっています。

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ロール紙のとなりには、インキやセラックを1度塗り、2度塗りした
比較サンプルも展示されており、製品になる前の様子を知ることができます。
それぞれに詳しい解説があって、さながらミニ博物館のよう。

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通常のマスキングテープの製品には粘着剤がついていますが、
今回は糊がついていない状態の原紙も特別に販売されているとのこと。
紙展期間中のみの限定販売だそうです。

店舗は完全予約制のため、「行ってみたい!」という方は
下記サイトで次回申し込み受付が開始されるのをチェックしてみてください。

http://www.masking-tape.jp/event/2017/07/mt-lab-61727.html

by dezagen | 2017-07-24 08:30 | 展覧会 | Comments(0)
渡邉良重さんの展覧会
現在、アートディレクター/グラフィックデザイナーの渡邉良重さん(以下敬称略)の作品展示が2か所で行われている。

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クリエイションギャラリーG8
第19回亀倉雄策賞受賞記念 渡邉良重展 「絵をつくること」

OFS gallery (OUR FAVOURITE SHOP内)
渡邉良重原画展

まずはG8へ。
大きく3つに別れている会場の構成は、各展示者の意図の出るところでもある。
今回は、まず受賞作の洋菓子ブランド「AUDREY(オードリー)」のパッケージデザイン、次の部屋では「D-BROS」、洋服のブランドCACUMA のプロダクトや、イラストを提供している絵本作品、最後の奥の小部屋では刺繍作品と KIKOF の陶器が並んでいる。

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1番目の部屋。苺とチョコレートをメインにする洋菓子ブランド「AUDREY」のパッケージがまるでショウルームのような真面目さでずらりと並べられている。写真には映っていないが、壁とガラス面にはメインビジュアルとなるイラストレーションが大きく描かれている。


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2番目の部屋では、作家性の出やすいプロダクト。作品のほとんどはアクリルケース越しに見る仕組み。

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最後の小部屋。ここはもともとがドアが小さくスペースも狭いので、なんとなく秘密の小部屋っぽい。刺繍、焼き物という作家性も職人の手業も感じる濃密な世界となっている。
3部屋共通で、蛍光ピンクの梁が使われているのだけれど、最後の部屋ではこの梁が作品と見る者を区切る柵の役割をし、危ういくらいのバランスで KIKOF の陶製品が置かれ緊張を感じさせる。

一番最初のスペースから奥へ向かうほど、作家性、表現性が高くなるという仕組みだ。展示を見終えて、逆走すると、奥の部屋にあった作家性の根幹から徐々に、デザイン=複製、量産品としての一般性を増していく。

ふと見ると、最初の「AUDREY(オードリー)」のスペースの床に苺が置かれていた。
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入った時はストレートに製品が並んでいる堂々とした展示という印象だったのが、このほんの少しのアクセントによって、これは製品のショウルームではなく、やはり渡邉良重の世界を表現する展示だったのだ、と気付く。

展示、2つ目。
OUR FAVOURITE SHOP の OFS gallery で行われている「渡邉良重原画展」では絵本や D-BROS の製品で使われたイラストの原画を展示している
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今考えるときちんと原画と製品になったものを個々に写真を撮りメモしておけばよかったと思うのだが展示会場となっている OUR FAVOURITE SHOP の雰囲気もあってかその絵一つ一つに集中するというよりはただ絵を見ているのが楽しいとふわーっと見続けてしまった
ライターの仕事として見るよりは、渡邉良重の絵の世界に入っていきたい気持ちが勝ってしまったのかもしれない。それだけ強く、深い力のある作品が揃う。

驚いたのは、同時に展示されていた製品化された絵本やガラス製品と原画のテクスチャーがほとんど変わらないことだった。薄い紙にエンボス加工されたり、紙媒体からガラスへと素材を変えたりしても、手描き独自のタッチが残っている。
D-BROS などの製品は作る度印刷所や加工所を回って何度も試作を重ねてやっとできたという制作背景がある過去取材で何度か話を聞いてきた事だったが緻密で繊細な絵をよくここまで再現できたものだと改めて感じてしまった

G8でも OFS gallery でも 来場者の多くが若い女性で「かわいい」と表現していた。D-BROS の製品や絵本などで使われるイラストレーションの作品は、かわいらしさと同時に、その製品加工技術であったり、物語性を増す緻密さであったり、背景込みで評価されていたように思う。
取材で話を聞いたことやイラストレーション独自の世界感もあって、渡邉良重の世界をただ単純に「かわいい」で済ませたくないという思いは今でもある。

だが「AUDREY(オードリー)」のパッケージでは少し違う印象を受ける。渡邉良重のイラストが持つ、物語を深読みしたくなる緻密な線や水彩の色むらから来る手の感覚は、太い線や色ベタ面に変わり、個性(いわば、渡邉良重性)を抑え、より多くの量産に向くグラフィカルな表現となっている。

「AUDREY(オードリー)」は現在タカシマヤ2店舗で展開されている、一般向けの洋菓子ブランドだ。人に見せたくなるパッケージに包まれた甘いお菓子を買う場所であり、デパート販売なりの量産性、一般性が求められている。ここでは渡邉良重や KIGI というデザイナーの作品を買うのではない。

手描きの繊細な作品も一般的なパッケージも、その場その場に応じて消費者に向くグラフィックを作れるのは、ドラフト在籍時代も含め約30年もの間、マス向けの広告から、消費者を絞った商品のパッケージまで、多様な媒体、商品を手がけてきた経験がなせることだろう。

デザイナーが絵画やイラストレーションの表現をし、発表することはよくあるが、概ねデザインとは切り離された世界感を求めて制作することが多いように思う。その中で渡邉良重はデザインとも切り離さず、どちらの領域も自由自在に行き来できる、希有な存在である。
銀座で見たせいなのか、かつて資生堂で活躍した山名文夫を思い出した。

by dezagen | 2017-05-02 03:04 | 展覧会
展覧会 マルセル・ブロイヤーの家具: Improvement for good
ブログ久々、ライター渡部のほうです。

まず余談から。
この1ヶ月半ほど視神経が痛い!くらい海外ドラマにのめり込むだけのめり込んでいる。
主に見ているのはクライム/ミステリ系と歴史(19世紀以降)ドラマ。
DVDで見ている分にはまだ自己制御できていたような気がするのだが、配信のドラマや映画まで見出すと、もうかなり切りがなく自分でもヤバいなーと思っているところ。

配信のドラマを見始めたきっかけになったはAmazon ビデオの
歴史改変ドラマで、第二次世界大戦でアメリカが敗戦し、西側が日本(日本太平洋合衆国)の、東側がドイツ(大ナチス帝国)の占領地となっている状況の、1962年というのが設定。

私的な見所ポイントは、主に美術方面。映像の中の日本の表現で、セットの中に日本語看板など多く出て来るのだけれど1960年代にこの書体ないよなー、とか、そんな重箱の隅を突くような見方をしている。
書体の話は宮後さんに任せるとして(無責任)、話の流れで気になっていたのが裕福な日本人の家にイームズの椅子(だったはず、ちょっと前に見たので若干うろ覚え)があったり、家全体の作りがミッドセンチュリーモダンの建築だったりしたところ。
歴史改変のフィクションなので、どんな解釈もできるものの、例えば、ナチスの迫害を受けてアメリカに亡命/移住したドイツ系の建築家やデザイナーがいなかったら、アメリカの建築や家具の世界はかなり違ったものになっていたのではないか、とも考えられるし、また、ドイツに負けたアメリカの中で亡命建築家やデザイナーはどうなっていたのだろうという疑問も湧く。

歴史改変ドラマであっても、歴史を扱う以上、美術作りで気にしなければならないのは、実際の歴史上でどのような物が作られて、どれだけ普及していたか、どんな素材が入手でき、どんな加工方法が可能だったのか、という史実で、それを下敷きに「もしこうだったら」という美術のセットを作らなければ、違和感に引きずられて、ドラマという虚構の世界の嘘を突き通すことが難しくなってくる。
(未知の世界を描くSFや、あり得ない世界を描くファンタジーの場合はまたちょっと話が違うかもしれないが、それでも、ある程度の現実味にズレがあることで、フィクションの面白味が生まれると思う)

歴史ドラマの美術は実際の本物を見ないとダメだなあ、というのと、多くアメリカに亡命/移住したバウハウスのデザイナー達はどう暮らしていたのだろう、というのが気になっていたところに、バウハウスを代表するデザイナー、建築家の1人、マルセル・ブロイヤーの展覧会があると聞き、絶好の機会!と見に行ってきた。

東京国立近代美術館で3月3日から開かれている
マルセル・ブロイヤーの家具: Improvement for good」
は、タイトル通り、ブロイヤーの家具に焦点を当てたもの。

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事前に「ここが見所」と、ワシリーチェア(展覧会中では「クラブチェアB3」)の初期モデルとその後の量産型では、パイプのジョイント部分が違う、ということを伝えられていた。
初期モデルではパイプのジョイントがほとんど熔接になっている、というので、実際に見てみると、X字に組み合わされた部分など難しそうなところも、しっかりと熔接されている!溶接工の手間も技術も要るので、これでは量を作るのが大変。
で、その後のモデルでは徐々にビス留めに変更され、工程も簡略化、熔接では固定されていた部分に若干のゆるみが出来ることで、クッション性も増している。
なーるーほーどー。
バウハウス関係の資料は多くあるので、写真で確認することもむろん出来るのだが、現物を見ると仕上がり具合や質感も分かる。熔接もきれいな仕上がりなのでドイツの溶接工の仕事の巧さも感じることができる。


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《アイソコン・サイドチェア BC3》 1936年 東京国立近代美術館蔵

ワシリーチェアやカンティレバーチェア(「サイドチェアB32」)に比べると、地味な存在だが、ブロイアーがイギリス滞在時(1935年〜36年)に作った、アイソコン社のプライウッド椅子「アイソコン・サイドチェア BC3」。
プライウッドのモールディング技術が向上してきた時代。家具へ応用はまだ挑戦部分の多い時期。新しい素材にチャレンジするだけでなく、スタッキングできる利便なデザインを作ったところもブロイアーらしい。

アメリカに渡った後(1937年〜)の活動(主に建築物)、日本の建築家芦原義信との交流なども紹介されている。
ものすごい細かすぎるところだけれど、1981年、芦原義信に送られたブロイヤー訃報の手紙がタイプライターでもなし、不思議な紙質と文字だな、と思ったら「電報」だった。

などなど、1つ1つ見て行くと、その時代の感触が分かってきてとても楽しい。
東京国立近代美術館の展示のいいところは、内容物は濃く、とはいえスペースはそれほど大きくないので、一つ一つの展示物を丹念に見て行ってもあまり疲れないジャストサイズだな、といつも思う。

もちろん、これは企画や会場構成スタッフの成果。
フライヤーも非常にいいので、是非手に取ってもらいたい。

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制作スタッフが気になったので、図録の奥付から。以下、敬称略。

会場構成 Landscape Products、
会場グラフィック・図録デザイン(及びフライヤーデザイン) PLUG-IN GRAPHIC(平林奈緒美、星野久美子)
図録制作 Butter Inc
企画・図録編集 東京国立近代美術館

展覧会は2017年5月7日(日)まで。

by dezagen | 2017-03-03 17:58 | 展覧会