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Can Graphic Design Save Your Life? 展覧会
ライター渡部のほうです。

現在、ロンドン滞在中。
まずは気になっていた展覧会『Can Graphic Design Save Your Life?』へ。https://wellcomecollection.org/graphicdesign

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文字通り、グラフィックデザインは命を救う事が出来るのだろうか?をテーマにしたもの。


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  1. Provocation (挑発)のコーナーよりマラリヤを媒介する蚊が髑髏の顔になっているポスター。1941年 © Estate of Abram Games

展示は6つのコーナーに分かれている。
1)Persuasion(説得) 
 煙草を例に、いかに喫煙が健康を損ねるか、アニメーションやパッケージ、切手、ポスターなど(JTのマナー広告含む)。
2)Education (教育)
 人体の仕組みの説明、病気の説明など、書籍やアプリなどを紹介。いわゆる「保健体育」的な教育ではなく、知識の伝達方法。
3)Hospitalisation(入院治療)
 病院でのサイン計画(原研哉氏が手掛けた梅田病院含む)、タイポグラフィー、北米で使われている患者とのコミュニケーションを促すピクトグラムを使ったコミュカード、ディック・ブルーナの絵本など。
4)Medication (薬)
 薬のパッケージデザインや、製薬メーカーの機関誌など。
5)Contagion (伝染病)
 マラリア、AIDS/HIV、エボラ熱、ジカ熱まで、正しい知識を促すポスター、パンフレット類。
6)Provocation (挑発)
 がんや心臓病、摂食障害、アルツハイマーについての正しい知識を促すキャンペーン、自殺防止のホットラインなどのポスター、パンフレット、Tシャツグラフィックなど。

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Hospitalisation(入院治療)のセクションより。Illustration Dick Bruna © copyright Mercis bv, 1986

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Persuasion(説得)のコーナーより禁煙を促す切手類。various countries around the world

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Persuasion(説得)のコーナーより。Biman Mullick, Cleanair


 面白いのは、この展示会場のWellcome Collectionという施設は、デザイン専門の会場ではなく、医療や健康をテーマにした文化総合施設であること。展示も入場無料なので誰でもが入れる。
 企画は GraphicDesign& http://www.graphicdesignand.com という出版社も兼ねるデザインのプロによるものだが、医療、健康の場にいる人々など、より一般の目線に近いところから見たグラフィックデザインの可能性を探っている。
 会場を訪れる人々もカフェを利用したついでに見てみた、という感じの人も多く、それを意識してか、内容も分かりやすく、デザイン業界だけに閉じた展示ではなかったところはとても良かった。
 日本でもこうした、デザインや美術の専門でない場所で見れる企画がもっとあっても良いのではないだろうか。例が思いつかないけれど、例えば医大や大型病院の一角、あるいは小さいスケールでドラッグストアの中で個展、というのも有効かもしれない。

 展示に合わせて出版された同名の書籍では、参加デザイナーらに「グラフィックデザインは命を救う事が出来るのだろうか?」を聞いた回答が掲載されている。「YES」の答えが多い中で、オランダのアルツハイマー基金のロゴなどを手掛けたスタジオダンバーの答えは「NO」。「命を救うのは医者である。(中略)グラフィックデザインは相互理解を促す手段だ」と言う。
 
 グラフィックデザインの役割は大きいが、命を救う、というところまでは行かないのかもしれない。ただ、ポスターによって、メディアによって、健康管理アプリによって、知識を得て、未然に防いだり、周囲の理解を促すことは可能だ。

 欲を言えば模範的なグラフィックばかりではなく、効果のない(効果の出なかった)グラフィックとの比較もあればさらに理解しやすかったのではないかと思う。 
 常々、日本の麻薬防止ポスター「ダメ、絶対」のシリーズは影響力がないと考えている。最近はアイドルでもなくイラストレーションの女の子を使っているのを見て、もう全く訴求力はない、と感じた。
 麻薬が「ダメ」なものであることは誰でもが知っている。むしろ、なぜそれを必要とするようになるのか、一度依存するとどうなるのか、なぜやめられないのか、Contagion (伝染病)とProvocation (挑発)のコーナーではその点秀逸な作品が揃っており、「なぜ」を人々に理解してもらうことが必要なのだと感じた。


by dezagen | 2017-09-21 14:36 | 展覧会